必要送風量の計算方法|顕熱負荷と給気温度からm³/hを求める
負荷計算書を開くと、顕熱負荷・潜熱負荷・全熱負荷が並んでいます。必要送風量にはどの負荷を使うのか、kWの値を式へどう入れるのか、m³/sとm³/hをどう換算するのかで手が止まりやすいところです。
この記事では、負荷計算書から室内顕熱負荷を選び、室温と給気温度の差を使って必要送風量をm³/hで求める手順を整理します。計算後に潜熱、空気線図、空調機やダクトで確認する内容は、基本計算と分けて説明します。
具体例は、室内顕熱負荷24kW、室温26℃、給気温度16℃です。この条件から温度差10Kと必要送風量7,200m³/hを求め、2.0m³/sへ換算して24kWへ戻るところまで検算します。
顕熱負荷から必要送風量を求める
ここでは、全空気方式で冷房している室を想定します。全空気方式とは、空調機で温度や湿度を調整した空気をダクトで室へ送り、その空気で室内負荷を処理する方式です。
最初に使う条件は次の3つです。いずれも計算順を説明するための仮定であり、すべての建物に共通する設計値ではありません。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 室内顕熱負荷 | 24kW |
| 室温 | 26℃ |
| 給気温度 | 16℃ |
室内顕熱負荷とは、給気が室内で受け取る「室温を変化させる熱」です。今回は、この24kWを送風量の計算に使います。
給気温度は、室へ送り込む空気の温度です。冷房時の温度差は、室温から給気温度を引いて求めます。
26℃から16℃を引くと、温度差は10Kです。
温度差では、1℃の差と1Kの差は同じ大きさです。26℃と16℃の差は10Kと表せます。
次に、顕熱負荷をkWで入れ、必要送風量をm³/hで求める式を使います。
必要送風量 V_h = 3,000 × 室内顕熱負荷 q_s / 温度差 ΔT [m³/h]

24kWと10Kを入れると、次の結果になります。
V_h = 3,000 × 24 / 10 = 7,200m³/h
これで検索読者が最初に知りたい計算は完了です。室内顕熱負荷24kWを、室温より10K低い給気で処理するには、7,200m³/hの空気を送る必要があります。
m³/hをm³/sへ換算して検算する
m³/hは1時間当たりの体積、m³/sは1秒当たりの体積です。1時間は3,600秒なので、7,200を3,600で割ります。
7,200 ÷ 3,600 = 2.0m³/s
ここで、空気密度を1.2kg/m³、空気の定圧比熱を1.0kJ/(kg・K)とする説明用の値を置きます。定圧比熱とは、空気1kgの温度を1K変えるために必要な熱量です。この2つの値と、2.0m³/s、10Kを掛けると、給気が運ぶ顕熱を逆算できます。
1.2 × 1.0 × 2.0 × 10 = 24kW
最初の室内顕熱負荷24kWへ戻りました。元の負荷へ戻らないときは、m³/hとm³/s、kWとWの取り違えを先に確認します。
必要送風量に顕熱負荷を使う理由
冷たい給気は、室内の熱を受け取ると温度が上がります。給気16℃が室内で26℃になるまでに受け取る熱は、空気の温度を変える顕熱です。そのため、室温と給気温度の差を使う送風量計算には、給気が室内で処理する顕熱負荷を入れます。
負荷計算書を見るときは、対象の室、冷房または暖房、設計時刻を特定し、その条件に対応する室内顕熱負荷を選びます。別の時刻や別室の最大値を混ぜると、同じ状態を表す計算になりません。
潜熱は、人の発湿などによって空気中の水蒸気量を変える熱です。潜熱負荷は後で必ず確認しますが、乾球温度の差から風量を求める式には足しません。
外気負荷を室内顕熱負荷へ足すかどうかも、空調方式によって変わります。外気を空調機で処理してから室へ送る場合、外気負荷はコイル能力には関係しますが、室内顕熱から求める室送風量へそのまま加えるとは限りません。負荷計算書の「室内」「外気」「装置」の区分と、外気をどの機器で処理する設計かを確認します。

送風量の基本式と係数3,000
先ほど使ったm³/hの式は、空気が温度差によって運ぶ顕熱の基本式から作られています。
q_s = ρ × c_p × V_s × ΔT
q_s: 室内顕熱負荷[kW]ρ: 空気密度[kg/m³]c_p: 空気の定圧比熱[kJ/(kg・K)]V_s: 送風量[m³/s]ΔT: 室温と給気温度の差[K]
1kWは1kJ/sです。そのため、定圧比熱をkJ/(kg・K)、送風量をm³/sで入れると、計算結果はkWになります。
m³/hで風量を求めるには、式を風量について解き、1時間の秒数である3,600を掛けます。
