衛生設備

給湯温度と使用温度の設定|レジオネラ対策と熱傷防止を分けて考える

給湯温度と使用温度の設定|レジオネラ対策と熱傷防止を分けて考える
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中央式給湯の計画で迷いやすいのが、貯湯槽や循環配管では高い温度を保ちたいのに、シャワーや洗面では人が触れられる温度まで下げなければならない点です。機器表に「給湯60℃」と書いてあっても、60℃の湯をそのまま手洗いや入浴に使うわけではありません。

給湯温度を決めるときは、衛生管理のための温度と、人が使う場所の温度を分けて考えます。中央式給湯では貯湯・循環側を高温に保ち、器具の近くで水と混ぜて使用温度へ下げるのが基本です。この記事では、温度を確認する位置、湯水混合の計算、図面と管理記録で確認する項目を順に整理します。

この記事でわかること

  • 貯湯・循環・末端・使用場所で温度を分けて確認する理由
  • 中央式給湯で60℃・55℃を確認する位置と条件
  • 湯水混合の計算と、図面・維持管理で見る場所
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給湯温度と使用温度の違い

同じ「お湯の温度」でも、設備の中では測る位置によって意味が変わります。

温度測る位置設計・管理の目的
貯湯温度貯湯槽、加熱装置レジオネラ属菌を含む細菌汚染を抑える
循環系統の温度往管、返湯管、系統末端配管放熱や滞留で温度が下がりすぎていないか確認する
給湯栓の温度洗面、シャワーなどの吐水口系統全体の温度管理が末端まで届いているか確認する
使用温度混合後に人が触れる位置用途に合う使いやすさと熱傷防止を確保する

ここで大切なのは、「貯湯槽を60℃に設定したから末端も問題ない」と判断しないことです。配管が長い、保温が不足している、循環量が足りない、使われない枝管に湯が滞留している、といった理由で末端温度は下がります。貯湯槽の温度計だけでなく、系統末端や湯待ちの長い給湯栓でも実測します。

貯湯槽、循環配管、末端混合水栓、シャワー・洗面の位置と、温度を確認する場所を示す中央式給湯の概念図

中央式給湯のレジオネラ対策

レジオネラ症は、菌に汚染された細かな霧やしぶき、つまりエアロゾルを吸い込むことなどで発症します。給湯設備では温度だけに頼らず、湯の滞留を減らし、貯湯槽や配管を清掃して生物膜を残さない管理が必要です。

貯湯槽60℃と末端55℃の意味

厚生労働省の「建築物における維持管理マニュアル」は、中央式給湯について次の管理方法を示しています。

  • 常時の貯湯温度を60℃以上にする
  • 初流水を捨て、湯温が一定になった給湯栓で55℃以上を保つ
  • ピーク使用時も貯湯温度を55℃以上に保つ
  • 系統末端や、循環が悪く湯待ち時間の長い給湯栓も定期的に測る

この55℃は、返湯管の温度計だけを見ればよいという意味ではありません。最も温度が下がりやすい場所まで湯が届いているかを、実際の給湯栓で確かめるための値です。設計時は配管熱損失と循環流量を計算し、竣工後は測定位置と測定時刻を管理記録へ残します。

なお、これらの温度をすべての建物に同じ形で課す単純な一律規定とは扱えません。建築物衛生法の対象か、公衆浴場・旅館か、施設独自の衛生基準があるかで適用条件が変わります。計画地の条例や保健所の指導も確認してください。

温度以外に確認する項目

給湯温度が高くても、使われない枝管や閉止した器具の手前に水が長期間残れば、汚染リスクは残ります。設計図と現場では、次の箇所を見ます。

  • 給湯・返湯配管が末端まで循環する経路になっているか
  • 将来用配管や撤去器具の枝管がデッドレグとして残っていないか
  • 貯湯槽を排水、清掃できるか
  • 末端給湯栓、湯待ちの長い器具、ピーク使用時の温度を測れるか
  • 配管の保温仕様が管径、材質、施工場所に合っているか

厚生労働省は、レジオネラ属菌について60℃では5分間で殺菌されると説明しています。ただし、この数値だけで設備の熱消毒手順を決めることはできません。配管全体が所定温度に達するまでの時間、器具の耐熱温度、熱傷防止、消毒後の排水方法を含め、施設の衛生管理手順とメーカー仕様で決めます。

