必要送風量の計算方法|顕熱負荷と給気温度からm³/hを求める
負荷計算書には、室ごとに顕熱負荷・潜熱負荷・全熱負荷が並んでいます。空調機の風量を決めようとして「どの負荷を使えばいいのか」「kWのまま式に入れていいのか」「答えはm³/sなのかm³/hなのか」で手が止まった経験はありませんか。
結論から言うと、必要送風量は室内顕熱負荷を、室温と給気温度の差で割って求めます。顕熱負荷をkW、温度差をKで入れるなら、式は次の1本で足ります。
必要送風量 [m³/h] = 3,000 × 室内顕熱負荷 [kW] ÷(室温 − 給気温度)[K]
たとえば室内顕熱負荷24kW、室温26℃、給気温度16℃なら、温度差は10K、必要送風量は3,000×24÷10=7,200m³/hです。この記事では、この計算の手順と検算のしかた、係数3,000の中身、負荷計算書から使う数字の選び方、給気温度を変えると風量がどう変わるかを順に説明します。計算した風量を空調機やダクト、吹出口の選定へ渡すときの確認事項もあわせて見ておきましょう。
必要送風量を求める式
必要送風量は、全空気方式(空調機で温度や湿度を整えた空気をダクトで室へ送り、その空気で室内の熱を処理する方式)で、1つの室にどれだけの空気を送れば室温を保てるかを表す値です。
考え方はシンプルです。室へ吹き出した冷たい空気は、室内の照明、人、窓から入る熱を受け取りながら、室温まで温まって戻っていきます。1m³の空気が受け取れる熱は「空気の温度が何K上がるか」で決まるので、処理したい熱を、1m³が受け取れる熱で割れば、必要な空気の量が出てきます。
式で書くと次のとおりです。
V = 3,000 × q_s ÷ ΔT
式に入れるのは給気温度そのものではなく、室温と給気温度の差です。温度差はK(ケルビン)で表しますが、1Kと1℃の差は同じ大きさなので、26℃と16℃の差は10Kと考えてかまいません。
計算例|24kW・室温26℃・給気16℃
オフィスの1室を冷房する場面で、実際に計算してみましょう。条件は計算の流れを示すための例で、どの建物にも当てはまる設計値ではありません。
手順1:温度差を求める
冷房では室温から給気温度を引きます。
26 − 16 = 10K
手順2:式に入れて送風量を求める
V = 3,000 × 24 ÷ 10 = 7,200m³/h
24kWの顕熱を、室温より10K低い空気で処理するには、1時間に7,200m³の空気を送る必要がある、ということです。

手順3:m³/sに直して検算する
答えが合っているかは、逆向きに計算して元の負荷へ戻るかで確かめられます。まずm³/hをm³/sに直します。1時間は3,600秒なので、
7,200 ÷ 3,600 = 2.0m³/s
次に、空気の密度1.2kg/m³、空気の定圧比熱(空気1kgを1K温めるのに必要な熱量)1.0kJ/(kg・K)を使って、この空気が運ぶ熱を計算します。
1.2 × 1.0 × 2.0 × 10 = 24kW
最初の24kWに戻りました。ここで値が1,000倍や3,600倍ずれていたら、kWとW、m³/hとm³/sの取り違えを疑ってください。計算書を提出する前に、この逆算を1行添えておくと、確認する側も安心して読めます。
係数3,000の意味と0.333の式
係数3,000は覚えるだけの数字ではなく、空気が運ぶ熱の基本式から出てきます。
q_s = ρ × c_p × V_s × ΔT
- q_s:室内顕熱負荷 [kW]
- ρ:空気の密度 [kg/m³]
- c_p:空気の定圧比熱 [kJ/(kg・K)]
- V_s:送風量 [m³/s]
- ΔT:室温と給気温度の差 [K]
1kWは1kJ/sなので、この組み合わせなら左右の単位がそろいます。この式を送風量について解き、m³/sをm³/hにするために3,600を掛けると、
V = q_s × 3,600 ÷(ρ × c_p × ΔT)[m³/h]
ρ=1.2、c_p=1.0を入れると、3,600÷(1.2×1.0)=3,000。これが係数3,000の正体です。
同じ関係を、顕熱負荷をW(ワット)で入れる形にしたのが次の式です。
V = q_s ÷(0.333 × ΔT)[m³/h](q_sはW)
0.333は1.2×1.0×1,000÷3,600から出た値です。24kW=24,000Wを入れると、24,000÷(0.333×10)≒7,200m³/hとなり、同じ答えになります。

どちらの式を使っても結果は同じですが、3,000の式にWを入れたり、0.333の式にkWを入れたりすると、答えが1,000倍ずれます。計算書の中では1本の式に決めて、最後まで同じ単位で通しておきましょう。
なお、1.2と1.0は説明用に置いた代表値で、空気の密度や比熱は気圧や温湿度で変わります。実案件では、負荷計算書や機器選定で採用している物性値を使ってください。標高の高い地域や特殊な温湿度条件の室で、1.2と1.0を無条件に固定しないことが大切です。
負荷計算書から使う顕熱負荷の選び方
