空調設備

空調設備設計の流れ|企画・基本設計・実施設計・施工へ進む実務フロー

空調設備が見える建物断面と設計打合せの場面に、空調設備設計の流れという記事タイトルを配置したアイキャッチ
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空調設備設計は、最初から空調機の型番やダクトの寸法を決める作業ではありません。まず、建物を誰が、いつ、どのように使うのかを確認します。次に、空調する場所と運転方法を決め、必要な機械室やシャフトを建築図に確保します。その後に熱負荷を計算し、機器の能力、ダクトと配管の寸法、自動制御の内容を図面や仕様書に示します。

意匠設計の打合せで「機械室はどこに置くのか」「天井内にダクトが収まるのか」と聞かれても、基本計画の段階では機器の型番やダクト寸法がまだ決まっていません。そのため、設備設計を始めたばかりの人は、未確定の状態で何を建築側へ伝えればよいのか迷いやすいところです。

ただし、詳細な計算が終わるまで設備スペースを示さないと、必要な機械室が取れなかったり、梁の下にダクトが収まらなかったりします。空調設計では、設計の進み具合に合った精度で必要な情報を建築側へ伝え、建築図の平面や断面を調整してもらう必要があります。

この記事では、意匠設計者、設備設計を学び始めた人、若手設備設計者に向けて、企画・基本計画、基本設計、実施設計、施工・引継ぎの順に説明します。各段階で使う情報、決める内容、作成する図書、建築側と協議する事項を分けて見ていきます。いま概略の配置を決める段階なのか、機器仕様や施工方法を決める段階なのかを区別できれば、打合せで何を確認するべきかが具体的に分かります。

建物の使い方を確認する → 空調する範囲と方式を決める → 設備スペースを確保する → 負荷・風量・水量を計算する → 機器・ダクト・配管・制御を図面化する → 施工・試運転・引継ぎへ進む

意匠・構造・空調の担当者が建物断面を囲み、機械室とダクト経路を確認する場面

この記事でわかること

・空調設備設計が企画から施工・引継ぎまで進む順序

・基本設計と実施設計で、決める内容と成果物がどう変わるか

・機械室、シャフト、天井内、外壁・屋上を建築側と協議する時期

・設計図、施工図、竣工図を作成・確認する主体の違い

・建築設備士第二次試験で、計画条件を記述・計算・系統図へつなげる順序

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空調設備の計画は、建築の平面・断面と一緒に決める

空調機やダクトは、建築計画がすべて決まった後に空いている場所へ配置できるとは限りません。窓の大きさや外壁の断熱性能が変わると、室内へ入る熱が変わるため、必要な空調能力も変わります。階高や梁の大きさが変われば、天井内に通せるダクトの高さも変わります。

屋上や外壁に設置する室外機、給気口、排気口も、建物の外観、防水、構造、騒音対策と関係します。空調設計者は建築図を受け取った後、検討結果を設備図に記載します。さらに、必要な機械室の広さ、ダクトを通したい範囲、給排気口の候補位置を意匠設計者へ伝えます。

意匠設計者は、その情報を平面図や断面図へ反映します。構造設計者は梁や床の貫通が可能かを検討し、電気設備設計者は機器に必要な電源や中央監視を検討します。ドレン排水や補給水が必要な機器は、給排水衛生設備とも接続方法を協議します。このように、建築と各設備の図面を何度か更新しながら、建物と空調設備の両方が成立する配置を決めます。

国土交通省の「公共建築設計業務委託共通仕様書(令和6年改定)」でも、建築意匠、構造、電気設備、機械設備の担当者が、関連する設計内容を協議し、打合せ内容を記録することが定められています。これは公共建築の設計業務に使われる標準仕様です。民間案件では設計段階の名称や提出図書が異なることがあるため、実際の業務範囲と承認手順は、その案件の契約書、業務仕様書、設計工程表で確かめます。

建築条件を空調側で検討し、機械室・シャフト・経路を建築の平面図と断面図へ反映する調整の流れ

企画・基本計画:空調する場所と方式を選ぶための条件をそろえる

企画・基本計画では、建物の使い方を確認し、どの室を、どの時間帯に、どの程度まで空調するのかを決めます。たとえば、同じ事務所でも、執務室、会議室、サーバー室では、在室人数、発熱量、運転時間が異なります。すべての室を同じ運転時間と温湿度条件で計画すると、使い方に合わない設備になります。

