電気設備

標準負荷とは?用途・床面積から負荷容量を概算する方法

用途の異なる建物と設計者、配電盤で負荷容量の推定と標準負荷を示すアイキャッチ
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基本計画の段階で負荷容量を求めようとしても、照明器具やコンセントにつながる機器がまだ決まっておらず、「何を足せばよいのだろう」と迷いませんか。建築図や面積表など資料も多く、機器表が未完成なのに受電方式や電気室の広さを先に検討するのですから、分かりにくくても無理はありません。

そのような初期段階で、100Vの電灯と小形電気機械器具の負荷を用途・床面積から想定する方法が標準負荷です。ただし、標準負荷は最終容量そのものではありません。空調機、ポンプ、昇降機などの実負荷が分かったら、機器表と照合して更新します。

この記事では、内線規程JEAC 8001-2022の3605節に基づき、PA+QB+Cの意味、用途別の数値、加算VA、需要率の扱いを順に整理します。読み終えたら、建築の面積表と設備負荷表を並べ、概算の対象と別途加える負荷を切り分けられるようになります。

この記事でわかること

  • 標準負荷を使える対象と、最終設計で更新する理由
  • 設備負荷容量=PA+QB+Cの各記号の意味
  • 用途別標準負荷、部分標準負荷、加算VAの使い分け
  • 10kVAを超えた部分へ需要率を適用する計算方法
  • 概算値を実負荷表と幹線設計へ引き継ぐ確認手順

標準負荷は、機器未定時の100V負荷を想定する値です

内線規程3605-1が示す標準負荷は、配線設計に用いる100Vの電灯と小形電気機械器具の設備負荷容量を想定するための値です。建物用途ごとの負荷密度に床面積を掛けるので、照明器具やコンセント負荷の詳細が決まる前でも概算できます。

ここで大切なのは、建物にあるすべての電気設備を一つの式で決めるものではないことです。空調・衛生・昇降機・厨房機器など、容量が分かる設備は個別に集計します。施設者の希望や建物条件から、この想定方法によることが難しい場合も、実際の設備計画に合わせます。

算定式はPA+QB+Cです

設備負荷容量は、次の形で整理できます。

設備負荷容量[VA]= P×A + Q×B + C

記号意味確認する資料
P用途別標準負荷を適用する床面積。Qに分ける部分は除く建築面積表、室別面積表
A建物用途に対応する標準負荷[VA/m²]内線規程3605-1表
Q廊下・倉庫など、部分標準負荷で別計算する床面積建築平面図、室別面積表
B建物部分に対応する部分標準負荷[VA/m²]内線規程3605-2表
C住宅、ショーウィンドー、広告灯、特殊照明などの加算VA住戸数、立面図、機器仕様書

複合用途では、用途ごとにPとAを分けます。住宅と店舗が同じ建物にあるなら、住宅部分を40VA/m²、店舗部分を30VA/m²としてそれぞれ計算し、最後に合計します。

用途別標準負荷Aを床面積へ掛けます

用途別標準負荷Aは、建物用途を次の4区分に分けています。似た用途だからといって、表にない用途へ数値をそのまま類推せず、採用基準や発注者条件を確認しましょう。

標準負荷A主な建物用途
10VA/m²工場、公会堂、寺院、教会、劇場、映画館、寄席、ダンスホール、農家の納屋など
20VA/m²寮、下宿屋、旅館、ホテル、クラブ、病院、学校、料理店、喫茶店、飲食店、公衆浴場
30VA/m²事務所、銀行、商店、理髪店、美容院
40VA/m²住宅、アパート

出典:『内線規程 JEAC 8001-2022』3605-1表

建物の一部だけを使用する学校などは、使用する部分だけへ対応する標準負荷を適用します。面積を延べ面積から一括で拾うのではなく、用途区画と使用範囲を建築図で確かめることが先です。

複合用途の建物を用途別に分け、床面積から負荷を集計して配電盤へつなぐ流れ

廊下や倉庫は部分標準負荷Bで分けます

住宅・アパートを除く建物では、廊下や倉庫などを主用途部分から分け、部分標準負荷Bで計算できます。

部分標準負荷B建物の部分
5VA/m²廊下、階段、手洗所、倉庫、貯蔵室
10VA/m²講堂、観客席

出典:『内線規程 JEAC 8001-2022』3605-2表

たとえば、ホテルの客室等500m²と廊下100m²を概算する場合は、500m²×20VA/m²+100m²×5VA/m²=10,500VAです。廊下100m²をホテルの20VA/m²へ重ねて計算しないよう、PからQを除いておきます。

加算VA数Cは、床面積だけで表せない負荷です

床面積に比例しにくい負荷は、Cとして加えます。内線規程で確認できる代表例は次のとおりです。

対象加算する容量設計時の確認点
住宅・アパート1世帯につき500~1,000VA住戸数と範囲内の採用値、その根拠
商店のショーウィンドー間口1mにつき300VA実際の間口寸法
屋外広告灯・電光サイン・ネオンサインなど実際のVA数照明・サイン仕様書
舞台照明などの特殊照明実際のVA数調光・演出設備の負荷表

出典:『内線規程 JEAC 8001-2022』3605-1 1項①c

住宅加算は500~1,000VAの範囲です。「安全側だから必ず1,000VA」と一律に決めるのではなく、案件で採用する値と理由を設計条件に残します。また、実際に設置する負荷が標準値を上回るときは、標準値ではなく実負荷を使います。

