電気設備とは?強電・弱電・防災・監視制御の役割と全体像
建物の電気設備とは、外部から受けた電気を照明や機器へ届ける設備と、建物内で通信、防災、監視制御を行う設備の総称です。照明やコンセントだけでなく、電話・LAN、自動火災報知、非常放送、中央監視なども電気設備に含まれます。
電気設備図を初めて開くと、受変電設備、幹線、動力、弱電、火災報知、中央監視といった名称が一度に出てきます。似た言葉が多いうえに、電気を送る設備と信号を送る設備が別の図面に描かれるため、機器名だけを覚えても設備同士のつながりは読み取れません。
そこでこの記事では、建物の電気設備を「電力」「情報通信」「防災」「監視制御」の四つに分けて説明します。まず各設備が運ぶものを確認し、次に電源や信号の経路、空調・給排水衛生設備との接続、設計図を読む順番へ進みます。
読み終えたときには、単線結線図で電源の供給元を探し、系統図で信号の接続先を確認し、平面図や断面図で機器と配線の場所を照合できるようになります。設備設計や施工では工事区分の抜けを探すときに、意匠設計では電気室やシャフトの必要条件を確認するときに使える内容です。
基礎|電気設備を四つの役割で分けて考える
「強電」「弱電」「防災」「中央監視」は、設計図や工事区分表でよく見かける言葉です。ただし、四つの名称は同じ基準で分けたものではありません。「強電」と「弱電」は、主に機器を動かす電力を扱うか、音声やデータなどの信号を扱うかという呼び分けです。一方、「防災」と「中央監視」は、火災時の避難を支える、設備の状態を監視するといった目的を表しています。
最初にすべての機器名を覚える必要はありません。図面に機器が出てきたら、その機器が「電気を届ける」「情報を伝える」「火災や停電に対応する」「運転状態を表示して操作する」のどれを行うのかを確認します。何を運び、どこへつながる設備なのかを先に見ると、同じ系統の機器を追いやすくなります。

この四分類は、設備の働きと接続先を読むために、この記事で使う分け方です。法令が工事範囲を四つに固定しているわけではありません。例えば、中央監視盤までの配線を電気工事とする案件もあれば、空調機の制御盤から監視盤までを機械設備工事に含める案件もあります。実際の担当範囲は、特記仕様書、設備表、工事区分表で確認します。
電力設備|受電した電力を盤と配線で各機器へ供給する
照明器具を点灯させ、空調機やポンプを動かすには、外部から受けた電力を建物内の各機器まで届ける必要があります。この電力を受け、必要に応じて電圧を変え、盤と配線を通して分配するのが電力設備です。実務では、電力設備を「強電設備」と呼ぶこともあります。
電力は、電力会社との受渡し位置である受電点から、受変電設備や主幹盤へ入ります。そこから幹線を通り、各階や用途ごとの分電盤・動力盤へ送られます。分電盤・動力盤から先では、回路を分けて照明、コンセント、空調機、ポンプへ電力を供給します。
外部電源 → 受電・変圧 → 主幹盤 → 幹線 → 分電盤・動力盤 → 照明・コンセント・空調機・ポンプ
ここでいう幹線は、受変電設備や主幹盤から分電盤・動力盤まで、まとまった電力を送る配線です。分岐回路は、分電盤や動力盤から個別の照明、コンセント、機器へ電力を送る回路です。電気を使用する照明や機器は「負荷」と呼びます。単線結線図では、電源、盤、幹線、負荷を線でたどると、どの盤から各機器へ電力が送られるのかを確認できます。
小規模建物では、電力会社から低圧で受電する場合があります。使用電力が大きい建物では、高圧で受電し、建物内の変圧器で照明や機器に使用する電圧へ変える場合があります。低圧・高圧・特別高圧の定義や受電方式は、電圧の種類・区分の違いで詳しく扱っています。
設計では、通常時だけ使う負荷と、停電時にも運転を続ける負荷を分けます。病院、事務所、共同住宅では、停止すると困る機能も、必要な運転時間も異なるためです。発注者や施設管理者へ、停電時に残す照明、通信、医療機器、ポンプなどを確認します。将来増設する機器や、点検中に停止できない機器も単線結線図へ反映すると、通常系統と非常系統をどの盤で分けるか決められます。