この段階では、建物用途、利用人数、利用時間、室ごとの環境条件を集めます。その情報を基に、空調する範囲、室を分けて運転する区分、中央熱源方式と個別分散方式のどちらを比較するかを決めます。方式の候補が決まると、熱源機械室が必要か、室外機をどこへ置くか、各階のシャフトをどこへ通すかという建築上の条件も見えてきます。

最初に集める情報

  • ・建物用途、規模、利用時間、利用人数
  • ・室ごとの温湿度、換気、清浄度、騒音に関する要求
  • ・省エネルギー、BCP、将来更新に関する方針
  • ・予算、工期、発注方式、契約上の設計範囲
  • ・敷地、近隣、インフラ、条例、所管の条件

この段階で決めること

  • ・空調する室と運転時間帯
  • ・ゾーニングと個別制御の考え方
  • ・空調方式・熱源方式の比較条件
  • ・機械室、シャフト、屋上、搬入経路の概略位置
  • ・省エネ計算と申請に必要な担当・工程

建築主と設計チームへ示す資料

検討結果は、基本計画図、空調方式の比較資料、概略系統図、概算工事費、設備スペース要求図、設計条件表などにまとめます。設備スペース要求図には、機械室やシャフトの候補位置と必要なおおよその範囲を示します。これにより、意匠設計者は、室の配置や廊下幅、階高を検討するときに、設備のために残す空間を把握できます。資料の名称と提出範囲は案件ごとに異なるため、契約図書で確認します。

2025年4月1日以後に工事へ着手する建築物については、原則として、すべての新築住宅と新築非住宅が省エネ基準への適合義務の対象です。空調設備が使うエネルギーは、採用する方式、機器効率、運転方法によって変わります。そのため、空調方式を決める段階から、外皮、照明、給湯などを含めて一次エネルギー消費量を検討します。増改築の扱い、審査や適合性判定の要否、計算方法は建物条件で異なるため、国土交通省の最新資料と確認申請先の案内を確認します。

基本設計:機械室とダクト経路が建物に収まるか確かめる

基本設計へ進むと、各室の位置と広さ、階高、窓や外壁の仕様が分かってきます。空調設計者は、その建築情報を使って概略の熱負荷と必要風量を計算します。計算結果から主要な機器の種類とおおよその能力を決め、機械室、シャフト、屋上機器、幹線ダクトと配管に必要な空間を建築図の上で確かめます。

機器本体が機械室に入るだけでは、設備スペースが確保できたとはいえません。搬入時に扉や廊下を通れること、点検扉を開けられること、フィルタやコイルを交換できること、将来の更新時に機器を運び出せることまで確認します。

外壁に給気口や排気口を設ける場合は、外観だけで位置を決めることはできません。雨水が入りにくい納まり、排気を再び給気しない位置関係、近隣への臭気や騒音の影響を意匠設計者と一緒に検討します。

建築図へ記入して協議する内容

  • ・機械室、DS・PS、天井内の必要範囲
  • ・屋上機器、室外機、給排気口の配置条件
  • ・大型機器の搬入・搬出・更新経路
  • ・構造貫通や床開口の候補位置
  • ・点検口、作業空間、排水、電源が必要な場所

設備スペースの目安として、延床面積に一定の割合を掛ける資料を見かけることがあります。ただし、必要な面積は、中央熱源方式か個別分散方式か、どの機器を置くか、どちら側から点検するかによって変わります。面積の割合だけでは、細長すぎて機器が入らない部屋や、点検扉を開けられない配置を見落とす可能性があります。

この記事では、すべての建物に使える一律の面積比は示しません。候補機器の外形寸法に、接続するダクトと配管、操作と点検に必要な空間、搬入経路、防火区画の条件を加え、平面図と断面図の両方で確かめます。

実施設計:計算を行い、機器仕様とダクト・配管寸法を決める

実施設計では、基本設計で決めた空調方式と設備スペースを基に、室ごとの熱負荷を計算します。熱負荷から機器に必要な能力を求め、必要な風量や水量を計算します。さらに、風や水を送るときの圧力損失を確認し、ダクト寸法、配管口径、送風機やポンプの仕様を決めます。

国土交通省の公共建築設計業務委託共通仕様書では、計算書に、使用した理論や公式、その出典、計算の過程を明記するとしています。計算結果の数値と一緒に、計算へ使用した条件と計算過程を記載します。条件と過程が記載されていれば、別の設計者も同じ条件で計算結果を確かめられます。

