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力率改善と高調波対策の基本|進相コンデンサ・直列リアクトルの役割と計算

力率改善と高調波対策の基本|進相コンデンサ・直列リアクトルの役割と計算
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キュービクルの単線結線図を見ていると、高圧母線から分かれた先に「SR」と「SC」が縦に並んでいる箇所があります。SCは進相コンデンサ、SRは直列リアクトルです。「力率を良くするだけならコンデンサだけでいいのでは? なぜリアクトルまで付けるのだろう」と疑問に思ったことはありませんか。

結論から言うと、力率を改善するのはコンデンサ、コンデンサ回路で高調波が拡大するのを抑えるのが直列リアクトルです。進相コンデンサは、モータや変圧器が必要とする無効電力を手元で補い、電源から流れる電流を減らします。一方、コンデンサは高い周波数の電流を通しやすく、系統に高調波(基本周波数の整数倍の周波数をもつ成分)があると、過熱や異音につながることがあります。高圧進相コンデンサでは、直列リアクトルと組にして設置するのが原則です。

この記事では、有効電力200kW・三相400Vの負荷を例に、力率を0.80から0.95へ改善すると電流が約361Aから約304Aへ減り、必要なコンデンサ容量が約84.3kvarになることを計算で確かめます。そのうえで、6%と13%の直列リアクトルの違い、高調波抑制対策ガイドラインの対象かどうかの確かめ方、設計のときにどの図面と資料を見ればよいかまで順番に説明します。

この記事でわかること

  • 力率0.80から0.95への改善で、200kW・三相400Vの電流と損失がどう変わるか
  • 進相コンデンサの必要容量をkvarで求める手順
  • 6%と13%の直列リアクトルを選ぶ前に確認する資料
  • 高調波ガイドラインの対象判定と流出電流の確認方法

力率とは|有効電力・無効電力・皮相電力の関係

まず力率という言葉から整理しておきましょう。モータに電気を送る場面で考えるとわかりやすいです。

  • 有効電力P[kW]:モータの軸を回すなど、実際の仕事に使われる電力です。
  • 無効電力Q[kvar]:モータや変圧器が磁界をつくるために必要な電力です。電源と負荷の間を行ったり来たりするだけで仕事にはなりませんが、これがないとモータは回りません。
  • 皮相電力S[kVA]:電源、変圧器、幹線が実際に受け持つ電力の大きさです。変圧器の容量がkVAで表されるのはこのためです。

電圧と電流がきれいな正弦波として扱える回路では、この三つは直角三角形の関係になります。

S = √(P² + Q²)

そして力率は、皮相電力のうち有効電力が占める割合です。

力率 = P / S

有効電力P、無効電力Q、皮相電力Sの直角三角形と力率の関係を示す図

たとえば力率0.80で皮相電力が100kVAなら、有効電力は80kWです。ここで「残りの無効電力は20kvar」と考えがちですが、三角形の関係なので√(100²−80²)=60kvarになります。足し算ではなく二乗の関係になる点は押さえておいてください。

モータや変圧器のような負荷では、電流が電圧より遅れて流れる「遅れ力率」になります。この記事でいう力率改善は、この遅れの無効電力の一部を進相コンデンサから供給して、電源側が受け持つ無効電力を減らすことです。

なお、インバータなどで電流の波形が大きくひずんでいる回路では、力率は位相のずれだけでは決まりません。cosφで表す基本波の力率と、計器が示す総合力率は別物として扱い、機器仕様書や高調波の測定結果もあわせて見るようにしましょう。

力率が低いと電流が増える理由と計算

力率が低いと何が困るのかを、電流の計算で確かめてみます。平衡した三相回路で、波形を正弦波として扱える場合、有効電力は次の式で表せます。

P = √3 × V × I × cosφ

これを電流Iの式に直します。

I = P / (√3 × V × cosφ)

  • P:負荷の有効電力[W]
  • V:線間電圧[V]
  • I:線電流[A]
  • cosφ:力率

有効電力200kW、三相400Vの負荷で、力率0.80と0.95を比べてみましょう。負荷の有効電力と電圧は変わらず、高調波は含まないものとします。

力率0.80のとき

I = 200,000 / (√3 × 400 × 0.80) = 360.8A → 約361A

力率0.95のとき

I = 200,000 / (√3 × 400 × 0.95) = 303.9A → 約304A

同じ200kWの仕事をしているのに、力率を上げるだけで電源から流れる電流が約57A減りました。

電流が減ると配線の損失も減ります。三相配線の抵抗損失は3I²R(Rは1相あたりの配線抵抗)で表され、同じ配線ならRは変わらないので、電流の二乗の比を見れば足ります。

