契約電力と受電方式の基本|低圧・高圧・特別高圧の決め方
受電方式を決めるときは、負荷集計表の合計だけを見て「低圧」「高圧」と決めることはできません。
設計では、同時に使う電力を見積もり、その値をもとに送配電事業者へ供給電圧や引込方法を確認します。契約電力、最大需要電力、変圧器容量は似ていますが、それぞれ意味も決め方も違います。
この記事では、この違いを整理したうえで、低圧・高圧・特別高圧と受電回線の選び方を説明します。
契約電力・最大需要電力・変圧器容量は別の数値
最初に、混同しやすい数値の違いを整理します。
例えば、建物内の機器容量をすべて足すと800kWでも、すべての機器が同時に動くとは限りません。予備ポンプは通常運転せず、空調と厨房のピーク時刻がずれることもあります。このため、設計時の最大需要電力は、同じ時間帯に動く機器から見積もります。
変圧器容量は、契約電力をkVAに読み替えて決めるものではありません。変圧器ごとに接続する負荷を分け、需要率、力率、同時運転台数、将来増設を含めて計算します。
50kW・500kW・2,000kWは何の目安か
この3つは、同じ基準の段階を示す数字ではありません。東京電力エリアでは、次のような意味があります。
50kWを超えたからといって、全国一律に高圧受電になるわけではありません。反対に、将来の負荷増加などを考慮し、50kW未満でも高圧向けの契約が適用される場合があります。
2,000kWも、必ず20,000Vで受電するという法令上の境界ではありません。最終的な供給電圧や引込方法は、計画地の電力系統によって変わります。想定最大需要電力がまとまった段階で、送配電事業者へ確認します。
低圧・高圧・特別高圧の違い
受電電圧は、電気が建物へ入る地点の電圧です。法令上は、交流600V以下・直流750V以下が低圧、交流600V超・直流750V超で7,000V以下が高圧、7,000V超が特別高圧です。

高圧受電では、キュービクルなどの受変電設備が必要です。6,000V級で受けた電気を、変圧器で100V・200V・400V級へ下げて建物内へ送ります。
架空線から引き込む場合はPAS、地中線から引き込む場合はUGSという開閉器を使うことがあります。どちらも、事故や点検の際に建物側の高圧回路を配電線から切り離すための機器です。実際の引込方法と受電点は送配電事業者が示します。
高圧・特別高圧の受電設備は、自家用電気工作物として設置者が保安を管理します。電気主任技術者の選任や保安規程、必要な届出も計画に含めます。
特別高圧では設備がさらに大きくなり、保護装置や引込設備も複雑になります。機器を置く場所だけでなく、操作、点検、更新時の搬入経路まで早い段階で建築計画に取り込む必要があります。
高圧500kW未満の契約電力は最大デマンドで決まる
東京電力エナジーパートナーの高圧500kW未満では、当月と前11か月の月間最大需要電力を比べ、その中で最も大きい値が契約電力になります。これが実量制です。
例えば、過去12か月の月間最大需要電力が次の値だったとします。
この例では最大値が420kWなので、契約電力は420kWです。翌月になると最も古い月が外れ、新しい月の値が加わります。420kWを記録した月が対象期間から外れるまでは、その値が契約電力に影響します。
最大デマンドが発生した原因を調べるときは、その時刻の運転記録を確認します。空調機や充電設備の起動が重なっていれば、運転時刻をずらすことでピークを抑えられる可能性があります。
500kW以上や特別高圧では、契約電力の決め方が異なります。負荷設備の容量、運転計画、将来増設などをもとに、契約先と協議します。
受電回線が増えても無停電になるとは限らない
受電方式を選ぶときは、「停電を何分まで許容できるか」と「計画地で利用できる回線」を分けて考えます。回線を2本にしても、切替中に停電することがあり、広域停電にも対応できません。
1回線受電では停電中に非常用電源で動かす機器を決める
1回線受電では、その回線や電力会社側の配電設備が止まると、建物は受電できません。このため、消防設備、給水ポンプ、監視設備、サーバーなど、停電中も必要な機器には別の電源を用意します。
