空調機負荷(装置負荷)の計算|コイル容量までの手順
熱負荷計算書で室内顕熱40 kW、室内潜熱12 kW、外気負荷18 kWと出ていても、冷却コイルを70 kWで選べるとは限りません。空調機から室まで空気を運ぶ間にダクトが熱を受け、送風機からも熱が加わるためです。
この記事の計算例では、ダクト通過熱を4 kW、送風機発熱を3.80 kWとし、冷房時の空調機負荷は77.8 kWになります。室内負荷から装置負荷へ進む順番、送風機の電動機が気流内にある場合の式、ダクトの簡易率を使うときの注意点まで確認します。
装置負荷はコイルが処理する負荷
室内負荷は、壁や窓から入る熱、日射、人体、照明、機器など、室温・湿度を変える熱を集計したものです。一方、装置負荷は、空調機が目標の吹出し空気をつくるために処理する負荷です。「空調機負荷」や「コイル負荷」と呼ぶこともあります。
再熱を行わない一般的な冷房装置負荷は、次のように整理できます。
qTc = qs + ql + qF + qD + qB
| 記号 | 負荷 | 計算書で見る内容 |
|---|---|---|
qs | 室内顕熱負荷 | 温度を上げる壁・窓・照明・機器などの負荷 |
ql | 室内潜熱負荷 | 人体や水蒸気発生による湿度の負荷 |
qF | 外気負荷 | 換気用外気を冷却・除湿する顕熱と潜熱 |
qD | ダクト系の影響 | ダクト壁からの熱取得や、漏気に伴う能力低下 |
qB | 送風機発熱 | ファン・電動機から気流へ入る熱 |
qR | 再熱負荷 | 再熱がある系統で、除湿後の空気を目標吹出し温度まで温める熱 |
再熱負荷を含めて装置全体の負荷項目を並べる資料では、右辺に qR を加えることがあります。ただし、実際の機器選定では、冷却コイル、加熱コイル、再熱コイルを一つの容量として選ぶわけではありません。空調系統図でコイルと送風機の順序を確認し、各コイルの入口・出口空気状態から必要能力を求めます。
室内負荷と同じ時刻で集計する
各室の最大値を無条件に足すと、系統全体のピークを大きく見積もることがあります。東側の会議室は午前、西側の執務室は午後に最大となるなど、ピーク時刻がずれるためです。
空調機の系統負荷は、同じ設計時刻の室内負荷、在室・照明・機器の運転条件、外気量をそろえて集計します。熱負荷計算書では「各室最大」の列ではなく、「系統最大」や時刻別集計の列を確認します。EnergyPlusの設計資料でも、冷却コイルの最大負荷と最大風量が同時に発生するとは限らず、コイル選定ではピーク時の空気条件を使い分けています。
熱源負荷とは加える範囲が違う
冷凍機やボイラを選ぶときの熱源負荷は、複数の空調機が要求する負荷を集計し、冷温水配管からの熱損失やポンプから水系へ入る熱などを加えた値です。配管・ポンプの影響を各空調機のコイル負荷にも足すと、同じ負荷を二重に計上します。
計算書を受け取ったら、表題と集計範囲を見ます。「室内負荷計算書」「空調機負荷集計」「熱源負荷集計」が別表になっているか、各割増しがどの表で一度だけ加算されているかを追うと混同を防げます。
ダクト通過熱と漏気の計算
ダクト系の影響は、ダクト壁を通る熱と、継ぎ目などから漏れる空気に分けると判断しやすくなります。この二つは、同じ割合を掛ければ常に処理できるものではありません。
ダクト壁からの熱取得
冷たい給気ダクトが非空調の天井内や屋外を通ると、周囲からダクト内の空気へ熱が入ります。その大きさは、ダクトの表面積、周囲温度、給気温度、保温材の熱抵抗で変わります。ASHRAE Handbookも、ダクトルート、保温、周囲環境によって負荷への影響が変わるとしています。
基本設計でルートや寸法が決まっていないときは、発注者基準や社内基準で指定された割合を使うことがあります。その場合は、「何%か」だけでなく、次の二点を計算書へ残します。
- 何の負荷に率を掛けたか。例:室内顕熱負荷40 kWの10%
