電圧降下とは?許容範囲と計算式を100V・200Vの例で解説
電圧降下とは、電線やケーブルに電流が流れたとき、送り出し側よりも負荷側の電圧が低くなる現象です。たとえば、分電盤から200Vで送り出しても、長いケーブルの先にあるポンプの端子では197Vになることがあります。
電圧が下がりすぎると、照明が暗くなるだけではありません。モーターが始動しにくい、電流が増えて発熱する、制御機器が停止するといった不具合につながります。そのため、電線は許容電流だけでなく、電圧降下も計算して太さを決めます。
この記事では、まず許容電圧降下の目安を確認し、その後で単相・三相の計算式と三相200V回路の計算例を説明します。最後まで読めば、計算結果が許容範囲内かを判断し、値が大きいときに何を見直せばよいか分かります。
電圧降下の許容範囲は何%か
最初に結論を確認します。構内に変圧器を設け、その二次側から低圧で配電する一般的な建物では、こう長60m以下を目安として、幹線の電圧降下を3%以下、分岐回路を2%以下に抑えます。
ただし、どの回路にも一律に「3%まで」と当てはめるわけではありません。電力会社から低圧で受電するのか、構内変圧器から供給するのか、変圧器または引込線取付点から最遠端まで何mあるのかによって、確認する値が変わります。
60mを超える回路で使う5%は、幹線だけの値ではありません。変圧器の二次側端子から最遠端の負荷までを通して確認する値です。設計では最新版の内線規程を開き、受電方式と対象区間を単線結線図上で確かめてください。
100V・200Vでは何Vまで下がる計算か
許容率を電圧へ直すと、計算結果を判断しやすくなります。
たとえば、200V幹線に3%を適用する場合、電圧降下の上限は 200V×0.03=6V です。計算結果が2.9Vなら3%以内ですが、7Vなら超過します。
ここで示した2%・3%・5%は、回路条件を確認するための代表値です。非常用設備、消防設備、電圧変動に弱い機器、モーターの始動時などは、機器仕様や設備ごとの基準を優先します。
電圧降下とは
電線やケーブルには、小さいながらも抵抗とリアクタンスがあります。そこへ電流が流れると、配線の途中で電圧の一部が失われ、負荷へ届く電圧が送り出し側より低くなります。
電圧降下は、主に次の条件で大きくなります。
- 流れる電流が大きい
- 配線が長い
- 電線の導体断面積が小さい
- 力率が低い
- ケーブルの抵抗やリアクタンスが大きい
同じ200V回路でも、分電盤のすぐ近くにある小さな機器と、100m先にある大容量ポンプでは条件が違います。幹線計算書では、負荷電流、こう長、ケーブルサイズ、力率、抵抗、リアクタンスを回路ごとに入れて確認します。
電力会社の供給電圧と電圧降下は別に考える
電気事業法施行規則第38条では、一般送配電事業者が低圧需要家へ供給する電圧について、標準電圧100Vは101±6V、標準電圧200Vは202±20Vを超えない値と定めています。範囲に直すと、100V系は95~107V、200V系は182~222Vです。
これは電力会社が受電点まで供給する電圧の範囲です。建物内の配線で何%まで電圧を下げてよいかを示した値ではありません。

受電点が100V系で95Vだった場合、構内配線でさらに5V下がれば、機器端子は単純計算で90Vです。供給電圧が法令上の範囲内でも、機器が正常に動くとは限りません。最後は、機器端子へ届く電圧をメーカー仕様書の許容入力電圧と照合します。
電圧降下率の計算方法
電圧降下をボルトで求めたら、回路の電圧で割って百分率にします。
電圧降下率(%)=電圧降下ΔV(V)÷回路電圧V(V)×100
200V回路で2.9V下がる場合は、次のように計算します。
2.9V÷200V×100=1.45%
100V回路で同じ2.9Vが下がれば2.9%です。同じ電圧降下でも、100V回路のほうが割合は大きくなります。
こう長は片道の長さでそろえる
この記事で示す式の l は、送り出し点から負荷までの片道のこう長です。単相2線式では式の係数2が往復分を表すため、30mの回路へ60mを入れると二重に数えることになります。
ケーブル資料の抵抗とリアクタンスがΩ/kmで示されている場合、30mは0.03kmへ直します。単位をそろえず30のまま入れると、計算結果が1,000倍になります。
単相・三相の電圧降下計算式
交流回路の電圧降下は、電流、片道こう長、ケーブルの抵抗・リアクタンス、力率から求めます。ケーブル資料の R と X を使う場合の基本形は次のとおりです。
単相3線式は、赤相と黒相の100V負荷が同じで中性線電流が打ち消し合う「平衡状態」の式です。負荷が偏ると中性線にも電流が流れるため、各線の負荷と中性線電流を分けて確認します。
計算式で使う記号
