室内発生熱負荷の計算方法|人体・照明・OA機器を顕熱と潜熱に分ける
冷房負荷計算書を作っていて、窓や外壁の負荷は埋まったのに「人体」「照明」「OA機器」の欄で手が止まった、ということはありませんか。人数は何人で入れるのか、照明は何ワットを拾うのか、PCは定格値でいいのか。ここが曖昧なままだと、会議が集中する午後に冷房が足りなくなったり、逆に空調機を必要以上に大きく選んだりします。
結論から言うと、室内発生熱負荷は次の3つを同じ時刻の条件で足し上げて求めます。
- 人体:在室人数 × 1人当たりの発熱量(顕熱と潜熱を別々に)
- 照明:その時刻に点灯している照明器具一式の入力電力
- OA機器:機器ごとの消費電力 × 同時稼働率
このうち、一般的な事務室で空気の湿度を上げる「潜熱」を出すのは主に人体です。そのため人体は、温度を上げる「顕熱」と潜熱を分けて計算し、照明とOA機器は顕熱として加えます。この記事では、3つの式の使い方を100 m²の事務室の計算例で確かめたうえで、図面や器具表のどこから入力値を拾うか、計算で間違えやすい点を順番に説明します。
室内発生熱負荷とは|部屋の中で出る熱と水分
室内発生熱負荷(内部発熱)は、部屋の中にいる人や、部屋の中で動いている照明・機器が出す熱と水分のことです。窓や外壁から入ってくる熱とは別に、室内で生まれる熱として冷房負荷に加えます。
この熱は「顕熱」と「潜熱」に分けて考えます。
- 顕熱:空気の温度を上げる熱。照明が点くと室温が上がる、PCの排気で机のまわりが暖かくなる、といった熱です。
- 潜熱:空気中の水蒸気を増やす熱。人の呼吸や汗で部屋の湿度が上がる分で、空調機が除湿して取り除きます。
人体・照明・OA機器が、それぞれどちらの熱を出すかを整理すると次のようになります。
一般的な事務室では、潜熱を出すのは主に人体と考えてください。ただし、加湿機能のある機器や、湯気が出る機器や水面が開いた機器がある部屋では、その水分も潜熱として加えます。
顕熱と潜熱を分けて計算する理由
合計値だけで足りるなら楽ですが、顕熱と潜熱は空調機の中で処理される場所が違います。
顕熱は、吹き出す空気の温度と送風量で処理します。顕熱が大きい部屋ほど、たくさんの冷たい空気を送る必要があり、送風量の計算に効いてきます。潜熱は、冷却コイルで空気を冷やして水分を結露させる「除湿」で処理します。潜熱が大きい部屋では、コイルの能力や除湿方式の検討が必要になります。
たとえば会議室は人が多く集まるため、事務室に比べて潜熱の割合が大きくなりがちです。合計値だけで機器を選ぶと、温度は下がっても湿度が下がらず、蒸し暑く感じる部屋になることがあります。計算書では顕熱と潜熱を別の列で集計しておきましょう。
人体・照明・OA機器の計算式
3つの発生源を、それぞれ次の式で計算します。記号の付け方は計算書やソフトで違いますが、考え方は同じです。
人体は人数×1人当たりの発熱量
人体は顕熱と潜熱を別々に計算します。
Qps = N × qs Qpl = N × ql
- Qps:人体の顕熱負荷[W]
- Qpl:人体の潜熱負荷[W]
- N:計算する時刻に在室している人数[人]
- qs:1人当たりの顕熱[W/人]
- ql:1人当たりの潜熱[W/人]
qsとqlは、座って事務作業をするのか、立って歩き回るのか、運動するのかといった活動の強さと、室温によって変わります。同じ人数でも、活動が激しいほど発熱量は大きくなり、室温によっても顕熱と潜熱の割合が変わります。採用した値は、活動条件と室内設計温度とセットで計算書に書いておいてください。
Nには在室率を反映した人数を入れます。定員30人の部屋で在室率を見込むなら、先に人数を決めてからNへ入れます。すでに在室率を反映した人数を入れたのに、計算書の別の欄でもう一度在室率を掛けてしまう、という二重掛けに注意しましょう。
照明は点灯中の器具の入力電力
照明はほぼすべてが顕熱です。消費した電力は最終的に熱になるので、入力電力をそのまま発熱量として扱います。
Qlight = Wl
- Qlight:照明の顕熱発生量[W]
- Wl:計算する時刻に点灯している照明器具一式の入力電力[W]
器具表の定格値を全部足すだけでは、消灯している区画や調光を反映できません。計算する時刻に、どの回路が何%で点灯しているかを電気設計者と確認し、それを反映した値をWlに入れます。点灯率を反映済みのWlに、点灯率をもう一度掛けないようにしてください。
