装置露点温度(ADP)とバイパスファクタ(BF)とは|冷却コイル出口温度の計算
ADPとBFは、冷却コイルを通った空気の温度と湿度を求めるための値です。
ADPは、冷却コイル全体を一つの温度で表した「有効なコイル表面温度」です。BFは、入口空気の状態が出口までどれだけ残るかを表します。
この二つが分かれば、入口空気がコイルでどこまで冷やされ、出口でどのような状態になるかを計算できます。
ADPとBFで冷却コイルの出口状態が分かる
冷却コイルを通る空気のすべてが、フィンや管に同じように触れるわけではありません。よく冷やされる空気もあれば、入口の状態を強く残したまま通り抜ける空気もあります。
計算では、この複雑な動きを二つに分けて考えます。一つはADPまで冷やされた空気、もう一つは入口の状態を残した空気です。その混合結果が、実際の出口状態です。

ADPは冷却コイルの有効な表面温度
ADPは、Apparatus Dew Pointの略です。冷却・除湿コイルの働きを、一つの有効な表面温度で表します。
実際のコイル表面には温度差があります。そのため、ADPは特定の場所を温度計で測った値ではありません。入口と出口の空気状態から求める、計算上の代表値です。
BFは入口空気の状態が残る割合
BFは0から1の間で表します。単位はありません。
BFが0に近いほど、出口空気はADPに近づきます。BFが1に近いほど、入口空気の状態が出口に残ります。
| BF | 出口空気の位置 | 読み方 |
|---|---|---|
| 0に近い | ADPに近い | 冷却・除湿の効果が大きい |
| 0と1の間 | ADPと入口の間 | 一部がADPまで処理された状態 |
| 1に近い | 入口に近い | 入口の状態が多く残る |
ASHRAE Handbookには、4列・面風速3.5 m/sでBFが30%、8列・面風速1.5 m/sで2%未満となる例があります。これは推奨値ではなく、コイルの列数や面風速でBFが変わることを示した例です。
ADPと通常の露点温度は別のもの
通常の露点温度は、ある空気を冷やしたときに結露が始まる温度です。一方、ADPは冷却・除湿コイルの働きを表すための値です。
| 比較項目 | 通常の露点温度 | ADP |
|---|---|---|
| 対象 | ある空気の水分状態 | 冷却・除湿コイルの性能 |
| 線図上の求め方 | 空気状態から同じ絶対湿度で左へ進む | 入口と出口を結ぶ線を飽和曲線まで延長する |
| 主な用途 | 結露の判断 | コイル出口状態や能力の確認 |
「露点」という言葉は同じでも、求め方と用途が違います。空気そのものの露点を知りたいのか、コイルのADPを知りたいのかを先に分けてください。
湿り空気線図では入口・出口・ADPが一直線に並ぶ
冷却・除湿の計算では、入口、出口、ADPの三つを湿り空気線図上の同じ直線に置きます。入口から出口へ線を引き、その線を飽和曲線まで延ばした交点がADPです。

入口と出口の状態が分かれば、この作図でADPを確認できます。逆に、入口、ADP、BFが分かれば、出口の位置を計算できます。
BFはADPを基準にした温度差の比
乾球温度を使うBFの式は次のとおりです。
BF = (t出口 - tADP) / (t入口 - tADP)
分母は入口からADPまでの温度差、分子は出口からADPまでの温度差です。つまりBFは、入口とADPの間のどこに出口があるかを示します。
同じ直線上にある理想モデルでは、絶対湿度 x と比エンタルピー h でも同じ形で表せます。
BF = (x出口 - xADP) / (x入口 - xADP)
BF = (h出口 - hADP) / (h入口 - hADP)
コイルに有効に接触した割合をコンタクトファクタ(CF)で表す場合は、次の関係になります。
CF = 1 - BF
BFが0.15なら、CFは0.85です。
入口28℃、ADP 10℃、BF 0.15なら出口は12.7℃
出口乾球温度を求める式に直すと、次のようになります。
t出口 = tADP + BF × (t入口 - tADP)
入口28℃、ADP 10℃、BF 0.15を代入します。
- 入口とADPの温度差を求める:
28 - 10 = 18℃ - 出口に残る温度差を求める:
18 × 0.15 = 2.7℃ - ADPに温度差を足す:
10 + 2.7 = 12.7℃
したがって、出口乾球温度は 12.7℃ です。
検算すると、(12.7 - 10) / (28 - 10) = 0.15 となります。また、10℃(ADP)< 12.7℃(出口)< 28℃(入口) なので、位置関係にも矛盾はありません。
ここで使ったBF 0.15は計算方法を示すための仮定です。特定製品の仕様値や推奨値ではありません。
BFとADPは運転条件によって変わる
BFとADPは、コイルだけで決まる固定値ではありません。コイルの列数、面風速、冷水温度、入口空気の温湿度などが変わると、出口状態も変わります。
| 変わる条件 | 結果に影響する理由 | 確認先 |
|---|---|---|
| コイル列数・フィン仕様 | 伝熱面積と空気の接触状態が変わる | メーカー選定表、コイル仕様 |
| 面風速・風量 | 空気がコイルを通過する時間が変わる | 風量、コイル正面寸法、選定表 |
| 冷水温度・流量 | コイル表面温度と能力が変わる | 熱源条件、冷水選定条件 |
| 入口温湿度 | 顕熱・潜熱能力と出口状態が変わる | 設計条件表、混合空気条件 |
| 汚れ・部分負荷・制御 | 実運転時の伝熱と運転点が変わる | 保全記録、制御図、試運転記録 |
手計算の結果は、メーカーの選定結果と照合してください。実際の機器選定では、設計入口条件と風量をメーカーへ渡し、出口温湿度、全熱能力、顕熱能力、圧力損失まで確認します。
冷却コイル選定表では入口条件から確認する
冷却コイル選定表を受け取ったら、出口温度だけを見るのではなく、計算に使った条件が設計条件と一致しているかを確認します。