- 率に何を含めたか。例:ダクト通過熱だけか、漏気や送風機発熱も含むか
実施設計でルート、寸法、保温仕様が決まったら、ダクト表面積と熱通過を使う計算へ置き換えます。ダクト平面図で非空調部を通る区間を拾い、仕様書で保温厚さと熱性能を確認します。
漏気は風量と湿度にも影響する
給気が天井内へ漏れると、室へ届く風量が減ります。漏れた空気が同じ空調対象室へ入るのか、還気プレナムへ入るのか、非空調空間へ失われるのかによって影響は変わります。ASHRAE Handbookでは、給気漏れが冷却能力だけでなく除湿能力も低下させる場合があると説明しています。
このため、漏気をすべて「室内顕熱の何%」として終わらせるのは避けます。ダクト仕様書に許容漏気量と試験条件を示し、送風機風量へ反映します。施工後は、設計風量が各吹出口へ届くかを風量測定・調整記録で確認します。
送風機発熱の計算
送風機は空気へ圧力を与えます。投入した動力は最終的に熱となり、冷房時はコイルが処理する負荷を増やします。米国エネルギー省が公開するEnergyPlusの技術資料でも、設計送風機発熱を冷却コイルのサイジングへ反映しています。
送風量を Q [m³/h]、送風機の圧力上昇を ΔP [Pa]、送風機効率を ηF、電動機効率を ηM とします。
電動機が気流内にある場合は、電動機の損失熱も空気へ入ります。
qB = Q × ΔP ÷ (3600 × ηF × ηM)
電動機が気流外にあり、その損失熱が気流へ入らない場合は、主にファン軸へ渡った動力を見ます。
qB = Q × ΔP ÷ (3600 × ηF)
3600は、風量の単位をm³/hからm³/sへ直すための値です。式の答えはWになるので、kWで集計するときはさらに1000で割ります。
圧力と効率の種類をそろえる
選定表の全圧を使うなら全圧効率、静圧を使うなら静圧効率を組み合わせます。全圧800 Paへ静圧効率を入れるなど、定義の異なる値を混ぜると送風機発熱がずれます。
空調機仕様書では、設計風量、全圧または静圧、対応する効率、電動機効率、電動機の設置位置を確認します。VFDが機外にある場合、その損失熱を送風空気へ加えるのではなく、VFDを置く機械室の冷房負荷として扱うかを確認します。
冷房時の装置負荷計算例
次の条件で、空調機の冷房時装置負荷を求めます。ダクト通過熱4 kWは、基本設計時の仮定として室内顕熱負荷の10%を置いた値です。10%を一般的な推奨値として使う例ではありません。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
室内顕熱負荷 qs | 40.0 kW |
室内潜熱負荷 ql | 12.0 kW |
外気負荷 qF | 18.0 kW |
ダクト通過熱 qD | 4.0 kW |
送風量 Q | 10,000 m³/h |
送風機全圧 ΔP | 800 Pa |
送風機全効率 ηF | 0.65 |
電動機効率 ηM | 0.90 |
| 電動機の位置 | 気流内 |
再熱負荷 qR | 0 kW |
まず、送風機発熱を求めます。
qB = 10,000 × 800 ÷ (3600 × 0.65 × 0.90)
qB = 3,799 W ≒ 3.80 kW
次に、各負荷を同じ単位で合計します。
qTc = 40.0 + 12.0 + 18.0 + 4.0 + 3.80
qTc = 77.8 kW

電動機が気流外なら、この例の送風機発熱は 10,000 × 800 ÷ (3600 × 0.65) = 3.42 kWです。気流内の場合より0.38 kW小さくなります。小さな差に見えても、大風量・高圧の送風機では差が広がるため、機器構成を確認してから式を選びます。
コイル選定で確認する条件
計算結果が77.8 kWでも、カタログの定格冷房能力が77.8 kW以上というだけでは選定を終えられません。コイル能力は、入口空気の温度・湿度、出口空気の目標状態、冷水入口温度、冷水温度差、風量で変わります。
