建築基準法・消防法と電気設備|非常用照明・誘導灯・防火区画の確認手順
非常用の照明装置、誘導灯、防火区画を貫通する配線を計画するとき、「建築基準法と消防法のどちらを見ればよいのだろう」と迷うことがあります。同じ避難や防災に関わる設備でも、根拠法令、設置対象、電源、配線の確認先が同じではないためです。
似た名称の設備が二つの法律にまたがるため、最初は迷いやすいところです。二つの法律を最初からすべて読む必要はありません。この記事では、法律の役割、非常用照明と誘導灯の違い、防災用電源、防火区画貫通部、設計図書へ記載する内容の順に説明します。読み終えるころには、建物用途と規模を確認し、設備ごとの根拠条文と告示を調べ、平面図・系統図・区画図・認定仕様書を照合できるようになります。
建築基準法と消防法は、目的と確認対象が違う
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備、用途について最低の基準を定める法律です。電気設備では、停電時の避難に必要な非常用の照明装置や、防火区画を貫通する配電管など、建築物の安全を保つための条件を確認します。
消防法は、火災を予防・警戒・鎮圧し、生命・身体・財産を火災から守ることなどを目的とする法律です。電気設備では、自動火災報知設備、誘導灯、非常警報設備、消防用設備等へ電力を供給する非常電源などが関係します。
設備名だけを見て、片方の法律だけで設計を終えることはできません。たとえば一つの廊下に非常用照明と誘導灯の両方が必要になる場合があり、同じ非常用発電機が複数の防災設備へ給電する計画もあります。設備ごとの根拠と、建物全体の電源系統を分けて確認します。
非常用の照明装置と誘導灯は、避難を助ける方法が違う
非常用の照明装置と誘導灯は、どちらも停電・火災時の避難に関係します。しかし、非常用の照明装置は床面や通路を照らし、誘導灯は出口の位置や避難方向を表示します。

非常用の照明装置は、床面と避難経路の明るさを確保する
建築基準法施行令第126条の4は、対象となる特殊建築物の居室、一定規模以上の建築物の居室、無窓居室、それらから地上へ通じる廊下・階段などに非常用の照明装置を求めています。ただし、住宅の住戸、病院の病室などの除外や、告示による設置不要の条件があります。
昭和45年建設省告示第1830号の仕様では、常用電源が断たれたときに予備電源へ切り替わり、充電せずに30分間継続して点灯できることが求められます。常温下の床面水平面照度は、白熱灯が1 lx以上、蛍光灯またはLEDランプが2 lx以上です。
設計では、非常用照明配置図だけでなく、居室と避難経路の範囲、除外を適用した根拠、照度計算書、予備電源方式、分電盤の専用回路表示を確認します。LEDを白熱灯と同じ1 lxで判定しないことにも注意が必要です。
誘導灯は、出口と避難方向を表示する
誘導灯は消防法施行令第26条と消防法施行規則第28条の3を基に、避難口や通路へ設けます。建物の用途、階、無窓階、床面積などによって、設置する種類や位置が変わります。
誘導灯の非常電源は、原則として20分間作動できる容量が必要です。消防庁長官が定める大規模・高層の防火対象物の主要な避難経路などでは、60分間以上となる場合があります。建物が大きいという印象だけで60分を採用せず、消防法施行規則と対象要件を確認します。
予備電源と非常電源は、名称だけで容量を決めない
建築基準法側では「予備電源」、消防法側では「非常電源」という名称が使われます。どちらも停電時に設備を作動させる電源ですが、必要な電源方式と作動時間は対象設備ごとの条文・告示で決まります。
発電機や蓄電池を複数設備で共用するときは、次の資料を一つずつ照合します。
- ・防災設備負荷表:停電時に同時に動かす機器、始動方法、入力、運転時間
- ・非常電源単線結線図:常用電源からの切替位置、遮断器、幹線、負荷の接続先
- ・発電機・蓄電池容量計算書:始動電流、連続負荷、電圧降下、必要運転時間
- ・シーケンス表:停電・火災信号を受けた後の起動順序と復旧条件
- ・法令・告示の確認表:設備ごとの根拠、電源種別、必要時間、適用条件
「最も長い設備が60分だから、全負荷を60分動かす」といった決め方も、「同じ発電機なら法令上の電源要件も同じ」とする決め方も避けます。設備ごとの必要時間と同時運転条件を確認し、容量計算と系統図を一致させます。
