衛生設備

高置水槽と揚水ポンプの算定方法|容量・揚水量・全揚程・所要動力

高置水槽の容量と揚水ポンプの揚水量・全揚程・所要動力を確認する建物断面と設計者
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高置水槽を計画するとき、水槽の容量とポンプの能力を別々に考えてしまうことがあります。けれども、この二つは切り離せません。建物で水を使うと高置水槽の水位が下がり、揚水ポンプが受水槽から水を補うからです。

水槽が小さすぎると、水を多く使う時間帯に空になるおそれがあります。反対に、ポンプが大きすぎると、短い間隔で起動と停止を繰り返すことがあります。大切なのは、水槽とポンプを一つの仕組みとして考えることです。

検討は、容量を計算する → ポンプの揚水量を決める → 全揚程を求める → 所要動力を計算する → 水位制御と建築条件を確認する、という順に進めます。この記事では、横浜市の基準を使った容量計算と、200L/min・全揚程37.7mから所要動力を求める例を見ながら、高置水槽と揚水ポンプをどのように選ぶのかを説明します。

この記事でわかること

  • ・高置水槽の有効容量と外形容量の違い
  • ・40m³/日から4.0m³を求める計算例
  • ・直管・継手・弁類の損失から全揚程を求める方法
  • ・200L/min・37.7mから所要動力2.70kWを求める方法
  • ・建築設備士試験で問われる計算の進め方
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高置水槽方式は水槽とポンプを一つの系統で考える

高置水槽方式では、道路下の配水管から受水槽へ水をためます。その水を揚水ポンプで屋上などにある高置水槽へ送り、高低差によって生まれる圧力で各階の器具へ給水します。

高置水槽は、使用量の変化を受け止めるための貯水部です。揚水ポンプは、減った水を受水槽から補います。建物で使う水量が一時的にポンプの揚水量を上回ったときは、高置水槽にたまっている水が不足分を補います。水の使用量が落ち着くと、ポンプが水位を元に戻します。

項目役割計算に使う主な条件確認する資料
高置水槽の有効容量使用量の変化を受け止める計画給水量、水道事業者や発注者の基準水量計算書、水槽仕様書
揚水ポンプの揚水量高置水槽へ水を補給する時間最大予想給水量ポンプ選定書、性能曲線
揚水ポンプの全揚程屋上まで水を押し上げる実揚程、直管・継手・弁の損失系統図、水理計算書
揚水ポンプの所要動力選定点で必要なモーター出力を求める揚水量、全揚程、ポンプ効率、伝導効率、指定された余裕率軸動力曲線、メーカー仕様、電気機器表
水位制御水位に合わせてポンプを動かす始動・停止・警報の水位系統図、制御図

高置水槽の有効容量を計算する

高置水槽の容量は、地域や建物の設計条件によって計算方法が変わります。まず、計画地の水道事業者が示す基準を確認します。官庁施設では、国土交通省の基準や発注者から指定された設計資料も確認します。

計画1日最大使用水量40m³から横浜市の例1/10を用いて高置水槽4.0m³の候補を求める流れ

横浜市の例では1日最大使用水量の約1/10

横浜市の給水装置工事設計・施工指針では、高置水槽の有効容量を、計画1日最大使用水量の1/10程度としています。計画1日最大使用水量が40m³/日なら、次のように計算できます。

40m³/日×1/10=4.0m³

この場合は、4.0m³を目安に水槽を選び始めます。ただし、横浜市以外でも必ず1/10にするわけではありません。計画地を管轄する水道事業者の資料を確認し、別の割合や計算方法が示されていれば、そちらを使います。

なお、横浜市の指針では、高置水槽の水量を受水槽の有効容量に含めません。受水槽と高置水槽は、それぞれ必要な容量を計算します。

官庁施設では時間最大予想給水量をもとに考える

国土交通省の「建築設備設計基準 令和6年版」では、官庁施設の受水タンクと高置タンクの容量を、時間最大予想給水量をもとに計算するとしています。揚水ポンプの揚水量も、同じく時間最大予想給水量をもとに決めます。

ここで注意したいのは、横浜市の「1日最大使用水量の1/10」という考え方とは、計算の出発点が違うことです。官庁施設では、その工事で使う設計資料や発注条件を確認します。民間建物では、計画地の水道事業者と打合せながら決めます。二つの方法を途中で混ぜないようにしましょう。

