還気と外気の混合計算|混合空気の温度・エンタルピを求める式と計算例
空調機の吸込口には、室内から戻ってくる空気と外から取り入れる空気の、2系統が合流しています。
この混合後の空気がどんな状態になるかを把握することが、空調機に必要な処理能力を正しく算出するための出発点です。
「外気取入れ量」という設計条件、図面の中にさらりと書いてあるけれど、これが混合後の温湿度を変え、空調機の負荷量を直接左右していると知ったとき、少し驚きました。
この記事では、還気(RA)と外気(OA)の混合計算の原理と、空気線図上での混合点の求め方を、具体的な数値例とともに解説します。
【この記事でわかること】
- 空調機が還気と外気を混合する理由(換気と省エネの両立)
- 混合後の温度・絶対湿度・エンタルピを求める計算式
- 空気線図上での混合点の読み方(内分点の考え方)
- 外気取入れ量が空調負荷に与える影響
還気(RA)と外気(OA)を混合する2つの理由

空調機(エアハンドリングユニット=AHU、パッケージ型空調機など)の吸込口には、次の2つの空気が入り込んできます。
- 還気(RA:Return Air):室内から空調機に戻ってくる空気
- 外気(OA:Outside Air):建物の外から取り入れる新鮮な空気
なぜこの2つをわざわざ混合するのでしょうか。理由は大きく2つあります。
理由① 衛生的な換気の確保
室内の空気は、在室者の呼吸によるCO₂の蓄積や、人体・建材からの汚染物質によって徐々に質が低下します。建築基準法施行令第20条の2では、居室に機械換気設備を設ける場合、1人あたり毎時20m³以上の有効換気量を確保することが義務付けられています(2003年改正・現行)。この基準を満たすために、室内の空気の一部を外気と入れ替えることが不可欠なんですね。
理由② 空調負荷の軽減(省エネ)
仮に取り込む空気をすべて外気(外気量100%)にすると、夏なら32〜34℃の高温多湿な空気を、冬なら0℃前後の冷たい空気を、そのまま空調機で処理しなければなりません。これは莫大なエネルギーを必要とします。
そこで、すでに快適な温湿度に調整された還気を再利用しながら、必要最小限の外気を混合することで、空調機の処理負荷を大幅に抑えることができます。これが空調設計における省エネの基本的な考え方の一つです。
空気線図上での「混合点」の求め方

温度と湿度が異なる2つの空気を混ぜたとき、混合後の空気の状態はどうなるのでしょうか。これを直感的に把握できるのが湿り空気線図(空気線図)です。
空気線図上での混合の法則は、じつはとてもシンプルです。
混合後の空気の状態点(混合点)は、混ぜ合わせる2つの状態点を結んだ直線上に位置します。その直線上のどこに位置するかは、2つの空気の風量比によって決まります。
これを「内分点」と呼びます。具体的には、混合後の状態点は、それぞれの風量の逆比に按分した位置に来ます。つまり風量の多い空気の状態点のほうに引き寄せられるイメージです。
この法則が成り立つのは、温度・絶対湿度・エンタルピのいずれも「加重平均」として求められるためです。以下に計算式を見ていきましょう。
混合後の状態を求める計算式
各変数を以下のように定義します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| G₁ | 還気(室内空気)の風量〔m³/h〕 |
| G₂ | 外気の風量〔m³/h〕 |
| t₁ / t₂ | 還気 / 外気の乾球温度〔℃〕 |
| x₁ / x₂ | 還気 / 外気の絶対湿度〔kg/kg(DA)〕 |
| h₁ / h₂ | 還気 / 外気の比エンタルピ〔kJ/kg(DA)〕 |
| t₃ / x₃ / h₃ | 混合後の乾球温度 / 絶対湿度 / 比エンタルピ |
混合後の乾球温度:
$$t_3 = \frac{t_1 \times G_1 + t_2 \times G_2}{G_1 + G_2}$$
混合後の絶対湿度:
$$x_3 = \frac{x_1 \times G_1 + x_2 \times G_2}{G_1 + G_2}$$
混合後の比エンタルピ:
$$h_3 = \frac{h_1 \times G_1 + h_2 \times G_2}{G_1 + G_2}$$
3つの式はすべて同じ形をしています。加重平均の考え方をそのまま適用したものです。難しそうに見えて、本質はとてもシンプルですよね。
なぜ「体積」ではなく「質量(または風量比)」で加重平均するの?