実務でも、室用途、在室人数、運転時間、外気条件、窓と外壁の仕様、照明や機器からの発熱を計算書に残します。たとえば窓面積が変更された場合、窓から入る熱が変わるため、関係する室の冷房負荷を計算し直します。入力条件を記録しておけば、変更の影響を受ける計算と機器を特定できます。

基本設計で決めた方式・概略能力・設備スペースを、実施設計で機器仕様・経路・制御条件として示す比較

計算し、図面と仕様書に示す内容

  • ・室別・系統別の熱負荷と空調能力
  • ・給気・還気・外気・排気の風量
  • ・ダクト寸法、配管口径、圧力損失
  • ・空調機、送風機、ポンプ、熱源、室外機などの仕様
  • ・温度・湿度・圧力・運転時間に応じた自動制御
  • ・防火区画貫通、防振、防音、保温、防露、ドレン排水
  • ・電気設備と取り合う電源、制御、中央監視の条件

施工者へ渡す主な設計図書

主な設計図書は、平面図、系統図、機器表、詳細図、仕様書、計算書、制御図、積算資料です。施工者は、これらの図書から必要な機器性能、工事範囲、材料、数量を読み取り、見積りと施工計画を作成します。そのため、平面図と系統図で機器番号が一致しているか、機器表の能力と電源条件が一致しているか、図面に書き切れない条件が仕様書に記載されているかを確認します。

基本設計と実施設計では、決める細かさが違う

基本設計と実施設計の両方で、熱負荷や機器を検討することがあります。違いは、計算を行うかどうかではありません。基本設計では、方式と必要な設備スペースが建築計画に成立するかを確認します。実施設計では、発注と施工に使えるように、性能条件、寸法、接続、制御を図面と仕様書へ記載します。

比較する内容基本設計実施設計
主な目的方式と建築条件を固める発注・施工に必要な仕様を定める
計算概略負荷、概略容量、方式比較室別負荷、風量・水量、抵抗計算
スペース機械室、シャフト、主要ルートを確保機器外形、接続、保守、詳細ルートを確認
機器種類、構成、概略能力性能条件、台数、接続条件、制御条件
建築との調整平面・断面へ必要空間を反映梁、天井、外壁、区画、点検口との納まりを確定

官公庁との協議は、建物の条件を調べてから協議先と時期を決める

官公庁との協議は、すべての建物で同じ順序になるわけではありません。「基本設計中に消防署へ相談し、実施設計後に確認申請を出す」と覚えるだけでは、建物ごとの違いに対応できません。建物用途、規模、建設地、工事の種類、着工予定日によって、適用される手続きと必要な図書が変わるためです。

建築基準法第93条は、建築の許可や確認に関する消防長等の同意などを定めています。消防同意は建築確認などの手続きと関係するため、空調設計者が単独で全国共通の消防申請を行うものではありません。誰が申請図書をまとめるのか、設備設計者がどの図面と計算書を用意するのかを、建築確認の工程と契約上の役割分担に合わせて決めます。

設計工程へ官公庁手続きを入れるときは、次の順に調べます。この順に確認すると、必要な協議が設計の後半で判明し、図面や計算を大きく修正する事態を減らせます。

建物条件を確定する → 適用される手続きを洗い出す → 担当者と審査機関を確認する → 必要期間を設計工程へ入れる → 条件変更時に再確認する

  1. 建物用途、規模、地域、工事種別、着工予定日を確定する。
  2. 建築確認、省エネ、消防、保健所、自治体条例などの適用可能性を洗い出す。
  3. 申請者、設計者、代行者、審査機関の役割を契約と体制で確認する。
  4. 事前相談、計算、図書作成、審査、修正に必要な期間を設計工程へ入れる。
  5. 設計条件が変わったとき、再協議・再計算が必要か確認する。

施工段階:施工者が現場寸法を反映し、設計者が設計図書との一致を確かめる

実施設計図には、必要な機器性能やダクト・配管の計画が示されています。ただし、使用する製品の細かな寸法、現場で測った梁や壁の位置、機器を搬入して取り付ける順序までは、すべて確定しているとは限りません。施工者は設計図書を基に、採用する機器と現場寸法を反映した施工図を作成します。

