空調設備

顕熱比(SHF)とは|計算式と空気線図上の読み方

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冷房負荷計算書に「SHF 0.80」と書かれていても、その数字だけでは給気温度や送風量をどう決めるのか分かりにくいものです。顕熱、潜熱、全熱に加えて、室SHFと装置SHFという似た言葉も出てくるため、どの負荷を比べているのか迷いやすいところです。

顕熱比(SHF)は、処理する全熱のうち、温度変化に関わる顕熱が占める割合です。この記事では、式の分母と分子、空気線図上のSHF線、給気条件と送風量を決める順番、機器選定表で照合する項目まで説明します。読み終えると、負荷計算書のSHFが何を対象にした値かを見分け、湿り空気線図と空調機選定表を照合できます。

この記事でわかること

  • 顕熱比(SHF)の意味と計算式
  • SHF 0.80を、顕熱80%・潜熱20%と読む方法
  • 室SHFと装置SHFを分ける理由
  • 空気線図上で室内点から給気条件を検討する順番
  • 送風量と冷却コイル選定表で確認する項目
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顕熱比は、全熱に占める顕熱の割合

顕熱比を読むときは、先に顕熱と潜熱を分けます。顕熱は室温を上げ下げする負荷、潜熱は空気中の水分を増減させる負荷です。冷房時の全熱負荷は、この二つを合計したものです。

全熱負荷 qT = 顕熱負荷 qs + 潜熱負荷 ql

顕熱比 SHF = 顕熱負荷 qs ÷ 全熱負荷 qT

したがって、式は次のように書けます。

SHF = qs / (qs + ql)

SHFは割合なので単位を持ちません。0から1の間で表し、1に近いほど温度を下げる仕事の割合が大きく、値が小さいほど除湿に関わる仕事の割合が相対的に大きいと読みます。

全熱を顕熱と潜熱に分け、顕熱比が顕熱を全熱で割った割合であることを示す解説図

SHF 0.80を計算してみる

室内顕熱負荷が12 kW、室内潜熱負荷が3 kWの部屋を例にします。

  1. 全熱負荷を求める: 12 + 3 = 15 kW
  2. 顕熱負荷を全熱負荷で割る: 12 ÷ 15 = 0.80
  3. 全熱の80%が顕熱、20%が潜熱と読む

ここで大切なのは、12 kWと3 kWが同じ室、同じ設計時刻、同じ計算範囲の負荷であることです。別の時間帯や別系統の最大値を組み合わせると、その部屋の設計状態を表すSHFになりません。

SHFが高い・低いと何が変わるのか

SHFが高い部屋は、同じ全熱負荷でも顕熱の割合が大きいため、温度を下げる能力と風量の確認が中心になります。照明・機器・日射などが大きく、室内で発生する水分が小さい条件が一例です。

SHFが低い部屋は、潜熱の割合が相対的に大きいため、給気の絶対湿度、冷却コイルの除湿能力、ドレン、部分負荷時の運転時間を詳しく確認します。人数、湿った外気、調理・洗浄などの発湿条件が変われば、同じ用途名でもSHFは変わります。

初期検討では用途別の参考値で負荷の傾向を比べ、在室人数、機器、外気量が決まった段階で、室別負荷計算書の顕熱・潜熱内訳からSHFを計算し直します。

室SHFと装置SHFは計算の範囲が違う

SHFの数字を受け取ったら、最初に「どこからどこまでの負荷を合計した値か」を確認します。同じ0.80でも、室内だけの負荷か、外気を含めた空調機全体の負荷かで、使う場面が違います。

区分分子・分母に含める主な範囲主な使用場面
室SHF室内の日射、外皮、照明、機器、人体などの室顕熱・室潜熱室内点から給気状態線を引き、室への給気条件を検討する
装置SHF空調機が処理する還気・外気・ファン発熱などを含む顕熱・潜熱空調機・冷却コイルの全熱能力、顕熱能力、除湿能力を照合する
機器のSHRメーカー指定の試験条件における顕熱能力と全熱能力の比候補機器の能力表を、設計入口条件・風量とそろえて比較する

