衛生設備

給水設備の重要用語ガイド/設計・管理に欠かせない基本知識とトラブル対策を実務目線で解説

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給水設備の設計や維持管理の現場では、日常的に専門用語が飛び交います。
これらを「なんとなく」理解したまま業務を進めていると、思わぬ事故や水質トラブルにつながりかねません。

給水設備は、単なるインフラではなく人の健康と直結する設備です。
用語の正確な理解は、事故防止や公衆衛生の確保だけでなく、建物の信頼性や資産価値を守るうえでも欠かせません。

本記事では、給水設備に携わる実務者が必ず押さえておきたい重要用語を中心に、
「なぜそうなるのか」「現場では何に注意すべきか」という視点で解説します。

水の分類と持続可能な資源利用の考え方

私たちが日常的に使っている「水」は、用途と水質によって明確に区分されています。

上水・中水・下水の基本定義

上水
飲料、炊事、洗面、洗濯、入浴など、人が直接摂取・接触することを前提とした水です。
水道法に基づく厳しい水質基準を満たす必要があります。

中水(雑用水)
生活排水や産業排水を処理し、再利用する水を指します。
主な用途は便器洗浄、散水、洗車、修景用水などで、人体に直接触れない用途に限定されます。

下水
上水や中水として使用された後に排出される水で、下水道へ放流されるものです。

現場で求められる「節水」の本当の意味

設備管理における節水とは、単なる使用量削減ではありません。
本質は「必要な水を、必要な量だけ、適切な水質で使う」ことです。

具体的な対策としては、

  • 節水コマや定量水栓の採用
  • 節水型便器・小便器の導入
  • 浴槽水やプール水のろ過再利用

などが挙げられます。
ハード面の工夫に加え、運用ルールの見直しも含めて検討することが重要です。

配管トラブルの代表例「赤水」の正体と対策

築年数の経過した建物で多い相談が、蛇口から赤く濁った水が出る「赤水」です。

赤水はなぜ発生するのか

赤水の主な原因は、鋼管や継手など鉄製部材の腐食です。
腐食によって溶出した鉄分が、水中の酸素と反応し、**水酸化鉄や酸化鉄(いわゆる赤さび)**となって水を着色します。

特に、

  • 長期間使用していなかった系統
  • 水が滞留しやすい枝管(デッドレグ)
  • 管内流速が極端に遅い配管

では発生しやすくなります。

実務で取られる赤水対策

① 配管材料の更新(根本対策)
ステンレス鋼管や樹脂管など、耐食性の高い材料への更新が最も確実です。
端部の防食処理や異種金属接触の回避も重要なポイントです。

② 水質改善処理
脱気装置などにより水の腐食性を抑制する方法がありますが、条件によって効果に差が出ます。

③ 防錆剤の注入
応急対応として用いられますが、恒久対策ではありません。長期的には配管更新を検討すべきです。

騒音・破損を招く水の挙動-ウォーターハンマとキャビテーション

ウォーターハンマ(水撃作用)

水栓や弁を急激に閉じた際、水の慣性によって瞬間的な圧力上昇が起こります。
この圧力波が配管内を伝播し、衝撃音や振動を引き起こす現象がウォーターハンマです。

継手の緩み、配管破損、器具故障など、被害は決して小さくありません。

キャビテーションとサージング

キャビテーション
流速が速く圧力が低下した部分で水が気化し、気泡が発生・消滅する現象です。
金属音や振動、ポンプ内部の侵食(エロージョン)を引き起こします。

サージング
ポンプの流量と圧力が周期的に変動し、不安定な運転状態になる現象です。

設計段階での防止策

  • 給水管内流速は 2.0m/s以下 を基本とする
  • 弁の急閉止を避ける
  • 自動閉止弁付近には エアチャンバ(水撃防止器) を設置

公衆衛生を守る最重要項目-クロスコネクションと逆流防止

クロスコネクションは厳禁

飲料水系統と、雑用水・井戸水・工業用水・消火用水などが直接接続された状態をクロスコネクションと呼びます。
これは水道法上、明確に禁止されており、逆止弁があっても認められません。

逆サイホン作用とは

断水や大量使用時に給水管内が負圧になると、吐水口側の水が吸い込まれることがあります。
これが逆サイホン作用です。

逆流防止の基本装備

吐水口空間(エアギャップ)
吐出口端とあふれ縁との垂直距離を確保することで、物理的に逆流を防止します。

バキュームブレーカ
負圧発生時に空気を取り込み、サイホン作用を遮断する器具です。

直結直圧給水方式という選択肢

近年は受水槽を設けない直結直圧給水方式が増えています。
水質劣化防止、省スペース、維持管理費削減といったメリットがあります。

ただし、必要水圧は地域・時間帯によって大きく変動します。
設計時には必ず水道局への事前確認が欠かせません。

まとめ-実務で迷ったときに立ち返るべき原則

給水設備で最優先されるのは、常に「水の安全性」です。
小さな設計ミスや施工不良が、建物全体、ひいては利用者の健康に影響を及ぼす可能性があります。

各自治体の水道局基準、標準仕様書を確認し、
「大丈夫だろう」ではなく「根拠を持った設計・施工」を心がけたいものです。

【付録】設備設計の要点チェック

資格試験(建築設備士、管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者など)によく出題されるポイントをまとめました。

  • 上水・中水・下水: 中水は「人体と直接接触しない」用途(トイレ洗浄、散水等)に用いる。
  • ウォーターハンマ: 弁の急閉止や流速の過大(2.0m/sec 超)が原因。防止にはエアチャンバが有効。
  • キャビテーション: 高速流の低圧部で気化が起こる現象。振動・騒音・性能低下を招く。
  • クロスコネクション: 系統を問わず、飲料水系統との直接接続は一律禁止。
  • 逆サイホン作用: 給水管内の負圧により、汚水等が吸い込まれる現象。吐水口空間の確保が最大の防止策。
  • バキュームブレーカ: 逆サイホン作用防止のための吸気弁。大気圧式は常に圧力がかからない位置(あふれ縁より上方)に設置する。
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