ダクト、配管、ケーブルラック、照明、天井下地などを一枚の図面で重ねて確認する図面が総合図です。総合図を使うと、同じ天井内を通る設備同士の干渉だけでなく、点検口からダンパやバルブを操作できるかも施工前に確認できます。

設計者や工事監理者は、契約上の業務範囲に従い、施工図に示された機器性能、系統、配置が設計図書と一致しているかを確認します。施工者が施工方法を決めて施工図を作成することと、設計者が設計図書との一致を確認することは、役割が異なります。

天井内で梁・ダクト・配管・ケーブルラック・照明・点検口の干渉を施工前に確認する断面

施工図・総合図で確認する内容

次の項目は、図面上で位置と寸法を照合します。点検できる向き、保温を含めた外形、排水の高さなど、施工後に変更しにくい条件まで図面に記載し、確認した位置が分かるようにします。

  • ・ダクト、配管、ケーブルラック、梁、天井下地の干渉
  • ・防火区画を貫通する位置と処理方法
  • ・保温・防露を含めた外形と支持方法
  • ・ダンパ、バルブ、フィルタ、ポンプ、コイルの点検・交換空間
  • ・ドレン排水の勾配と接続先
  • ・機器搬入、揚重、据付、将来更新の手順

試運転で性能を確かめ、維持管理に必要な資料を渡す

工事が完了する前に、空調機やポンプが動くことだけでなく、必要な風量と水量が出ているか、室内の温湿度を保てるか、自動制御と警報が設定どおりに動くかを試験します。中央監視設備がある場合は、運転状態や警報が監視画面へ正しく表示されることも確認します。

測定結果が設計条件と合わない場合は、原因を一つに決めつけません。機器の設定値、ダンパやバルブの調整、ダクトや配管の施工状態、測定時の在室人数や外気条件を順に確認します。どの条件で測定したかを記録しておくと、再調整後の結果と比較できます。

竣工時には、実際に施工した位置を反映した竣工図、採用機器の完成図、試験成績書、取扱説明書、制御の設定値一覧、保証と保守の資料を建物管理者へ渡します。建物管理者は、これらの資料を点検、故障時の原因確認、部品交換、将来の改修に使います。

建築士法は、建築士が工事監理を終了したとき、その結果を建築主へ文書などで報告することを定めています。法令上の報告と、竣工時に提出する設備資料は目的が異なるため、具体的な提出物、作成者、確認者、提出先を契約図書で確かめます。

建築との調整は、機械室・天井内・外壁・屋上に分けて確認する

空調設備と建築を調整するときは、「設備スペースを確保する」という言葉だけでは、確認する範囲がはっきりしません。機械室、シャフト、天井内、外壁、屋上に分け、機器やダクトが建築部材と干渉しないか、操作・点検・交換ができるかを平面図と断面図で確認します。

空調設備と建築の取り合いを、機械室・搬入経路、シャフト・天井内、外壁・屋上、電気・給排水衛生の4領域で示す図

機械室と搬入経路

機械室では、機器本体の幅、奥行き、高さだけでなく、接続するダクトと配管の位置を図面に重ねます。操作盤の前に立てること、点検扉を全開にできること、フィルタやコイルを引き抜けることも必要です。機器を載せる基礎、防振材、ドレン排水の高さも機器の設置高さに影響します。

搬入経路は、機械室の扉だけを見ても判断できません。荷下ろし場所から、搬入口、廊下、エレベーター、階段、揚重開口を通って機械室へ運べるかを確認します。将来の更新時に、壁や天井を大きく壊さずに機器を交換できる経路も残します。

シャフトと天井内

シャフトと天井内では、ダクトや配管の呼び寸法だけで必要空間を判断しません。ダクトのフランジ、配管の継手、保温材、吊り支持、防火区画の貫通処理を加えると、実際に必要な幅と高さは大きくなります。排水管には勾配が必要なため、下流へ進むほど管の位置が低くなることも断面図で確認します。

梁下から天井面までの間に設備が収まらない場合は、ダクトや配管のルートを変える、構造設計者と梁貫通の可否を協議する、天井高さを調整する、設備方式を見直すといった選択肢を比較します。空調設計者だけで梁貫通や天井高さを決めず、意匠・構造・他設備の担当者と決定します。

