空調設備

室内空気環境の基準と法律|ビル管理法・建築基準法・事務所則の違い

室内の空調・換気設備と図面を確認する設計者を描いた、室内空気環境の基準と法律のアイキャッチ
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「室内のCO2濃度は1,000ppm以下にすればよい」と聞いたことはないでしょうか。室内空気環境の資料ではよく見かける数値ですが、実は、この数字だけで法令への適合を判断することはできません。

建物の用途や規模、居室かどうか、設備方式、働く人がいる場所かどうかによって、確認する法令が変わるからです。似た数値がいくつも登場するため、設備を学び始めたときに混乱しやすいところでもあります。

この記事では、代表的な三つの法令を、設計時の建築基準法、運用時の建築物衛生法、働く場所の事務所衛生基準規則に分けて順に見ていきます。すべての数値を一度に覚える必要はありません。まずは「どの建物の、どの段階に関わる法令か」がわかれば十分です。

この記事でわかること

  • 建築物衛生法・建築基準法・事務所衛生基準規則の役割と対象
  • CO2濃度1,000ppmなどの数値を比較するときの前提条件
  • 建築物衛生法の特定建築物と空気環境基準
  • シックハウス対策の換気回数0.5回/hと0.3回/hの違い
  • 設計初期に用途・規模・居室・設備方式を確認する手順
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室内空気環境を扱う三つの法令

はじめに、三つの法令がどこで関わるのかを見ていきます。同じ温度やCO2を扱っていても、目的と使う場面はそれぞれ異なります。

設計時、運用時、働く場所という三つの視点で室内空気環境の法令を整理した図
法令主な役割最初に確認すること
建築基準法建築物・建築設備の最低基準居室、換気開口、換気設備、中央管理方式、シックハウス対策
建築物衛生法(ビル管理法)多数の人が使う特定建築物の維持管理用途、面積、空調・機械換気設備、測定・管理方法
事務所衛生基準規則労働者が働く事務所の衛生事務室、在室者、気積、換気、空調・機械換気設備

三つの法令に上下関係があるわけではありません。たとえば、建築基準法に適合して建物が完成しても、使い始めてからは建築物衛生法や労働衛生上の確認が必要になる場合があります。

数値が同じ項目でも、対象となる部屋や測定条件まで同じとは限りません。まず「何のための基準か」を見ると、違いをつかみやすくなります。

建築物衛生法は特定建築物の維持管理を定める

ここからは、それぞれの法令を順番に見ていきます。まずは、建物を使い始めた後の維持管理に関わる建築物衛生法です。

正式名称は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」で、一般にはビル管理法とも呼ばれます。名称は長いですが、「一定規模以上の建物を衛生的に管理するための法律」と考えると入りやすいでしょう。

特定建築物は用途と面積で判断する

対象用途には、興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校、旅館などがあります。これらの用途に供される部分の延べ面積が原則3,000m²以上の場合が特定建築物です。専ら学校教育法第1条の学校や幼保連携型認定こども園として使う建築物は、8,000m²以上が基準です。

ここで大切なのは、「大きな建物ならすべて対象」と考えないことです。用途と、対象部分の面積をセットで見ます。複合用途や用途変更がある案件では判断が分かれることもあるため、保健所等の所管へ確認してください。

空気調和設備と機械換気設備で項目が異なる

空気調和設備を設けている場合の基準は次のとおりです。

項目基準
浮遊粉じん0.15mg/m³以下
一酸化炭素6ppm以下
二酸化炭素1,000ppm以下
温度18℃以上28℃以下、かつ外気温より著しく低くしない
相対湿度40%以上70%以下
気流0.5m/s以下
ホルムアルデヒド0.1mg/m³以下

機械換気設備のみの場合は、浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、気流、ホルムアルデヒドが対象です。空調設備と機械換気設備では対象項目が異なるため、温度と相対湿度まで同じ条件だと思わないようにしましょう。