水槽を選ぶときは有効水深を見る

計算で4.0m³と出ても、外形が4.0m³の水槽を選べばよいとは限りません。必要なのは、水槽の中で実際に使える「有効容量」が4.0m³以上あることです。

有効容量は、最高水位から最低水位までの間にある水量です。水槽の内法幅をL、内法奥行きをB、有効水深をhとすると、直方体として考えられる部分は次の式で求められます。

有効容量V=L×B×h

ここでhに水槽全体の高さを入れると、上部の空間や最低水位より下に残る水まで数えてしまいます。メーカーの水位図を開き、最高水位、ポンプの停止水位と始動水位、最低水位、流出管の位置を確認してください。そのうえで、必要な有効容量を確保できる水槽を選びます。

揚水ポンプは揚水量と全揚程で選ぶ

揚水ポンプを選ぶには、「どれだけの水を送るか」と「どれだけの高さまで押し上げるか」の両方が必要です。前者が揚水量、後者が全揚程です。どちらか一方だけでは、ポンプの機種を決められません。

揚水量は水を多く使う時間帯に合わせる

揚水量は、高置水槽へ1分間または1時間に送る水量です。国土交通省の官庁施設向け基準では、時間最大予想給水量をもとに計算します。これは、建物で水の使用が多くなる時間帯を想定した水量です。

計算に使う割増率などは、採用する設計資料によって異なります。決まった値をどの建物にも当てはめるのではなく、その建物で使う基準を確認してください。計算書には、1日給水量、時間最大予想給水量、採用した揚水量を、単位と一緒に残します。L/hをL/minに直すときは60で割ります。

全揚程は高さと配管の抵抗を足して求める

全揚程は、受水槽から高置水槽まで水を送るために、ポンプが加えなければならない力を水柱の高さで表したものです。主に、次の二つを足して求めます。

  • 受水槽の基準水位から高置水槽の吐出口までの高さ
  • 直管、エルボ、弁、逆止弁などを水が通るときに生じる損失
受水槽の低水位から高置水槽入口までの実揚程と配管損失を示す概念図

受水槽と高置水槽の高低差を「実揚程」といいます。受水槽の水位が下がるほど高低差は大きくなるため、どの水位を基準にするかを計算書と系統図でそろえます。

配管の抵抗による損失は、管が長いほど、また曲がりや弁が多いほど大きくなります。最初は仮の管径で計算し、ポンプと管径を選んだあと、実際の流量でもう一度確認します。

直管の損失は、管径、流量、管材、長さで決まります。エルボや弁類にも抵抗があるため、直管だけを計算して終わりにはできません。概略計算では、継手や弁の抵抗を「同じ抵抗が生じる直管の長さ」に置き換える相当管長法が使いやすい方法です。

直管・継手・弁類の損失は相当管長法で求める

相当管長法では、次の順に計算します。

  1. ポンプの揚水量と、仮に選んだ管材・管径を決める
  2. 系統図や平面図から、受水槽から高置水槽までの直管長を拾う
  3. エルボ、仕切弁、逆止弁、フート弁などの個数を数える
  4. メーカー資料の相当管長を「個数×1個当たりの相当管長」で計算する
  5. 直管長とすべての相当管長を足す
  6. 管材別の流量線図から、単位長さ当たりの摩擦損失を読む
  7. 単位摩擦損失に管路総延長を掛ける

計算式は、次のようにまとめられます。

管路総延長=直管長+Σ(器具の個数×1個当たりの相当管長)

配管損失水頭=100m当たりの摩擦損失水頭×管路総延長÷100

相当管長は、エルボや弁の種類、呼び径、構造によって変わります。流量線図も管材ごとに異なります。実際の設計では、採用する管材・継手・弁メーカーの最新版を使ってください。

配管損失12.7mを求める計算例

テラルの公式技術資料に掲載されている例を使い、計算を追ってみます。条件は、配管用炭素鋼鋼管50A、揚水量0.2m³/min、つまり200L/minです。

配管・器具数量または長さ相当管長計算結果
直管120mそのまま使用120.00m
フート弁1個8.4m/個8.40m
90度エルボ4個2.1m/個8.40m
逆止弁1個4.0m/個4.00m
仕切弁1個0.39m/個0.39m