防火区画の貫通部は、区画図と認定仕様書を照合する
配電管、ケーブル、ケーブルラックが防火区画の壁や床を通るときは、開口部が火や煙の通り道にならないように処理します。設計者は、貫通位置だけでなく、壁・床の構造、開口寸法、貫通物、充填材料、支持方法が採用する仕様に合うかを確認します。

建築基準法施行令第129条の2の4第1項第7号は、給水管、配電管その他の管が防火区画等を貫通する場合の構造を定めています。確認する道筋は一つではなく、主に次のいずれかです。
- ・貫通部分とその両側1m以内を不燃材料で造る仕様
- ・管の用途・材質などに応じて、国土交通大臣が告示で定める外径未満とする仕様
- ・所定時間、反対側へ火炎を出す原因となる損傷を生じないものとして国土交通大臣の認定を受けた仕様
ケーブルラックや複数本のケーブルをまとめて貫通させる工法では、大臣認定仕様を使うことがあります。認定番号だけを図面へ書くのではなく、認定書・別添に記載された壁や床の種類、開口寸法、ケーブル・管の種類と占積、充填厚さ、支持方法を確認します。施工後は、認定表示と施工写真を残す方法も仕様書で定めます。
耐火電線と耐熱電線は、対象回路と告示を確認する
消防庁の告示では、耐火電線は強電流電気の伝送に使う電線、耐熱電線は弱電流電気の伝送に使う電線として定義されています。名称が似ていますが、対象となる回路と試験方法は同じではありません。
設計図では、「防災設備だから耐火電線」と一括指定しません。消防法施行規則で対象設備の配線要件を確認し、電源回路か信号・制御回路かを分け、平成9年消防庁告示第10号または第11号への適合を仕様書へ記載します。
温度だけを比較して配線種別を選ぶことも避けます。告示の試験は、加熱曲線、加熱時間、通電・絶縁性能などを組み合わせて判定します。設計者は、使用する電線の認定・適合表示と、施工方法を確認します。
設計では、条件確認から施工記録まで順番に進める
法令確認の全体順序は、建物条件の確認 → 設備ごとの適用判定 → 電源・配線計画 → 図面・仕様書への記載 → 協議・施工確認です。用途変更や区画変更があれば、適用判定へ戻ります。
1.建物条件と防火区画図を確認する
意匠図、確認申請図、防火区画図から、用途、階数、延べ面積、居室、無窓階、避難階、避難経路、竪穴区画・面積区画の位置を確認します。改修では、工事範囲外に見える既存区画も、配線ルートが通るなら確認対象です。
2.設備ごとに根拠法令と設置要否を記録する
非常用照明、誘導灯、自動火災報知設備、非常警報設備などを一覧にし、根拠条文、告示、適用条件、設置場所、除外・緩和の根拠を記録します。確認検査機関と消防署で協議する項目は分けておきます。
3.電源方式、必要時間、配線種別を系統図へ記載する
常用電源、予備電源、非常電源の接続、切替位置、負荷、幹線、遮断器を単線結線図と防災設備系統図へ記載します。容量計算書の負荷名称と系統図の回路名称を一致させます。
4.区画貫通部を平面図・断面図・詳細図で確認する
防火区画図と電気平面図を重ね、貫通位置に記号を付けます。仕様書と詳細図には、適用する法令仕様または認定番号、対象壁・床、貫通物、開口、充填、支持、施工記録を記載します。
5.確認検査機関・所轄消防署と協議する
建築基準法側は特定行政庁または指定確認検査機関、消防法側は所轄消防署へ確認します。消防用設備等の工事では、対象工事を行う甲種消防設備士が着工10日前までに届け出る制度があります。届出の要否、提出者、添付図書、期限は工事内容と所轄の案内で確定します。
間違えやすいポイント
ここでは、基本設計、実施設計、改修、施工確認で起こりやすい取り違えを見ていきます。「よくある間違い」と「確認すべきこと」を一組で確認します。
廊下に非常用照明があるため、誘導灯を省略する
事務所や店舗の基本計画で、廊下から地上の出口までの避難経路に照明器具を配置する設計作業で起こります。非常用照明配置図だけを見て、消防法による誘導灯の要否まで同時に判断してしまう場面です。
よくある間違い 床面が明るくなるため出口表示も不要だと考え、非常用照明配置図だけで避難設備を決めます。
