空調設備

還気と外気の混合計算|絶対湿度・エンタルピから混合点を求める手順

室内の設計者、天井空調、屋外の空気、空調機を背景に『還気と外気の混合計算』と題字を配置したフラットイラスト
setsubi

空調機の計算書で「混合空気の入口条件」を求めるとき、外気と還気の温度だけを平均してよいのか迷うことがあります。相対湿度はそのまま平均できず、風量比と湿り空気線図も出てくるため、最初の計算順序が分かりにくいところです。

混合空気は、乾き空気の質量、水分、エネルギーの収支から求めます。まず外気量と還気量の基準をそろえ、絶対湿度と比エンタルピを加重平均し、その2つから乾球温度と相対湿度を確認します。

この記事では、還気(RA)と外気(OA)が空調機で混ざる位置、計算式、数値例、湿り空気線図での読み方、設計計算書へ使う順序を説明します。読み終えると、空調機仕様書の入口条件を確認し、外気量を変えたときにコイル負荷がどう変わるか判断できます。

この記事でわかること

  • 還気・外気・混合空気・給気・排気の位置関係
  • 混合絶対湿度と比エンタルピを求める式
  • 風量比3:1の数値例と湿り空気線図の逆比内分
  • 空調機入口条件を計算書と仕様書で確認する順序
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還気と外気は空調機のどこで混ざるのか

まずは、空調系統図で空気が通る順序を見てみましょう。室内から空調機へ戻る空気が還気(Return Air、RA)、屋外から取り入れる空気が外気(Outdoor Air、OA)です。

室内の還気口から戻る還気と外気が混合箱で合流し、フィルタ、冷却・加熱コイル、給気ファンを通った給気が別の給気口から室内へ戻る空気系統

還気の一部は排気(Exhaust Air、EA)として屋外へ出ます。残った還気と外気は、空調機の混合箱で合流します。混合後にフィルタと冷却・加熱コイルを通り、室内へ送る給気(Supply Air、SA)になります。

混合計算で求めるのは、コイルへ入る前の混合空気(Mixed Air、MA)の状態です。空調機仕様書でコイル入口の乾球温度、湿球温度、絶対湿度、比エンタルピを見るときは、外気条件ではなく混合後の条件かを確かめます。

混合計算では3つの収支を見る

2つの湿り空気を断熱的に混ぜる計算では、次の3つを同時に満たします。

  • ・乾き空気の質量収支
  • ・水分量の収支
  • ・エネルギーの収支

計算全体の順序は、入力条件の確認 → 乾き空気質量流量へ換算 → 絶対湿度と比エンタルピを混合 → 乾球温度と相対湿度を確認 → コイル入口条件へ使用です。

記号は次のように置きます。

記号意味単位
m_R還気の乾き空気質量流量kg(DA)/s
m_O外気の乾き空気質量流量kg(DA)/s
m_M混合空気の乾き空気質量流量kg(DA)/s
x絶対湿度kg/kg(DA)
h比エンタルピkJ/kg(DA)

乾き空気の質量収支

混合箱から出る乾き空気質量流量は、入る還気と外気の合計です。

m_M = m_R + m_O

絶対湿度の混合

絶対湿度は、乾き空気1 kgに含まれる水蒸気の質量です。相対湿度を直接平均せず、絶対湿度を乾き空気質量流量で加重平均します。

x_M = (m_R × x_R + m_O × x_O) / m_M

比エンタルピの混合

比エンタルピは、湿り空気が持つ熱量を乾き空気1 kg当たりで表した値です。断熱混合では、次の式で混合後の値を求めます。

h_M = (m_R × h_R + m_O × h_O) / m_M

混合後の乾球温度は、求めたx_Mh_Mから湿り空気の物性式または湿り空気線図で求めます。温度だけを風量比で平均する方法は、密度と比熱の差を無視する近似として扱います。