□ 入口空気の乾球温度と湿球温度、または相対湿度が設計条件と一致している
□ 出口空気の乾球温度と湿球温度、または絶対湿度が記載されている
□ 処理風量とコイル正面寸法から面風速を確認できる
□ 冷却全熱能力と顕熱能力が負荷計算の範囲に入っている
□ コイル列数、フィン仕様、回路数が選定条件に含まれている
□ 冷水入口・出口温度と流量が熱源計画と一致している
□ 空気側・水側の圧力損失がファンとポンプの計画に反映されている
□ ドレンパン、排水、点検、清掃のスペースが図面に反映されている
□ 風量変動や部分負荷時の制御方法を制御図で確認している
ADPやBFが選定表に直接書かれていない場合でも、入口と出口の温湿度から湿り空気線図上に二点を置けば、ADPを確認できます。BFは温度差、絶対湿度差、または比エンタルピー差から照合できます。
ADP・BFで間違えやすい4つの場面
通常の露点温度をADPとして使ってしまう
入口空気の露点温度は、入口空気の水分状態を示す値です。コイルのADPではありません。ADPを求めるときは、入口と出口を結ぶ線を飽和曲線まで延ばします。
BFの式で分子と分母を逆にしてしまう
どちらもADPを基準にした温度差です。分母を「入口-ADP」、分子を「出口-ADP」とします。計算後のBFが0から1の間に入り、ADP < 出口 < 入口 になるかを確認すると間違いに気づけます。
コイル選定表のBFをダンパのバイパス率として扱ってしまう
コイルのBFは、フィン付きコイルの性能を表すモデルです。空調系統のバイパス風量とは意味が違います。仕様書の記号定義と、メーカーがBFをどの意味で使っているかを確認してください。
最大負荷時の値を部分負荷時にも使ってしまう
風量や冷水条件が変われば、出口温湿度も変わります。部分負荷を検討するときは、メーカーの部分負荷性能と制御方法を確認し、必要なら出口状態を再選定します。
まとめ|ADPとBFを線図・計算・コイル選定へつなげる
ADPは冷却・除湿コイルの有効な表面温度、BFは入口空気の状態が出口に残る割合です。
湿り空気線図では、入口、出口、ADPが一直線に並びます。出口乾球温度は t出口 = tADP + BF × (t入口 - tADP) で求められます。
ただし、BFとADPは運転条件によって変わります。手計算だけで機器を決めず、入口条件、風量、冷水条件、能力、圧力損失をメーカー選定表で照合してください。
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参考・出典
ASHRAE Terminology: apparatus dew point / bypass factor(ASHRAE)
ASHRAE Handbook—HVAC Systems and Equipment, Chapter 4: Air Handling and Distribution(ASHRAE)
ASHRAE Handbook—Fundamentals, Chapter 1: Psychrometrics(ASHRAE)
Buildings Modelica Library: DXSystems.Cooling.UsersGuide(Lawrence Berkeley National Laboratory)
Buildings Modelica Library: DXCoils.BaseClasses.ApparatusDewPoint(Lawrence Berkeley National Laboratory)


