給水量の算定方法|人員法・器具数法・面積法の使い分け
給水量を計算しようとして、面積、人員、器具のどれを使えばよいのか迷うことがあります。設計段階ごとに手元の資料が変わるため、迷いやすいのも無理はありません。ここで最初に分けたいのは、受水槽などの検討に使う1日使用水量と、配管口径などの検討に使う瞬時流量です。この2つは目的も単位も違います。
この記事では、手元にある資料から算定方法を選ぶ順序と、事務所を例にした計算を整理します。読み終えると、必要な単位を選び、算定の入口となる資料を判断できます。数値は全国共通の固定値ではありません。採用前に、設計地の水道事業者が示す基準、建物の使われ方、メーカー仕様との照合が必要です。
給水量の算定では1日使用水量と瞬時流量を用途別に使い分ける
給水量の算定では、まず決めたい設備と必要な単位を書きます。東京都水道局の設計・施工基準では、直結式は同時使用水量を基礎とした瞬時最大給水量(L/min)、受水槽式は建物の1日当たり使用水量を基礎とした1日使用水量(L/day)を計画使用水量としています。
同じ「給水量」でも、日量をそのまま配管口径に使うことはできません。反対に、器具から求めた瞬時流量だけで受水槽容量を決めるものでもありません。まず必要な単位を書き、算定の入口を分けます。
面積法・人員法・器具数法は設計段階と手元の資料で選ぶ
面積法、人員法、器具数法は、優劣で選ぶものではありません。設計段階で確定している資料と、求めたい量に合わせて選びます。

全体の流れは、面積法で概算 → 人員法で日量を見直す → 器具数法で瞬時流量を確認するです。途中で方法が変わっても、前提と単位を残しておけば差分を追えます。
面積法で有効面積から計画人員と1日使用水量を概算する
面積法は、用途別の面積に、単位面積当たりの人員や使用水量を掛けて概算する方法です。東京都・横浜市の基準にある事務所の参考値では、使用時間は9時間、単位床面積当たり人員は0.2人/m²で、対象は有効面積です。
面積法の計算手順|有効面積から人員と1日使用水量を求める
- 用途別に有効面積を集計する
- 単位面積当たり人員から計画人員を求める
- 1人1日当たり使用水量を掛ける
- 食堂、テナント、空調用水などを別途加算する
事務所の参考値には、社員食堂、テナント等で別途加算が必要と記されています。空調用水、研究・生産用水、プール・サウナ用水なども、対象に含まれているかを確認します。
人員法で在勤者数から事務所の1日使用水量を求める
人員法の基本式は、次のとおりです。
1日使用水量(L/day)=1人1日当たり使用水量(L/人・day)×使用人員(人)
東京都・横浜市の基準では、事務所の参考範囲は60~100 L/人・dayです。ただし、この値は設計用の参考値であり、全国一律の実測平均ではありません。採用値は、水道事業者の基準、勤務時間、来客、食堂、使用器具などを踏まえて決めます。
使用人員の数え方|常勤者・来客・交代勤務を分ける
- 常勤者と来客を分けたか
- 交代勤務は同時在館人数と延べ人数を混同していないか
- 食堂やテナントを二重計上していないか
- 男女比や用途別の原単位が必要か
- 将来増員をどの条件で見込むか
人数が図面や事業計画から確定しているなら、面積から推定した人数よりも根拠を説明しやすくなります。ただし、人数が確定していても、付加用途の水量が人員原単位に含まれるとは限りません。
器具数法で衛生器具表から給水管の瞬時流量を求める
器具数法は、器具ごとの給水負荷単位を合計し、算定曲線などから同時使用流量へ換算する方法です。横浜市の基準では、器具給水負荷単位を「器具の種類による使用頻度、使用時間及び多数の器具の同時使用を考慮した負荷率」と説明しています。
器具数法の計算手順|負荷単位を合計して同時使用流量へ換算する
- 系統ごとに大便器、洗面器、流しなどの器具を数える
- 公共用・私設用や洗浄方式を確認する
- 水道事業者が示す器具給水負荷単位を掛けて合計する
- 指定された曲線・表から同時使用流量を読む
- 最遠器具の必要圧力と配管損失を確認する
横浜市の例では、大便器の洗浄弁は公共用10・私設用6、洗浄タンクは公共用5・私設用3とされています。同じ大便器でも条件が違うため、器具名、公共用・私設用、洗浄方式を器具表と照合して負荷単位を決めます。また、自治体によって採用する表や曲線が異なる可能性があります。設計地の水道事業者が示す最新版との照合が必要です。
事務所500m²の計算例|1日使用水量から受水槽容量まで算定する
ここでは、事務所の有効面積が500m²で、単位床面積当たり人員0.2人/m²、1人1日当たり使用水量80L、1日使用時間9時間と仮定します。80Lは東京都水道局の事務所計算例と、基準表の60~100L/人・dayの範囲内から採用した値です。

有効面積500m²から使用人員100人を求める
500m² × 0.2人/m² = 100人
使用人員100人から1日使用水量8.0m³を求める
80L/人・day × 100人 = 8,000L/day = 8.0m³/day
1日使用水量8.0m³を9時間で割り0.89m³/hを求める
受水槽への時間平均給水量は、1日使用水量を1日使用時間で割ります。
