衛生設備

給排水衛生設備の設計手順|調査・方式決定・計算・図面作成の流れ

給排水衛生設備の設計手順を建物・配管・受水槽・設計者で示すアイキャッチ
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給排水衛生設備の設計を任されたものの、「最初に水量を計算するのか、先に配管ルートを決めるのか」と迷っていませんか。給水、排水、給湯、衛生器具は互いに関係するため、いきなり機器表や平面図から始めると、後で水道局との協議や建築図との調整をやり直すことがあります。

調べる資料も、配管台帳、意匠図、所管基準、機器資料と多いため、どれから見るか迷いやすいところです。最初から細かな管径まで決めなくても大丈夫です。まず計画地のインフラと建物条件を確認し、次に給水・排水の方式と必要水量を決め、その結果を機器、配管、図面へ順番に反映します。

この記事では、事前調査、基本計画、基本設計、実施設計の順に、何を読み、何を決め、どの図書へ記載するかを説明します。読み終えると、各工程で設備担当者へ渡す情報と、意匠・構造担当者へ確認する内容を見分けられます。

この記事でわかること

  • 給排水衛生設備の設計を、事前調査から図面作成まで進める順番
  • 給水方式、使用水量、機器容量、管径を決める前に必要な情報
  • 意匠図・構造図・所管水道事業者の基準を確認する時期
  • 手戻りを減らすために各工程で残す図面・計算書・協議記録

給排水衛生設備の設計は「条件確認→方式決定→計算→図面作成」で進める

給排水衛生設備では、水を建物へ取り入れる給水、必要な場所で温める給湯、使用後の水を流す排水、それらを使う便器や水栓を一緒に計画します。最初に見るのは機器カタログではありません。計画地へ水を引き込めるか、下水道へどの高さで接続できるか、建物で誰がどの水を使うかです。

設計の大きな順番は、条件確認 → 方式決定 → 計算 → 機器選定 → 図面作成です。各段階では、次の作業を行います。

1. 計画地の給水本管、下水道、条例、申請手順を調べる 2. 建物用途、利用人員、衛生器具、災害時の継続条件を確認する 3. 給水方式、排水方式、給湯方式を比較して選ぶ 4. 給水量、給湯量、排水量を計算し、機器容量と配管サイズを決める 5. 機器、PS、配管ルート、梁貫通、点検スペースを建築・構造図と調整する 6. 系統図、平面図、機器表、特記仕様書、計算書をそろえる

工程の名称や成果物は、発注者や契約によって変わります。国土交通省の公共建築設計業務委託共通仕様書は官庁施設向けの基準です。民間案件でも参考になりますが、実際の担当範囲は契約書、特記仕様書、提出図書一覧で確認します。

給排水衛生設備の設計を現地調査から実施設計まで順番に進めるフラット図解

事前調査では敷地の外から確認する

建物の間取りだけを見て給水方式を決めると、前面道路の配水管の口径や水圧が足りず、計画を変えることがあります。排水も、公共下水道の管底高さや接続位置が分からなければ、敷地内で必要な勾配を確保できるか判断できません。

まず、計画地を管轄する水道事業者と下水道部局の資料を確認します。

  • ・前面道路の給水本管と下水道管の位置、口径、接続可否
  • ・利用できる給水方式と、事前協議・申請・検査の手順
  • ・汚水、雑排水、雨水を流す先と、分流式・合流式の別
  • ・雨水流出抑制、除害施設、排水設備届出の要否
  • ・既存建物なら、既設引込管、量水器、排水桝、受水槽の状態

たとえば東京都では、給水装置の新設や改造に設計審査と工事検査の申請が必要です。東京都区部の排水設備の新設・増設・改築では、工事着工の7日前までに計画届出が必要とされています。名称や期限は自治体によって違うため、この例をそのまま他地域へ当てはめず、計画地の窓口へ確認します。

調査結果は、参照した配管台帳、窓口、担当者、確認日、回答内容が追える協議記録に残します。口頭回答だけにすると、設計条件が変わったときに確認し直せません。

基本計画では建物条件から給水・排水・給湯方式を選ぶ

インフラ条件が分かったら、次は建物の使われ方を確認します。ここでは管径を一本ずつ決めるのではなく、必要な設備室と配管経路を確保できる程度まで方式を比べます。

給水方式は高さだけで決めない

直圧直結、増圧直結、受水槽方式には、それぞれ使える条件と維持管理の違いがあります。確認するのは階数だけではありません。

  • ・建物用途と給水を止められる時間
  • ・給水高さと最上階の器具に必要な圧力
  • ・一度に使う水量と引込管の条件
  • ・受水槽や増圧給水設備を置く面積、搬入・更新経路
  • ・停電、断水、災害時に必要な水量
  • ・所管水道事業者が認める方式と協議条件