体積風量をそのまま比率に使えるか

空調計算書では、風量がm³/hで示されることが多くあります。一方、混合式の基準は乾き空気質量流量です。

還気と外気の密度差が小さく、同じ基準状態の体積風量を比べる概算では、体積風量比を質量流量比の近似として使えます。ただし、外気と還気の温湿度差が大きい場合や、機器選定を確定する場合は、各状態の比容積または密度から乾き空気質量流量へ換算します。

外気比率をk_Oとすると、乾き空気質量流量を使った定義は次のとおりです。

k_O = m_O / (m_R + m_O)

このとき、x_M=(1-k_O)x_R+k_Ox_Oh_M=(1-k_O)h_R+k_Oh_Oと書けます。

数値例|還気3・外気1を混ぜる

夏期の空調機を想定し、還気と外気を乾き空気質量流量比3:1で混ぜます。気圧は101.325 kPaとし、温湿度から求めた状態量は次の値を使います。

状態乾球温度・相対湿度絶対湿度比エンタルピ
還気RA26.0℃・50%RH0.01050 kg/kg(DA)52.91 kJ/kg(DA)
外気OA32.0℃・68%RH0.02052 kg/kg(DA)84.73 kJ/kg(DA)

1. 外気比率を求める

還気3、外気1なので、外気比率は1/(3+1)=0.25です。

2. 混合後の絶対湿度を求める

x_M=(3×0.01050+1×0.02052)/4≈0.01300 kg/kg(DA)

3. 混合後の比エンタルピを求める

h_M=(3×52.91+1×84.73)/4≈60.87 kJ/kg(DA)

4. 乾球温度と相対湿度を確認する

x_Mh_Mから、混合空気は約27.5℃、約56%RHになります。丸める前の値は、ファクトシートで27.520℃、56.4%RHまで照合しています。

温度だけを(3×26+1×32)/4で平均しても27.5℃になりますが、この一致は今回の条件で差が小さいためです。実務では、絶対湿度と比エンタルピの収支を先に確認します。

湿り空気線図では逆比に内分する

湿り空気線図へ還気RAと外気OAの状態点を置くと、混合点MAは2点を結ぶ直線上にあります。還気量が外気量の3倍なら、混合点は量の多い還気側へ近づきます。

還気と外気の風量比が3対1のとき、混合点が還気点から外気点へ全距離の4分の1進んだ位置になる図

線分上の距離は流量と逆比になります。RAからMAまでの距離と、MAからOAまでの距離は1:3です。作図するときは、「外気25%だから、RA点からOA点へ25%進む」と読むと位置を取り違えにくくなります。

湿り空気線図では、次の順で確認します。

  1. 還気RAの乾球温度と相対湿度から状態点を置く
  2. 外気OAの乾球温度と相対湿度から状態点を置く
  3. RA点とOA点を直線で結ぶ
  4. RA点からOA点へ外気比率だけ進んだ位置にMA点を置く
  5. MA点の絶対湿度、比エンタルピ、乾球温度、相対湿度を読む

外気量を変えると空調機入口条件が変わる

夏期に外気の比エンタルピが還気より高い場合、外気比率を増やすと混合空気の比エンタルピが上がります。冷却コイルは、より大きなエンタルピ差を処理する必要があります。

ただし、外気量は省エネルギーだけで減らせません。設計者は、建物用途、対象室の床面積、在室人数、建築基準法、建築物衛生法、条例、換気方式を確認して必要外気量を決めます。

建築基準法施行令第20条の2関係の必要有効換気量は、V=20Af/Nで表されます。Afは条件に応じた居室床面積、Nは実況に応じた1人当たり占有面積です。「すべての居室で一人20 m³/h」と置き換えず、対象用途と算定条件を確認します。

建築物衛生法のCO₂ 1000 ppm以下は、特定建築物の維持管理基準です。外気量を決めるときは、設計時の換気量計算と、運用時のCO₂測定・外気ダンパ制御を分けて確認します。