8.0m³/day ÷ 9h/day = 約0.89m³/h
これは時間平均値です。引込管、メーター、定水位弁などの選定は、水道事業者が認める流入条件や製品仕様を別に確認します。
1日使用水量の4/10~6/10から受水槽容量3.2~4.8m³を求める
東京都・横浜市の基準では、受水槽の有効容量は1日最大使用水量の4/10~6/10を標準としています。
8.0m³/day × 0.4~0.6 = 3.2~4.8m³
したがって、この条件での受水槽有効容量の標準範囲は3.2~4.8m³です。選定時には、実容量と有効容量を区別し、流入量、ピーク時間帯、断水時の運用、清掃時の分割、槽内滞留、設置スペースも確認します。
給水量の算定で間違えやすい4つの場面と確認方法
給水管口径を設計するときに1日量と瞬時流量を混同する
基本設計で受水槽容量と給水管口径を続けて計算すると、日量と瞬時流量の単位を取り違えやすくなります。
よくある間違い:1日使用水量を使用時間で割った平均流量だけを使い、給水管やメーターの口径を小さく判断することです。同時使用時に必要な流量を扱えていません。
確認すべきこと:器具表と水道事業者の器具給水負荷単位・算定曲線を照合し、L/minの瞬時流量を別に計算します。受水槽流入管は、取出し条件を水道事業者と協議して口径を決めます。
事務所と食堂の水量を集計するときに原単位の範囲を見落とす
複合用途建物の基本計画では、事務所の原単位を建物全体へ掛けたくなる場面があります。
よくある間違い:社員食堂、テナント、空調、散水などを原単位に含むと判断し、必要な付加水量を計算書から落とすことです。
確認すべきこと:水道事業者の基準表と脚注、用途別面積表、設備仕様書を照合します。原単位に含まれない用途を別表へ整理し、用途ごとの採用値を決めます。
有効面積から人員を求めるときに延べ面積を使ってしまう
基本設計の面積表から事務所の計画人員を推定する場面では、延べ面積と有効面積が同じ資料に並ぶことがあります。
よくある間違い:「床面積」とだけ記録し、設計対象外の共用部を含む延べ面積へ0.2人/m²を掛けて計画人員と1日使用水量を過大に判断することです。
確認すべきこと:建築面積表、用途区分図、水道事業者の基準表を照合し、採用した有効面積の範囲と数値を計算書へ記録します。その人数を施主要望の定員とも照合します。
受水槽容量を決めるときに標準範囲を超えて大きくする
実施設計で既製受水槽の容量を選定するとき、断水への不安から標準範囲を超えて大きくしたくなる場面があります。
よくある間違い:運用条件を確認せず、大容量ほど安全と判断することです。過大な容量は水の滞留時間を長くする可能性があります。
確認すべきこと:1日最大使用水量、基準の4/10~6/10、流入量、清掃時の分割、断水時運用を計算書と施設管理者への聞取りで照合します。採用する有効容量と槽数を決め、メーカー仕様書で実容量との差も確認します。
建築設備士の給水量問題|用途別人数から受水槽容量を計算する
建築設備士試験の公式過去問には、用途別の使用人員と1人1日当たり使用水量から1日使用水量を求め、受水槽容量へつなげる設問があります。公式の採点用解答は公表されていないため、次は問題文の条件を使って編集部で計算した回答例です。
過去問例|図書館の用途別人数から1日給水量と受水槽容量を求める
設問:図書館利用者、カフェ利用者、職員の人数と用途別使用水量が与えられています。雑用水を上水使用量の一定割合として加え、受水槽容量を1日予想給水量の50%として計算します。
回答例:各用途の「人数×1人1日当たり使用水量」を計算し、上水使用量を合計します。そこへ指定された雑用水を加えると1日予想給水量は25.8m³/dayです。受水槽容量は、25.8m³/day×50%=12.9m³となります。人数と用途別原単位の対応を計算式に書くと、二重計上を避けられます。
給水量計算書の確認項目|面積・人員・器具・受水槽を照合する
このチェックリストは、給水設備の設計者が基本計画から実施設計へ進む場面で使うものです。算定対象、用途、設計条件、器具仕様を一つの計算書で照合し、見直す項目をまとめています。
☐ 求める量を1日量・時間量・瞬時流量に分けた
☐ 設計地の水道事業者と基準の版を確認した
☐ 建物用途、使用時間、使用日数を確認した
☐ 人員は常勤者・来客・交代勤務に分けた
☐ 面積は延べ面積・有効面積などの定義を記録した
☐ 食堂、テナント、空調、散水などの別途水量を確認した
☐ 器具の公共用・私設用と洗浄方式を確認した
☐ 受水槽の実容量と有効容量を区別した
☐ 採用値、出典、計算式、確認日を算定書に残した
まとめ|給水量は必要な単位と入力資料を決めてから算定する
給水量の算定では、最初に1日使用水量を求めるのか、瞬時流量を求めるのかを決めます。計画初期は面積法、人員が確定したら人員法、器具表が確定したら器具数法というように、入力資料と設計段階に合わせて使い分けると迷いにくくなります。
原単位や負荷単位は全国一律ではありません。設計地の水道事業者が示す最新版と照合し、対象用途、面積の定義、別途加算項目を算定書へ残します。
関連記事
参考・出典
建築技術教育普及センター「令和5年 建築設備士試験 第二次試験問題」


