受水槽の容量計算と設置基準|有効容量・六面点検・10m³超の確認手順
1日最大使用水量は計算できたのに、「受水槽は何m³にして、機械室をどこまで広げればよいのか」と迷うことがあります。容量の計算は水道事業者の指針、点検空間は建築基準法令や自治体の指導、外形寸法はメーカー資料に分かれています。資料も多く、同じ「容量」や「設置基準」でも対象が違うため、数字を一つ見ただけでは決めにくいのです。
まずは、所管基準を確認する → 有効容量を計算する → 水槽外形を選ぶ → 平面図と断面図で点検・清掃・更新空間を確保する、の順に進めます。この記事では24m³/日の計算例を使い、六面点検、マンホール、10m³超の管理まで説明します。読み終えたら、容量計算書と受水槽室の図面を同じ条件で照合できます。
受水槽の有効容量は「使える水位の間」で数える
受水槽は、道路側の配水管から受けた水をいったん貯め、給水ポンプや高置水槽を介して建物内の蛇口へ送る設備です。水槽へ入る水は流入管から落ち、設定した最高水位で止まります。水は流出管やポンプ吸込口から出て、最低水位まで下がります。
有効容量は、最高水位と最低水位の間にある、実際に利用できる水量です。水槽の内法寸法を幅L、奥行B、有効水深hとすると、直方体として扱える部分は次の式で求めます。
有効容量V=L×B×h
水槽の天井までの空間や、最低水位より下の水は有効容量へ含めません。そのため、計算で12m³と求めても、外形が12m³の水槽を選べば終わりではありません。最高・最低水位、パネル寸法、仕切り、配管取付位置、耐震条件を反映したメーカー外形図で、実際の有効容量を確認します。
所管基準を確認して1日最大使用水量から有効容量を計算する
容量計算の最初に開くのは、計画地を管轄する水道事業者の給水装置工事指針です。地域や建物の契約条件によって、基準にする水量、貯留割合、上限・下限、協議資料が変わるためです。
横浜市水道局の2025年4月版指針では、受水槽の有効容量を計画1日最大使用水量の4/10~6/10程度としています。この割合を別地域へそのまま使わず、設計地の最新版で確認します。

24m³/日の建物は9.6~14.4m³を候補にする
計画1日最大使用水量が24m³/日で、所管基準が4/10~6/10なら、候補範囲は次のように求めます。
- 下限:24m³/日×0.4=9.6m³
- 上限:24m³/日×0.6=14.4m³
- 中間の概算:24m³/日×0.5=12.0m³
12m³は考え方を追うための候補です。端数を切り上げるか、既製品のどの容量を選ぶかは、所管との協議、メーカーの有効容量、日内の使用変動を確認して決めます。計算書には基準名、改定年月、該当ページ、入力した日量、採用割合、採用容量を残します。
官庁施設は時間最大予想給水量を基に別の基準で算定する
国土交通省の「建築設備設計基準 令和6年版」は、官庁施設の受水タンクと高置タンクを時間最大予想給水量に基づいて算定するとしています。これは、自治体の「1日最大使用水量の4/10~6/10」という例とは計算の入口が違います。
官庁施設や発注者独自基準を使う案件では、時間最大予想給水量と貯水時間の定めを、適用する設計基準・設計資料で確認します。二つの方法から都合のよい大きい方や小さい方を選ばず、契約図書と所管協議で採用方法を決めます。
採用容量は引込能力・滞留・非常時運用で決める
候補範囲が出たら、引込管から水槽へ補給できる流量と、建物で水を使う時間帯を重ねます。補給が追いつかなければ最低水位へ早く達し、給水が止まります。反対に、普段の使用量に対して水槽が過大なら、水が長く残りやすくなります。
非常時の水を受水槽へ確保する場合も、通常用容量へ理由なく上乗せしません。非常時に給水する器具、必要時間、取水方法、ポンプの電源、水質をBCP資料で決め、通常運転の水位と区別します。容量計算書には次の確認結果を添えます。