設計計算書と空調機仕様書で確認する順序

混合計算は、外気量の検討だけで終わりません。空調機のコイル能力と送風状態へつなげます。

  1. 建築図と室名表で、用途・面積・在室人数を確認する
  2. 換気量計算書で、必要外気量と適用法令を確認する
  3. 空調負荷計算書で、設計外気条件と室内条件を確認する
  4. 送風量と外気量を同じ単位・基準状態へそろえる
  5. 混合後のx_Mh_Mを求め、乾球温度を確認する
  6. 空調機仕様書のコイル入口条件と一致させる
  7. コイル出口条件とのエンタルピ差から処理熱量を確認する

空調機のメーカー選定表を受け取ったら、入口条件が外気100%なのか、還気と外気の混合条件なのかを見ます。入口条件が設計計算書と違えば、コイル能力、除湿量、凝縮水量も変わります。

間違えやすいポイント

空調機の選定や改修で外気量を見直す場面では、入力値の基準がそろっていないと混合点を誤ります。ここでは、計算書と仕様書を照合するときに起こりやすい3つの間違いを確認します。

相対湿度をそのまま平均する

空調機のコイル入口条件を計算する設計場面で、室内50%RH、外気68%RHのように相対湿度が並ぶと、平均値を混合後の湿度として使いたくなります。相対湿度は乾球温度によって変わるため、直接の加重平均には使いません。

よくある間違い:空調機の入口条件を計算する場面で、還気と外気の相対湿度だけを風量比で平均し、その値からコイル除湿量を決めます。

確認すべきこと:湿り空気線図または物性計算で各状態の絶対湿度と比エンタルピを確認します。その2値を乾き空気質量流量で混合し、混合後の乾球温度と相対湿度を決めます。

体積風量と質量流量を同じものとして扱う

外気と還気の温湿度差が小さい概算では、m³/hの比率を近似に使うことがあります。高温多湿の外気や低温外気を扱う機器選定では、密度差が計算結果へ影響します。

よくある間違い:外気処理機や大きな外気比率を持つ空調機の選定で、異なる温湿度の体積風量を換算せず、確定用の質量・エネルギー収支に使います。

確認すべきこと:空調負荷計算書の気圧、温湿度、比容積、風量の基準状態を照合します。各空気を乾き空気質量流量へ換算し、空調機仕様書に採用した入口条件を記載します。

混合点を外気側へ取り過ぎる

空調機の入口状態を湿り空気線図で確認する設計場面では、「逆比」のどちら側から距離を測るのか迷いやすくなります。量の多い空気ほど、混合点はその状態点へ近づきます。

よくある間違い:還気3、外気1の設計条件で、RA点からOA点へ75%進んだ位置を混合点として読み、コイル入口エンタルピを過大に決めます。

確認すべきこと:換気量計算書の外気比率を確認し、RA点からOA点へ外気比率25%だけ進みます。計算式で求めたx_Mh_Mを線図の読取値と照合して入口条件を決めます。

設計時のチェックリスト

このチェックリストは、空調機入口条件を算定する設計者が、基本設計から実施設計で使うものです。換気量計算書、空調負荷計算書、空調機仕様書の入力条件が一致しているかを一つの確認対象として見直します。

☐ 建物用途、対象室、床面積、在室人数を確認した

☐ 必要外気量の適用法令、条例、算定式を確認した

☐ 還気・外気の温湿度と採用気圧を確認した

☐ 体積風量を使う近似か、乾き空気質量流量へ換算する確定計算かを記載した

☐ 絶対湿度と比エンタルピを先に混合した

☐ 計算値と湿り空気線図の混合点を照合した

☐ 空調機仕様書のコイル入口条件と計算書を一致させた

まとめ

還気と外気の混合状態は、乾き空気質量、水分、エネルギーの収支から求めます。相対湿度を直接平均せず、絶対湿度と比エンタルピを混合してから、乾球温度と相対湿度を確認します。

次に空調機の選定表を見るときは、まずコイル入口条件の欄を開きます。換気量計算書の外気量、空調負荷計算書の外気・室内条件、空調機仕様書の混合後条件が同じ前提かを照合すると、必要なコイル能力を確認できます。

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参考・出典

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