外気負荷の計算方法|顕熱・潜熱・全熱を例題で確認
換気量計算書で会議室の外気量が「600 m³/h」と決まった。では、この外気を冷やすのに空調機はどれくらいの能力が要るのか――熱負荷計算を任されると、まずここで手が止まると思います。風量は分かっていても、それを「kW」に直す方法が分からないんですね。
答えを先に言うと、外気負荷は外気量に、室内と外気の「温度の差」と「湿気の量の差」を掛けて求めます。温度を下げる分が顕熱負荷、湿気を取り除く分が潜熱負荷です。外気34℃・絶対湿度18 g/kg(DA)、室内26℃・10 g/kg(DA)、外気量600 m³/hなら、顕熱1.58 kW、潜熱3.98 kW、合計5.57 kWになります。
この記事では、顕熱・潜熱・全熱の3つの式と、そこへ入れる値の単位を確認したうえで、この5.57 kWを一緒に計算していきます。最後に、全熱交換器がある場合の補正も例題で見ておきましょう。
外気負荷とは|顕熱と潜熱に分けて考える
事務所や会議室には、人がいる間ずっと外気を取り入れています。夏の外気は室内より暑く、湿気も多いので、そのまま入れると室温も湿度も上がってしまいます。そこで空調機で冷やし、湿気を取ってから室へ送ります。このとき必要になる熱量が外気負荷です。
外気負荷は、空気の何を変えるかで二つに分けて計算します。
この二つを合わせたものが外気全熱負荷です。
わざわざ分けるのは、空調機の冷却コイルに「温度を下げる能力」と「湿気を取る能力」の両方が要るからです。この外気負荷だけで空調機の能力を決めるわけではなく、室内の熱やダクト・送風機による熱も、計算書の集計範囲に合わせて含めます。合計のkWが足りていても、潜熱を処理しきれないと「室温は下がったのにジメジメする」部屋になってしまいます。あとの例題で見るように、夏の外気は潜熱のほうが大きくなりやすいので、内訳まで出しておくことが大切なんです。
外気負荷の計算式|顕熱・潜熱・全熱
外気量Qoを m³/h で表す場合、よく使う簡易式は次の3つです。
- Qo(導入外気量):換気量計算で決めた外気量をそのまま使います。どの法令や基準、施主仕様で決めた風量なのかを、計算書に一緒に書いておきましょう。
- Δt(乾球温度差):℃のまま引き算してかまいません。差の数値はKと同じです。
- Δx(絶対湿度差):乾き空気(DA=dry air)1 kgに含まれる水蒸気の量の差です。10 g/kg(DA)なら、乾き空気1 kgに水蒸気が10 g含まれています。
- Δh(比エンタルピー差):乾き空気1 kgを基準にした、湿り空気の熱量の差です。湿り空気線図や空気状態の計算ソフトで読み取ります。
係数は、空気の密度を約1.2 kg/m³として、風量を質量に直し、1時間を秒に換算した値です。顕熱の0.33には空気の定圧比熱約1.006 kJ/(kg・K)、潜熱の0.83には水蒸気の基準エンタルピー約2501 kJ/kgが入っています。
- 顕熱:1.2 × 1.006 × 1000 ÷ 3600 ≒ 0.335
- 潜熱:1.2 × 2501 × 1000 ÷ (3600 × 1000) ≒ 0.834(kJ→Jとg→kgの換算が相殺)
- 全熱:1.2 × 1000 ÷ 3600 ≒ 0.333
顕熱と全熱の係数はどちらも0.33ですが、入れる差が温度差か比エンタルピー差かで意味が違います。どちらも標準的な空気の密度を前提に丸めた値なので、標高が高い場所や精密な計算では、設計点の比容積から空気の質量流量を求めてください。
例題:外気量600 m³/hの外気負荷
では、冒頭の会議室で実際に計算してみましょう。最大人数20人、1人当たり外気量30 m³/hという説明用の設計条件で、外気量は次のとおりです。
Qo = 20人 × 30 m³/(h・人) = 600 m³/h
30 m³/(h・人)は、この例に置いた値で、すべての建物に共通する法定値ではありません。実案件では用途と適用法令、施主仕様から必要外気量を決めます。
空気の状態は次の表のとおりとします。説明用に置いた値で、特定の地域の設計用屋外条件ではありません。
手順1:顕熱負荷
Los = 0.33 × 600 × 8 = 1,584 W ≒ 1.58 kW
手順2:潜熱負荷
Lol = 0.83 × 600 × 8 = 3,984 W ≒ 3.98 kW
手順3:顕熱と潜熱の合計
1,584 + 3,984 = 5,568 W ≒ 5.57 kW
潜熱が全体の約7割を占めています。温度差も湿度差も同じ「8」なのに、この条件では潜熱が顕熱の約2.5倍になっています。ただし、温度差のKと絶対湿度差のg/kg(DA)は違う単位なので、同じ「8」だけを比べているわけではありません。潜熱の割合は室内外の温度と湿度によって変わります。空調機を選ぶときは、全冷房能力だけでなく、顕熱能力と除湿能力がそれぞれ足りているかをメーカーの選定表で確認してください。
手順4:比エンタルピー差で全熱を検算
Lo = 0.33 × 600 × 28.7 = 5,682.6 W ≒ 5.68 kW