東京都の例では、4階以上に給水栓を設置する場合、原則として増圧直結給水方式または貯水槽水道方式を選びます。ただし、特例直圧などの条件があります。この階数条件も東京都の運用なので、別の地域では所管水道事業者の現行基準を見ます。

排水は流す先と高さを先に確認する

排水管は重力で流す部分が多いため、必要な勾配と天井内・床下の高さが欠かせません。便所や給湯室の位置を決めるときは、排水立て管を通すPS、横引き管の経路、公共桝までの高さを一緒に見ます。

地下階など自然流下できない場所では、排水槽と排水ポンプが必要になることがあります。厨房や工場では、油脂や有害物質をそのまま流せない条件もあるため、用途と所管下水道部局の基準を確認します。

給湯は使う場所と使う時間を分けて考える

給湯では、便所の手洗い、厨房、浴室など、必要な温度と使用時間が異なります。中央式にするか局所式にするかは、同時使用、配管から逃げる熱、機器置場、保守、エネルギー源を比べて決めます。

基本設計では水量と機器容量の根拠をつくる

方式が決まったら、衛生器具と利用人員を具体化し、計算条件を更新します。ここで大切なのは、同じ「水量」でも時間単位と用途が違うことです。

確認する量主に使う場面次に決めるもの
1日給水量建物全体の使用量、災害時の確保水量の検討給水計画の基礎条件
時間最大予想給水量使用が多い時間帯の給水受水タンク、高置タンク、揚水ポンプ
瞬時最大流量器具を同時に使う短時間の流量引込管、給水管、増圧給水設備
給湯負荷必要温度、使用量、使用時間給湯機、貯湯槽、循環配管
排水負荷器具の使用と排水の流れ排水管、通気管、排水槽・ポンプ

国土交通省の建築設備設計基準では、1日の給水量を施設の利用人員に基づいて算定し、人員で求めることが適さない場合は給水器具数を使えるとしています。冷却塔の補給水は上水給水量へ加えますが、非常用発電機の冷却水や消火用水などは同じ給水量へ加えません。

1日給水量を求めた段階では、ポンプや配管の選定条件はまだそろっていません。同基準では、受水タンクと高置タンクの容量、揚水ポンプの揚水量を時間最大予想給水量に基づいて算定します。引込管や給水管では、短時間に器具が同時使用される流量と必要圧力も確認します。

利用人員と衛生器具から水量を求めて機器と配管を選ぶ関係を示すフラット図解

計算書には、結果だけでなく、建物用途、利用人員、器具数、使用時間、採用した基準、単位を残します。L/日、L/h、L/minを混ぜると機器容量を誤るため、式の各数値へ単位を付けます。

基本設計のうちに建築・構造と設備スペースを調整する

水量と機器の概略が分かると、受水槽、ポンプ、給湯機、排水槽のおおよその大きさが見えてきます。この段階で意匠図と構造図を重ね、置けるか、運べるか、点検できるかを確認します。

意匠担当者と確認する図面

  • ・平面図:機械室、PS、便所、給湯室、屋外機器置場
  • ・断面図:排水管の勾配、天井内高さ、受水槽や高置タンクの高さ
  • ・仕上表・詳細図:防水区画、点検口、器具の取付面、清掃方法
  • ・外構図:引込管、公共桝、敷地内桝、雨水経路

構造担当者へ伝える情報

  • ・満水時のタンク重量と機器の運転重量
  • ・基礎の位置・大きさとアンカー条件
  • ・梁・壁・床を貫通する配管の位置と開口寸法
  • ・機器の搬入・更新に必要な開口と荷重

配管ルートが通る線だけを描いて終わりにせず、保温、支持金物、施工手順、点検空間を含めて必要寸法を確認します。

実施設計では計算結果を図面と仕様書で一致させる

実施設計では、採用方式と計算結果を工事に使える図書へ具体化します。系統図だけ、平面図だけでは情報が足りません。

設計図書記載・確認する内容
系統図水の流れ、立て管、機器、弁、階のつながり
平面図配管位置、管径、勾配、器具、機器、点検口
機器表容量、流量、揚程、電源、台数、付属品
特記仕様書材料、施工、試験、適用基準、個別条件
計算書入力条件、式、単位、結果、選定した機器・管径
詳細図機器基礎、配管接続、防水、貫通、保守空間

図面の凡例は、その案件で使う配管種別と記号を読むための入口です。公共建築工事標準仕様書は、公共建築工事の材料、機材、工法、試験などを示します。設計図面や特記仕様と役割が違うため、標準仕様書の名称だけを書いて個別仕様を省かないようにします。