継手と弁類の相当管長を合計します。

8.40+8.40+4.00+0.39=21.19m

直管120mへ加えると、管路総延長は次のようになります。

120+21.19=141.19m

次に、配管用炭素鋼鋼管の流量線図で「50A」と「200L/min」が交わる位置を読みます。この例では、100m当たりの摩擦損失水頭は9mです。

9m/100m×141.19m=12.707m

したがって、直管、継手、弁類を合わせた配管損失水頭は約12.7mです。圧力に直すと、12.7×9.8=約124kPaになります。

流量線図がkPa/mで表示されている場合は、その値へ管路総延長を掛ければ配管全体の圧力損失を求められます。得られたkPaを9.8で割ると、損失水頭mへ換算できます。

流量線図には流速の線も示されていることがあります。選んだ管径で流速が採用基準やメーカーの推奨範囲に入るかも確認してください。外れている場合は管径を変え、単位摩擦損失から計算し直します。

実揚程を加えて全揚程37.7mを求める

受水槽の最低水位から高置水槽入口までの実揚程を25.0mとすると、全揚程は次のようになります。

25.0m+12.7m=37.7m

この例でポンプ選定の出発点になる全揚程は、約37.7mです。先に求めた揚水量200L/minと全揚程37.7mを、ポンプの性能曲線へ当てはめます。

ここでは、高置水槽へ開放吐出する系統として、実揚程と配管損失だけを加えました。必要吐出圧や余裕率が設計条件として指定されている場合は、その条件をさらに加えます。指定がない数値を機械的に足すのではなく、採用基準とポンプメーカーの選定条件を確認してください。

ポンプ性能曲線で運転する位置を確認する

揚水量と全揚程が求まったら、その二つをポンプの性能曲線に当てはめます。交わったところが、計画しているポンプの運転点です。その位置が使用できる範囲に入り、効率や電動機出力に無理がないかを確認します。

同じ型式でも、羽根車の大きさや電源周波数によって性能が変わります。型式名だけで選ばず、メーカーの選定表や性能曲線を確認してください。

国土交通省の官庁施設向け基準では、揚水ポンプを原則として2台設け、自動交互運転とします。民間建物でも、故障や点検の間に給水を続ける必要があるかを確認し、ポンプの台数を決めます。

揚水ポンプの所要動力と定格出力を計算する

揚水量Qと全揚程Hが決まったら、ポンプを動かすための所要動力を求めます。常温の清水を扱い、Qをm³/min、Hをmで入れる場合は、次の形で整理できます。

P=0.163×Q×H÷(ηp×ηt)×(1+指定された余裕率)

  • P:所要動力 kW
  • Q:揚水量 m³/min
  • H:全揚程 m
  • ηp:ポンプ効率。50%なら0.50
  • ηt:伝導効率。直結で問題条件が1.0なら1.0

0.163は、常温清水の密度、重力加速度、分と秒、WとkWの換算をまとめた係数です。流量をm³/sで扱う資料では、式の形や係数が異なるため、式と単位を組にして使います。

200L/minを0.200m³/minへ換算する

今回の揚水量は200L/minです。1m³=1,000Lなので、動力式へ入れる前に次のように直します。

200L/min÷1,000=0.200m³/min

200L/minの「200」をそのまま0.163の式へ入れると、結果が1,000倍になります。式を書いたら、数値を代入する前に単位を一つずつ確認してください。

200L/min・37.7mから所要動力2.70kWを求める

ここでは計算の練習として、ポンプ効率50%、伝導効率1.0、余裕率10%を使います。これらは建築設備士試験の例題条件であり、すべての実案件へ一律に使う値ではありません。

P=0.163×0.200×37.7÷(0.50×1.0)×1.10

P=2.7038kW≒2.70kW

この2.70kWは、置いた条件から求めた所要動力です。実機のポンプ効率は、メーカーの性能曲線にあるQ=200L/min、H=37.7mの選定点で確認します。余裕率も、発注者基準、メーカー条件、試験問題などで指定された値を使います。

計算値から定格3.7kWを選び軸動力曲線で確認する

計算で2.70kWと出ても、同じ定格のモーターが用意されているとは限りません。2023年の建築設備士第二次試験で与えられた定格出力一覧を今回の例題条件として使うと、2.70kWの直上は3.7kWです。