一瞬の停電も許容できない機器には無停電電源装置、数十秒後の復旧でよい機器には非常用発電機などを使います。防災設備に必要な予備電源は、関係法令に従って計画します。
本線・予備線では2本の接続先と切替時間を確認する
本線・予備線受電では、通常使う本線が停電したときに予備線へ切り替えます。ただし、切替方式によっては短時間の停電が発生します。
また、2本の回線が同じ変電所や配電線につながっていれば、同じ事故で両方が止まる可能性があります。回線の接続先、切替方法、切替時間は送配電事業者との協議で確認します。
本線と予備線を誤って同時に投入しないよう、遮断器にはインターロックを設けます。2回線分の受電盤と引込設備が必要になるため、1回線受電より広い電気室が必要です。
環線とスポットネットワークは計画地で利用できる場合だけ選べる
環線は、配電線の事故区間を切り離し、事故のない側から送電できるようにした方式です。
スポットネットワークは、原則3回線と複数のネットワーク変圧器で受電します。1回線が故障すると、ネットワークプロテクタが故障した回線を切り離し、残りの回線から給電を続けます。
どちらも、電力会社側に対応した設備がなければ採用できません。また、複数回線であっても、広域停電や建物内の受電設備事故に備える非常用電源は別に検討します。
基本計画で決めること
基本計画では、必要な電力、停電時に動かす機器、受電方式、受変電設備の設置場所をまとめて考えます。どれか一つが変わると、単線結線図や電気室の広さも変わります。

停電中に動かす機器を分ける
一般負荷は、停電中に停止してもよい照明や空調などです。保安負荷は、給水ポンプや監視設備など、施設の安全や運用を保つために動かしたい機器を指します。
防災負荷は、消防ポンプや排煙設備など、関係法令に基づいて予備電源が必要な設備です。サーバーや制御装置のように一瞬の停電も許容できない機器は、無停電負荷として分けます。
それぞれの容量と必要な運転時間が分かれば、非常用発電機、蓄電池、無停電電源装置の容量を検討できます。
運転時刻が重なる機器だけを足して想定最大需要電力を求める
照明、空調、ポンプ、昇降機、厨房機器などをすべて足した値が、そのまま最大需要電力になるわけではありません。予備機を除き、同じ時間帯に動く機器を見積もって合計します。
機器の型番が未定なら、類似機器の容量を仮置きします。仕様が決まったら実際の入力容量に置き換え、最大需要電力と幹線容量を見直します。
送配電事業者から供給電圧・受電点・回線数の回答を受け取る
想定最大需要電力がまとまったら、敷地住所、建物用途、供給開始時期、将来増設などを送配電事業者へ伝えます。回答を受ける内容は、供給電圧、受電点、架空・地中の別、利用できる回線数、工事期間などです。
契約プランや電気料金は小売電気事業者へ確認します。供給設備を決める送配電事業者とは役割が違うため、問い合わせ先を分けます。
盤の扉と変圧器を動かせる広さを電気室図へ描く
電気室には、機器本体だけでなく、扉を開くスペース、点検通路、ケーブル経路、換気設備、更新時の搬入経路が必要です。
屋外キュービクルでは、建物やフェンスとの離隔、点検車両の動線、浸水対策も検討します。必要寸法は、採用する機器の外形図や関係法令、所管基準で確認します。
契約電力と受電方式で間違えやすい5つの場面
50kWを超えた時点で高圧受電と決めてしまう
50kWは、全国共通の受電電圧の境界ではありません。負荷が52kWになったという理由だけで、高圧受電と決めてしまうのは早すぎます。
契約プランは小売電気事業者へ、供給電圧と引込方法は送配電事業者へ確認します。その回答を受けてから、低圧引込にするか、高圧キュービクルを設けるかを決めます。
契約電力420kWを変圧器容量420kVAにしてしまう
契約電力の420kWと、変圧器容量の420kVAは同じ意味ではありません。単位を置き換えて、そのまま変圧器容量にしてしまうのは誤りです。
変圧器容量は、その変圧器に接続する負荷から計算します。単相・三相の別、需要率、力率、同時運転台数、将来増設を考慮して必要なkVAを求めます。
500kW未満なら設計時の最大需要電力を計算しない
実量制で契約電力が決まるのは、建物を使い始めてからです。設計中に最大需要電力を考えなくてよい、という意味ではありません。