確認すべきこと 非常用照明は建築基準法、誘導灯は消防法の設置対象を別に判定します。意匠平面図、避難経路図、非常用照明配置図、誘導灯配置図を照合し、所轄消防署との協議結果を図面へ反映します。
LED非常用照明を床面1 lxで判定する
実施設計でLED非常用照明の器具配置と照度計算書を確認するとき、光源の種類を見ずに記憶した照度だけを使うと起こります。
よくある間違い 「非常用照明は1 lx」という記憶だけで、LED器具の照度計算を判定します。
確認すべきこと 昭和45年建設省告示第1830号の常温下水平面照度を確認します。LEDランプは2 lx以上です。器具メーカーの非常用照明照度曲線、配置図、照度計算書で最も暗い位置を確認します。
防火区画の貫通部へ「防火処理」とだけ記載する
実施設計や改修設計で電気平面図と防火区画図を重ねるとき、貫通位置だけを示して詳細仕様を決めない場合に起こります。
よくある間違い 平面図へ短い注記だけを置き、壁・床の仕様や認定工法の適用範囲を施工者の判断に任せます。
確認すべきこと 防火区画図、電気平面図、断面詳細図、認定書・別添を照合します。区画の種類、壁・床の構造、開口寸法、ケーブル・管、占積、充填厚さ、支持方法を確認し、採用仕様を特記仕様書と詳細図へ記載します。
防災設備の配線をすべて耐火電線にする
防災設備系統図と特記仕様書を作成するとき、電源回路と信号・制御回路を分けずに電線種別を一括指定すると起こります。
よくある間違い 設備名だけを根拠に、電源回路と信号・制御回路を区別せず同じ電線種別を指定します。
確認すべきこと 消防法施行規則の対象設備・回路、平成9年消防庁告示第10号・第11号、機器仕様書、系統図を確認します。電源回路と信号・制御回路を分け、必要な配線種別と施工方法を決めます。
> 法令・告示は2026年8月4日に確認した内容です。個別案件では、用途、規模、地域、所管行政庁、自治体条例、改修範囲、採用する認定工法により条件が変わります。
設計図書の確認チェックリスト
このリストは、電気設備設計者と施工管理者が、基本計画・実施設計・施工確認の各工程で使う図面、計算書、法令根拠の抜けを見直すためのものです。用途変更、区画変更、電源方式の変更があれば、最初の項目へ戻ります。
☐ 意匠図で用途、階数、延べ面積、居室、無窓階、避難経路を確認した
☐ 防火区画図で、配電管・ケーブル・ケーブルラックが壁や床を貫通する位置を確認した
☐ 非常用照明と誘導灯を別々の根拠法令で判定し、配置図を照合した
☐ 予備電源・非常電源の方式、必要時間、負荷を法令確認表へ記録した
☐ 防災設備負荷表、容量計算書、単線結線図、防災設備系統図の負荷名称を一致させた
☐ 配線種別を対象設備・回路・消防庁告示で確認し、仕様書へ記載した
☐ 区画貫通工法の認定番号と、壁・床、開口、貫通物、充填、支持の適用範囲を確認した
☐ 確認検査機関・所轄消防署との協議事項、届出担当者、提出期限を記録した
まとめ
建築基準法と消防法は、同じ建物の電気設備に関わりますが、目的、設置対象、電源、確認先が違います。まず建物用途・規模・避難経路・防火区画を確認し、非常用照明と誘導灯を別々に判定します。その後、設備ごとの必要時間と配線要件を、容量計算書、単線結線図、防災設備系統図、区画貫通詳細図へ記載します。
次に設計図書を開くときは、非常用照明配置図と誘導灯配置図、防火区画図と電気平面図、認定仕様書と貫通詳細図の三組を照合してみてください。名称の暗記ではなく、どの図面と条文を組み合わせて判断するかが分かります。
関連記事
- ・電気設備とは?強電・弱電・防災・監視制御の役割と全体像
- ・電気設備の法令・規程の読み方(ELEC-002・公開予定)
参考・出典
- ・建築基準法|e-Gov法令検索
- ・建築基準法施行令|e-Gov法令検索
- ・非常用の照明装置の構造方法を定める件|国土交通省
- ・非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を見直します|国土交通省
- ・消防法|e-Gov法令検索
- ・消防法施行令|e-Gov法令検索
- ・消防法施行規則|e-Gov法令検索
- ・誘導灯の非常電源に関する改正通知(消防予第53号)|総務省消防庁
- ・耐火電線の基準|総務省消防庁
- ・耐熱電線の基準|総務省消防庁