200L/minを0.200m³/minへ換算し所要動力2.70kWから例題の定格3.7kWを選ぶ流れ

実案件では、試験の一覧ではなく、採用メーカーの現行製品で定格出力を確認します。計算値の直上を選ぶだけで終わらず、QとHの選定点でモーターが過負荷にならないことを軸動力曲線で確かめます。必要に応じてNPSH、液温、電源、周波数、始動方式、騒音・防振条件もメーカーへ伝えます。

水槽容量とポンプ能力のバランスを確認する

高置水槽の容量とポンプの能力が決まったら、実際の運転を思い浮かべてみます。確認するのは、使用量が増えたときに水槽が空にならないか、普段の運転でポンプが細かく発停しないかという点です。

水を多く使うときは水槽が不足分を補う

建物で使う水量がポンプの揚水量を上回っている間は、その差だけ高置水槽の水が減ります。反対に、ポンプの揚水量のほうが多ければ、水位は上がります。

そこで、ポンプが動き始める水位から最低水位までに使える水量と、水の使用が多い状態がどのくらい続くかを確認します。ポンプが始動したあとも水位が下がり続け、最低水位まで達してしまうなら、水槽容量やポンプ能力を見直します。

運転の状態水位の動き確認すること
ポンプ停止中水を使った分だけ下がる始動水位までに使える水量
ポンプ運転中で使用量が多い使用量と揚水量の差で上下する最低水位まで下がらないか
ポンプ運転中で使用量が少ない停止水位へ向かって上がる1回の運転が短すぎないか
満水または減水警報や保護動作が働く警報先、停止条件、復旧方法

短時間の発停と水の滞留を避ける

ポンプの始動水位と停止水位が近く、揚水量が大きいと、起動してすぐに水槽が満たされます。その結果、ポンプが短い間隔で起動と停止を繰り返し、機器の負担が増えることがあります。

一方、水槽が普段の使用量に比べて大きすぎると、水が長くとどまりやすくなります。大きければ安心とは限りません。

ポンプに許される発停回数や、1回に確保したい運転時間は、ポンプや電動機、制御方法によって変わります。水位差から1回に補給する水量と運転時間を求め、ポンプメーカーに確認します。水槽メーカーには、水位センサーや電極を取り付けられる範囲を確認します。

最上階で必要な水圧を確かめる

高置水槽から各器具へは、高低差を利用して給水します。そのため、高置水槽に近い最上階ほど、使える水圧が小さくなります。

確認するときは、高置水槽の最低水位と器具の高さの差から得られる水圧を求め、そこから途中の配管で失われる分を差し引きます。残った水圧が、器具を動かすために必要な最低水圧を上回っていれば使用できます。

必要な水圧は、フラッシュバルブ、シャワー、自動水栓など、器具によって異なります。一般的な数値で決めず、実際に採用する製品の仕様書を確認してください。

最上階で53.9kPaが残る計算例

最上階の器具で水圧を確認するときは、高置水槽の水位が最も低い状態と、水圧が最も厳しくなる配管経路を使います。ここでは、次の条件を置きます。

  • 高置水槽の最低水位と器具接続部の高低差:8.0m
  • 最上階までの給水管、継手、弁類による損失:2.5m
  • 採用器具の必要最低動水圧:40kPa

器具の手前に残る圧力水頭は、次のように求めます。

8.0m-2.5m=5.5m

これを圧力へ換算します。

5.5m×9.8kPa/m=53.9kPa

この例では、器具の手前に残る動水圧は53.9kPaです。必要最低動水圧の40kPaを13.9kPa上回るため、置いた条件の範囲では使用できます。

高低差だけを見て「8mあるから約78kPa」と判断すると、配管で失われる2.5m分を見落とします。また、40kPaはこの例で採用した器具の条件です。実際には、設計流量で最も不利な経路の損失を求め、採用器具の仕様書に記載された必要最低動水圧と比較します。

最上階だけ水圧が足りないときは、高置水槽の架台を高くする方法だけでなく、最上階の系統を分ける方法や給水方式そのものを変える方法も比べます。架台を高くすると、建物の外観、高さ制限、耐震性、風の影響、点検方法にも関わるためです。

水位制御と2台交互運転を系統図に表す

水槽とポンプを正しく選んでも、水位制御が合っていなければ安定して運転できません。系統図には、ポンプを動かす水位と止める水位のほか、満水警報、減水警報、受水槽側の空転防止を記載します。