空調機メーカーへは、少なくとも次の条件を渡します。
- コイル入口・出口の乾球温度と湿度、または比エンタルピー
- 設計風量と外気・還気の混合条件
- 冷水または温水の入口温度、出口温度、流量条件
- コイルと送風機の並びが押込み式か吸込み式か
- 設計風量、送風機圧力、効率、電動機の位置
- ダクト通過熱と漏気をどこまで計算済みか
汚れ、将来増設、負荷計算の不確かさを見込む場合は、「余裕率」として一括せず、理由と割合を選定計算書へ分けて記録します。過大な余裕は、初期費用だけでなく低負荷時の制御性にも影響します。発注者基準、設計事務所の計算基準、メーカー選定条件に従って決めます。
再熱がある場合は別に選ぶ
冷却除湿した空気を温め直す再熱コイルがある場合は、再熱コイル入口・出口の温度差から能力を求めます。
qR = ṁ × cp × (Tout − Tin)
ここで ṁ は空気質量流量、cp は空気の比熱です。EnergyPlusの加熱コイル選定も、設計空気流量とコイル入口・出口温度差から能力を求めています。
除湿のためにどこまで冷却するかは、湿り空気線図または空気状態計算で確認します。再熱負荷を冷却コイルへそのまま足すのではなく、冷却・除湿コイルと再熱コイルの入口・出口状態をそれぞれ定めて選定します。
装置負荷計算の確認項目
- 室内顕熱・潜熱と外気負荷を、同じ時刻・同じ運転条件で集計したか
- ダクト通過熱と漏気を分け、率を掛けた元の負荷を記録したか
- 送風機の圧力と効率の種類をそろえたか
- 電動機・伝動装置・VFDが気流内か気流外かを機器図で確認したか
- コイルと送風機の順序を空調系統図で確認したか
- 配管熱損失やポンプ発熱を、装置負荷と熱源負荷へ二重計上していないか
- 再熱がある場合、冷却コイルと再熱コイルを空気状態に沿って別々に選定したか
まとめ
空調機負荷は、室内負荷と外気負荷だけでなく、ダクトを通る間の熱取得と送風機から気流へ入る熱まで追って求めます。計算例では、室内負荷52 kWと外気負荷18 kWへ、ダクト通過熱4 kW、送風機発熱3.80 kWを加え、77.8 kWになりました。
計算で特に間違えやすいのは、ダクト系の割合を根拠なく流用することと、送風機の圧力・効率の種類を混ぜることです。基本設計では仮定と加算先を記録し、実施設計ではダクト図、保温・気密仕様、送風機選定表、コイル入口・出口空気条件へ置き換えて確認します。
関連記事
参考・出典
- U.S. Department of Energy, EnergyPlus Engineering Reference, Version 24.2.0, 10.7.3 Design Fan Heat、10.7.4.1 Initial Calculations
- U.S. Department of Energy, EnergyPlus Engineering Reference, Version 25.1.0, 10.7.13 Sizing of Gas and Electric Heating Coils
- ASHRAE, Handbook—HVAC Systems and Equipment, Chapter 21 Fans, Air Temperature Rise Across Fans
- ASHRAE, Handbook—Fundamentals, Chapter 18 Nonresidential Cooling and Heating Load Calculations, Duct Leakage
- ASHRAE, Handbook—Fundamentals, Chapter 21 Duct Design, HVAC System Air Leakage
- 日本原子力研究開発機構, JAEA-Technology 2024-026, 4.2.2 熱負荷計算