測定できる設計と運用を考える

空気環境の測定は、通常の使用時間中に、各階の中央部で、床上75〜150cmの位置を基本として原則2か月以内ごとに1回行います。ホルムアルデヒドは、新築・増築・大規模修繕・大規模模様替え後の最初の6月1日から9月30日までの期間に1回測定します。

「測定は完成後の話だから、設計には関係ない」と思うかもしれません。しかし、測定位置へ立ち入れなかったり、家具や間仕切りで測定場所が取れなかったりすると、運用を始めてから困ります。

測定する人の動線、代表点を置ける場所、記録の引継ぎまで、設計段階で少し先回りして考えておくと安心です。

建築基準法は居室・換気設備・建材を確認する

次は、設計や確認申請で関わる建築基準法です。ここでは「換気」という一つの項目だけを見るのではなく、自然換気の開口、機械換気、中央管理方式の空気調和設備、シックハウス対策を分けて考えます。

居室の換気開口は床面積の20分の1が基本

建築基準法第28条第2項は、居室に換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積を床面積の20分の1以上とすることを基本としています。技術基準に適合する換気設備を設けた場合などは例外があります。

つまり、「窓が付いているから大丈夫」とは限りません。換気に有効な面積がどれだけあるか、どこまでが居室か、換気設備で代替できるかを図面で見ます。

中央管理方式の現行値は建築物衛生法の主要値とそろう

中央管理方式の空気調和設備には、施行令第129条の2の5第3項の基準があります。現行の主要値は、粉じん0.15mg/m³以下、CO6ppm以下、CO2 1,000ppm以下、温度18〜28℃、相対湿度40〜70%、気流0.5m/s以下です。

この部分は、古い資料を使うと間違えやすいところです。温度17℃以上、CO10ppm以下と書かれた資料もありますが、2022年4月の改正後は18℃以上、CO6ppm以下へ変わっています。

現在の主要値は建築物衛生法とそろっています。ただし、数値が同じだからといって、対象設備や法令の役割まで同じになるわけではありません。

シックハウス対策の換気回数は用途で分かれる

国土交通省のシックハウス対策は2003年7月1日に施行され、居室を有する建築物には原則として機械換気設備が必要です。必要な換気回数は、住宅等の居室では0.5回/h、その他の居室では0.3回/hが原則です。

「24時間換気は0.5回/h」と覚えている方も多いかもしれません。ただし、0.5回/hはすべての居室に共通する値ではありません。

ここでいう住宅等には、住宅の居室のほか、就寝に使う宿泊施設の客室など、施行令が定める居室が含まれます。天井高さ、換気経路、使用建材、代替措置などの条件もあるため、用途を確認してから値を使います。

事務所衛生基準規則は働く人の衛生を扱う

三つ目は、働く人の環境を守る事務所衛生基準規則です。建物全体が特定建築物に当たるかどうかとは別に、労働者が常時働く事務所かどうかを見ます。

一般規定と設備を設けた事務室を分ける

労働者1人当たりの気積は、設備の占める容積と床上4mを超える空間を除いて10m³以上必要です。換気のための開口部は床面積の20分の1以上を基本とし、十分な換気能力をもつ設備を設けた場合は例外となります。一般規定の室内濃度はCO50ppm以下、CO2 5,000ppm以下です。

空気調和設備または機械換気設備を設けた事務室では、供給空気を粉じん0.15mg/m³以下、CO10ppm以下、CO2 1,000ppm以下、ホルムアルデヒド0.1mg/m³以下とし、室内気流を0.5m/s以下とします。空気調和設備を設けた場合は、室温18〜28℃、相対湿度40〜70%となるよう努めます。

ここで間違えやすいのが、温度・相対湿度は努力義務であることと、COの値が建築物衛生法とは異なることです。数値だけを抜き出さず、法令名と設備条件も一緒に見てください。

基準値は「対象・設備・段階・義務」で比較する

比較軸確認する質問読み違いを防ぐポイント
対象どの用途・規模・室が対象か建物全体、居室、特定建築物、事務室を区別する
設備空調か機械換気か、中央管理方式か同じ法令でも設備方式で項目が変わる
段階設計・確認申請か、運用・測定か設備の技術基準と維持管理基準を混同しない
義務義務か努力義務か「努める」を一律の義務と書き換えない
測定どこで、いつ、どの方法で測るか基準値だけでなく測定条件も照合する

