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装置露点温度(ADP)とバイパスファクタ(BF)とは|冷却コイル出口温度の計算

冷却コイルと技術者を背景にした「装置露点温度(ADP)とバイパスファクタ(BF)」のアイキャッチ
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ADPとBFは、冷却コイルを通った空気の温度と湿度を求めるための値です。

ADPは、冷却コイル全体を一つの温度で表した「有効なコイル表面温度」です。BFは、入口空気の状態が出口までどれだけ残るかを表します。

この二つが分かれば、入口空気がコイルでどこまで冷やされ、出口でどのような状態になるかを計算できます。

この記事でわかること

  • ・ADPと通常の露点温度の違い
  • ・BFが表すものと計算式
  • ・湿り空気線図上の入口・出口・ADPの位置
  • ・入口28℃、ADP 10℃、BF 0.15の出口温度
  • ・冷却コイル選定表で確認する項目
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ADPとBFで冷却コイルの出口状態が分かる

冷却コイルを通る空気のすべてが、フィンや管に同じように触れるわけではありません。よく冷やされる空気もあれば、入口の状態を強く残したまま通り抜ける空気もあります。

計算では、この複雑な動きを二つに分けて考えます。一つはADPまで冷やされた空気、もう一つは入口の状態を残した空気です。その混合結果が、実際の出口状態です。

入口空気を、入口状態を残す空気とADPまで処理される空気に分け、出口で混合するBFの物理モデル

ADPは冷却コイルの有効な表面温度

ADPは、Apparatus Dew Pointの略です。冷却・除湿コイルの働きを、一つの有効な表面温度で表します。

実際のコイル表面には温度差があります。そのため、ADPは特定の場所を温度計で測った値ではありません。入口と出口の空気状態から求める、計算上の代表値です。

BFは入口空気の状態が残る割合

BFは0から1の間で表します。単位はありません。

BFが0に近いほど、出口空気はADPに近づきます。BFが1に近いほど、入口空気の状態が出口に残ります。

BF出口空気の位置読み方
0に近いADPに近い冷却・除湿の効果が大きい
0と1の間ADPと入口の間一部がADPまで処理された状態
1に近い入口に近い入口の状態が多く残る

ASHRAE Handbookには、4列・面風速3.5 m/sでBFが30%、8列・面風速1.5 m/sで2%未満となる例があります。これは推奨値ではなく、コイルの列数や面風速でBFが変わることを示した例です。

ADPと通常の露点温度は別のもの

通常の露点温度は、ある空気を冷やしたときに結露が始まる温度です。一方、ADPは冷却・除湿コイルの働きを表すための値です。

比較項目通常の露点温度ADP
対象ある空気の水分状態冷却・除湿コイルの性能
線図上の求め方空気状態から同じ絶対湿度で左へ進む入口と出口を結ぶ線を飽和曲線まで延長する
主な用途結露の判断コイル出口状態や能力の確認

「露点」という言葉は同じでも、求め方と用途が違います。空気そのものの露点を知りたいのか、コイルのADPを知りたいのかを先に分けてください。

湿り空気線図では入口・出口・ADPが一直線に並ぶ

冷却・除湿の計算では、入口、出口、ADPの三つを湿り空気線図上の同じ直線に置きます。入口から出口へ線を引き、その線を飽和曲線まで延ばした交点がADPです。

湿り空気線図上で入口・出口・ADPが一直線に並び、ADPが飽和曲線上にある位置関係

入口と出口の状態が分かれば、この作図でADPを確認できます。逆に、入口、ADP、BFが分かれば、出口の位置を計算できます。

BFはADPを基準にした温度差の比

乾球温度を使うBFの式は次のとおりです。

BF = (t出口 - tADP) / (t入口 - tADP)

分母は入口からADPまでの温度差、分子は出口からADPまでの温度差です。つまりBFは、入口とADPの間のどこに出口があるかを示します。

同じ直線上にある理想モデルでは、絶対湿度 x と比エンタルピー h でも同じ形で表せます。

BF = (x出口 - xADP) / (x入口 - xADP)

BF = (h出口 - hADP) / (h入口 - hADP)

コイルに有効に接触した割合をコンタクトファクタ(CF)で表す場合は、次の関係になります。

CF = 1 - BF

BFが0.15なら、CFは0.85です。

入口28℃、ADP 10℃、BF 0.15なら出口は12.7℃

出口乾球温度を求める式に直すと、次のようになります。

t出口 = tADP + BF × (t入口 - tADP)

入口28℃、ADP 10℃、BF 0.15を代入します。

  1. 入口とADPの温度差を求める:28 - 10 = 18℃
  2. 出口に残る温度差を求める:18 × 0.15 = 2.7℃
  3. ADPに温度差を足す:10 + 2.7 = 12.7℃