- 所管水道事業者が認める受水槽容量と流入条件
- 引込管・メーター・定水位弁の補給能力
- 営業時間や居住人数による日内の使用変動
- 清掃中に断水できるか、二槽式が必要か
- 災害時に給水する場所、時間、必要水量、電源
容量から受水槽の外形寸法と二槽式を決める
有効容量12m³を例に、有効水深を1.5mと仮定すると、必要な内法平面積は12÷1.5=8.0m²です。内法2.5m×3.2mなら8.0m²になります。
この計算は、水槽の形を考える入口です。実際の水槽では、最高・最低水位より外側の高さ、仕切り、補強材、パネルのモジュール、配管接続部が加わります。メーカーの選定図で、有効容量12m³を確保できる水槽外形と満水重量を確認します。
清掃中も給水を続けたい建物では、二槽式または中仕切りを検討します。二槽へ分けると、片側を停止して清掃できる一方、連通管、弁、各槽のマンホール、清掃手順が増えます。「12m³を6m³ずつに分ける」と決める前に、片槽運転で必要な水量とポンプ吸込条件を設備担当・管理担当と確認します。
六面点検は国の構造要件と地域の具体寸法を分けて確認する
六面点検とは、水槽の上面、底面、四つの側面を外部から確認できるようにする考え方です。飲料水を貯める水槽なので、漏水、腐食、ひび割れ、汚染につながる異常を外側から点検できる必要があります。
国の告示は外部から容易かつ安全に点検できる構造を求める
昭和50年建設省告示第1597号は、建築物の内部、屋上、最下階床下に給水タンク等を設ける場合、外部から天井・底・周壁を容易かつ安全に点検できるようにすることを求めています。水槽の天井・底・周壁を、建物の床や壁と兼用しないことも定めています。
国の告示本文は、上部1.0mや側面0.6mという離隔を直接示していません。「六面点検できる」という性能要件と、地域が示す具体寸法を分けると、根拠を誤りにくくなります。
横浜市の例は上部1.0m・その他の面0.6mを確保する
横浜市の受水槽施設事前指導では、水槽の全ての面を外部から完全に点検できるよう、上部1.0m以上、その他の面0.6m以上の空間を求めています。水槽上部には、水を汚染するおそれのある設備機器を設置しないことも示されています。
この寸法は横浜市の例です。計画地の保健所・水道事業者、所管行政庁、採用メーカーが別の条件を示す場合があります。設計初期は目安で機械室を確保し、協議後に採用根拠を図面注記へ残します。
マンホールは直径60cmの円が入り、ふたを開けられる位置に設ける
国の告示は、内部の保守点検を容易かつ安全に行える位置へ、原則として直径60cm以上の円が内接できるマンホールを設けることを定めています。ほこりなどが入らないよう有効に立ち上げることも必要です。
平面図のマンホール記号だけでは、ふたを開けられるか判断できません。断面図で梁、ダクト、横引き配管、照明が上にないか、人が安全に出入りできるかを確認します。防水密閉、施錠、立上げ高さの具体仕様は、所管基準とメーカー仕様へ照合します。
平面図・断面図へ点検・清掃・更新スペースを重ねる
受水槽室を決めるときは、水槽外形、点検空間、配管、作業、搬出入を別々の線で重ねます。機器表の外形が入っても、清掃や交換ができなければ必要寸法を満たしたことにはなりません。

平面図は水槽外周・ポンプ・弁・扉・搬出入を確認する
平面図には、水槽本体、四側面の点検範囲、給水ポンプ、制御盤、弁・ストレーナ、床排水、扉の開閉、最大搬入単位を描きます。ポンプは操作面と分解・引抜き方向が製品ごとに変わるため、メーカー外形図の保守寸法を重ねます。
新築時は外壁や間仕切りがない状態で搬入できても、竣工後の更新では同じ経路を使えないことがあります。建物外から機械室まで、扉、廊下、曲がり、天井高さ、段差、エレベーター、仮置場をつなげて確認します。