予想しにくいコンセント等を個別に数える場合は、次の予想負荷を使います。

受口の区分予想負荷記事での数え方
並形電灯受口・コンセント150VA/個コンセントは口数ではなく器具1個として数える
大形電灯受口300VA/個大形の受口を1個ずつ数える

出典:『内線規程 JEAC 8001-2022』3605-3表・備考

10kVAを超えた部分だけ需要率を適用できます

幹線の電線は、原則としてその部分を通じて供給する電気機器の定格電流合計以上の許容電流を持つように選びます。ただし、需要率や力率が明らかな場合は、それらで修正した負荷電流を用いることができます。

内線規程3605-8の注記と3605-11表では、電灯と小形電気機械器具の容量合計が10kVAを超える場合に、10kVAを超えた部分へ次の需要率を適用できるとしています。

10kVA超過部分の需要率建物用途
50%住宅、寮、アパート、旅館、ホテル、病院、倉庫
70%学校、事務所、銀行

出典:『内線規程 JEAC 8001-2022』3605-8 2項注・3605-11表

事務所で、電灯・小形機器が30kVA、大形機器が5kVAある例を考えてみましょう。事務所の需要率70%を使うと、10kVA+(30kVA-10kVA)×0.7+5kVA=29kVAです。30kVA全体へ70%を掛けるのではありません。

表にない用途へ需要率を類推することも避けます。契約図書、発注者の設計基準、一般送配電事業者の供給条件がある場合は、そちらも照合します。幹線は負荷電流だけでなく、電圧降下、保護方式、周囲温度、布設条件も合わせて選定します。

概算値は、機器が決まるたびに実負荷へ更新します

標準負荷で概算できたら、その数値を固定せず、設計の進行に合わせて更新します。次の順番で見直すと、何を置き換え、何を追加したのかを説明しやすくなります。

用途・面積で概算 → 機器表と仕様書を受領 → 実負荷が標準値を超える部分を更新 → 専用回路・大形機器を別集計 → 需要率の適用条件を確認 → 幹線・受電設備を検討

用途と床面積による概算を機器仕様へ更新し、幹線と配電盤を選定する流れ

受変電設備の容量を決める段階では、標準負荷だけでなく、空調、衛生、昇降機、厨房、情報機器、非常電源対象、将来増設を集計します。将来負荷は、根拠のない一律の余裕率を加えるのではなく、増設する設備、時期、必要なスペースや幹線経路を記録します。

負荷容量を概算するときのチェックリスト

基本計画で負荷表を作り始めた設計担当者は、建築面積表と機器表を開き、次の順に確認してみましょう。

☐ 建物用途と複合用途の区画を、最新版の建築図で確認した

☐ Pの床面積から、Qとして別計算する廊下・倉庫等を除いた

☐ 用途別標準負荷Aと部分標準負荷Bを、表の対象用途から選んだ

☐ 住宅の世帯数、ショーウィンドー間口、広告灯・特殊照明をCへ加えた

☐ 標準値を超える実負荷を、機器仕様書と設備負荷表から更新した

☐ 空調・衛生・昇降機・厨房等の専用負荷を別に集計した

☐ 需要率は対象用途と10kVA超過部分だけに適用した

☐ 幹線の許容電流、電圧降下、保護、布設条件を別途確認した

間違えやすいポイント

標準負荷だけで建物全体の容量を決める場面

標準負荷の式で数値が一つ出ると、そのまま変圧器や引込容量へ使いたくなるかもしれません。しかし、式が想定する対象と、実際に建物へ設置する全設備は同じではありません。

よくある間違い:100Vの電灯・小形機器の概算へ、空調機、ポンプ、昇降機などの実負荷を含めたつもりになり、専用負荷を追加しないことです。

確認すべきこと:標準負荷で求めた対象を負荷表で区分し、空調・衛生・昇降機・厨房・情報機器の機器表を照合します。未定負荷は未定と記録し、決定時期と担当者を決めます。

幹線負荷の計算で需要率を容量全体へ掛ける場面

幹線負荷の計算中に「需要率70%」だけを見ると、合計容量へ0.7を掛ければよいように見えます。3605-11表の対象は、電灯・小形機器の10kVAを超えた部分です。

よくある間違い:事務所の幹線負荷を計算するとき、電灯・小形機器30kVA全体へ70%を掛け、さらに大形機器まで同じ割合で減らすことです。

確認すべきこと:まず10kVAを100%で残し、超過容量だけへ表の需要率を掛けます。用途が表にあるか、大形機器をどう集計したか、採用基準に別条件がないかを計算書へ記載します。

住宅加算を必ず1,000VAとする場面

規程の計算例で1,000VAが使われていても、一般規定の範囲は500~1,000VAです。計算例の採用値と、すべての案件に使う値を混同しないようにします。

よくある間違い:住戸規模、設備計画、発注者基準を確認せず、全住戸へ一律1,000VAを加えることです。

確認すべきこと:住戸数、住戸タイプ、コンセント・専用機器計画、採用する設計基準を確認し、範囲内で選んだ値と根拠を設計条件書へ残します。

まとめ

標準負荷は、機器が決まっていない初期段階で、100Vの電灯・小形機器の負荷容量を用途と床面積から想定する方法です。まずP×A+Q×B+Cで、主用途、廊下・倉庫等、床面積だけで表せない負荷を分けて集計します。

次に、設備機器が決まるたびに実負荷へ更新し、専用負荷を別に加えます。需要率を使う場合は、対象用途と10kVA超過部分を確認します。手元の案件では、最新版の建築面積表と設備負荷表を並べ、P、Q、C、専用負荷の4列に分けるところから始めてみてください。

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参考・出典

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