表の項目を一つずつ見れば、似た数値が出てきても慌てる必要はありません。「誰に、どの設備に、いつ適用する基準か」をそろえてから比べます。

CO2 1,000ppmも複数の条項に現れますが、この値だけで換気設備の適否や室内の快適性は決まりません。想定在室者、発生量、外気濃度、換気方式、運用条件を使った必要換気量の検討が別に必要です。

設計実務では何から確認すればよいか

用途、規模、居室、設備方式、労働者の有無から確認先を整理するフロー図

法令ごとの違いがわかったら、実際の設計へ置き換えてみましょう。最初から条文を行き来するより、用途、規模、居室、設備、働く人の順に確認すると整理しやすくなります。

1. 用途と規模を整理する

まず、確認申請上の用途と、実際の使われ方を書き出します。複合用途、特定用途部分の面積、将来の用途変更もわかる範囲で拾い、建築物衛生法の対象になりそうかを見ます。

2. 居室と在室条件を整理する

次に、居室・非居室、常時使用・一時使用、就寝の有無、想定在室者、燃焼器具を書き出します。ここまでわかると、建築基準法の換気・シックハウス対策と、換気量計算に必要な条件が見えてきます。

3. 設備方式を整理する

自然換気、機械換気、空気調和設備、中央管理方式のどれに当たるかを見ます。機器の名前だけでは決められません。法令上の用語と、メーカー資料や設計図で使う名称が一致しない場合があるためです。

4. 働く場所か確認する

労働者が常時働く事務室であれば、事務所衛生基準規則も対象になります。テナント区画では、建物側設備とテナント側設備のどちらが何を担うかも決めておきます。

5. 確認先と成果物を決める

確認先は、建築主事・指定確認検査機関、保健所、労働基準監督署など、相談したい内容によって変わります。「どこへ聞けばよいかわからない」ときは、まず論点を建築確認、建物の衛生管理、労働環境のどれかに分けてみましょう。

確認した内容は、法令チェックリスト、換気計算書、設備系統図、外気取入・排気計画、測定・維持管理計画へ反映します。

建築との取り合いは空気の入口から測定まで見る

外気取入口、ダクトと空調機、給気から排気までの室内経路、測定位置を4段で示した図

法令の条件が、実際の建物に無理なく納まるかも見ておきます。まず外気取入口と排気口は、排気した空気を再び吸い込む「短絡」が起きにくい位置にします。道路、駐車場、冷却塔、厨房排気、便所排気など、周囲の汚染源との位置関係も見ます。

必要な風量を通すダクト、天井懐、DS、機械室の寸法は、基本設計の段階から建築計画へ反映します。防火区画、梁、点検口、フィルター交換動線、騒音・振動対策との取り合いもあります。

内装材は、ホルムアルデヒド発散区分と使用面積を意匠仕様と照合します。竣工後は、測定位置、機器点検、フィルター交換、運転時間を維持管理者へ引き継げる計画にします。

建築設備士試験では、数値と適用条件をセットで覚える

このテーマを試験学習へつなげるときは、法令名や数値を一つずつ暗記するだけでは不十分です。選択肢に書かれた「どの建物・室か」「どの設備か」を読み、その条件に合う基準を選べるようにしておきます。

問題文では四つの手掛かりを見る

  • 用途・規模:特定建築物に該当するか
  • 室の使い方:居室か、事務室か、就寝に使う室か
  • 設備方式:自然換気、機械換気、空気調和設備、中央管理方式のどれか
  • 規定の強さ:守る基準か、「努める」とされている基準か