情報通信設備|音声・映像・データを建物内外へ伝える
電話、LAN、防犯カメラ、インターホンは、音声、映像、データ、呼出しなどの信号を送ります。この記事では、これらを情報通信設備と呼びます。実務では「弱電設備」とまとめて呼ぶこともあります。
情報通信設備は、室内の電話機やLAN端子の位置だけを決めても完成しません。通信事業者の回線を敷地や建物へ引き込み、建物内の配線をまとめる盤を経由して、各階や各室の端末までケーブルを通します。設計では、端末から引込点までを逆にたどり、途中に必要な盤、配管、ケーブルラックを確認します。
MDFはMain Distribution Frameの略で、外部から引き込んだ通信回線と建物内配線を接続する主配線盤です。IDFはIntermediate Distribution Frameの略で、各階や各エリアの通信配線をまとめる中間配線盤です。簡単にいうと、MDFは建物全体の回線を受ける場所、IDFは各階へ配線を分ける場所です。
通信ラックや防犯機器は信号を扱いますが、機器を動かすための電源も必要です。停電直後も通信や防犯を続ける場合は、UPS(無停電電源装置)や非常電源から給電します。UPSは、通常の電源が切れたときに、内蔵した蓄電池などから一定時間電力を供給する装置です。ラック内の機器は運転中に発熱するため、設置室の換気や空調も電源と一緒に計画します。
情報通信機器は更新周期が比較的短く、入居するテナントが機器や配線を追加することもあります。設計時点で端末数や機器仕様が確定していない場合は、配管、ケーブルラック、盤スペース、電源容量にどの程度の余裕を持たせるかを決めます。建築工事、電気工事、テナント工事の施工範囲も工事区分表に記載します。
防災設備|火災を検知し、在館者へ知らせて避難を支える
防災設備は、火災を見つけ、在館者や管理者へ知らせ、避難に必要な明るさや方向表示を保つ設備です。自動火災報知設備、非常放送設備、誘導灯などが、それぞれの役割を電気信号と電源でつないでいます。
自動火災報知設備では、天井などに設置した感知器や、人が操作する発信機から受信機へ火災信号を送ります。受信機は火災が発生した区域を表示し、ベルなどの地区音響装置を作動させます。建物の計画によっては、受信機から非常放送、防火戸、排煙設備、空調停止へ信号を送り、火災時の動作を連続させます。
火災時の連動は、電気担当だけでは決められません。防火区画や避難経路は建築設計、排煙機や空調機の動作は機械設備と関係します。関係する担当者で連動図や動作表を開き、感知器の作動後に何を起動・停止するのか、復旧時に誰がどの機器を操作するのかを決めます。
停電時には、誘導灯や非常照明などが避難に必要な機能を維持します。非常用発電設備や蓄電池設備は、停電時にも運転が必要な設備へ電力を供給します。
防災設備の設置要否や必要な電源保持時間は、建物用途、規模、収容人員、適用法令によって変わります。個別案件では、適用される建築基準法・消防法の規定と、消防機関・確認検査機関との協議内容を確認します。
監視制御設備|運転状態や警報を集め、必要な機器を操作する
空調機、ポンプ、受変電設備は、機械室、電気室、屋上など建物内の離れた場所に設置されます。中央監視設備は、各設備から運転・停止、故障、温度、水位、電力量などの情報を受け取り、管理室などの監視画面へ表示します。管理者は画面を見ることで、現地へ行く前に異常が起きた設備と場所を確認できます。
中央監視から起動・停止の指令を送る設備では、管理者が監視室から機器を操作できます。国土交通省の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)でも、中央監視制御装置を、各種設備の制御・監視・計測情報を一元的に表示・制御する装置として扱っています。