設計時は、同じ時間帯に動く機器から想定最大需要電力を求めます。この値をもとに、受電設備や幹線の容量を検討します。
本線と予備線があれば無停電になると考えてしまう
本線と予備線があっても、予備線へ切り替わるまで停電することがあります。2本が同じ上流設備につながっていれば、同時に使えなくなる可能性もあります。
一瞬も止められない機器は、回線の切替だけに頼らず、無停電電源装置などで支えます。
スポットネットワークを非常用電源の代わりにしてしまう
スポットネットワークでも、広域停電や建物内の受電設備事故には対応できない場合があります。複数回線があるからといって、非常用電源を省くことはできません。
防災設備に必要な予備電源は関係法令に従い、給水ポンプやサーバーなど施設運用上必要な機器はBCPに合わせて運転時間を決めます。
建築設備士試験では契約電力630kWを変圧器容量へ読み替えない
建築設備士の公式過去問では、契約電力630kWを変流器と進相コンデンサの計算に使います。変圧器容量は630kVAとせず、問題文に別記された負荷から求めます。
過去問例:6.6kV・1回線・630kWを記載する場所
設問:三相3線式6.6kV・1回線受電、高圧架空引込、契約電力630kWという条件があります。単線結線図には何を描き、630kWはどの機器の計算に使いますか。
回答例:単線結線図には、電力会社側から6.6kVの架空引込線を1回線で受ける構成を描きます。
- 変流器:6.6kV、630kW、指定された力率から受電電流を求め、その電流を測定できる変流比を選びます。変流器は、大きな受電電流を計器や保護装置で扱える小さな電流へ変える機器です。
- 進相コンデンサ:630kWと指定された力率から、力率を改善するために必要な容量を求めます。
- 変圧器:630kWは使いません。問題で別に示された単相・三相、防災・保安用の負荷を分け、各負荷の値から変圧器容量を求めます。
公式解答が公表されていないため、これは問題条件に基づく編集部の解答例です。
受変電基本計画の確認チェックリスト
送配電事業者へ相談する前に、次の項目を確認しておきます。
☐ 負荷集計表へ建物用途、営業時間、稼働日、将来増設を記入した
☐ 運転時刻が重なる機器を合計し、想定最大需要電力を求めた
☐ 一般・保安・防災・無停電負荷へ機器名、kW、必要運転時間を記入した
☐ 50kWは契約プラン、500kWは契約電力の算定、2,000kWは標準供給電圧の目安として確認した
☐ 小売電気事業者から契約プランと契約電力の算定方法を確認した
☐ 送配電事業者から供給電圧、受電点、架空・地中、回線数、工事期間の回答を受け取った
☐ 単線結線図へ切替時間、停止する機器、再起動順序を記載した
☐ 電気室図へ盤の扉、点検スペース、換気、浸水対策、搬入経路を描いた
☐ 電気主任技術者、保安規程、申請・届出の担当者と期限を決めた
☐ 契約条件や機器仕様の変更を負荷表、単線結線図、電気室図、工程表へ反映した
まとめ|負荷表から受電電圧と電気室を決める順番
受電計画は、同時に使う電力を見積もるところから始まります。その値と計画地の条件を送配電事業者へ伝え、供給電圧、引込方法、回線数を確認します。
契約電力と変圧器容量は別の数値です。契約電力は契約条件や最大デマンドから決まり、変圧器容量は接続する負荷から計算します。
受電方式が決まったら、単線結線図だけでなく、電気室の広さ、点検スペース、搬入経路、工事工程まで確認します。
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参考・出典
- 電気事業法 告示・内規等|経済産業省
- 電気需給約款[特別高圧・高圧]2026年4月1日実施|東京電力エナジーパートナー
- 契約電力について知りたい|東京電力エナジーパートナー
- 系統連系に係る設備設計について|東京電力パワーグリッド
- 電気設備の申請・届出等の手引き|経済産業省
- 電気設備標準機器仕様書|農林水産省
- 屋外用高圧交流負荷開閉器(PAS)|三菱電機
- 地中線用SOG開閉器(UGS)|戸上電機製作所
- スポットネットワーク方式の概要|日本電気技術者協会
- 令和6年 建築設備士試験 第二次試験(設計製図)|建築技術教育普及センター