抵抗だけを使う簡略計算は、概算や試験問題では便利です。ただし、実施設計で大電流・長距離・低力率の回路を確認するときは、採用ケーブルの交流導体抵抗とリアクタンスを使います。
三相200V回路の電圧降下を計算する
三相3線式200Vの回路に、出力25kWの三相負荷を接続する例で計算します。力率0.85、効率0.90、ケーブルこう長30m、交流導体抵抗0.626Ω/km、リアクタンス0.115Ω/kmとします。
この数値は計算手順を説明するための条件です。実際の設計では、採用するケーブルの技術資料と機器の定格電流・始動条件を使ってください。
1.負荷電流を求める
25kWは機器の出力なので、効率と力率を含めて入力電流を求めます。
I=25,000÷(√3×200×0.85×0.90)≒94.3A
機器仕様書に入力電流が記載されている場合は、その値を使います。「出力25kW」と「入力25kW」を取り違えると、必要な電流を小さく見積もるため注意が必要です。
2.sinθを求める
力率 cosθ=0.85 から sinθ を求めます。
sinθ=√(1-0.85²)≒0.527
3.30mを0.03kmへ換算する
抵抗とリアクタンスの単位がΩ/kmなので、こう長もkmへそろえます。
30m÷1,000=0.03km
4.三相3線式の式へ入れる
ΔV=√3×94.3×0.03×(0.626×0.85+0.115×0.527)
ΔV≒2.9V
送り出し電圧を200Vとすると、負荷端の電圧は単純計算で約197.1Vです。
5.許容範囲内か判定する
電圧降下率=2.9÷200×100≒1.45%
この幹線へ3%を適用する条件なら、上限は6Vです。計算結果は2.9V、1.45%なので、電圧降下については上限以内です。
ただし、この判定だけでケーブルサイズは決まりません。許容電流、短絡時の保護、遮断器との協調、端子へ接続できる太さ、モーター始動時の瞬時電圧低下も確認します。

電圧降下が大きいと起こること
照明やヒーターの能力が下がる
電圧が低くなると、照明が暗くなったり、電熱機器の発熱量が不足したりします。LED照明や電子制御機器は内部に電源回路を持つため、現れ方は製品によって異なります。定格電圧だけで判断せず、メーカーが示す使用電圧範囲を確認します。
モーターが始動しにくくなる
ポンプやファンのモーターは、始動時に定常運転より大きな電流が流れます。その瞬間に電圧が大きく下がると、始動できない、加速に時間がかかる、保護装置が動作するといった問題が起こります。
定常時の電圧降下計算が1.45%でも、始動時まで問題ないとは限りません。モーターの始動電流、始動時間、始動方式、同時始動する機器、変圧器または発電機の容量を確認します。
制御機器が停止することがある
制御盤、電磁接触器、インバータ、通信機器は、電圧低下によって停止またはリセットする場合があります。防災設備や生産設備では短時間の停止でも影響が大きいため、各機器の瞬時停電・電圧低下耐量までメーカーへ確認します。
電圧降下が大きいときの対策
ケーブルを太くする
導体断面積を大きくすると抵抗が小さくなり、電圧降下を抑えられます。ただし、太いケーブルへ変更すると、盤の端子へ接続できない、曲げ半径を確保できない、ケーブルラックに収まらないことがあります。幹線計算だけでなく、盤図と配線ルートも一緒に見直します。
分電盤や動力盤を負荷へ近づける
電圧降下はこう長に比例するため、配線を短くすると小さくなります。大きな建物では、電気室から遠いエリアへサブ電気室や動力盤を設ける方法があります。盤を移す場合は、防火区画、点検スペース、搬入経路、騒音、浸水リスクも建築図と照合します。
回路を分けて電流を減らす
一つの幹線へ多くの負荷をまとめている場合、系統を分けると各回路の電流を減らせます。盤負荷表で同時使用する負荷を確認し、幹線ごとの電流と電圧降下を計算し直します。
高い電圧で負荷の近くまで送る
長距離へ大きな電力を送る建物では、高圧で負荷の近くまで配電し、サブ電気室の変圧器で低圧へ変える方法もあります。電圧降下だけで決めず、変圧器損失、受変電スペース、保守、工事費、将来更新まで含めて比較します。
モーターの始動方式を見直す
直入れ始動で電圧低下が大きい場合は、スターデルタ始動やインバータ始動などを検討します。採用できる方式はモーターと負荷の特性で変わるため、機器メーカーへ必要始動トルク、始動電流、加速時間を示して確認します。
実務で電圧降下を確認する手順
1.単線結線図で供給区間を追う
変圧器または引込線取付点から、幹線、分電盤、分岐回路、最遠端負荷までを追います。許容率を幹線だけへ適用するのか、最遠端までの合計へ適用するのかを図面上で決めます。
2.盤負荷表と機器仕様書で電流を確認する
機器の入力電流が分かる場合は仕様書の値を使います。出力kWしかない場合は、電圧、相数、力率、効率から入力電流を計算します。モーターは定常電流と始動電流を分けます。