間違えやすいポイント

ここでは、給排水の方式や機器を決めるときに、初期条件を一つだけ見て先へ進んでしまう場面を整理します。「よくある間違い」と「確認すべきこと」を一組で見ていきます。

階数だけで給水方式を決める

基本計画で給水方式を比較し、受水槽や増圧給水設備を置く面積を意匠平面図へ示す場面を考えます。階数は目につきやすい一方、給水条件は階数だけでは決まりません。

よくある間違い 建物の階数だけを見て直結方式や受水槽方式を決め、引込管、配水管圧力、所要水量、断水時の運用を確認しないことです。

確認すべきこと 所管水道事業者の設計・施工基準と窓口回答を確認します。そのうえで、給水高さ、瞬時最大流量、必要圧力、維持管理、非常時の継続時間を比較し、給水方式と必要設備を決めます。

1日給水量からすべての機器を選ぶ

基本設計で給水計算書を作り、受水槽、揚水ポンプ、引込管の仕様を機器表へ記載する場面です。同じ水量という名称でも、機器ごとに使う時間単位が違います。

よくある間違い 給水計算書の1日給水量を時間換算せず、同じ数値で受水槽、揚水ポンプ、引込管の容量や口径を決め、必要な流量と圧力を満たせない機器を選定することです。

確認すべきこと 計算書で1日給水量、時間最大予想給水量、瞬時最大流量の単位と用途を分けます。受水槽・ポンプ・配管ごとに使う流量と必要圧力を確認し、機器表と図面の値を一致させます。

平面図だけで排水管を納める

実施設計で便所から排水立て管までの横引き管を平面図へ記載し、天井内に納まるか確認する場面です。排水管には高さ方向の勾配が必要なので、平面上の空きだけでは判断できません。

よくある間違い 排水設計の平面図で横方向の配管ルートだけを確保し、必要勾配や梁下を確認しないまま天井内に納まると判断して、天井高や梁貫通位置を誤って決めることです。

確認すべきこと 平面図、断面図、構造図、外構図を重ねます。排水管の始点と接続先の高さ、必要勾配、梁貫通、点検口を確認し、自然流下できない場合は排水槽とポンプの要否を決めます。

機器の外形寸法だけで設備室を決める

基本設計で受水槽やポンプを機械室へ配置し、意匠担当者へ必要面積を伝える場面です。カタログの外形寸法は、点検や配管接続に使う周囲空間を含みません。

よくある間違い 受水槽やポンプのカタログ外形だけを平面図へ置き、点検、配管接続、搬入、更新の空間を残さないことです。

確認すべきこと メーカー図、建築設備設計基準、保守要領を確認します。満水時重量、基礎、周囲の点検空間、搬入開口、将来更新まで含めて、機械室と構造条件を決めます。

工程ごとの確認チェックリスト

このリストは、意匠設計者と設備設計者が基本計画から実施設計へ進む節目で、次の工程に必要な情報がそろっているかを見直すためのものです。

事前調査

☐ 給水本管、下水道管、公共桝、既設引込の資料を確認した

☐ 水道・下水道の協議先、申請、検査、提出期限を記録した

☐ 地域固有の雨水流出抑制、除害施設、給水方式の条件を確認した

基本計画・基本設計

☐ 用途、利用人員、衛生器具、使用時間、非常時の給水条件を確認した

☐ 給水・排水・給湯方式の比較理由を計画概要書へ残した

☐ 機械室、PS、配管経路、排水勾配、搬入更新経路を意匠図で確認した

☐ 満水時重量、基礎、梁・壁・床の貫通を構造担当者と確認した

実施設計

☐ 計算書の入力条件、式、単位、結果が機器表・図面と一致する

☐ 系統図と平面図で、機器、管径、弁、立て管のつながりが一致する

☐ 特記仕様書に適用基準、材料、施工、試験、個別条件を記載した

☐ 点検口、機器周囲、配管接続、搬入・更新の空間を詳細図で確認した

まとめ

給排水衛生設備の設計は、計画地のインフラ確認から始まり、建物の使われ方、給水・排水・給湯方式、水量計算、機器選定、建築・構造との調整、図面作成へ進みます。

次に設計を始めるときは、まず水道・下水道の配管台帳と所管基準、建物用途・利用人員、意匠平面図・断面図を並べてください。そこで確認した条件を計画概要書と協議記録へ残せば、計算書、機器表、系統図、平面図を同じ根拠で更新できます。

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参考・出典

> 法令・規格・数値は2026年8月5日に確認した一次情報に基づきます。個別案件では、用途・規模・地域・所管行政庁・契約条件・メーカー仕様により確認先が変わります。

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