厳密には、空気の混合は質量で管理する必要があります。ただし一般的な空調設計の温度帯(0〜40℃程度)では、空気の比重(比容積)の変化が小さく、体積比を質量比の近似として扱うことが多いです。建築設備士試験でも風量〔m³/h〕を使った計算が標準的に用いられています。
【計算例】夏季冷房時の混合状態を求めてみよう
具体的な数値で計算してみましょう。夏季の冷房設計を想定します。
設計条件
| 項目 | 還気(室内空気) | 外気(OA) |
|---|---|---|
| 乾球温度 | 26℃ | 32℃ |
| 相対湿度 | 50%RH | 68%RH |
| 絶対湿度 | 約0.0105 kg/kg(DA) | 約0.0208 kg/kg(DA) |
| 比エンタルピ | 約52.9 kJ/kg(DA) | 約85.1 kJ/kg(DA) |
| 風量比 | 3 | 1 |
外気取入れ量は全送風量の25%(還気75%:外気25% = 3:1)としています。
ステップ1:混合後の乾球温度 t₃
$$t_3 = \frac{26 \times 3 + 32 \times 1}{3 + 1} = \frac{78 + 32}{4} = \frac{110}{4} = 27.5\text{℃}$$
ステップ2:混合後の絶対湿度 x₃
$$x_3 = \frac{0.0105 \times 3 + 0.0208 \times 1}{3 + 1} = \frac{0.0315 + 0.0208}{4} = \frac{0.0523}{4} \approx 0.0131\text{ kg/kg(DA)}$$
ステップ3:混合後の比エンタルピ h₃
$$h_3 = \frac{52.9 \times 3 + 85.1 \times 1}{3 + 1} = \frac{158.7 + 85.1}{4} = \frac{243.8}{4} \approx 61.0\text{ kJ/kg(DA)}$$
ステップ4:混合後の相対湿度を確認
乾球温度27.5℃、絶対湿度0.0131 kg/kg(DA)の状態を空気線図上で確認すると、相対湿度は約58%RH となります。
結果まとめ
| 項目 | 混合前(還気) | 混合前(外気) | 混合後 |
|---|---|---|---|
| 乾球温度 | 26℃ | 32℃ | 27.5℃ |
| 相対湿度 | 50%RH | 68%RH | 約58%RH |
| 絶対湿度 | 0.0105 | 0.0208 | 0.0131 |
| 比エンタルピ | 52.9 kJ/kg | 85.1 kJ/kg | 61.0 kJ/kg |
この混合点(27.5℃、58%RH)が、空調機の冷却コイルへと送り込まれる空気のスタート地点です。空気線図上では、26℃/50%の点と32℃/68%の点を結んだ直線上に、外気側から1/4の位置(=内分点)として確認できます。
外気取入れ量を変えると混合状態はどう変わる?