使用場所では熱傷を防ぐ

衛生管理のために貯湯温度を上げるほど、給湯栓での熱傷リスクは高くなります。そのため、高温の湯を循環させる範囲と、人が触れる湯を作る範囲を分けます。

代表的な方法は、器具の近くに湯水混合水栓を設ける、系統用のミキシングバルブで温度を下げる、サーモスタット付き湯水混合水栓を使う、といったものです。サーモスタット付き水栓は給水・給湯条件の変動に応じて混合比を調整しますが、選定しただけで安全確認が終わるわけではありません。給水が止まったときの挙動、給湯圧力、最低流量、温度制限機構、点検方法を製品仕様書で確認します。

現行の給水栓規格はJIS B 2061:2023です。機器表や特記仕様書には旧版の年号をコピーせず、採用製品が現行規格のどの性能へ適合しているかをメーカー資料で確かめます。

利用者によって安全条件は変わる

NITEは、同じ場所へ触れ続けた場合、50℃でも2~3分で低温やけどになると注意喚起しています。流水と暖房器具では接触条件が異なりますが、50℃なら誰にでも安全とはいえません。

特に、幼児、高齢者、患者、温度を感じにくい人、自分で水栓を止めにくい人が使う施設では、発注者の安全基準、施設基準、所管行政の指導、器具メーカーの制限温度を確認します。「サーモスタット付きだから大丈夫」とせず、給湯側の温度制限と末端器具の保護を重ねるかも検討します。

湯水混合で使用温度を求める

湯と水の密度・比熱を同じとみなし、配管から周囲へ逃げる熱を無視すると、混合後温度は次式で求められます。

Tm=(QhTh+QcTc)/(Qh+Qc)

  • Tm:混合後温度(℃)
  • Th:湯温(℃)
  • Tc:水温(℃)
  • Qh:湯量(L/min)
  • Qc:水量(L/min)

必要な混合流量を Qm とすると、湯量は次式で求められます。

Qh=Qm(Tm−Tc)/(Th−Tc)

例として、60℃の湯と15℃の水から、40℃の混合湯を10 L/min作る条件を計算します。

Qh=10×(40−15)/(60−15)=5.56 L/min

必要な水量は、10-5.56=4.44 L/minです。この40℃は計算方法を示すための条件であり、用途別の推奨温度ではありません。

実際の水栓では、冬と夏で給水温度が変わり、配管から熱が逃げ、同時使用で圧力も変動します。機器を選ぶときは、最も低い給水温度、給湯器から器具までの温度低下、必要吐水量、給湯・給水圧力をメーカー選定条件へ入れます。

図面と管理資料で確認する場所

温度計画は、給湯系統図、平面図、機器表、特記仕様書、維持管理計画をつなげて確認します。

給湯系統図

系統図では、貯湯槽、加熱装置、往管、返湯管、循環ポンプ、末端混合位置を追います。最遠器具まで循環経路が届くか、循環しない枝管が長く残らないかを確認します。温度計と測定口の位置も、この段階で決めておくと竣工後の管理がしやすくなります。

機器表と特記仕様書

機器表には、貯湯温度だけでなく、ピーク時条件、末端で確保する温度、混合後の設定範囲、給水停止時の安全機能を記載します。サーモスタット付き水栓は「JIS対応」とだけ書かず、採用製品の現行規格適合、使用圧力、必要流量、温度調整範囲を確認します。

維持管理記録

竣工後は、貯湯槽と返湯管の表示値に加え、代表給湯栓、系統末端、湯待ちの長い器具を測ります。平常時とピーク使用時を分け、初流水を流した時間、温度が安定した時点、測定値を記録します。設定変更や器具撤去があったときは、枝管の滞留と温度低下が生じていないか系統図へ戻って確認します。

まとめ|給湯温度設定の要点

給湯温度は、一つの設定値だけで決まりません。中央式給湯では、貯湯槽、循環配管、系統末端、混合後の使用場所を分け、それぞれの目的に合う温度を決めます。

レジオネラ対策では、常時の貯湯温度60℃以上と、安定後の末端給湯栓55℃以上を基準に、滞留防止と清掃を組み合わせます。一方、人が触れる場所では、湯水混合と温度制限を設け、利用者と用途に応じた熱傷防止を行います。

設計時は給湯系統図と熱損失計算、機器選定表を確認し、竣工後は末端を含む実測記録を残します。公衆浴場、旅館、医療・福祉施設では全国共通の説明だけで終えず、計画地の条例、保健所、発注者基準まで確認してください。

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参考・出典

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