外気を室負荷へ含める計算方法もあれば、外調機で別に処理する計画もあります。負荷計算書の集計範囲、空調系統図の外気処理範囲、機器選定表の入口空気条件を三つ並べて確認すると、分子と分母の取り違えを防げます。

空気線図ではSHFを状態線の傾きとして使う

湿り空気線図では、横方向が乾球温度、縦方向が空気に含まれる水分量です。水分量が変わらない顕熱冷却は左への水平線になります。温度と水分の両方を下げる冷却除湿は左下へ進みます。

室のSHF線は、室内状態点と給気状態点を結ぶ状態線です。SHFが高いほど水平に近く、SHFが低いほど水分変化が大きい傾きになります。NISTの解説でも、ゾーンの状態線の傾きは設計顕熱負荷を設計全熱負荷で割ったSHRから決まり、線図からSHFそのものを読み取るのではないと示されています。

給気点SAから室内点Rへ温度と水分の負荷を受ける方向を顕熱比線上に示した解説図

SHF線を使う順番

空気線図へ線を引く前に、負荷計算の範囲と室内条件を確定します。その後は、次の順に進めます。

  1. 室別負荷計算書から、同じ設計時刻の室顕熱負荷と室潜熱負荷を読む。
  2. SHF = qs / (qs + ql) で室SHFを計算する。
  3. 案件の圧力条件に合う湿り空気線図へ、室内の乾球温度と湿度から室内状態点を置く。
  4. 線図のSHF目盛りで該当する傾きを確認し、室内状態点を通る平行線を引く。
  5. 給気温度、給気湿度、許容風量、ドラフト、機器能力を満たす給気状態点を線上で検討する。
  6. 給気状態点を空調機・コイル選定表の出口条件と照合する。

SHF線だけで給気状態点が一つに決まるわけではありません。給気温度を下げれば必要風量は減らせますが、ドラフト、結露、低温送風対応、ダクト寸法、コイル水温など別の条件が加わります。線上のどこを採用するかは、建物と機器の条件をそろえて決めます。

ADPは実コイル出口そのものではない

室内状態点からSHF線を飽和曲線まで延ばした交点は、装置露点温度(ADP)を考える手掛かりになります。ADPは、コイル表面温度に近い理論上の空気状態です。

実際のコイルでは、すべての空気がコイル表面と完全に接触するわけではありません。そのため、実コイルの出口状態点をADPへそのまま置かず、メーカー選定表の入口・出口条件、風量、冷水温度、コイル列数、面風速、バイパスファクタを確認します。

SHFから給気温度と送風量を検討する

SHFは、室の顕熱と潜熱の割合を示します。送風量を求めるときは、そのうち顕熱負荷と、室内空気と給気の温度差を使います。

qs = ρ × cp × V × ΔT

  • qs: 顕熱負荷(kW)
  • ρ: 空気密度(kg/m³)
  • cp: 空気の定圧比熱(kJ/(kg・K))
  • V: 送風量(m³/s)
  • ΔT: 室内空気と給気の温度差(K)

送風量を概算してみる

顕熱負荷12 kW、空気密度1.2 kg/m³、比熱1.0 kJ/(kg・K)、室内と給気の温度差10 Kと仮定します。

V = 12 ÷ (1.2 × 1.0 × 10) = 1.0 m³/s = 3,600 m³/h

これは計算の関係をつかむための簡略例です。空気密度と比熱は圧力・温湿度で変わり、給気温度差はドラフト、吹出口、天井高さ、低温送風の採用、結露対策、機器仕様で決まります。実施設計では、採用する計算基準とメーカー選定条件へ置き換えます。