計算式からもわかるように、外気取入れ量の割合が大きくなればなるほど、混合点は外気の状態点に近づいていきます。
夏季を例にとると、外気量が増えるほど次のような連鎖が起きます。
- 混合後の温度・絶対湿度・エンタルピが上昇する
- 空調機の冷却コイルが処理しなければならない熱量(外気負荷)が増加する
- 空調機の必要能力が大きくなり、設備コストと運転コストが上がる
換気は増やしたい、でも負荷は抑えたい。この二律背反をどう解決するかが、空調設計の腕の見せどころのひとつです。
代表的な外気取入れ率の目安
| 建物用途・条件 | 外気比率の目安 |
|---|---|
| 一般オフィス(在室密度:5m²/人) | 20〜30% |
| 会議室・多人数室(高密度) | 30〜50% |
| 全外気空調(手術室・クリーンルーム等) | 100% |
| 全熱交換器併用時(省エネ目的) | 設計値を維持しつつ熱回収 |
外気取入れ率が高い施設ほど、外気負荷の処理が空調設計の核心になってきます。設計段階で外気比率を正しく把握しておくことが、空調機の適切なサイジングにつながります。
外気負荷の詳細な計算方法は「外気負荷の計算(No.28)」で別途解説しています。全熱交換器による外気負荷の削減については「全熱交換器による熱回収サイクル(No.20)」をご覧ください。
混合計算、実務では何に使うの?(実務ポイント)
混合計算は、主に次の3つの目的で使います。
① 空調機の入口条件を確定する 冷却コイルや加熱コイルの処理熱量を計算するには、コイル入口の空気状態(=混合後の状態)を決める必要があります。混合計算はその第一歩です。
② 外気比率の変更検討 省エネ改修やCO₂濃度管理のために外気比率を見直す際、変更後の混合点の変化を空気線図で確認することで、空調機への影響を定量的に評価できます。
③ 建築設備士試験対策 建築設備士試験では、混合後の温度・エンタルピを求める計算問題が頻出します。基本式(加重平均)と空気線図上の内分点の考え方をしっかり押さえておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 還気(RA)・外気(OA)・給気(SA)・排気(EA)の違いは何ですか?
空調系統の空気には、流れる場所によって4つの名称があります。
- OA(Outside Air)外気:外部から取り込む新鮮な空気
- RA(Return Air)還気:室内から空調機に戻る空気
- SA(Supply Air)給気:空調機で温湿度を調整した後、室内へ供給する空気
- EA(Exhaust Air)排気:室内から外部へ排出する空気
混合計算の対象は「OA」と「RA」の2つです。混合後に冷却・加熱された空気が「SA」として室内に送られます。
Q. 混合点が空気線図上で直線上に乗るのはなぜですか?
温度・絶対湿度はいずれも加重平均で求められます。空気線図の横軸(乾球温度)・縦軸(絶対湿度)がともに一次関数として変化するため、混合点の軌跡は必ず直線になります。この性質があるおかげで、どんな温湿度の組み合わせでも、混合点は2点間の線分上に収まります。
Q. 混合比(外気比率)はどうやって決めますか?
次の2つの制約のうち、大きい方の値を採用するのが基本です。
- 法定換気量:建築基準法施行令第20条の2に基づく計算値(1人あたり20m³/h以上)
- 送風量に対する比率:法定換気量 ÷ 設計送風量で外気比率を算出
一般的なオフィスでは20〜30%程度になることが多いです。ただしこれは最低ラインで、実際の設計ではビル管理法(建築物衛生法)の空気環境基準(CO₂:1,000ppm以下等)を満足するかどうかの確認も必要です。
Q. 冬季(暖房時)の混合計算も夏季と同じ式で計算できますか?
計算式はまったく同じで、季節は関係ありません。夏季と違うのは、外気の温度・湿度が室内空気より低くなる点です。冬季は外気の混合量が増えるほど混合後の温度と絶対湿度が下がり、加熱・加湿にかかる負荷が増加します。
まとめ
- 空調機は換気と省エネを両立するために、還気と外気を混合して処理する
- 混合後の温度・絶対湿度・比エンタルピは「加重平均」で求まる
- 空気線図上では混合点は2点を結ぶ直線上に位置し(内分点)、風量の多い側に引き寄せられる
- 外気取入れ量が増えるほど混合後の状態は外気に近づき、空調負荷が増大する
意匠設計の立場から見ると、外気ルーバーの面積や位置といった意匠的な判断が、空調機の大きさや消費エネルギーに直結しています。この数値のつながりを頭に入れておくと、設備担当者との協議でかなり具体的な話ができるようになります。
本記事は2026年時点の情報(建築基準法施行令等)に基づいています。法令改正が行われた場合は最新情報をご確認ください。
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