ポンプを2台設けて交互運転する場合は、起動するたびに運転機を交代させ、片方だけに運転時間が偏らないようにします。運転中のポンプが故障したときにもう1台へ切り替えるか、2台を同時に動かすことがあるか、警報をどこへ知らせるかも決めておきます。

水位の検出に電極棒を使うか、水位センサーを使うかによって、取付け方や点検方法も変わります。水槽の詳細図と制御図を並べ、同じ水位になっているか確認してください。

屋上では重量・点検・搬入も確認する

有効容量が4.0m³なら、水だけで約4tの質量があります。実際には、水槽本体、架台、配管の重さも加わります。構造設計者には、満水時の重量、支持する位置、重心の高さ、耐震仕様が分かるメーカー資料を渡します。

屋上に水槽本体が置けるだけでは足りません。水槽の上面、底面、四つの側面を外から点検できる空間が必要です。マンホールを開ける場所、弁を操作する場所、清掃した水を流す方法、はしご、将来の搬入・搬出経路も平面図と断面図に描きます。

点検に必要な間隔は、地域や製品によって異なります。計画地の基準と水槽メーカーの資料を確認してください。

高置水槽と揚水ポンプで間違えやすい7つの場面

高置水槽の容量を受水槽の容量に含める

受水槽と高置水槽では、役割も水位も異なります。横浜市の例では、高置水槽の水量を受水槽の有効容量に含めません。それぞれ分けて計算し、水量計算書にも別の欄で記載します。

ポンプの揚水量だけで機種を決める

同じ揚水量でも、送り先の高さや配管の抵抗が変われば、必要なポンプも変わります。揚水量と全揚程を求め、性能曲線の運転点を見て選びます。

流量と効率の単位をそのまま動力式へ入れる

所要動力の式へ入れる流量は、式で指定された単位へそろえます。今回の式では200L/minを0.200m³/minへ直し、効率50%は0.50として入れます。単位を書かずに数値だけを移すと、1,000倍や100倍のずれにつながります。

計算値だけでモーターの定格出力を決める

計算値は機種選定の入口です。採用メーカーの現行定格出力を選び、性能曲線と軸動力曲線でQ・H・効率・kWを同じ運転点として確認します。電源、相、周波数、始動方式も電気設備担当者とそろえます。

全揚程の基準水位が資料ごとに違う

計算書では受水槽の低水位、系統図では最高水位を基準にすると、必要な全揚程が合わなくなります。どの水位から高置水槽のどの位置までを計算したのか、計算書と系統図の両方に示します。

最上階の器具に一般的な水圧を当てはめる

器具を動かすために必要な最低水圧は、製品によって異なります。実際に採用する器具の仕様書を使い、最も条件が厳しい器具と配管経路で確認します。

水槽本体が置ければ屋上に納まると考える

屋上では、水槽の外形だけでなく、点検空間、マンホール、配管、清掃、搬入・搬出の場所も必要です。満水時の重量と支持位置も含め、設備図と構造図を照らし合わせます。

建築設備士試験対策|容量・全揚程・所要動力をどう計算するか

建築設備士の公式過去問では、高置水槽の有効容量だけでなく、揚水ポンプの揚水量、全揚程、電動機出力まで一続きで求める問題が出ています。水槽とポンプを別々に覚えるのではなく、問題文から必要な条件を拾い、単位をそろえて計算することが大切です。

過去問例:摩擦抵抗と吐出圧を加えて全揚程を求める

設問

公式過去問では、建物断面から実揚程を読み取り、配管などの摩擦抵抗60kPa、揚水管の吐出圧10kPa、余裕率10%という条件を使って、揚水ポンプの全揚程を求める内容が出題されています。

回答例

以下は、公式問題の条件をもとに編集部で計算した回答例です。建物断面から読み取った実揚程をHsとすると、最初に摩擦抵抗と吐出圧を水頭へ換算します。

(60kPa+10kPa)÷9.8kPa/m=7.14m

次に、実揚程Hsへ7.14mを加え、指定された10%の余裕を見込みます。

全揚程H=(Hs+7.14m)×1.10

ここで使うHsは、受水槽の最低水位から高置水槽への揚水管接続高さまでの垂直距離です。床面から床面までの高さだけで終わらせず、問題文に示された「受水槽の最低水位」と「揚水管の接続高さ」をそれぞれ加減します。