式に入れる「室内顕熱負荷」は、負荷計算書のどの数字を拾えばよいのでしょうか。ここを間違えると、式が正しくても答えがずれます。
顕熱負荷だけを使う理由
冷たい給気が室内で受け取るのは、空気の温度を上げる熱、つまり顕熱です。16℃の給気が26℃になるまでに受け取る熱は顕熱だけなので、温度差を使う送風量の式には顕熱負荷を入れます。
一方、潜熱は人の汗や呼吸で出る水蒸気のように、空気中の水分量を変える熱です。温度差では運べないので、送風量の式には足しません。
たとえば室内顕熱24kWに室内潜熱6kWを足した30kWを式に入れると、3,000×30÷10=9,000m³/hになります。1,800m³/hも多い風量で空調機やダクトを選ぶことになるうえ、潜熱をきちんと処理できるかの確認は抜け落ちたままです。潜熱は捨てる数字ではなく、送風量を決めたあとに給気の湿度で確認します(後の「潜熱負荷は給気の湿度で確認する」で計算します)。

室・時刻・冷暖房をそろえる
負荷計算書から数字を拾うときは、対象の室、冷房か暖房か、設計時刻の3つをそろえます。たとえば「会議室Aの冷房、14時」と決めたら、その行の室内顕熱負荷を使います。別の時刻の最大値や、隣の室の値を混ぜると、同じ状態を表す計算になりません。
外気負荷を足すかは空調方式で決まる
負荷計算書に外気負荷が載っていても、室の送風量の式へそのまま足すとは限りません。外気を空調機で冷やしてから室へ送る方式なら、外気負荷は空調機の冷却コイルが処理する熱であり、室の中で給気が受け取る熱ではないからです。
計算書の「室内」「外気」「装置」の区分を見て、外気をどの機器で処理する設計なのかを系統図で確認してから、式に入れる数字を決めてください。コイル容量の側で外気負荷をどう扱うかは、空調機負荷(装置負荷)の計算で詳しく説明しています。
給気温度の決め方と送風量の関係
式のもう一つの入力が給気温度です。給気温度によって温度差が変わり、必要送風量も大きく変わります。
室に届く給気温度を使う
式に入れるのは、吹出口から室へ出ていく空気の温度です。空調機の冷却コイル出口の温度とは限りません。コイルを出た空気は、送風機のモーター熱やダクト周りの熱を受けて少し温まりますし、再熱コイルがあればそこで温度が上がります。
空調機の状態点表や系統図で、コイル出口、送風機の前後、再熱後、室への給気(SA)を分けて見て、室へ届く温度を拾いましょう。
給気温度が変わると風量は再計算になる
空調機を選定したあとで、給気温度が16℃ではなく18℃になったとします。室温26℃との差は8Kに縮まり、
V = 3,000 × 24 ÷ 8 = 9,000m³/h
同じ24kWを処理するのに、7,200m³/hから9,000m³/hへ、2割5分増えました。温度差が小さいほど、たくさんの空気を送らないと同じ熱を運べないからです。給気温度が変わったら、風量だけでなく、空調機、ダクト、吹出口の選定もやり直しになります。
反対に温度差を大きくすれば必要風量は減り、ダクトを小さくできる場合があります。ただし、それだけで冷却コイルの能力まで小さくできるわけではありません。冷房では、冷たすぎる風が人に当たる不快感(ドラフト)や、吹出口まわりの結露が起きやすくなります。暖房では、温かい空気が天井付近にたまって足元が暖まらない、ということも起こります。給気温度は、吹出口の性能、取付高さ、室内の気流、冷却コイルの顕熱・全熱能力とあわせて決めてください。
暖房では給気温度から室温を引く
暖房では給気のほうが室温より高いので、給気温度から室温を引いて、正の温度差として式に入れます。冷暖房で同じ空調機とダクトを使う場合は、冷房と暖房それぞれの顕熱負荷と温度差で風量を計算し、どちらの風量で選定するのかを計算書に残しておきましょう。
潜熱負荷は給気の湿度で確認する
送風量が決まったら、潜熱を処理できるかを確認します。先ほどの例に、室内潜熱負荷6kWを加えて考えてみましょう。
7,200m³/h=2.0m³/sでした。ここでは説明用に乾き空気基準の密度を1.2kg(DA)/m³と置くと、乾き空気(水蒸気を除いた空気)の質量流量はおよそ次のとおりです。実案件では、採用した温湿度と気圧に合う乾き空気の質量流量を使います。
1.2 × 2.0 = 2.4kg/s
水の蒸発潜熱を説明用の近似値2,501kJ/kgとすると、潜熱6kWを処理するのに必要な絶対湿度(乾き空気1kgに含まれる水蒸気の量)の差は、
6 ÷(2.4 × 2,501)≒ 0.0010kg/kg(DA) = 1.0g/kg(DA)
つまり、給気の絶対湿度を室内空気より約1.0g/kg(DA)以上低くしておかないと、室の湿度が上がっていくということです。
ここで湿り空気線図の出番です。線図から7,200m³/hを読むのではなく、室内の状態点(RA)と給気の状態点(SA)を描き、温度差10Kと絶対湿度差1.0g/kg(DA)が確保できているか、2点を結ぶ線が室のSHF(顕熱比。全熱負荷のうち顕熱が占める割合)の傾きと合っているかを確認します。室内と給気の絶対湿度は、採用する大気圧条件の線図か計算ソフトで読んでください。