手順3の5.57 kWとは0.11 kWずれますが、計算間違いではありません。0.33・0.83の式は物性値を丸めているうえ、潜熱の式では水蒸気が持つ顕熱分を簡略化しているため、端数まではそろわないんです。冷却コイルが処理する全熱量を知りたいときは比エンタルピー差の式、顕熱と潜熱の内訳を確認したいときは二つの簡易式、と目的で使い分けましょう。一つの計算書の中では、室内外の状態値を同じ空気線図または同じ計算ソフトから読んでください。
暖房時も同じ式を使います。顕熱の温度差を「室内温度−外気温度」とすれば、外気を温めるのに必要な熱量が求まります。加湿する場合の潜熱と全熱も、室内から外気を引いた差で求めます。加湿しない場合は、潜熱を加湿能力として計上しません。
計算で間違えやすいポイント
式そのものは単純ですが、入れる値を取り違えると答えが大きくずれます。計算書を見直すときは、次の点を確認しておきましょう。
絶対湿度の単位(g/kgとkg/kg) いちばん多い間違いです。0.83の式はΔxをg/kg(DA)で入れる前提です。空気線図や計算ソフトが0.010 kg/kg(DA)のように表示していたら、10 g/kg(DA)に直してから入れてください。kg/kg(DA)のまま入れると答えが1000分の1になります。潜熱負荷がほぼゼロと出たら、まずここを疑いましょう。kg/kg(DA)のまま計算したい場合は、係数を約830〜834にします。
風量の単位(m³/hとm³/min) 3つの式はどれも風量をm³/hで入れる前提です。機器表や換気計算書がm³/minなら、60倍してから入れてください。
室内外の条件のそろえ方 外気の条件は、建築地、運転時間、採用する超過確率で変わります。この記事の34℃・18 g/kg(DA)を、別の地域の計算にそのまま使わないでください。建築地の設計用屋外条件と、室の用途に合った室内温湿度から設定します。
全熱交換器がある場合の補正
全熱交換器は、室内から捨てる排気と取り入れる外気の間で、熱と水分をやり取りする機器です。夏なら、冷えて乾いた排気で外気をあらかじめ冷やし、湿気も移しておくので、空調コイルが受け持つ外気負荷が減ります。

交換器へ入る排気が室内と同じ空気状態で、計算対象の外気がすべて交換器を通る場合、交換後に残る外気全熱負荷は次の式で求めます。
Lo,after = Lo × (1 − ηh)
- Lo,after:全熱交換後に残る外気全熱負荷 [W]
- ηh:エンタルピー交換効率 [-]
例題の全熱負荷5.68 kWに、説明用として冷房時エンタルピー交換効率60%を当てはめると、次のとおりです。
Lo,after = 5.68 × (1 − 0.60) ≒ 2.27 kW
5.68 kWのうち3.41 kWを全熱交換器が回収し、残る外気負荷は2.27 kWになります。これは外気を室内の状態まで処理する負荷で、コイル全体の能力ではありません。送風機発熱や、室内より低い温度まで冷やす分などは、系統に応じて別途計算します。
ここで気をつけたいのが、効率の種類です。全熱交換器の仕様書には温度交換効率とエンタルピー交換効率が別々に載っていて、同じ機器でも値が違います。全熱負荷に掛けるのはエンタルピー交換効率です。温度交換効率のほうが大きい値のことが多いので、取り違えると削減効果を大きく見積もってしまいます。実案件では、採用機種の仕様書から、選定風量と給気・排気の風量比に対応する冷房時または暖房時のエンタルピー交換効率を読んでください。
また、図の右下のように、窓や扉の隙間から入るすきま風は全熱交換器を通りません。すきま風の負荷は外気負荷とは別に計算し、交換効率は掛けずにそのまま足します。
まとめ|外気負荷の計算式と例題の答え
外気負荷は、外気量に室内と外気の温度差・絶対湿度差、または比エンタルピー差を掛けて求めます。
夏の外気は潜熱の割合が大きく、例題でも約7割が潜熱でした。計算書には答えだけでなく、外気量の根拠、室内外の条件、絶対湿度の単位、全熱交換器の効率の種類を残しておきましょう。
関連記事
- 空調の専門用語を図で解説|乾球・湿球温度、相対湿度、比エンタルピーとは
- 還気と外気の混合計算|絶対湿度・エンタルピから混合点を求める手順
- 設計外気条件とは?外気温・湿度・日射・風が空調負荷に与える影響
参考・出典
- 国土交通省「建築設備設計基準 令和6年版」
- パナソニック 「空調設備設計資料 室内ユニット仕様編」
- ASHRAE 「2021 ASHRAE Handbook—Fundamentals, Chapter 1: Psychrometrics」
空調設備の設計を学ぶときに役立つ本
空調方式を検討するときは、熱源機器から室内へ空気を届けるまでの流れを押さえると、図面も読みやすくなります。菊地至さんの『図解入門 よくわかる最新空調設備の基本と仕組み』は、代表的な空調方式、熱源機器、省エネ、換気・排煙を図とともに確認できる入門書です。
Warning: Undefined array key 0 in /home/xs614717/archi-setsubi.com/public_html/wp-content/themes/jinr/include/shortcode.php on line 306