BASはBuilding Automation Systemの略で、空調、給排水、電力などの建築設備を監視し、必要に応じて機器を操作する仕組みです。BEMSはBuilding and Energy Management Systemの略です。設備の運転情報に加えて、電気、ガス、水などの使用量を収集し、時間帯や用途ごとの使用量を確認するときに使います。その記録を、機器の運転時間や設定値を見直す材料にします。
ただし、BASとBEMSに含まれる機能は、案件の仕様と採用する製品によって異なります。「BEMSあり」と書かれていても、すべての設備を操作できるとは限りません。監視する機器、記録する計測値、データを残す期間、画面から操作できる機器、設備間の通信方法を、仕様書と監視点一覧で確認します。
監視画面へ情報を集めるだけでは、異常時の対応は決まりません。日常の運転記録と、管理者がすぐに対応する故障警報を分け、警報ごとに優先度を設定します。あわせて、警報が出たときに現地で確認する機器、設備担当者への連絡方法、復旧後の記録方法を決めます。
空調・給排水衛生設備との接続は、電源・操作・状態信号で考える
空調機やポンプを動かすには、モーターへ送る電力だけでなく、いつ起動・停止するかを伝える信号も必要です。中央監視で運転状態を確認する場合は、機器側から「運転中」「停止中」「故障」といった状態信号を返します。
例えば、給水ポンプでは、動力盤からポンプのモーターへ電力を供給します。受水槽の水位が下がると、水位を検知した制御盤がポンプへ起動を指示します。ポンプから中央監視へ運転中や故障の信号を返すと、管理者は監視画面で現在の状態を確認できます。このように、機械設備との接続は「電源を送る」「操作を指示する」「状態を返す」の三つに分けて確認します。

機器本体、動力盤、制御盤、中央監視盤は、すべて同じ工事の範囲になるとは限りません。動力盤を電気工事、空調機の制御盤を機械設備工事、中央監視への接続を別の電気工事とする場合もあります。
工事区分が曖昧なままだと、盤同士を接続する配線や、試運転時の調整作業がどの工事にも含まれないことがあります。設備表、制御図、工事区分表には、端子の受渡し位置、配線を施工する担当、信号を確認する担当、連動試験を行う担当を記載します。
設計・実務|建物の使い方から図面へ反映するまで
電気設備の設計は、盤や照明器具を図面へ置くところから始めるのではありません。最初に、建物を誰がいつ使うのか、停電したときも何を動かすのかを発注者や施設管理者へ確認します。その回答をもとに、受電方式、非常電源、設備スペース、幹線経路、機器配置を順番に決めます。
用途・運用条件の確認 → 外部インフラの確認 → 負荷と継続機能の分類 → 系統と設備スペースの計画 → 配線ルート・機器配置 → 図面・仕様書への反映
この順序で一度決めれば終わるわけではありません。例えば、必要な発電機が機械室へ納まらない場合は、発電機室を広げるのか、別の場所へ移すのか、停電時に運転する負荷を見直すのかを関係者で検討します。必要な機能と、設置できる大きさや経路が一致するまで、建築図と電気図を更新します。
1. 建物の用途と運用条件を確認する
発注者や施設管理者へ、建物用途、利用時間、在館者、テナント区分、セキュリティ、将来の用途変更を確認します。これらの回答から、照明やコンセントの数、停電時に運転を続ける設備、通信・防犯設備を管理する人と時間帯を決めます。
病院では、停電によって停止すると診療へ影響する設備があります。事務所では、避難に必要な設備に加えて、サーバーや通信をどの程度継続するかを運用条件として決める場合があります。建物用途だけで一律に決めず、施設管理者や発注者へ停止できない機能を確認します。
2. 電力・通信の引込条件と責任分界を確認する
電力会社や通信事業者へ、引込位置、供給条件、受渡し点、計量方法、工事負担を確認します。敷地境界から建物までの引込経路が決まると、受変電室や通信室を建物のどこへ配置するか検討できます。