3.平面図から片道こう長を拾う
盤から機器までの水平距離だけでなく、EPS内の立上り、天井内の迂回、機器への立下りを含めます。設計初期に正確なルートが決まっていない場合は、想定ルートと余裕を計算書へ明記します。
4.ケーブル資料からRとXを選ぶ
ケーブル種類、導体断面積、周波数、配線条件に合う交流導体抵抗とリアクタンスをメーカー技術資料から選びます。別サイズや別種類の値を流用しないよう、資料名と表の位置を計算書へ残します。
5.末端電圧を機器仕様と照合する
電圧降下率が内線規程の目安以内でも、末端電圧が機器の使用範囲を外れる場合は対策が必要です。供給側の電圧変動、構内配線の電圧降下、始動時の一時的な低下を分けて確認します。
間違えやすいポイント
片道30mを往復60mとして式へ入れる
単相2線式の式には係数2が含まれています。式が片道こう長を使うのか、電線全長を使うのかを確認せず、往復分を二重に数えないようにします。
mとkmをそろえない
抵抗がΩ/kmなら、30mは0.03kmです。計算書では数字だけでなく単位も残すと、1,000倍の入力ミスに気づきやすくなります。
出力kWを入力kWとして扱う
モーターの出力から電流を求めるときは、効率と力率を含めます。仕様書に定格入力電流があれば、まずその値を確認します。
200Vだから許容値も2倍と決める
同じ3%なら100Vでは3V、200Vでは6Vですが、適用する率は受電方式、こう長、区間で決まります。電圧だけを見て2%・3%・5%を選ばないでください。
許容電流だけでケーブルを決める
許容電流を満たしても、長い回路では電圧降下が上限を超える場合があります。許容電流、電圧降下、短絡保護、施工条件をすべて確認して採用サイズを決めます。
建築設備士試験対策|具体的な学習内容
令和6年第一次試験「建築設備」No.49
三相3線式200V、こう長30m、導体断面積38mm²、定格電流50A、力率100%の回路について、こう長、導体断面積、電流を変えたときの電圧降下比を判断する問題です。
抵抗分だけを考えると、電圧降下はおおむね 電流×こう長÷導体断面積 に比例します。電流を50Aから75Aへ1.5倍、こう長を30mから45mへ1.5倍にすると、電圧降下は 1.5×1.5=2.25倍 です。
令和6年第一次試験「建築設備」No.50
低圧配線の基準を判断する問題です。電気使用場所内の変圧器から最遠端までのこう長が60mを超え120m以下の場合、低圧配線全体の電圧降下を標準電圧の5%以下とできる条件が示されています。
ここでは「幹線だけで5%」と覚えないことが大切です。供給変圧器の二次側端子から最遠端負荷までの電線全体が対象です。
令和7年第二次試験「電気設備」選択問題C・第1問(3)
三相3線式200V、負荷出力25kW、力率0.85、効率0.90、ケーブルの交流導体抵抗0.626Ω/km、リアクタンス0.115Ω/kmなどの条件から、線間電圧降下を求める問題です。
計算は、負荷電流94.3A、sinθ≒0.527、こう長30mを0.03kmへ換算する順に進め、電圧降下は約2.9Vとなります。第二次試験の公式解答例は公表されていないため、この記事では公式問題の条件と一次資料で確認した式に基づく編集部の計算例を示しています。
電圧降下の確認チェックリスト
まとめ|許容率だけでなく末端電圧まで確認する
電圧降下は、電流が大きいほど、配線が長いほど、ケーブルの抵抗やリアクタンスが大きいほど増えます。まず単線結線図で対象区間を決め、負荷電流、片道こう長、ケーブルのR・X、力率をそろえて計算します。
構内変圧器から供給する60m以下の回路では、幹線3%、分岐回路2%が代表的な目安です。変圧器二次側から最遠端までが60mを超え120m以下なら、合計5%以下とできる条件があります。実際の設計では最新版の内線規程で、受電方式と適用区間を確認してください。
計算結果が許容範囲内でも、そこで終わりではありません。供給側の電圧変動を考慮し、末端機器へ届く電圧がメーカーの使用範囲内か、モーターが始動できるかまで確認して、ケーブルサイズと盤の位置を決めます。
関連記事
参考・出典
- 電気事業法施行規則|e-Gov法令検索
- 電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン|経済産業省
- 技術資料などの参考情報一覧|SWCC
- 工事士クイズ|Panasonic
- 令和6年 建築設備士試験 第一次試験「建築設備」|建築技術教育普及センター
- 令和7年 建築設備士試験 第二次試験|建築技術教育普及センター
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