空調設備

設計外気条件とは?外気温・湿度・日射・風が空調負荷に与える影響

日射が窓に当たり、湿った外気が外気取入口から空調設備へ取り入れられる様子を描いたオフィス断面図
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設計外気条件とは、空調負荷を計算するときに使う、設計用の外気温・湿度などの条件です。 気象庁が観測した最高・最低気温をそのまま使うのではありません。建設地や建物の用途、空調する時間、採用する設計基準に合わせて、計算に使う値を決めます。

初めて空調負荷を計算すると、「外気温は何度にすればよいのか」「湿度や日射は、どこまで計算に入れるのか」と迷います。外気温だけを決めても、負荷計算の条件はそろいません。湿度、日射、風、建物の方位、窓の仕様なども関係するからです。

この記事では、外の気象条件が空調負荷にどう影響するのかを、順番に説明します。都市ごとの数値を覚えることが目的ではありません。どの資料を使い、建築側と何を確認してから計算を始めるのかが分かれば、実務でも試験でも条件を読み取りやすくなります。

この記事でわかること

  • 観測された気温と設計外気条件の違い
  • 外気温・湿度・日射・風が影響する負荷
  • 外気負荷を比エンタルピー差で計算する理由
  • 負荷計算を始める前に、意匠担当者や運用担当者と確認すること
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空調負荷に影響する気象条件と、その経路

外気温、湿度、日射、風は、それぞれ違う場所で空調負荷に影響します。外気温は、外壁や窓を通る熱のほか、換気やすきま風で入る空気の温度にも関係します。湿度は、主に換気やすきま風による潜熱負荷に関係します。

日射は、窓から入る熱や、外壁・屋根が受ける熱を増やします。風は、外壁の表面での熱の伝わり方や、開口部・すきまから出入りする空気の量に影響します。

気象要素主に影響を受けるところ負荷計算で行うこと
外気温外壁・屋根・床・窓、換気外気、すきま風室内外の温度差から顕熱負荷を計算する
外気湿度換気外気、すきま風室内外の湿度差から潜熱負荷を計算する
日射窓、外壁、屋根方位、時刻、季節、窓仕様、日よけを計算条件に入れる
風向・風速外壁の表面、開口部、すきま、給排気口建物形状、気密性能、周辺環境と合わせて影響を確認する
雨・雪など外気取入口、屋外機器、ルーバー、点検経路吹込み、凍結、積雪、点検のしやすさを設備計画に反映する

国土交通省の「建築設備設計基準 令和6年版」でも、冷房・暖房負荷には、構造体やガラスを通る熱、すきま風、換気のために取り入れる外気などが含まれています。

負荷計算では、まず二つに分けて考えると分かりやすくなります。一つは、壁・屋根・床・窓を通って室内へ伝わる熱です。もう一つは、換気やすきま風によって室内へ入る空気が持っている熱と水分です。

外気温・湿度・日射・風が外皮・窓・すきまと換気外気を通じて空調負荷に影響する経路図

観測された気温と設計外気条件は同じではありません

気象庁は、気温、湿度、風向・風速、降水量、日照時間、日射量などを観測しています。また、1991~2020年の観測値をもとにした平年値も公表しています。平年値は、その地域で通常どのような気候になるのかを見るための資料です。

空調負荷の計算では、観測史上の最高気温や最低気温、ある一日の気温、平年値をそのまま入力するわけではありません。採用する設計基準に従い、計算に使う外気温と湿度を選びます。これが設計外気条件です。

設計外気条件を決めるときは、設計値を超える時間をどの程度まで許容するかも考えます。すべての時間で設計値を超えないようにすると、非常にまれな気象条件に合わせて大きな機器を選ぶことになるためです。TACは、設計値を超える時間の割合を使って外気条件を選ぶ考え方の一つです。