OA機器は機器ごとに稼働率を掛けて合計
OA機器も、通常は顕熱だけとして扱います。PC、モニター、複合機、ネットワーク機器など、使い方の違う機器が混ざるので、機器ごとに稼働率を掛けて合計します。
Qe = Σ(Wi × fi)
- Qe:OA機器の顕熱負荷[W]
- Wi:機器iの運転時の消費電力[W]
- fi:機器iの同時稼働率[-]
同じ型式のPCでも、全台が同時に高負荷で動くとは限りません。一方で、ネットワーク機器のように24時間動き続ける機器にPCと同じ稼働率を掛けると、小さく見積もりすぎます。機器の種類ごとに行を分けて、稼働率を変えて入力するのが基本です。
計算例|100 m²の事務室で集計する
式の使い方を、仮定した条件で確認してみましょう。ここで使う1人当たりの発熱量や電力は、計算の流れを見るための仮の値です。特定の用途の標準値ではないので、実案件では設計条件や器具・機器の資料の値に置き換えてください。
手順1:人体を計算する
- 顕熱:Qps = 12 × 55 = 660 W
- 潜熱:Qpl = 12 × 65 = 780 W
手順2:照明とOA機器を顕熱として加える
照明800 W、OA機器1,200 Wは、どちらも顕熱として扱います。
手順3:顕熱と潜熱を別々に合計する
- 顕熱合計:Qs = 660 + 800 + 1,200 = 2,660 W
- 潜熱合計:Qlatent = 780 W(人体分のみ)
- 総発生熱量:Qt = 2,660 + 780 = 3,440 W = 3.44 kW
同じ部屋で、午後に会議が入って在室が20人になった場合も計算してみます。人体の顕熱は20 × 55 = 1,100 W、潜熱は20 × 65 = 1,300 Wです。顕熱合計は1,100 + 800 + 1,200 = 3,100 W、潜熱は1,300 W、合計4,400 Wになります。照明とOA機器が同じでも、人が増えると潜熱が780 Wから1,300 Wへ大きく増えることがわかります。人の多い時間帯がどこかで、除湿に必要な能力が変わるわけです。
なお、この3.44 kWは、この時刻の室内発生熱量です。そのまま同時刻の冷房負荷や空調機能力にはなりません。窓・外壁・屋根から入る熱、外気やすき間風による負荷、ファンやダクトの熱なども含め、放射熱が床・壁・机に蓄えられて遅れて室内空気を温める影響を、採用する計算方法に従って扱います。送風量やコイル能力を検討するときも、顕熱2.66 kWと潜熱0.78 kWの内訳を計算書に残しておきましょう。
入力値を図面・資料から拾う方法
計算式はシンプルですが、結果の精度は入力値で決まります。「事務室だからこの人数」「会議室だからこの電力」と用途名だけで決めず、図面と運用条件から拾うのが基本です。同じ100 m²でも、固定席10席の執務室と、研修で30人が集まる部屋では最大負荷がまったく違います。
人数は平面図の座席数と在室時刻から
まず平面図と家具レイアウトで座席数を数え、立って使う場所も含めて最大在室人数を出します。次に、勤務形態や会議の予約状況から、その人数がそろう時刻を決めます。執務室を一日中在室率100%とするのか、会議室だけ午後に満席にするのかで、空調系統全体のピーク時刻が変わってきます。
人数と合わせて、座り作業なのか立ち作業なのかといった活動条件も、発注者や利用者に確認しておきましょう。1人当たりの発熱量を選ぶ根拠になります。
照明は器具表の「器具一式の入力電力」
照明図で器具の台数と点灯区分(どの器具が同じスイッチ回路か)を確認し、照明器具表やメーカー資料から器具一式の入力電力を拾います。LED器具なら、電源部も含んだ器具一式の値が載っているので、その値で集計すると条件がそろいます。古い資料でランプだけのワット数しか書かれていない場合は、安定器などの電力を含むかどうかを確認してください。
調光する部屋では、最大点灯ではなく、冷房負荷がピークになる時刻の点灯率で入力します。また、天井裏を還気(部屋から空調機へ戻る空気)の通り道にしている場合などは、照明の熱の一部が室内に入らず天井裏側へ逃げます。どの割合を室内の負荷に入れるかは、採用している計算方法やソフトの設定に合わせます。
OA機器は機器表と実際の使い方から