SHFが同じでも顕熱負荷が大きければ風量は増えます。反対に、全熱負荷が同じでもSHFが低いと、温度差だけでなく給気の水分量とコイルの潜熱能力が重要になります。SHFだけで風量や機器容量を決めない理由はここにあります。

負荷計算から図面までの確認順

実務では、SHFの値を計算して終わりではありません。負荷計算 → 空気線図 → 機器選定 → 送風系統 → 図面の順に、同じ状態点と風量がつながっているかを確認します。

1. 室別負荷計算書で分子と分母を確認する

室顕熱には日射、外皮、照明、機器、人体の顕熱分などが含まれます。室潜熱には人体、湿った外気、調理・洗浄などの水分発生が含まれます。外気を室負荷へ含めるか、外調機で処理するかも確認します。

同時使用率、設計時刻、在室人数、外気量が異なる資料を混ぜないようにします。負荷計算ソフトの室別集計表と系統別集計表を見比べ、室SHFと装置SHFを別欄で管理します。

2. 空気線図と状態点表で給気条件を確認する

室内点、混合空気点、コイル出口、給気点を同じ圧力条件の線図へ置きます。室内点と給気点を結ぶ状態線が、計算した室SHFの傾きと一致するか確認します。

図面や計算書には、点の記号だけでなく、乾球温度、湿球温度または相対湿度、絶対湿度、比エンタルピーを状態点表で併記します。どの値を使って機器を選んだのか、後から追えるようになります。

3. 空調機・コイル選定表で能力を照合する

空調機選定表では、全熱能力だけを見ず、顕熱能力、入口・出口空気条件、風量、冷水入口・出口温度、コイル列数、面風速、ドレン量を確認します。設計した給気点がメーカー選定結果の出口点と一致しなければ、風量、コイル、冷水条件、再熱・除湿方式を見直します。

4. ダクトと吹出口へ風量を反映する

確定した送風量を基に、ダクト寸法、機外静圧、吹出口個数、到達距離、騒音、ドラフトを確認します。VAV方式では、設計最大風量だけでなく、最小風量時に潜熱処理と換気量を維持できるかを制御図と一緒に確認します。

5. 部分負荷時の温湿度制御を確認する

設計時のSHFは、日射、人数、機器稼働がそろった一つの条件です。曇天や夜間に日射・外皮の顕熱が減っても、在室者や外気の潜熱が残ると、運転中のSHFは設計値より低くなる場合があります。

温度だけで送風量や圧縮機を絞ると、除湿時間が不足することがあります。給気温度・湿度センサー、VAV最小風量、再熱、外調機、除湿運転の有無を系統図・制御図・メーカー仕様書で確認します。

負荷計算書と湿り空気線図、空調機選定表を見比べて給気条件を検討する設計者

SHFの計算・空気線図・機器選定で間違えやすいポイント

SHFは短い式なので、数字を求めること自体は難しくありません。間違いは、負荷計算、空気線図、機器選定の間で計算範囲や状態点が変わったときに起こります。

室負荷と装置負荷を同じSHFとして扱う

室別負荷計算書から空調機選定表を作るときは、室内負荷と空調機が処理する負荷の境界が変わります。外気を外調機で処理する計画と、同じ空調機へ取り込む計画を分けて考える場面です。

よくある間違い 室内だけの顕熱・潜熱から求めたSHFを、そのまま外気を含む冷却コイルの能力比として使い、必要な全熱能力と除湿能力を小さく選定する。

確認すべきこと 室別負荷計算書、外気負荷表、空調系統図を並べ、外気、ファン発熱、ダクト熱取得をどの集計へ含めたか確認します。その後、室SHFは室の給気条件、装置SHFはコイル選定へ使い分けます。

用途名だけでSHFを固定する

基本設計で室別負荷の入力条件を作るときは、室名だけが先に決まり、人数や機器の使い方がまだ確定していないことがあります。参考値を仮置きする場合も、更新時期を決める場面です。