TACの超過率、対象期間、乾球温度と湿球温度の組合せは、採用する基準や気象データによって異なります。実際の案件では、用途、規模、地域、空調時間、契約図書を確認し、採用する資料の最新版から数値を選びます。

厳しい条件を選べば、必ずよい設計になるわけでもありません。必要以上に大きな機器を選ぶと、設備費が増えるだけでなく、負荷が小さい時間帯に細かな制御がしにくくなることがあります。

一方、病院、データセンター、特殊用途室などは、空調が止まったときの影響が大きいため、一般的な事務室より厳しい条件が必要になる場合があります。建物の用途と要求性能を確認したうえで決めます。

外気負荷では、温度と湿度の両方を計算します

夏の外気を室内へ取り入れるとき、空調機は外気の温度を下げます。同時に、外気に含まれる水分も取り除きます。温度を下げるための顕熱負荷と、水分を取り除くための潜熱負荷の両方が発生します。

この二つを合わせた外気の全熱負荷は、次の式で計算できます。

q_o = ρ × Q_o / 3600 × (h_o - h_i)

  • q_o:外気の全熱負荷[kW]
  • ρ:空気密度[kg/m³]
  • Q_o:外気量[m³/h]
  • h_oh_i:外気・室内空気の比エンタルピー[kJ/kg]

ρ × Q_o / 3600 は、1秒間に取り入れる空気の質量を表します。これに、外気と室内空気の比エンタルピー差を掛けます。単位を並べると、kg/s × kJ/kg = kJ/s = kW となるため、外気の全熱負荷をkWで求められます。

顕熱負荷は、おおむね空気量と温度差に比例します。潜熱負荷は空気量と絶対湿度差、全熱負荷は空気量と比エンタルピー差を使います。夏の外気が高温で湿っている場合、空調機は冷却と除湿の両方を行います。

ここで間違えやすいのが単位です。外気量が m³/h なのか m³/min なのかで、式への入れ方が変わります。また、比エンタルピー差と温度差は同じ値ではありません。計算を始める前に、求める負荷の種類と単位を確認します。

日射の影響は、方位・時刻・窓仕様で変わります

窓から入る日射は、室の冷房負荷を増やします。日射の強さは方位や時間帯によって変わるため、冷房負荷が最大になる時刻も部屋ごとに異なります。

日射を考えるときは、次の三つを分けておくと混同しにくくなります。

  1. ある時刻に窓へ当たる日射の強さ
  2. 一日、または一季節を通じて窓から入る熱の合計
  3. 室、空調系統、建物全体で冷房負荷が最大になる時刻

たとえば、東向きの窓には午前中に日射が入りやすく、西向きの窓には午後に入りやすくなります。ただし、実際に室内へ入る熱の量は、窓の方位だけでは決まりません。ガラスの日射熱取得率、窓面積、庇、ルーバー、ブラインド、周辺建物の影も影響します。

外壁や屋根が日射を受けた場合、その熱がすぐに室内へ伝わるとは限りません。材料が熱を蓄えるため、時間がたってから室内側の負荷に影響することがあります。

建物模型を囲み方位・時刻・窓仕様・庇・外気取入口を確認する意匠設計者と設備設計者

国土交通省の住宅省エネルギー基準の資料でも、窓から入る日射熱は、方位、窓仕様、付属部材、日射補正を組み合わせて計算します。ただし、この方法は住宅の省エネ評価に使うものです。業務建築の時刻別ピーク負荷を計算するときに、同じ方位係数をそのまま使うことはできません。

意匠設計との打合せでは、窓面積と方位だけでなく、「何時ごろ、どの部屋に日射が入るのか」まで図面で確認します。そこまで分かると、庇、外付けルーバー、ガラス、ブラインドのうち、どの方法で日射を減らすのかを具体的に相談できます。