断面図は底部架台・水槽高さ・上部点検空間を確認する
断面図では、構造床、基礎・架台、水槽外形、上部点検空間、梁下、配管、照明を一つの高さ関係で見ます。基礎高さを慣例の数字だけで決めると、底面点検、床排水、アンカー、防振、搬入段差のどれかが合わないことがあります。
満水時の水だけでも1m³当たりおよそ1tです。12m³なら水だけでおよそ12tになり、水槽本体、架台、配管の重量が加わります。構造設計者へは、運転重量、荷重位置、基礎・アンカー条件をメーカー資料と一緒に渡します。
水抜管とオーバーフロー管は排水へ直接つながない
水槽の清掃では水抜管から排水し、異常時にはオーバーフロー管から水が出ます。国の告示は、給水タンク等の水抜管とオーバーフロー管を排水管へ直接連結しないことを求めています。
系統図と断面図で、管端が排水口へ直接つながっていないか、排水口空間を確保できるか、排水量を床排水・排水溝が受けられるかを確認します。排水口空間の具体寸法、防虫網、管端形状は、所管基準と施工仕様で決めます。
10m³を超える受水槽は簡易専用水道の管理を計画する
水道事業の水だけを水源とし、ほかの定義条件を満たす施設で、水槽の有効容量合計が10m³を超えるものは、水道法上の簡易専用水道です。10m³ちょうどは国法上の適用除外基準に含まれ、10m³を超える場合に該当します。
簡易専用水道の設置者は、水槽の清掃と管理状況の検査を、それぞれ毎年1回以上定期に行います。管理状況の検査では、水槽本体・周囲・配管などの外観、給水栓の水質、清掃記録や図面などの書類が確認されます。
容量が10m³以下でも、自治体が小規模受水槽水道へ清掃・検査・届出を定めている場合があります。容量計算書を作る段階で所管保健所へ確認し、次の内容を建物管理計画へ書きます。
- 水槽の清掃を行う月と、清掃中の給水方法
- 登録検査機関へ管理状況検査を依頼する担当者
- 日常の色・濁り・臭い・味などを確認する方法
- 水槽、配管、警報、清掃、検査の記録を保管する場所
- 異常時の給水停止、利用者への周知、保健所への連絡手順
受水槽の容量・設置計画で間違えやすい5つの場面
1日使用水量をそのまま水槽容量にする
給水設備の実施設計で給水量計算書が完成し、受水槽の容量を機器表へ記入する場面です。日量から水槽選定へ移るため、単位と目的の違いが判断点になります。
よくある間違い:水槽選定で、計画1日最大使用水量24m³/日を、そのまま有効容量24m³として採用することです。
確認すべきこと:所管水道事業者の容量基準を開き、採用割合、流入条件、日内変動を確認します。横浜市の4/10~6/10を使う例なら、候補は9.6~14.4m³です。
有効容量と水槽外形容積を同じものとして扱う
給水設備の実施設計で、メーカーの水槽候補を受水槽室の平面図へ配置し、機器表と照合する場面です。外形寸法と水位条件を同時に扱います。
よくある間違い:水槽選定の計算で、内法の幅・奥行・水槽全高を掛けた値を、有効容量として採用することです。
確認すべきこと:メーカーの水位図で最高水位と最低水位を確認し、その間の有効水深で容量を求めます。水槽外形、デッドスペース、仕切り、配管位置を別に確認します。
上部1.0m・周囲0.6mを全国一律の法定寸法と説明する
建築確認の申請図や設計説明書へ、受水槽の六面点検と離隔寸法の根拠を書く場面です。国の法令と地域基準をどの図面注記へ結び付けるかが判断点になります。
よくある間違い:申請図の根拠欄で、昭和50年建設省告示第1597号が上部1.0m・その他0.6mを直接定めていると判断することです。
確認すべきこと:国の告示は容易かつ安全に外部点検できる構造を求めます。具体寸法は計画地の保健所・水道事業者の基準とメーカー仕様を確認し、出典を分けて記載します。