(303.9 / 360.8)² = 0.709

つまり、改善後の配線損失は改善前の約71%、言い換えると約29%小さくなります。

200kW三相400Vで力率を0.80から0.95へ改善したときの基本波電流と上流側配線損失の比較

ここで注意してほしいのは、電流と損失が減るのはコンデンサをつないだ点より電源側(上流側)だけということです。建物内のすべての配線で損失が29%減るわけではありません。この点は、後で説明するコンデンサの設置位置の話につながります。

進相コンデンサの役割と必要容量の計算

進相コンデンサは、負荷が必要とする遅れの無効電力を、コンデンサの接続点で補う機器です。電源から送る無効電力が減るので、上流側の皮相電力と電流が小さくなります。

必要なコンデンサ容量Qc[kvar]は、改善前と改善後の力率から次の式で求めます。

Qc = P × (tanφ1 − tanφ2)

tanφ = √(1 / cos²φ − 1)

  • Qc:コンデンサで補う無効電力[kvar]
  • P:負荷の有効電力[kW]
  • cosφ1:改善前の力率
  • cosφ2:目標とする力率

先ほどの200kW、力率0.80→0.95の例で計算してみます。

tanφ1 = √(1 / 0.80² − 1) = 0.7500

tanφ2 = √(1 / 0.95² − 1) = 0.3287

Qc = 200 × (0.7500 − 0.3287) = 84.26kvar

必要なコンデンサ容量は約84.3kvarです。ただし、ここで計算が終わりではありません。実際の製品はメーカーの標準容量から選ぶので、この値に近い容量や、複数台の組み合わせで考えます。そして次の節で説明するように、負荷が少ない時間帯のことも考えておく必要があります。

コンデンサの設置位置と入れすぎの注意点

どこに付けるかで効果の範囲が変わる

コンデンサの効果が出るのは接続点より上流側なので、どこに付けるかで電流が減る範囲が変わります。

  • 高圧母線に付ける場合:受電点から高圧母線までの電流は減りますが、その下流にある変圧器や低圧幹線の電流は減りません。
  • 変圧器の二次側や負荷の近くに付ける場合:変圧器や幹線の電流まで減らせますが、コンデンサの台数が増えます。

変圧器や低圧幹線の電流まで減らしたいのか、受電点の力率を整えられれば十分なのかを決めてから、単線結線図上の接続位置を検討しましょう。

負荷が止まっているときの進み力率

もう一つ気をつけたいのが、コンデンサの入れすぎです。夜間や中間期にモータ負荷が止まっているのに、コンデンサだけがつながったままだと、無効電力を補いすぎて「進み力率」(電流が電圧より進んだ状態)になることがあります。

これを避けるには、次のような方法を検討します。

  • 個別の負荷にコンデンサを付け、負荷と一緒に入り切りする
  • コンデンサを複数段に分け、自動力率調整装置で負荷に合わせて台数を増減する

目標力率は高いほどよいとは限りません。月ごとの負荷の変わり方や運転スケジュール、電気料金契約での力率の扱いを見て決めてください。

力率と電気料金の関係|割引・割増の確認方法

「力率を85%より上げると基本料金が安くなる」という説明をよく見かけますが、この85%という基準はすべての契約に当てはまるわけではありません。電力会社、小売電気事業者、料金プラン、受電電圧によって条件が違うからです。

現行の一例として、東京電力エナジーパートナーの「電気需給約款[特別高圧・高圧]」(2026年4月1日実施)のベーシックプランでは、平均力率が85%を上回る1%ごとに基本料金を1%割り引き、85%を下回る1%ごとに1%割り増すと定めています。平均力率は、原則として毎日8時から22時までの値で計算します。

この条件で力率が95%なら、基本料金に掛ける係数は次のとおりです。

1 − (95 − 85) / 100 = 0.90

参考書で見かける「(185 − 力率[%]) / 100」という式も同じ意味で、(185 − 95) / 100 = 0.90になります。この0.90は「基本料金を90%にする」という係数なので、割引の幅は10%です。「90%割引」と読み違えないようにしましょう。

