空調設備は、ボイラや冷凍機などの熱源をどこに置くかによって「中央熱源方式」と「個別分散熱源方式」に分けることができます。
熱源を機械室などに集約して空調する方式が「中央熱源方式」です。
各階あるいは空調のゾーンごとに空調する方式が「個別熱源方式」です。
ここでは、よく採用される空調方式である、中央熱源方式と個別熱源方式について、それぞれの方式の特徴とメリット・デメリットを解説します。
中央熱源方式
中央熱源方式は、機械室などに設置した熱源機器と空調機で、複数の室や建物全体の空気調和を行う方法です。
広い範囲の室をまとめて冷暖房するための効率が良く、保守や更新も比較的容易であるという特徴があります。
単一ダクト方式
建物全体あるいはゾーンごとに一台の空調機を設け、その空調機から冷風または温風をダクトで室内に給気する方法です。
各室ごとの細かい温室度調整は難しくなりますが、新鮮空気を常に供給できるというメリットがあります。
天井裏などにダクトスペースが必要となるので、計画の際には注意が必要です。
CAV(Constant Air Volume)とVAV(Variable Air Volume)
ダクト方式では、一定風量を送風して温度を調整する定風量方式(CAV方式)と、一定温度の空気を送風して風量を変化させる変風量方式(VAV方式)があります。
VAV方式は、冷水量やファンの総風量を外気熱負荷や在室人数などによって自動調整するため、省エネルギーとなるメリットがあります。
一方、風量変化の音が気になりやすく、また風量が絞られると新鮮外気が導入しにくくなるというデメリットもあります。
また、天井高が高いと空調空気が届きにくいなどの注意点もあります。
ファンコイルユニット方式
冷温水発生機などから冷温水の供給を受けて、各階に設けたファンとコイル、およびフィルタを内蔵したファンコイルユニットで空調を行う方法です。
各室の状況に応じて細かい温湿度設定ができるため、ホテルの客室や病院に用いられるほか、事務所ビルなどの窓側(ペリメータゾーン)の処理にもよく用いられます。
ファンコイルユニットは、天井に取り付けることもありますが、冷房時の結露水の処理や地震による配管の破断による漏水の心配などもあるため、電算機室、美術館、図書館などには採用しにくい方式です。
ファンコイルユニットは新鮮外気を導入する機能を持っていないため、室内への外気取り込みダクトを設け、ファンと熱交換器を設置する必要がある。
ダクト併用ファンコイルユニット方式
インテリアゾーンをダクト方式で空調し、熱負荷の大きいペリメータゾーンにファンコイルユニット方式を補助的に採用する方式です。
窓が大きい部屋などで広く採用されています。
個別熱源方式
個別熱源方式は、各室または限定されたゾーンごとに、熱源機と空調システムを配置する方式です。
家庭でよく使われるルームエアコンは最も身近な個別熱源方式の例と言えます。
個別熱源方式は、ゾーンごとや部屋ごとの温度や風量の調節することができるという特徴があります。
近年は機器の性能が向上しており、導入例も増えてきています。
ここでは、個別熱源方式の代表的な方式である、パッケージ型ユニット方式と、マルチ型エアコン方式の2種類について解説します。
パッケージ型ユニット方式
パッケージ型ユニット方式は、冷凍機、ファン、エアフィルタ、加湿器、自動制御器を1つのパッケージとして、これを建物内の必要なゾーンごとに設置する方式です。
各部屋には、パッケージから直接冷風、温風を吹き出したり、ダクトで各部屋まで送り込んだりします。
パッケージを建物の各階に設置した場合には、地下熱源室や縦ダクトスペースを設ける必要がなくなることがメリットとなります。
ゾーンごとでの運用、保守、管理を行うことができるため、複合ビルや貸事務所ビル、複数の店舗が入ったビルなどでよく採用される方式です。
マルチ型エアコン方式
マルチ型エアコン方式は、屋外に設置した 1 台の室外機に対して複数台の室内機を接続し冷暖房を行う方法です。
一般的にはビルマルチ方式とも呼ばれています。
マルチ型エアコン方式では冷媒を室内機に送るためダクトは使用しません。また、室内機の結露水を外部に排出するためのドレン配管も必要になります。
マルチ型エアコン方式では、室内の空気を吸い込み、温湿度を調節して吹き出すため、新鮮外気の確保には別途熱交換器などを設置し外気を取り込み、室内の空気を排気する必要があります。
地下の中央熱源室などは必要なく、各室ごとに運転・制御することが可能です。
貸事務所ビルや店舗ビルの他、集合住宅などにもよく用いられます。
この記事のまとめ
熱源設置方法によって空調方式は2種類に分かれます。
中央熱源方式と個別熱源方式の特徴やメリットデメリットを理解し、採用方式を決定する必要があります。