試験で与えられる60kPa、10kPa、10%は、その問題を解くための条件です。実務では同じ値を流用せず、実際の配管経路、採用基準、メーカー選定条件を使います。

過去問例:揚水量・全揚程・定格出力を続けて求める

2023年の第二次試験では、雑用水揚水ポンプについて、揚水量、全揚程、電動機定格出力を続けて算定させています。ポンプ効率50%、伝導効率1.0、余裕率10%、定格出力一覧は、その年の問題条件です。

解くときは、時間最大予想給水量からQを出し、建物の高さと指定された抵抗・吐出圧からHを求めます。そのQとHを動力式へ入れ、最後に問題文の定格出力一覧から計算値以上の値を選びます。L/h、L/min、m³/min、kPa、m、kWを各段階で書けば、単位の取り違えを防げます。

計算書と図面を照合するチェックリスト

設備設計者と意匠設計者が、基本設計から実施設計へ進む前に使うチェックリストです。水量計算書、給水系統図、水槽図、ポンプ選定書が同じ条件になっているかを確認します。

☐ 計画地で使う水道事業者・発注者基準の名称と改定年月を記載した

☐ 計画1日最大使用水量と時間最大予想給水量の根拠を記載した

☐ 高置水槽の有効容量と外形容量を分けた

☐ 最高・停止・始動・最低の各水位を水槽図で確認した

☐ 揚水量の単位をL/hまたはL/minで統一した

☐ 実揚程の基準水位と吐出口の位置を系統図に記載した

☐ 直管、継手、弁類の配管損失を計算した

☐ 揚水量と全揚程をポンプ性能曲線で確認した

☐ 動力式に入れる流量と効率の単位を確認した

☐ 選定点のポンプ効率と軸動力をメーカー曲線で確認した

☐ 定格出力、電圧、相、周波数、始動方式を電気機器表へ反映した

☐ 発停間隔と1回に補給する水量をメーカーへ確認した

☐ ポンプ台数、交互運転、故障時の切替え、警報先を決めた

☐ 最上階の最も条件が厳しい器具で必要水圧を確認した

☐ 満水重量、支持位置、耐震条件を構造設計者へ伝えた

☐ 点検、マンホール、清掃排水、搬入・搬出の場所を図面に示した

まとめ|容量・揚水量・全揚程・所要動力をつなげて考える

高置水槽と揚水ポンプは、別々の機器ではありますが、運転するときは一つの仕組みとして働きます。まず高置水槽の有効容量を求め、次に揚水ポンプの揚水量と全揚程を計算します。

横浜市の例では、高置水槽の有効容量は計画1日最大使用水量の1/10程度です。40m³/日なら4.0m³が目安になります。ほかの地域では、計画地の水道事業者が示す方法を確認してください。

配管損失は、直管長に継手・弁類の相当管長を加え、流量線図で読んだ単位摩擦損失を掛けて求めます。本文の例では、50A・200L/minの管路で配管損失が約12.7m、実揚程25.0mを加えた全揚程が約37.7mになりました。

200L/minを0.200m³/minへ換算し、例題条件のポンプ効率50%、伝導効率1.0、余裕率10%を使うと、所要動力は約2.70kWです。試験条件では直上の定格3.7kWを選びますが、実案件ではメーカーの現行製品と軸動力曲線で確認します。

ポンプを選んだあとは、水の使用が多いときにも水槽が空にならないか、短い間隔で発停しないか、最上階で必要な水圧を確保できるかを確認します。最後に、水槽の重量、点検空間、搬入経路を建築図と構造図へ反映します。

容量、揚水量、全揚程、所要動力を別々の計算で終わらせず、水位がどのように動くかを思い浮かべながら、同じ運転点と図面条件でつなげてみてください。

関連記事

参考・出典

国土交通省「建築設備設計基準 令和6年版」

横浜市水道局「給水装置工事設計・施工指針」

横浜市「受水槽事前指導」

昭和50年建設省告示第1597号と施行通知

テラル「ポンプにおける、揚程や配管抵抗の計算方法」

テラル「ポンプ効率の計算方法」

荏原製作所「上水道向けポンプ設備の省エネルギー技術」

建築技術教育普及センター「建築設備士試験」2022年第二次試験問題

建築技術教育普及センター「建築設備士試験」2020年第二次試験問題

建築技術教育普及センター「建築設備士試験」2023年第二次試験問題

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