V_h = q_s × 3,600 / (ρ × c_p × ΔT) [m³/h]
空気密度を1.2kg/m³、定圧比熱を1.0kJ/(kg・K)と置くと、3,600÷(1.2×1.0)=3,000です。これが最初に使った係数3,000の中身です。
空気密度と定圧比熱は、圧力や温湿度によって変わります。実案件では、負荷計算書や機器選定で採用した物性値を使います。高地や特殊な温湿度条件で、説明用の1.2と1.0をそのまま固定値にしないことが大切です。
0.333式ではkWをWへ換算する
同じ関係を、顕熱負荷をWで入れる式にすると次の形になります。
V_h = q_s / (0.333 × ΔT) [m³/h] ※q_sはW
24kWは24,000Wです。したがって、24,000÷(0.333×10)は約7,200m³/hになります。

3,000の式へ入れる負荷はkW、0.333の式へ入れる負荷はWです。どちらを選んでも答えは同じですが、計算途中で式を切り替えると単位を間違えやすくなります。最初に単位を決め、最後まで1本の式で計算します。
潜熱負荷は送風量と分けて扱う
全熱負荷で送風量を計算しない
室内顕熱負荷24kWに室内潜熱負荷6kWを足し、30kWを温度差の式へ入れると9,000m³/hになります。しかし、この式が扱うのは温度差で運ぶ顕熱です。水蒸気量を変える潜熱6kWを足すと、計算対象が混ざります。
潜熱6kWは削除する数字ではありません。7,200m³/hを求めた後、給気の絶対湿度と冷却コイルの除湿能力で処理できるかを確認します。
送風量計算で間違えやすい3点
給気温度ではなく温度差を使う
式へ入れるのは、室温26℃と給気16℃の差である10Kです。16をそのまま入れると、給気が室内で何K上昇するかを表せません。
冷房時は通常、室温から給気温度を引きます。暖房時は給気温度のほうが高いため、給気温度から室温を引き、正の温度差として扱います。
m³/hへの換算は3,600倍
基本式で出る風量はm³/sです。機器表や風量表がm³/hを求めているなら3,600倍します。反対に、m³/hからm³/sへ戻すときは3,600で割ります。
計算後にm³/sへ戻し、顕熱負荷を逆算すると、この間違いを見つけやすくなります。
室へ届く給気温度を使う
室内顕熱の計算に使うのは、室へ到達する給気の温度です。冷却コイル出口から吹出口までの間にファン、再熱、ダクトから熱を受ける構成では、コイル出口温度と給気温度が一致しません。
空調機の状態点表や系統図で、コイル出口、ファン前後、再熱後、室への給気SAを分けて確認します。
潜熱負荷を空気線図とコイルで確認する
ここからは、基本計算の外側にある潜熱側の確認です。先ほどの例に、室内潜熱負荷6kWを追加します。
7,200m³/hは2.0m³/sでした。空気密度を1.2kg/m³と置くと、乾き空気の質量流量は概算で2.4kg/sです。
1.2 × 2.0 = 2.4kg/s
水の蒸発潜熱を説明用の近似値2,501kJ/kgとすると、潜熱6kWを処理するために必要な絶対湿度差は約1.0g/kg(DA)です。
6 / (2.4 × 2,501) ≒ 0.0010kg/kg(DA) = 1.0g/kg(DA)
つまり、給気の絶対湿度は、室内空気より少なくとも約1.0g/kg(DA)低い必要があります。室内と給気の絶対湿度は、採用する大気圧条件の湿り空気線図または計算ソフトで読みます。
空気線図から7,200m³/hを直接読むわけではありません。送風量は顕熱負荷と乾球温度差から計算し、線図では室内点RAと給気点SAの温度差・絶対湿度差、室SHF線がつながるかを確認します。
最後に、空調機・冷却コイル選定表の入口と出口の温湿度、顕熱能力、全熱能力を照合します。必要な低い絶対湿度の給気をコイルが作れなければ、送風量の計算が合っていても室内湿度は維持できません。
給気温度が変われば風量を再計算する

必要送風量は、給気温度が変わると変わります。たとえば、空調機選定後に室への給気温度が16℃ではなく18℃になったとします。室温26℃との差は10Kから8Kへ縮まります。
V_h = 3,000 × 24 / 8 = 9,000m³/h
温度差が小さくなったため、同じ24kWを処理する風量は7,200m³/hから9,000m³/hへ増えました。給気温度を変更したときは、風量だけでなく、空調機、ダクト、吹出口の選定も更新します。