責任分界点は、事業者と建物所有者の設備を分ける位置です。責任分界点が決まると、事故や故障が起きたときに、どちらが保守・復旧を担当するのかが明確になります。
3. 負荷を集計し、通常時と停電時の系統を分ける
照明、コンセント、空調機、ポンプ、エレベーターなどの機器について、必要な電源容量を集計します。そのうえで、通常電源で運転する機器、非常用発電機で運転する機器、UPSで無瞬断または短時間の継続が必要な機器を分けます。
この段階で停電時の運転対象を決めると、発電機や蓄電池の容量を計算できます。同時に、通常系統と非常系統を単線結線図でどこから分けるかも決められます。詳細な負荷計算と非常電源容量の算定は、個別記事で扱います。
4. 電気室、EPS、盤の位置と必要な作業空間を決める
電気室や発電機室には、機器本体を置く面積に加えて、盤の扉を開く空間、点検する人が立つ空間、機器を交換するときの搬出経路、ケーブルを引き込む空間が必要です。
EPSは、電力や通信の縦幹線を各階へ通すためのシャフトです。ケーブルの本数と太さ、ラックの幅、曲げに必要な空間、各階での分岐方法を確認し、必要な寸法と扉位置を建築図へ反映します。
電気室や通信室では、機器の発熱を処理する換気・空調も必要です。上階の便所や水使用室、周囲の給排水管も確認し、漏水が電気機器へかかりにくい位置と納まりを検討します。
5. 系統図、平面図、設備表の内容を一致させる
単線結線図には、受電点から盤・負荷までの電源系統を示します。通信、放送、火災報知、中央監視の系統図には、どの機器からどの盤へ信号を送るのかを示します。平面図には、機器の設置位置と配線経路を記載します。
同じ盤や機器が複数の図面に記載されるため、名称や番号が一致していないと、施工者はどの機器を指しているのか判断できません。盤名称、回路番号、機器記号、信号名称、工事区分を図面間で照合します。
建築との取り合い|どの場所で何を確認するか
電気設備は、電気室だけに設置されるものではありません。天井には照明、感知器、スピーカー、ケーブルラックがあり、壁には盤、スイッチ、コンセント、通信端末があります。床、シャフト、屋上、外構にも配線経路や機器が必要です。
建築図と電気図を重ねるときは、次の場所ごとに、機器を設置できるか、配線を通せるか、完成後に点検・交換できるかを確認します。
- ・電気室・発電機室・通信室:機器配置、盤前面の点検空間、搬入経路、発熱処理、騒音、浸水リスクを断面図と機器図で照合する
- ・EPS・MDF・IDF:幹線と通信ケーブルの本数、ラック幅、分岐、扉、耐火区画、作業空間、将来増設分が納まるか確認する
- ・天井:照明、感知器、スピーカー、点検口の位置を天井伏図で確認し、ダクト、配管、ケーブルラックとの高さ関係を断面で調整する
- ・壁・床:盤、コンセント、端末の取付高さを仕上げや家具と合わせ、配線貫通部の防火区画処理を確認する
- ・構造:盤や発電機の重量、機器基礎、アンカー、床・壁の開口、ケーブルラック支持を構造図と照合する
- ・外構・屋上:電力・通信の引込、接地極、避雷設備、発電機の給排気、太陽光設備、点検経路を配置図と屋上図へ反映する
例えば、平面図で電気室の面積が確保されていても、搬入口が小さければ受変電盤を交換できません。天井伏図で照明位置が決まっていても、天井内のダクトと照明器具が同じ高さにあれば施工できません。平面図だけで判断せず、断面図、構造図、設備総合図を使って高さと作業空間まで確認します。
電気図面|電力の系統、信号の接続、機器の位置を分けて読む
電気設備図は、一枚の図面だけですべてを表していません。電源がどの盤へつながるかは単線結線図、通信や制御の信号がどの機器へ届くかは各種系統図、盤や端末をどこへ設置するかは平面図に分けて記載します。
どの図面から見ればよいか迷ったときは、まず単線結線図で対象機器の電源を上流へたどります。次に平面図で機器と盤の設置場所を探し、盤図・負荷表で回路番号と容量を照合します。空調機やポンプのように制御がある機器は、制御図や動作表を開き、誰がどの信号で起動・停止し、故障信号をどこへ返すのかを確認します。