PC、モニター、プリンター、複合機、ネットワーク機器などを、機器表と実際の使い方で照らし合わせます。ここで注意したいのは、銘板や電源アダプターの定格値は、普段の業務中の消費電力を示す値ではないということです。仕様書に通常運転時の消費電力が載っていればその値を使い、既存建物の改修なら実測値を使うのも有効です。
サーバーラックや大型複合機は、熱の行き先も確認してください。ラック背面の排気をダクトで屋外へ出すなら、排気に乗って出る熱は元の部屋から除かれます。一方、別室へ排気すれば、その別室に熱が入ります。排気が室内へ漏れる量や、排気を補う給気の負荷も含め、ダクト経路と給排気の計画を確認してください。サーバー室のように24時間動く機器がある場合は、人がいない夜間の顕熱も別に検討が必要です。
室内発生熱負荷の計算で注意する点
3つの最大値を別々の時刻で足さない
人体・照明・OA機器のそれぞれの最大値を、時刻を気にせず足すと、実際には同時に起こらないピークを重ねてしまいます。反対に、午後の大人数会議で照明・モニター・PCが一斉に動く部屋で同時使用を小さく見積もると、冷房が不足します。在室スケジュール、照明の点灯スケジュール、機器の運転スケジュールを同じ時間軸に並べて、負荷が最大になる時刻の値で集計しましょう。
放射熱は時間遅れで負荷になる
照明や人体の顕熱の一部は、放射熱として床・壁・机に吸収されてから、時間をおいて室内の空気を温めます。そのため、ある瞬間に発生した熱量と、その瞬間に空調機が処理する冷房負荷は同じになりません。
手計算で発生した熱をそのまま足す方法と、時刻別の負荷計算で蓄熱を考慮する方法では、結果が変わります。1つの計算書の中で、別の計算方法の係数を混ぜないようにし、採用した設計基準やソフトの入力ルールにそろえてください。
暖房負荷では内部発熱を見込まないことが多い
冷房では、人・照明・機器の熱が室温を上げる方向に働くので、負荷として加えます。一方、暖房機器の最大能力を決める計算では、内部発熱を見込まない(ゼロとする)のが一般的です。
理由は、暖房が最も厳しくなる場面を想定するからです。冬の早朝、人が出勤する前で照明もPCも消えている時間帯でも、部屋を設定温度まで暖められる能力が必要です。内部発熱を差し引いて暖房能力を小さくすると、この時間帯に部屋が暖まりきらなくなります。
ただし、これは「暖房中は人や照明の熱がない」という意味ではありません。年間のエネルギー消費量の計算や、時刻別の暖房負荷シミュレーションでは、内部発熱のスケジュールを入力して扱います。いま行っている計算が「最大能力を選ぶための計算」なのか「運転時の負荷を見る計算」なのかを、計算書の条件欄で確認してから判断しましょう。
まとめ|同じ時刻で顕熱と潜熱を分けて足す
室内発生熱負荷の計算のポイントをまとめます。
- 人体は「人数 × 1人当たりの発熱量」で、顕熱と潜熱を別々に計算する
- 照明は、計算する時刻に点灯している器具一式の入力電力を顕熱として加える
- OA機器は、機器ごとの運転時消費電力に稼働率を掛けて合計し、顕熱として加える
- 3つの値は、負荷が最大になる同じ時刻の条件でそろえる
- 人数は平面図と運用予定、照明は器具表と点灯区分、OA機器は機器表と実際の使い方・排熱先から拾う
- 暖房の最大能力を選ぶ計算では、内部発熱を見込まないのが一般的
数値を他の案件から流用するのではなく、設計条件、図面、メーカー資料、採用する計算方法をひとまとめにして確認すると、計算の根拠を説明できる計算書になります。
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参考・出典
- ASHRAE:Handbook 2025, Chapter 18: Nonresidential Cooling and Heating Load Calculations(人体・照明・機器による内部発熱、照明の使用率、放射による時間遅れ、設計暖房負荷の仮定)
- U.S. Department of Energy:EnergyPlus Engineering Reference v24.2(Zone Internal Gainsにおける人・照明・機器の熱収支モデル)
- 建築研究所:業務用建築物のエネルギー消費量評価手法に関する基礎的調査(建研資料No.176)(非住宅建築物の室使用条件と内部発熱に関する調査)
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