反対に温度差を大きくすれば、計算上の風量は減ります。ただし、冷房では冷風によるドラフトや吹出口周辺の結露、暖房では温風が天井付近にたまる温度成層が起こりやすくなります。給気温度は、吹出口の性能、取付高さ、室内気流、コイル能力と一緒に決めます。
空調機とコイルの風量・温湿度を照合する
複数の室を1台の空調機が受け持つ場合は、室別風量を系統ごとに集計します。負荷計算書の同時使用条件や設計余裕をどこへ含めたかを確認し、同じ余裕を重ねて足さないようにします。
空調機・コイル選定表では、選定風量、入口・出口の乾球温度と絶対湿度、顕熱・全熱能力、ファン位置、再熱や加湿の有無を見ます。給気温度や絶対湿度が計算条件と違えば、風量またはコイル条件を再検討します。
送風機とダクトで必要風量を確保する
送風機選定表では、設計風量で必要な機外静圧を確保できる運転点かを確認します。ダクトが細い、曲がりが多い、フィルターやコイルの抵抗が大きいと、必要な静圧が増え、計算風量どおりに空気が届かないことがあります。
ダクト計算書では各区間の風量、寸法、圧力損失を確認します。天井伏図と断面図では、ダクトが梁、照明、配管と干渉せず、必要な寸法で通るかを見ます。
吹出口とVAVの最小風量を確認する
室風量7,200m³/hを吹出口6個へ均等に分ける場合、出発点は1個当たり1,200m³/hです。ただし、6等分しただけでは選定完了ではありません。
メーカーの吹出口選定表へ1個当たり風量と取付高さを入れ、到達距離、居住域の風速、騒音を確認します。暖房にも使う吹出口なら、温風が床付近まで届くかも確認します。
VAV方式では、部分負荷時に風量を絞ります。制御図とVAV仕様書で、最小風量でも必要換気量を保てるか、吹出口の気流が不安定にならないか、除湿中の給気温湿度をどう制御するかを確認します。
試験で給気温度と外気負荷を見分ける
平成29年の建築設備士第一次試験「建築設備」No.5では、送風量5,000m³/h、室内顕熱負荷20kW、空気密度1.2kg/m³、定圧比熱1.0kJ/(kg・K)、室温22℃から暖房時の給気温度を求めます。
まず、温度差を逆算します。
ΔT = 20 × 3,600 / (5,000 × 1.2 × 1.0) = 12K
暖房時の給気は室温より高いため、22℃へ12Kを足し、給気温度は34℃です。送風量を求める式を覚えるだけでなく、求めたい温度差について式を組み替えられることが大切です。
同年No.4は、室送風量の計算へ外気負荷をそのまま加えるかという計算境界を扱っています。問題文に外気負荷があっても、自動的にすべての数字を足すのではなく、室内顕熱を処理する風量なのか、外気を含む装置能力なのかを見分けます。
試験では、問題文に与えられた空気密度と定圧比熱を使います。答えの単位がm³/hかm³/sかを先に確認し、式の各数値にも単位を書けば、3,600の入れ忘れを防げます。
まとめ
必要送風量は、給気が室内で処理する顕熱負荷と、室温・給気温度の差から求めます。室内顕熱負荷24kW、室温26℃、給気16℃なら、温度差は10K、必要送風量は7,200m³/hです。
計算後は7,200m³/hを2.0m³/sへ戻します。空気密度1.2kg/m³、定圧比熱1.0kJ/(kg・K)を使い、1.2×1.0×2.0×10=24kWとなれば、単位換算を含めて検算できます。
潜熱負荷は温度差の式へ足さず、絶対湿度差とコイル能力で確認します。実務では、選定後の給気温度が計算条件と一致しているかを見直し、室別風量を空調機、送風機、ダクト、吹出口、VAV制御へ順に渡します。
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参考・出典
- U.S. Department of Energy / EnergyPlus, Component Sizing: Engineering Reference
- NIST, Baseline Control Systems in the Intelligent Building Agents Laboratory, Technical Note 2178
- U.S. Department of Energy, Measure Guideline: Air Conditioner Diagnostics, Maintenance, and Replacement
- 建築技術教育普及センター「平成29年建築設備士試験 第一次試験(建築設備)」
- 建築技術教育普及センター「平成29年建築設備士試験 第一次試験 正答肢・配点等」
- 建築技術教育普及センター「令和元年建築設備士試験 第二次試験(設計製図)」
- 建築技術教育普及センター「過去の試験問題等」