よくある間違い 「事務所」「サーバー室」「厨房」という室名だけを根拠に、標準的とされるSHFを負荷計算へ入力する。

確認すべきこと 在室人数、活動、照明・機器、外気量、局所排気、水蒸気発生、設計時刻を室別に確認します。用途別の値は初期検討の比較にとどめ、設計が進んだら室別負荷計算書で更新します。

SHF線とコイル出口線を同じものと考える

基本設計で湿り空気線図を作成し、室の給気点と空調機のコイル出口点を検討する場面です。室内で負荷を受ける状態変化と、コイル内で冷却除湿される状態変化を別々に描きます。

よくある間違い 機器選定で、室内点から引いたSHF線を冷却コイルの入口・出口変化と同じだと判断し、ADPを実際の給気点として採用して、コイル出口温度と絶対湿度を誤って決める。

確認すべきこと 湿り空気線図で、室内点と給気点を結ぶ室の状態線、混合空気点からコイル出口へ向かうコイル特性線を分けます。メーカー選定表の出口条件とバイパスファクタを照合し、実際の給気点を決めます。

設計SHFだけで部分負荷時の湿度を判断する

VAV方式や容量制御機器の制御条件を決めるときは、最大負荷時だけでなく、曇天、夜間、少人数利用などの時間帯も確認します。温度負荷だけが先に減る場面での除湿を検討します。

よくある間違い 最大負荷時のSHFに機器が合っているため、年間を通して室内湿度も維持できると判断する。

確認すべきこと 日射・照明・機器が減る時間帯と、在室者・外気の潜熱が残る時間帯を時刻別負荷で確認します。低負荷時の運転範囲、最小風量、除湿モード、再熱、外調機の制御をメーカー仕様書と制御図で決めます。

設計で使うSHF確認チェックリスト

このリストは、空調設計者が基本設計から実施設計でSHFを給気条件と機器選定へつなげるためのものです。室別負荷計算書、湿り空気線図、空調機選定表、系統図、制御図を手元に置いて確認します。

☐ SHFの分子と分母が、同じ室・設計時刻・計算範囲の負荷になっている

☐ 室SHF、外気を含む装置SHF、メーカー能力表のSHRを区別した

☐ 室内点と給気点を、案件の圧力条件に合う湿り空気線図へ置いた

☐ SHF線上の給気点が、給気温度・湿度・風量・ドラフト条件を満たす

☐ 顕熱負荷と温度差から求めた風量を、送風機・ダクト・吹出口へ反映した

☐ コイル選定表の入口・出口条件、全熱・顕熱能力、冷水条件、ドレン量を照合した

☐ ADPと実コイル出口状態を区別し、バイパスファクタを確認した

☐ 部分負荷時の最小風量、除湿、再熱、外調機の制御を確認した

☐ 設計条件が変わったときに、負荷計算・線図・機器選定表を同じ条件で更新した

まとめ|SHFを負荷計算・空気線図・機器選定へつなげる

顕熱比(SHF)は、全熱負荷のうち顕熱負荷が占める割合です。SHF = qs / (qs + ql) で求め、値が高いほど温度処理、低いほど水分処理の割合が相対的に大きいと読みます。

実務では、SHFの数字より先に計算範囲を確認します。室別負荷計算書で室SHFを求め、湿り空気線図で室内点から給気条件を検討し、顕熱負荷と温度差から送風量を計算します。その後、空調機選定表の出口状態、顕熱・全熱能力、コイル条件と照合してください。

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参考・出典

Baseline Control Systems in the Intelligent Building Agents Laboratory|NIST

Strategy Guideline: HVAC Equipment Sizing|U.S. Department of Energy

Measure Guideline: Air Conditioner Diagnostics, Maintenance, and Replacement|U.S. Department of Energy

Algorithms for the Calculation of Psychrometric Properties|NIST

令和8年建築設備士試験 第一次試験(建築設備)|建築技術教育普及センター

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