【熱伝導・対流・放射】3つの熱の伝わり方の種類と熱伝導率・熱伝達率を解説

ここでは建物の壁を熱がどのように伝わるかを解説します。
また、省エネの設計や空調負荷の検討でも重要になってくる熱伝達率と熱伝導率についても見ていきましょう。

3種類の熱の伝わり方を理解しよう

熱の伝わり方には「熱伝導」「対流」「放射」の3種類あります。
ひとつずつ解説していきます。

熱伝導

熱伝導物体内部で熱が移動することをいいます。

ホットコーヒーの中にスプーンを入れておくと、スプーンが熱くなるイメージです。

また、物体の体積比重の大きいものほど、熱が伝わりやすくなります
金属は熱を伝えやすいですが、発泡スチロールは伝えにくいイメージです。

対流

対流は空気や水などの流体が熱を帯びて循環する現象です。

冬に室内でストーブを使うと、暖かくなった空気は上昇し、冷たい空気は下降します。
これが対流です。

熱伝導は物質の移動は伴いませんが、対流は物質(空気や水)そのものが移動するという違いがあります。

放射

放射熱が放射線(電磁波)によって運ばれる現象です。

太陽の光やストーブなどにあたると暖かく感じるのはこの放射によるものです。

放射は熱伝導や対流とは異なり、物体を介した熱の移動ではありません。
そのため、物質のない真空の状況であっても放射によって熱は伝わるという特徴があります。

壁を伝わる熱の仕組みと熱貫流を理解しよう

室外と室内で温度差がある場合は、建物の外壁を通して熱が伝わります。

熱は温度の高い方から低い方へ伝わるため、夏場は屋外から室内へ、冬場は室内から屋外へ熱が移動します。

個体壁を通して高温の流体から低温の流体に熱が移動する現象を熱貫流といいます。
下記の図のように、熱伝達⇒熱伝導⇒熱伝達といった一連の熱の流れが熱貫流です。

熱伝達率と熱伝導率

熱の伝わりやすさを示す値として、熱伝達率と熱伝導率があります。

熱伝達率

熱伝達率(W/m2・K)は、壁の表面と空気の間の熱伝達において、壁の単位面積あたりにどのくらいの熱量が伝わるかを示した値です。

熱伝達率は風の影響を受けるため、風が強いときほど熱が伝わりやすくなります。

熱伝導率

熱伝導率(W/m・K)は、壁の内部で熱伝導によって伝わる熱の伝わりやすさを示す割合です。
熱伝導率は材料そのものの断熱性能を示す指標です。

断熱性能の検討では断熱材の厚みを考慮した熱抵抗値(m2・K/W)が指標されます。

熱伝導率は材料によって違います。
一般的には、比重の大きいものほど熱は伝わりやすくなります。
また、材料に湿気を含むと比重が大きくなるので、熱が伝わりやすくなります。
(断熱材のグラスウールが湿気を含むと断熱性能が下がってしまうのはこのためです)

この記事のまとめ

熱の伝わり方や熱伝達率・熱伝導率などは建築意匠設計の中でも重要な知識となります。
建物の省エネは建物と設備それぞれが対策を行って初めて実現するものです。
設備設計者だけでなく、意匠設計者もしっかりと理解をしておきたい基礎知識です。