外壁と屋上

外壁の給気口と排気口は、雨水の侵入、排気の再吸込み、外観、近隣への臭気と騒音を考えて位置を決めます。屋上の室外機、熱源機器、冷却塔、排気筒には、機器を支える構造、防水層を傷めない基礎、振動を建物へ伝えにくくする防振、点検のための通路が必要です。

室外機や冷却塔から出る熱気が再び吸込み側へ戻ると、機器の能力が低下することがあります。周囲の壁、目隠しルーバー、隣接建物、将来の増築範囲を含め、吸込みと吹出しの空気が流れる範囲を確認します。

電気・給排水衛生との接続

空調機器を動かすには、電源だけでなく、運転と停止の信号、異常警報、中央監視への表示が必要になる場合があります。空調設備の機器表に記載した電源容量と、電気設備の負荷表に記載された容量を照合します。どちらか一方だけを変更すると、設計図書の条件が一致しなくなります。

空調機の結露水を流すドレン排水や、加湿器・冷却塔などに使う補給水は、給排水衛生設備へ接続します。接続位置、高さ、必要水量、排水先を機器の仕様と照合します。自動制御については、空調設備側と電気設備側のどちらが配線し、どちらが制御盤や中央監視へ接続するのかを図面と区分表に示します。

建築設備士試験との関係

この記事の内容が直接関係するのは、主に建築設備士の第二次試験(設計製図)です。第二次試験では、設計課題、計画条件、建築基本設計図を読み、建築設備基本計画の記述問題と、建築設備基本設計製図の計算・作図に取り組みます。したがって、この記事で説明した設計の流れは、問題に与えられた建築条件を、設備計画上の判断、計算条件、系統図へつなげるための前提になります。

一方で、この記事を読むだけで第二次試験の対策が完了するわけではありません。個別設備の技術知識、計算式、図面記号、限られた時間で記述・作図する練習は、公式過去問題を使って別に行う必要があります。第一次試験の出題全般に直接対応する記事でもありません。

公式過去問題で確認した出題とのつながり

建築技術教育普及センターが公開している令和5年から令和7年までの第二次試験を確認しました。ここでは出題頻度を断定せず、この記事と関係する出題例を示します。

  • ・令和5年の建築設備基本計画・第1問から第3問では、図書館書庫の空調計画、劇場客席の騒音防止、冷却塔の設置計画について、計画上の要点を記述する問題が出されています。
  • ・令和6年の建築設備基本計画・第1問から第3問では、厨房排気の臭気対策、外気処理空調機の省エネルギー手法、排煙ダクトの計画について、採用する方法と理由を記述する問題が出されています。
  • ・令和7年の建築設備基本計画・第1問から第3問では、冷却塔の設置、水噴霧式加湿器、冷水ポンプの変流量制御について、計画上の要点や留意事項を記述する問題が出されています。
  • ・同じ第二次試験の空調・換気設備の選択問題では、空調機能力などの計算結果を表へ記入する問題と、設備の系統を図面へ示す問題が出されています。

これらは、設計工程の名称を暗記して答える問題ではありません。建物の用途、室の使い方、機器の設置場所、運転条件を読み、設備計画として何を行うか、その理由は何かを文章・計算・図面で示す問題です。

問題を解くときの判断順序

設計課題と建築基本設計図を読む → 問われている室・機器・系統を特定する → 計画上の措置を選ぶ → 措置が必要な理由や効果を記述する → 必要な条件を計算へ入れる → 計算結果と設備系統を図面へ示す

建築設備士第二次試験で、条件を読み、対象を特定し、措置と理由を記述してから計算と系統図へ進む解答の流れ
  • ・記述問題では、最初に対象となる室、機器、ダクト、配管を特定します。次に、その対象へ行う措置を書き、最後に措置が必要な理由または期待する効果を添えます。
  • ・計算問題では、設計課題と建築基本設計図から、室面積、在室人数、温湿度、風量など、指定された計算条件を拾います。数値だけでなく、求める量と単位を確認します。
  • ・系統図・平面図では、計算で求めた能力や風量と、機器、ダクト、配管の接続関係が一致するように示します。空気や水が流れる方向も確認します。
  • ・法令・基準に関係する内容は、問題が出題された年に適用されていた規定と、現在の規定を分けます。