水槽本体が入れば機械室の大きさは足りると考える
建築の基本設計で、受水槽室の平面図と機械室面積を意匠担当へ回答する場面です。設備外形だけでなく、点検・清掃・更新時の作業範囲も確定します。
よくある間違い:水槽外形だけを置き、マンホール開閉、底面点検、ポンプ分解、弁操作、清掃排水、将来更新を含めないことです。
確認すべきこと:平面図へ四側面と搬出入、断面図へ底部・水槽高さ・上部点検空間を描きます。ポンプはメーカーの操作面と引抜き方向を重ねます。
12m³の受水槽を10m³以下として管理計画を省く
給水設備の容量を採用し、竣工後の清掃・検査・記録条件を建物管理者へ引き継ぐ場面です。管理区分の判定が運用体制と費用へつながります。
よくある間違い:維持管理の運用区分を判定するときに「10m³以上」と「10m³を超える」を混同し、12m³の施設を対象外として清掃・検査担当を決めないことです。
確認すべきこと:全ての受水槽の有効容量合計と水源条件を確認し、所管保健所へ届出、毎年の清掃、管理状況検査、記録の扱いを相談します。
受水槽容量計算書と図面を照合するチェックリスト
設備設計者と意匠設計者が、基本設計から実施設計へ進む前に使うチェックリストです。計算書のm³と、平面・断面に描いた水槽・作業空間が同じ条件になっているかを確認します。
☐ 計画地、所管水道事業者、保健所を記載した
☐ 容量基準の名称、改定年月、該当ページを記載した
☐ 計画1日最大使用水量と算定根拠を記載した
☐ 採用割合、候補範囲、端数処理、採用容量を記載した
☐ 有効水深とメーカー表示の有効容量を照合した
☐ 引込管・メーター・定水位弁の補給能力を確認した
☐ 過大容量による滞留と、非常時水量の扱いを確認した
☐ 二槽式の要否と、片槽清掃中の給水方法を決めた
☐ 水槽上面・底面・四側面を外部から点検できる
☐ マンホールの大きさ、ふたの開閉、人の出入りを断面で確認した
☐ 水抜管・オーバーフロー管が排水へ直接つながっていない
☐ 満水重量、基礎、アンカー、荷重位置を構造担当へ渡した
☐ 給水ポンプの操作面、分解方向、搬出入経路を確認した
☐ 10m³超の該当性と、清掃・検査・記録の担当者を確認した
まとめ|容量計算・所管協議・平面断面の順で確定する
受水槽の容量は、計画1日最大使用水量へ所管基準の割合を掛けるところから始めます。横浜市の例では4/10~6/10で、24m³/日なら9.6~14.4m³です。候補が出たら、引込能力、日内変動、二槽化、非常時運用を確認し、採用容量を決めます。
次に、採用容量をメーカーの有効水位と外形寸法へ置き換えます。平面図では四側面、ポンプ、弁、扉、搬出入を、断面図では底部、水槽高さ、マンホール、上部空間を確認します。上部1.0m・その他0.6mは横浜市の指導例であり、計画地の所管基準へ置き換えてください。
最後に、有効容量合計が10m³を超えるかを確認します。該当する場合は、清掃・検査・記録を毎年続けられる空間と担当者まで決めます。まず計画地の水道事業者と保健所の最新版を開き、容量計算書、平面図、断面図の三つへ同じ条件を書き込んでみましょう。
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参考・出典
厚生労働省法令等データベース「昭和50年建設省告示第1597号と施行通知」
国土交通省「水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号)(抄)」
国土交通省「水道法第34条の2の規定に基づく簡易専用水道の定期の検査」
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