水道直結方式の水理計算|設計水圧から給水可能か判定する手順
「3階建てなら、配水管の圧力だけでシャワーまで給水できるだろう」と考えたくなりますが、階数だけでは判断できません。同じ3階建てでも、道路から建物までの距離、最上階までの高さ、配管の曲がり、メーターの口径、シャワーが必要とする圧力によって結果は変わります。
そこで行うのが水理計算です。水道事業者から示された設計水圧を水頭[m]に直し、配水管との分岐点から最も条件の厳しい器具までに使う水頭を一つずつ足します。その合計が設計水頭以下なら、水圧の面では直結直圧方式を採用できます。
この記事では、設計水圧0.20MPaを使う低層建物を例に、仮定した管径が使えるかを実際に計算します。0.20MPaは横浜市の現行指針を参考にした説明条件です。実際の設計では、計画地を所管する水道事業者から受け取った数値へ置き換えてください。
水道直結の水理計算は水道事業者への確認から始める
水理計算を始める前に、計画地の水道事業者へ相談します。平面図から配管長を拾い始めても、計算の起点となる設計水圧が決まっていなければ、最後の合否を判定できないからです。
相談時には、案内図、配置図、建物用途、階数、戸数や定員、予定する給水方式を用意します。そのうえで、少なくとも次の内容を確認します。
ここで大切なのは、現地で一度測った高い水圧を、そのまま計算に使わないことです。配水管の圧力は、季節や時間帯、周辺の使用状況で変動します。水道事業者が長期的な条件を見込んで指定した設計水圧を使い、回答日と適用条件も計算書に残します。
横浜市では設計水圧を原則0.20MPaとし、調査結果などの条件によって0.25MPaまたは管理者が指定する別の値を使います。一方、直結できる階数や流速の条件は水道事業者ごとに違います。別地域の数値をそのまま持ち込まず、計画地の最新版を確認してください。
水道直結では設計水頭から末端までの必要水頭を差し引く
直結直圧方式には、受水槽や増圧ポンプがありません。道路内の配水管が持つ圧力だけで、建物内の蛇口やシャワーまで水を送ります。
イメージとしては、設計水頭が最初に与えられた予算です。その予算から、上階へ水を持ち上げるための高低差、管や継手を通るときの摩擦、メーターや弁の通過損失、最後に器具へ残す水頭を支払います。すべてを支払っても不足しなければ、直結できるという考え方です。
利用可能な設計水頭 ≧ 高低差+末端必要水頭+管・継手の損失水頭+メーター・弁等の損失水頭

圧力[kPa]と水頭[m]は、そのままでは足し引きできません。水の場合は、次の式で圧力を水頭へ換算できます。
水頭[m]=圧力[kPa]÷9.80665[kPa/m]
水理計算で最も厳しい給水ルートを選ぶ
次に、給水系統図を見ながら、配水管との分岐点から各器具までのルートを追います。この中から、必要な水頭が最も大きくなるルートを選びます。これが最不利ルートです。
最上階の器具が最不利になることは多いものの、必ずそうなるとは限りません。2階の器具でも、配管が長く、曲がりや弁が多ければ、3階の近い器具より損失が大きくなることがあります。シャワーや洗浄弁のように、一般の給水栓より高い作動圧力を必要とする器具にも注意が必要です。判断が近いルートは、両方計算して比べます。

選んだルートでは、次の4項目を拾います。
- 高低差:配水管との分岐点から、末端器具の接続部までの高さを断面図で確認します。
- 末端必要水頭:通常の給水栓で残す水頭、またはシャワーや洗浄弁などの最低作動圧力を器具仕様書で確認します。
- 管・継手の損失水頭:区間流量、管種、実内径、直管長、曲がり、分岐、弁から求めます。
- メーター・給水用具の損失水頭:採用口径と設計流量に対応する所管図表または製造会社の性能資料から読み取ります。
管の摩擦だけを計算して、メーターや逆流防止器の損失を入れ忘れると、計算上は合格でも実際の器具で圧力が足りなくなるおそれがあります。配水管から末端まで、水が通る部材を順番に追うと拾い漏れを防げます。
設計水圧0.20MPaで水道直結できるか計算する
ここからは、設計水圧0.20MPaと回答された低層建物を例に計算します。高低差や損失水頭は計算の流れを示すための説明条件です。実案件では、図面から拾った長さと、採用する管・メーター・弁の資料で計算し直してください。
設計水圧0.20MPaを20.39mの水頭へ換算する
0.20MPaは200kPaです。先ほどの換算式へ入れると、利用できる水頭は20.39mになります。
200 ÷ 9.80665 = 20.39m
この20.39mの中に、高低差、末端必要水頭、管と継手の損失、メーターなどの損失を収めます。
仮定口径Aは必要水頭が1.11m不足する
まず、仮定口径Aで必要になる水頭を足します。
8.0 + 3.0 + 9.0 + 1.5 = 21.5m
必要な水頭は21.5mですが、使える水頭は20.39mです。1.11m不足するため、この口径では末端に3.0mを残せません。仮定口径Aは不合格です。
水道直結が不合格なら管径を変えて再計算する
不合格になったとき、最初に見直しやすいのは管径と配管経路です。高低差8.0mと末端必要水頭3.0mは、管を太くしても変わりません。一方、管と継手の摩擦損失は、同じ流量なら管径を大きくすると小さくできます。
そこで口径を一段大きくし、管・継手の損失が2.4mになった仮定口径Bで計算します。
8.0 + 3.0 + 2.4 + 1.5 = 14.9m
14.9mは設計水頭20.39m以下なので、水圧条件は合格です。残る水頭も確認しておきます。
20.39 – 14.9 = 5.49m