間違えやすいポイント

基本設計では機器を選ばないと思い込む

よくある間違い:基本設計では機器を何も検討せず、実施設計で初めて容量を考える。

確認すべきこと:基本設計でも、方式を比較し、機械室やシャフトの広さを決めるために、概略負荷と主要機器の構成を検討します。機器の型番や詳細仕様をどこまで決めるかは、基本設計の提出図書と契約条件で確認します。

施工図を設計者が作成する図面と考える

よくある間違い:施工図は実施設計図を詳しくしたものなので、設計者が作成する。

確認すべきこと:一般に、施工者が採用する機器、現場寸法、施工順序を反映して施工図を作成します。設計者や工事監理者は、契約上の業務範囲に従い、施工図に示された性能、系統、配置が設計図書と一致しているかを確認します。

官公庁協議の時期を全国共通と考える

よくある間違い:基本設計で消防署、実施設計後に確認申請という順序がすべての案件で決まっている。

確認すべきこと:必要な協議と時期は、建物用途、規模、建設地、所管行政庁、確認申請先、工事の種類、着工予定日によって変わります。最初に適用法令と条例を調べ、誰が申請し、設備設計者がどの図書を用意するのかを契約と設計体制で決めます。

面積比だけで設備スペースを確定する

よくある間違い:延床面積に一定比率を掛ければ、機械室やシャフトの必要面積が決まる。

確認すべきこと:候補機器の外形寸法を平面図に置き、接続するダクトと配管、操作、点検、部品交換、搬入、将来更新に必要な空間を加えます。防火区画や構造条件は断面図でも確認します。面積の原単位を初期検討に使う場合は、出典の建物用途、設備方式、算定条件が対象案件と同じかを確かめます。

設計段階ごとの確認チェックリスト

このチェックリストは、意匠設計者と設備設計者が、基本計画、基本設計・実施設計、施工前・引継ぎの打合せで使う一覧です。空調方式をこの表だけで選ぶものではありません。各段階で決めた建築条件と設備条件が一致しているか、次の段階へ進む前に確認するために使います。

チェックを付けるときは、打合せで話した内容が、図面、計算書、打合せ記録のどこに記載されているかも確認します。未決事項には、決定する担当者と期限を記録しておくと、設計条件が確定しないまま次の工程へ進むことを防げます。

企画・基本計画

☐ 建物用途、利用時間、人数、室ごとの環境要求を共有した

☐ 空調範囲、ゾーニング、運転区分を確認した

☐ 方式比較の評価軸に省エネ、保守、更新、予算を含めた

☐ 機械室、シャフト、屋上、搬入経路の候補を建築図へ示した

☐ 法令・条例・申請・所管協議の担当と工程を確認した

基本設計・実施設計

☐ 外皮仕様、室用途、人数、運転条件を計算条件と照合した

☐ 機器の操作・点検・分解・更新空間を確認した

☐ 幹線ダクト・配管と梁、天井、区画の納まりを確認した

☐ 給排気口、室外機、屋上機器を意匠・構造・近隣条件と照合した

☐ 電源、制御、中央監視、ドレン、補給水の責任区分を確認した

☐ 条件変更と未決事項を打合せ記録へ残した

施工前・引継ぎ

☐ 施工図・総合図で他設備との干渉と保守空間を確認した

☐ 防火区画貫通、防振、防音、保温、防露、排水を確認した

☐ 試運転の測定項目、判定条件、記録様式を確認した

☐ 竣工図、設定値、試験成績書、取扱説明書の引継ぎ先を確認した

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まとめ

空調設備設計では、企画・基本計画で建物の使い方と空調する範囲を確認します。基本設計では、概略負荷と主要機器を検討し、機械室、シャフト、屋上機器、幹線ルートに必要な空間を建築図に確保します。実施設計では、室別負荷、風量、水量、圧力損失を計算し、機器性能、ダクト・配管寸法、自動制御の条件を設計図書へ記載します。

施工段階では、施工者が採用機器と現場寸法を施工図・総合図へ反映し、設計者や工事監理者が設計図書との一致を確認します。工事完了前には、風量、水量、温湿度、自動制御を試験し、竣工図や設定値を建物管理者へ渡します。

次の打合せでは、「いま使える入力情報は何か」「今回決める内容は何か」「決定内容をどの図面や計算書へ残すか」「誰が作成し、誰が確認するか」の四点を順に確認します。この四点が分かれば、まだ決まっていない条件と、建築・構造・電気・給排水衛生の担当者へ伝える内容を具体的に確認できます。

参考・出典

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