風・雨・雪は、設備の配置や納まりにも影響します

風は、外壁表面での熱の伝わり方や、開口部・すきまから出入りする空気の量に影響します。同じ風速でも、建物の形、風向、周辺の建物、開口部の位置、建物の気密性能が違えば、外壁にかかる風圧も変わります。

建築研究所の風圧係数データベースでも、建物形状によって風圧係数が変わることが示されています。風圧係数は、風が建物の各面をどの程度押すか、または吸い出すかを表す値です。

すきま風量を決めるときは、地域の風速だけでは判断できません。建物形状、気密性能、開口部、室内を正圧・負圧のどちらに保つかといった条件も一緒に確認します。

給気口と排気口の位置も重要です。排気した空気を給気口が再び吸い込む「ショートサーキット」が起きないか、その地域で多い風向に対して給排気口の向きが適切かを確認します。人の出入りが多く、扉が頻繁に開く室では、扉から入る外気も考えます。

雨や雪は、通常の空調熱負荷へ一律に加えるものではありません。外気取入口へ雨や雪が吹き込まないか、ドレンが凍結しないか、屋外機器の周囲に雪が積もらないかを確認します。点検する人が安全に近づけるかも、設備の配置を決める条件です。

海岸部、寒冷地、多雪地域、都市部では、気象台と建設地で風や気温の条件が違うことがあります。公開されている気象データに加えて、敷地周辺の建物や地形も見ます。

負荷計算を始める前に確認する7項目

建設地、用途、内外条件、外皮と窓、換気とすきま、時系列ピーク、記録の順に示した設計条件確認手順

1. 建物がいつ、どのように使われるかを確認する

在室時間、空調時間、発熱の大きい室、温湿度を保つ範囲を確認します。同じ地域に建つ建物でも、昼間だけ使う事務所と24時間運転する施設では、計算で見る時間帯が違います。

2. 使用する気象データを決め、出典を残す

使用する資料の名前、版、観測地点、設計外気条件の出典を計算書へ書きます。官庁施設の基準を民間の建物で参考にする場合は、その基準の適用範囲と、契約図書で指定された条件も確認します。

3. 室内条件と外気条件をそろえる

冷房・暖房の乾球温度だけでなく、湿度、空調時間、室温・湿度の許容範囲も決めます。病室や電算室など、温湿度の条件が一般室と異なる部屋は、分けて計算します。

4. 意匠図から外壁・屋根・床・窓の条件を拾う

外壁・屋根・床の構成、窓の面積と仕様、方位、庇、ブラインド、建物の気密性能、周辺建物の影を図面から拾います。まだ決まっていない項目には仮の値を入れ、その値が変わったら再計算することを意匠担当者と共有します。

5. 換気量と扉の使われ方を確認する

必要外気量、全熱交換器の有無、厨房やトイレなどの排気量、室内を正圧・負圧のどちらに保つかを確認します。扉の開閉が多い室は、図面だけでは使われ方が分からないため、運用担当者にも聞きます。

6. 各室と建物全体の最大負荷を比べる

各室の冷房負荷が最大になる時刻は、すべて同じとは限りません。熱源機器の容量を決めるときは、各室の最大値を単純に足すのではなく、同じ時刻の負荷を建物全体で合計します。

7. 変更前後の計算条件を記録する

使用した資料、版、入力値、仮定した条件、変更日を計算書へ残します。窓面積や空調時間が変わったときに、どの室や空調系統を再計算すればよいか分かるようにしておきます。

次のチェックリストは、基本設計から実施設計の負荷計算に入る前に、設備設計者が意匠担当者や運用担当者と条件をそろえるためのものです。計算を始める前と、窓・外皮・換気条件が変わった後に使います。