最後に、冷却コイルの選定表で出口空気の乾球温度と絶対湿度を照合します。必要な絶対湿度の給気をコイルがつくれなければ、送風量が合っていても室内の湿度は保てません。SHFと線図の読み方は顕熱比(SHF)とはで解説しています。
計算した風量を設計に反映するときの確認
必要送風量は、計算して終わりではありません。この値を空調機、送風機、ダクト、吹出口へ渡し、設計どおりに空気が届くかを確認していきます。

複数の室を1台の空調機で受け持つときは、室ごとの風量を系統ごとに集計します。負荷計算書ですでに余裕率や同時使用の条件を見込んでいる場合、集計の段階で同じ余裕を重ねて足さないよう、どこで見込んだかを確認しておきましょう。
吹出口は、たとえば室の風量7,200m³/hを6個で受け持つなら1個当たり1,200m³/hが出発点です。ただし6等分しただけでは選定は終わりません。メーカーの選定表に1個当たり風量と取付高さを入れて、暖房にも使う吹出口なら温風が床付近まで届くかまで確かめてください。
建築設備士試験での出題例
必要送風量の式は、建築設備士試験でも逆算や積み上げの形で出題されています。
平成29年 第一次試験「建築設備」No.5
送風量5,000m³/h、室内顕熱負荷20kW、空気の密度1.2kg/m³、定圧比熱1.0kJ/(kg・K)、室温22℃の条件で、暖房時の給気温度を求める問題です。送風量の式を温度差について解きます。
ΔT = 20 × 3,600 ÷(5,000 × 1.2 × 1.0)= 12K
暖房なので給気は室温より高く、22+12=34℃が給気温度です。式を丸暗記するより、どの値を求めるときも同じ式を組み替えれば解ける、と理解しておくほうが応用が利きます。
同じ年のNo.4では、全空気方式の冷房時送風量に、どの負荷を含めるかが問われています。問題文に外気負荷が書かれていても、室内の顕熱を処理する風量を聞いているのか、外気を含む装置の能力を聞いているのかを見分けてから数字を拾いましょう。
令和元年 第二次試験(設計製図)選択問題A 第2問(1)
フィットネススタジオを単一ダクト方式で冷房するときの、空調機の送風量と算定根拠を求める問題です。まず問題文の条件から室内顕熱負荷を積み上げます。床面積231m²に対する面積当たりの顕熱負荷(100W/m²と20W/m²)と、58人分の人体顕熱(1人126W)を足すと、
231×100 + 231×20 + 58×126 = 35,028W = 35.028kW
室温26℃、給気温度17℃なので温度差は9K。送風量は、
V = 35.028 × 3,600 ÷(1.2 × 1.0 × 9)= 11,676m³/h
となります。実務でも、室内の顕熱負荷を項目ごとに積み上げてから送風量を出す流れは同じです。試験では問題文に与えられた密度と比熱を使い、答えの単位がm³/hかm³/sかを先に確認しておくと、3,600の入れ忘れを防げます。
まとめ|顕熱負荷と温度差で送風量を決める
- 必要送風量は「3,000×室内顕熱負荷[kW]÷(室温−給気温度)[K]」でm³/hを求める。24kW・26℃・16℃なら7,200m³/h。
- 検算はm³/sに直して逆算する。2.0m³/s×1.2×1.0×10K=24kWに戻ればOK。
- 係数3,000は3,600÷(1.2×1.0)。Wで入れるなら0.333の式を使い、式ごとに単位をそろえる。
- 式に入れるのは室内顕熱負荷だけ。潜熱は給気の絶対湿度とコイルの除湿能力で、外気負荷は空調方式に応じて外気を処理する機器で確認する。
- 給気温度は室に届く温度を使う。給気温度が変われば風量も空調機・ダクト・吹出口も選び直しになる。
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参考・出典
- U.S. Department of Energy / EnergyPlus, Component Sizing: Engineering Reference
- NIST, Baseline Control Systems in the Intelligent Building Agents Laboratory, Technical Note 2178
- U.S. Department of Energy, Measure Guideline: Air Conditioner Diagnostics, Maintenance, and Replacement
- 建築技術教育普及センター「平成29年建築設備士試験 第一次試験(建築設備)」
- 建築技術教育普及センター「平成29年建築設備士試験 第一次試験 正答肢・配点等」
- 建築技術教育普及センター「令和元年建築設備士試験 第二次試験(設計製図)」
- 建築技術教育普及センター「過去の試験問題等」
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