ただし、「太い管なら安心」と考えて、そのまま最大口径を選ぶわけではありません。工事費や納まりだけでなく、少流量時に水が長く滞留しないか、メーターの使用流量範囲に合うかも確認します。また、流速が所管の上限以下でも、水頭の合計が20.39mを超えれば不合格です。流速と圧力収支は別々に確認してください。
配管・メーター・弁の損失水頭を求める
説明例では管・継手の損失を9.0mと2.4m、メーターなどの損失を1.5mと置きました。実際の計算では、この部分を一律の割合で見込まず、採用する部材に合わせて求めます。
横浜市の現行指針では、口径50mm以下の給水管にウエストン公式、75mm以上にヘーゼン・ウィリアムス公式を使います。呼び径ではなく、採用する管種の実内径を式や流量線図へ入れます。メーター、逆流防止器、止水栓、給水用具は、設計流量に対応する損失を所管図表や製造会社の性能資料から読み取ります。

計算書では、区間ごとに次の情報を給水系統図と対応させておくと、口径変更があっても追い直しやすくなります。
- 区間記号と設計流量
- 管種、呼び径、計算に使った実内径
- 直管の実長
- 曲がり、分岐、弁の損失または相当長
- メーター、逆流防止器、給水器具の損失
- その区間の損失水頭と、上流側へ累計した所要水頭
水道事業者が流量線図、損失水頭表、専用の計算様式を指定している場合は、その方法を優先します。横浜市の2.5m/sという流速上限も横浜市の条件です。ほかの地域で全国共通値のように使わないでください。
水理計算の結果を給水系統図へ反映する
水理計算書が合っていても、図面の口径や区間が古いままでは施工へ伝わりません。計算を終えたら、給水系統図の区間記号、流量、口径、メーター、弁類、器具、高さが計算書と一致しているか、一行ずつ照合します。

配置図や外構図には、配水管の参考位置、分岐位置、止水栓、メーターボックス、道路境界を記載します。建築断面図で階高や器具取付高さが変わった場合は、高低差を更新します。メーターや逆流防止器の型式が変わった場合も、新しい製品資料の損失値で再計算が必要です。
直結直圧で成立しない場合は、管径変更だけにこだわらず、経路を短くできないかも確認します。それでも設計水頭に収まらなければ、直結増圧式または受水槽式へ給水方式を変更します。
水道直結方式の設計チェックリスト
この確認リストは、直結直圧方式を基本設計から実施設計へ進めるときに使います。確認結果は、給水系統図、水理計算書、水道事業者との協議記録へ同じ内容で残してください。
☐ 水道事業者から設計水圧と適用条件の回答を受け取った
☐ 建物用途、階数、戸数・定員、計画使用水量を水道事業者へ伝えた
☐ 最上階、最遠端、必要圧力の高い器具を比べて最不利ルートを選んだ
☐ 圧力[kPa]と水頭[m]の単位をそろえた
☐ 高低差、末端必要水頭、管・継手、メーター・弁等の損失をすべて加えた
☐ 各区間の流量、管種、実内径、実長、継手・弁を系統図と照合した
☐ 全所要水頭が利用可能な設計水頭以下であることを確認した
☐ 流速、メーター使用流量、停滞、工事費を圧力収支とは別に確認した
☐ 口径、経路、器具、階高を変更した後に再計算した
☐ 所管指定の計算書、申請図、逆流防止条件へ結果を反映した
まとめ|水道直結は設計水頭と必要水頭で判定する
水道直結方式の水理計算では、水道事業者が指定した設計水圧を水頭へ換算し、最も条件の厳しい器具までに必要な水頭と比べます。確認するのは、高低差、末端必要水頭、管・継手の損失、メーター・弁などの損失です。この合計が設計水頭以下なら、水圧条件は合格です。
不合格になったときは、どの項目で水頭を多く使っているかを見ると、次に直す場所が分かります。配管損失が大きければ管径や経路を見直し、高低差と器具必要水頭だけで余裕がなければ、直結増圧式や受水槽式を検討します。最後に計算書と図面をそろえ、変更した箇所をもう一度計算するところまでが水理計算です。