単線結線図 → 平面図 → 盤図・負荷表 → 制御図・動作表の順に見ると、電源の供給元、設置場所、回路番号、操作信号、工事区分を同じ機器について照合できます。図面間で盤名称や機器番号が違う場合も、この段階で見つけられます。
建築設備士試験との関係
建築設備士試験の電気設備分野では、用語を覚えるだけでなく、問題文に出てくる機器がどの設備へつながるのかを判断します。第一次試験では選択肢の正誤を見分け、第二次試験では建物条件から必要な設備と容量を決めるため、同じ知識でも使い方が異なります。
第一次試験では、選択肢が扱う設備を見分ける
建築技術教育普及センターが公開する令和8年建築設備士第一次試験「建築設備」では、第31問から第45問に電気設備の問題があります。第31問は電気用語、第32問は配線図記号、第34・35問は電気設備計画、第36問は高圧受変電設備、第44問は防災設備、第45問は非常電源に関する内容です。
例えば、選択肢に変圧器、幹線、遮断器が出てきたら、受電点から負荷までの電力系統に関する説明かを確認します。感知器、受信機、非常放送が出てきたら、火災の検知から在館者への通報までの順序を確認します。機器が属する系統を先に特定すると、異なる設備の説明を混ぜた誤りを見つけやすくなります。
第二次試験では、建物条件を電源系統へ置き換える
令和7年第二次試験の電気設備選択問題では、第1問に6.6kV受電、幹線、非常用発電、太陽光発電、照明、火災報知などの建物条件が示されています。第2問では、その条件を使って受変電設備、発電設備、直流電源設備の容量計算と計画理由の記述を行います。
ここでは、文章で示された条件を設備ごとに分ける作業が必要です。受電電圧と変圧器は通常時の電源系統、非常用発電機は停電時の電源系統、火災報知は防災系統として読み分けます。その後、どの負荷を通常電源・非常電源へ接続するのかを確認し、設備容量の計算へ進みます。
判断する順番は、次のとおりです。
問題文の条件を読む → 対象設備を四つの役割へ分ける → 通常・非常電源と信号の接続を確認する → 必要な根拠を選ぶ → 記述・計算・作図で答える
過去問題の正誤は、出題された年に適用されていた法令・基準で決まります。現在の実務へ過去問題の知識を使う場合は、最新の法令、告示、標準仕様、メーカー仕様と分けて確認します。
間違えやすいポイント
平面図に見える照明とコンセントだけを電気設備だと考える
よくある間違い:平面図で目に入りやすい照明・コンセントだけを拾い、受変電、幹線、情報通信、防災、監視制御を別の計画として扱うことです。
確認すべきこと:単線結線図では、外部から受けた電力が受変電設備、幹線、分電盤・動力盤を通ってどの機器へ届くかをたどります。各種系統図では、通信、防災、監視制御の信号を送る機器と受ける機器を確認します。平面図にある機器が、どの電源と信号へ接続されるのかまで照合します。
通信端末の位置だけを決め、電源と設置室を後から検討する
よくある間違い:LANや防犯カメラの信号配線だけを計画し、通信ラックの電源、UPS、発熱、点検空間を後から追加することです。
確認すべきこと:端末からMDF・IDFまでの通信経路とともに、ラック電源、停電時の継続時間、換気・空調、接地、保守空間を確認します。必要なUPS容量と空調条件は、機器構成と運用時間によって変わります。
電気室に機器が置ければ設置できると判断する
よくある間違い:受変電盤や発電機の外形だけを平面図へ配置し、搬入、更新、盤前面の操作、ケーブル引込み、換気、騒音を確認しないことです。
確認すべきこと:機器図を使って、搬入口から設置場所までの経路、扉の開閉、点検時に人が立つ空間、機器交換に必要な寸法を確認します。断面図では、ケーブルの引込み、給排気、基礎、上階からの漏水リスクも照合します。
空調・衛生機器の電源容量だけを電気担当へ伝える