したがって、出口乾球温度は 12.7℃ です。

検算すると、(12.7 - 10) / (28 - 10) = 0.15 となります。また、10℃(ADP)< 12.7℃(出口)< 28℃(入口) なので、位置関係にも矛盾はありません。

ここで使ったBF 0.15は計算方法を示すための仮定です。特定製品の仕様値や推奨値ではありません。

BFとADPは運転条件によって変わる

BFとADPは、コイルだけで決まる固定値ではありません。コイルの列数、面風速、冷水温度、入口空気の温湿度などが変わると、出口状態も変わります。

変わる条件結果に影響する理由確認先
コイル列数・フィン仕様伝熱面積と空気の接触状態が変わるメーカー選定表、コイル仕様
面風速・風量空気がコイルを通過する時間が変わる風量、コイル正面寸法、選定表
冷水温度・流量コイル表面温度と能力が変わる熱源条件、冷水選定条件
入口温湿度顕熱・潜熱能力と出口状態が変わる設計条件表、混合空気条件
汚れ・部分負荷・制御実運転時の伝熱と運転点が変わる保全記録、制御図、試運転記録

手計算の結果は、メーカーの選定結果と照合してください。実際の機器選定では、設計入口条件と風量をメーカーへ渡し、出口温湿度、全熱能力、顕熱能力、圧力損失まで確認します。

冷却コイル選定表では入口条件から確認する

冷却コイル選定表を受け取ったら、出口温度だけを見るのではなく、計算に使った条件が設計条件と一致しているかを確認します。

湿り空気線図、冷却コイル選定表、空調機仕様表を見比べて出口状態を確認する設計者

□ 入口空気の乾球温度と湿球温度、または相対湿度が設計条件と一致している

□ 出口空気の乾球温度と湿球温度、または絶対湿度が記載されている

□ 処理風量とコイル正面寸法から面風速を確認できる

□ 冷却全熱能力と顕熱能力が負荷計算の範囲に入っている

□ コイル列数、フィン仕様、回路数が選定条件に含まれている

□ 冷水入口・出口温度と流量が熱源計画と一致している

□ 空気側・水側の圧力損失がファンとポンプの計画に反映されている

□ ドレンパン、排水、点検、清掃のスペースが図面に反映されている

□ 風量変動や部分負荷時の制御方法を制御図で確認している

ADPやBFが選定表に直接書かれていない場合でも、入口と出口の温湿度から湿り空気線図上に二点を置けば、ADPを確認できます。BFは温度差、絶対湿度差、または比エンタルピー差から照合できます。

ADP・BFで間違えやすい4つの場面

通常の露点温度をADPとして使ってしまう

入口空気の露点温度は、入口空気の水分状態を示す値です。コイルのADPではありません。ADPを求めるときは、入口と出口を結ぶ線を飽和曲線まで延ばします。

BFの式で分子と分母を逆にしてしまう

どちらもADPを基準にした温度差です。分母を「入口-ADP」、分子を「出口-ADP」とします。計算後のBFが0から1の間に入り、ADP < 出口 < 入口 になるかを確認すると間違いに気づけます。

コイル選定表のBFをダンパのバイパス率として扱ってしまう

コイルのBFは、フィン付きコイルの性能を表すモデルです。空調系統のバイパス風量とは意味が違います。仕様書の記号定義と、メーカーがBFをどの意味で使っているかを確認してください。

最大負荷時の値を部分負荷時にも使ってしまう

風量や冷水条件が変われば、出口温湿度も変わります。部分負荷を検討するときは、メーカーの部分負荷性能と制御方法を確認し、必要なら出口状態を再選定します。

まとめ|ADPとBFを線図・計算・コイル選定へつなげる

ADPは冷却・除湿コイルの有効な表面温度、BFは入口空気の状態が出口に残る割合です。

湿り空気線図では、入口、出口、ADPが一直線に並びます。出口乾球温度は t出口 = tADP + BF × (t入口 - tADP) で求められます。

ただし、BFとADPは運転条件によって変わります。手計算だけで機器を決めず、入口条件、風量、冷水条件、能力、圧力損失をメーカー選定表で照合してください。

関連記事

参考・出典

ASHRAE Terminology: apparatus dew point / bypass factor(ASHRAE)

ASHRAE Handbook—HVAC Systems and Equipment, Chapter 4: Air Handling and Distribution(ASHRAE)

ASHRAE Handbook—Fundamentals, Chapter 1: Psychrometrics(ASHRAE)

Buildings Modelica Library: DXSystems.Cooling.UsersGuide(Lawrence Berkeley National Laboratory)

Buildings Modelica Library: DXCoils.BaseClasses.ApparatusDewPoint(Lawrence Berkeley National Laboratory)

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