負荷計算前の確認チェックリスト

☐ 建設地、標高、周辺環境、観測地点の違いを確認した

☐ 採用する設計基準・気象データの資料名と版を記録した

☐ 用途、在室時間、空調時間、室内温湿度条件をそろえた

☐ 外壁・屋根・床・窓の仕様と面積を意匠図と照合した

☐ 窓の方位、庇、ルーバー、ブラインド、周辺の影を確認した

☐ 外気量、全熱交換器、排気、室圧、扉開閉の条件を確認した

☐ 室・系統・建物全体のピーク時刻を分けて確認した

☐ 仮定値、未確定事項、変更時の再計算範囲を記録した

建築設備士試験では、問題文の条件と単位を確認します

建築設備士試験では、外気条件、日射、外気負荷、顕熱・潜熱が、文章問題や計算問題の手掛かりになります。

過去問題の正誤は、出題された年に適用されていた法令・基準で決まっています。現在は数値や条件が変わっている場合があるため、過去問題の解答と最新版の基準は分けて確認します。

似た内容の選択肢を見分けるときは、次の「判断する順番」で問題文を読みます。

  1. 冷房と暖房のどちらを扱う問題か、対象季節を見る
  2. 気温、湿度、比エンタルピー、日射、風のうち、何が与えられているかを見る
  3. 顕熱、潜熱、全熱のうち、何を求めるのかを確認する
  4. 外気量の単位が m³/hm³/minL/s のどれかを見る
  5. 温度差、絶対湿度差、比エンタルピー差のうち、どの値を使うのかを決める
  6. 一つの室の最大負荷か、同じ時刻の建物全体負荷かを区別する
  7. 日射の問題では、方位、時刻、季節、日よけの条件を読む

計算式を選ぶときは、空気の量、室内外の状態の差、求める熱の種類を確認します。この三つが分かれば、顕熱・潜熱・全熱のどの式を使うのかを判断できます。

間違えやすいポイント

観測史上の最高・最低気温を、そのまま設計値にする

よくある間違い:観測史上の最高気温や最低気温を使えば、いつでも安全側になると考える。

確認すべきこと:設計外気条件は、建物の用途、空調時間、許容する超過率、採用する設計基準に合わせて決めます。必要以上に厳しい条件にすると、機器が大きくなり、設備費や低負荷時の制御に影響することがあります。

外気負荷を温度差だけで計算する

よくある間違い:夏の換気外気を、室内外の温度差による顕熱負荷だけで計算する。

確認すべきこと:外気を除湿する場合は、潜熱負荷も発生します。顕熱と潜熱を合わせた全熱負荷を求めるときは、外気と室内空気の比エンタルピー差を使います。

方位だけで日射負荷の大きさを決める

よくある間違い:「西面が最大」など、方位だけを見て、室や建物の最大負荷を決める。

確認すべきこと:季節、時刻、窓面積、ガラス仕様、庇、ブラインド、周辺建物の影、外壁や屋根の熱容量も影響します。一つの室で負荷が最大になる時刻と、建物全体で負荷が最大になる時刻も分けて考えます。

地域の風速だけで、すきま風量を決める

よくある間違い:地域の風速に一律の係数を掛ければ、すきま風量を求められると考える。

確認すべきこと:建物形状、風向、開口部、気密性能、周辺環境、室内外の圧力差によって、すきまから入る空気の量は変わります。採用したすきま風量が、どの条件をもとに決められた値なのかを確認します。

まとめ

設計外気条件は、空調負荷を計算するときに使う、設計用の外気温・湿度などの条件です。建設地の気象データ、建物の用途、空調時間、採用する設計基準を確認して、計算に使う値を決めます。

外気温は、外壁・屋根・床・窓を通る熱と、換気・すきま風で入る空気の両方に影響します。湿度は主に潜熱負荷、日射は窓・外壁・屋根から入る熱、風はすきま風量や給排気口の計画に関係します。

負荷計算を始める前に、使用する資料と版、室内外の温湿度、外皮・窓の仕様、換気量、空調時間をそろえます。計算書へ入力値と仮定した条件を残しておけば、意匠変更や運用変更があったときも、必要な範囲を再計算できます。

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参考・出典

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