数値は「何に対する値か」と一緒に整理する

問題文の手掛かり結びつける内容
特定建築物の用途と面積対象用途に使う部分が原則3,000m²以上。専ら学校教育法第1条の学校や幼保連携型認定こども園として使う建築物は8,000m²以上
居室の換気に有効な開口部床面積の20分の1以上が基本。技術基準に適合する換気設備を設ける場合などは例外がある
シックハウス対策の機械換気住宅等の居室は0.5回/h、その他の居室は0.3回/hが原則
特定建築物の空調設備・中央管理方式の空調設備主要値はCO6ppm以下、CO2 1,000ppm以下、温度18〜28℃、相対湿度40〜70%
空調・機械換気設備を設けた事務室CO10ppm以下、CO2 1,000ppm以下。温度18〜28℃と相対湿度40〜70%は、空調設備を設けた場合の努力義務

似た基準は、数値より先に対象を確かめる

選択肢は、対象 → 設備方式 → 規定の強さ → 数値の順に確認すると読み違いを減らせます。数値が合っていても、対象となる室や設備方式が違えば、その選択肢が正しいとは限りません。

なお、ここで示したのは本記事の内容を試験学習へ結びつけるための整理です。法令は改正されるため、受験年度の出題範囲と最新法令を確認してください。

間違えやすいポイント

ここでは、数値だけを覚えたときに起こりやすい間違いをまとめます。「よくある間違い」と「確認すべきこと」を一組で見てください。

CO2 1,000ppmだけで判断してしまう

よくある間違い

CO2濃度が1,000ppm以下なら、その部屋は法令に適合している。

確認すべきこと

1,000ppmという数値だけでは判断できません。適用法令、対象室、設備方式、測定条件を順に見ます。

建築物衛生法をすべての建物に当てはめる

よくある間違い

建築物衛生法の空気環境基準は、すべての建物に適用される。

確認すべきこと

用途と面積から、特定建築物に当たるかを判断します。対象外建築物でも、多数の人が使用する建築物には衛生的環境の確保に努める規定があります。

古い数値を現行基準として使う

よくある間違い

古い資料にある温度17℃以上・CO10ppm以下を、そのまま現在の基準として使える。

確認すべきこと

建築物衛生法と中央管理方式の現行値は、温度18℃以上・CO6ppm以下です。資料の発行年と法令の施行日を見ます。

24時間換気はすべて0.5回/hと考える

よくある間違い

24時間換気は、どの居室でも0.5回/hにすればよい。

確認すべきこと

住宅等は0.5回/h、その他の居室は0.3回/hが原則です。居室用途、換気経路、使用建材、例外規定もあわせて見ます。

法令値を満たせば快適になると考える

よくある間違い

法令の温度やCO2濃度を満たせば、その室内は快適になる。

確認すべきこと

法令値は、快適性をそのまま保証するものではありません。温熱快適性には、放射、着衣量、代謝量なども関係します。

設計・維持管理チェックリスト

☐ 建物用途と複合用途の範囲を整理した

☐ 特定建築物に該当する用途部分の面積を確認した

☐ 居室・非居室、就寝の有無、在室者条件を整理した

☐ 自然換気、機械換気、空気調和、中央管理方式を区別した

☐ 建築物衛生法・建築基準法・事務所衛生基準規則の対象を個別に確認した

☐ 数値は対象・設備条件・義務の強さとセットで記録した

☐ シックハウス対策の換気回数と建材制限を確認した

☐ 外気取入口・排気口・ダクト・DS・天井懐を建築図と照合した

☐ 測定位置、点検口、フィルター交換動線を確保した

☐ 個別案件の所管と最新版を確認した

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まとめ

室内空気環境の法令は、似た数値が多いため、最初はわかりにくく感じるかもしれません。そんなときは、数値の暗記から始めず、対象、設備、段階、義務、測定条件の順に見てください。

建築基準法は建築物と設備、建築物衛生法は特定建築物の維持管理、事務所衛生基準規則は働く人の事務環境を扱います。この三つの役割がわかれば、次に見るべき条文や確認先を選びやすくなります。

実務では、用途・規模・居室・設備方式・働く人の有無を書き出すところから始めます。その結果を、必要換気量、設備スペース、外気取入口、測定・維持管理計画へ順番に反映していきます。

参考・出典

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