よくある間違い:機械設備から電源容量だけを受け取り、起動方式、制御電源、運転・故障信号、インターロック、停電時運転を打合せしないことです。
確認すべきこと:設備表と制御図に、主電源、制御電源、起動・停止指令、運転・故障信号、非常時の動作を記載します。端子の受渡し位置と配線・試験の担当まで決めると、工事区分の抜けを防げます。
強電・弱電という名称だけで施工範囲を決める
よくある間違い:一般的な分類名から、盤や配線の施工者、接続者、試験担当を推測することです。
確認すべきこと:特記仕様書、設備表、工事区分表、責任分界図を照合します。例えば、中央監視に接続する配線でも、電気工事に含む場合と機械設備工事に含む場合があります。案件ごとの区分を図面と仕様書に明記します。
基本計画で使う電気設備の全体確認チェックリスト
このチェックリストは、電気設備担当者と意匠・構造・機械設備担当者が、基本計画から基本設計で使用するものです。外部からの引込、電源系統、通信・防災・監視制御、設備スペース、他設備との接続について、図面へ反映する条件がそろっているかを確認します。
☐ 建物用途、利用時間、停電時に運転を続ける機能を発注者・施設管理者と確認した
☐ 電力・通信の引込位置、供給条件、責任分界点を事業者と確認した
☐ 電力、情報通信、防災、監視制御に必要な設備と機器を選定した
☐ 通常電源、非常用発電機、UPSへ接続する負荷を分けた
☐ 電気室、発電機室、EPS、MDF・IDFの寸法と位置を建築図へ反映した
☐ 盤の操作・点検空間と、機器の搬入・更新経路を確保した
☐ 天井内のケーブルラック、ダクト、配管、照明器具の高さを断面で調整した
☐ 防火区画貫通、接地、避雷、浸水リスクの処理方法を関係図面へ記載した
☐ 空調・衛生機器の主電源、制御電源、操作指令、状態信号を制御図へ記載した
☐ 工事区分、端子受渡し位置、配線担当、連動試験担当を明記した
☐ 単線結線図、系統図、平面図、盤図、設備表の名称と番号を一致させた
☐ 適用法令、所管協議、標準仕様、メーカー仕様の最新版を確認した
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- ・単相と三相、配線方式の基本(ELEC-007・公開予定)
- ・受変電設備の役割と構成(ELEC-010・公開予定)
まとめ
建物の電気設備は、照明や機器へ電気を届ける電力設備、音声・映像・データを送る情報通信設備、火災を検知して避難を支える防災設備、各設備の運転状態や故障を表示して操作する監視制御設備に分けて考えられます。空調機やポンプでは、電力設備から電源を送り、制御設備から起動・停止を指示し、機器から運転・故障の状態信号を返します。
電気図面を読むときは、まず単線結線図で対象機器の電源を上流へたどり、通常電源と非常電源のどちらへ接続されているかを確認します。次に系統図で通信、防災、監視制御の信号接続を確認し、平面図で機器の位置と配線経路を探します。最後に盤図、負荷表、制御図を開き、回路番号、容量、起動・停止、警報、工事区分が図面間で一致しているかを照合します。
これから設計を始める場合は、最初に建物用途、利用時間、停電時にも残す機能を発注者と施設管理者へ確認します。その回答をもとに、電力・通信の引込条件、通常・非常電源の系統、電気室やEPSの寸法、配線経路、空調・衛生機器との接続を順に図面へ記載します。意匠、構造、空調、給排水衛生の担当者とは、スペース、開口、電源、操作信号、状態信号、工事区分を一つずつ照合します。
参考・出典
- ・公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版|国土交通省
- ・公共建築工事標準仕様書 令和7年版等|国土交通省
- ・電気設備の安全|経済産業省
- ・過去の試験問題等|建築技術教育普及センター
- ・令和8年 建築設備士第一次試験「建築設備」|建築技術教育普及センター
- ・令和7年 建築設備士第二次試験問題|建築技術教育普及センター