一方、同じ東京電力エナジーパートナーでも、低圧の料金メニューでは力率割引・割増が2024年に廃止されています。料金への効果を試算するときは、電気料金請求書で契約プランを確かめ、そのプランの最新の約款で、力率割引・割増があるか、平均力率をどの時間帯で計算するかを確認してください。

高調波とは|発生する機器と起こるトラブル

ここからは高調波の話です。商用電源の周波数(基本周波数)は50Hzまたは60Hzで、その整数倍の周波数の成分を高調波といいます。50Hzの地域なら、第3高調波は150Hz、第5高調波は250Hzです。

電熱器のような抵抗負荷に正弦波の電圧をかけると、電流もほぼ正弦波で流れます。ところが、インバータ、サーボアンプ、整流器、UPSといった電力変換装置は、半導体素子で電流を断続的に取り込むため、電流の波形が崩れます。この崩れた波形を分解すると、基本波に第5、第7などの高調波が重なった形になっているんです。

高調波電流は、発生した機器の中にとどまらず、構内の配線や変圧器を通ってほかの機器や電力会社の系統へ流れ出します。その結果、次のようなトラブルにつながることがあります。

  • 変圧器やケーブルの発熱
  • 保護装置や電子機器の誤動作
  • 進相コンデンサや直列リアクトルの過熱・異音

空調機のファンやポンプ、エレベーター、UPSなど、建築設備にはインバータを使う機器がたくさんあります。負荷の容量だけでなく、それぞれの機器がどれだけ高調波を出すかも設計で確認する必要があるわけです。

進相コンデンサに高調波が流れ込みやすい理由

コンデンサが交流の電流をどれだけ通しにくいかは、容量性リアクタンスXc[Ω]で表します。

Xc = 1 / (2πfC)

  • f:周波数[Hz]
  • C:静電容量[F]

式を見るとわかるように、周波数fが高くなるほどXcは小さくなります。つまり、コンデンサは周波数の高い電流ほど通しやすいんです。高調波は基本波より周波数が高いので、系統に高調波があると、コンデンサに想定以上の高調波電流が流れ込みます。これが過熱や異音の原因になります。

さらにやっかいなのが共振です。電源や変圧器、配線がもつインダクタンス(コイルの性質)とコンデンサが組み合わさると、特定の周波数で共振することがあります。その周波数が高調波の次数と重なると、コンデンサを付ける前より高調波電流や電圧のひずみがかえって大きくなることがあります。

力率の数字だけを見てコンデンサを決めてはいけない理由がここにあります。

直列リアクトルの役割|高調波拡大と突入電流の抑制

直列リアクトルは、進相コンデンサと直列につなぐコイルです。力率改善はコンデンサが受け持ち、リアクトルは主に次の二つを受け持ちます。

  1. 高調波の拡大を防ぐ:コンデンサの回路を、高調波に対してはコイルの性質(誘導性)になるようにして、電源側のインダクタンスとの共振で高調波が大きくなるのを防ぎます。
  2. 突入電流を抑える:コンデンサを回路に入れた瞬間に流れる大きな電流を抑えます。
インバータ負荷、高圧母線、進相コンデンサSC、直列リアクトルSRの関係と高調波拡大を抑える役割を示す図

高圧・特別高圧用の直列リアクトルを定めるJIS C 4902-2:2010でも、回路電圧の波形ひずみの軽減と、コンデンサ投入時の突入電流の抑制がリアクトルの目的とされています。日本規格協会の規格情報では、2024年6月に確認され、状態は「有効」です。

突入電流の大きさの目安として、リアクトルなしでコンデンサを投入すると定格電流の数十倍から数百倍の電流が流れることがあり、6%のリアクトルを入れた条件の一例では約5.1倍まで抑えられます。ただし、この数字をそのまま開閉器やヒューズの選定に使うことはできません。並列につなぐコンデンサの台数や残っている電圧、開閉の頻度で条件が変わるので、メーカーの組合せ表で確認してください。

誤解しやすい点として、直列リアクトルはすべての高調波を遮断する機器ではありません。役割はあくまで、コンデンサ回路で高調波が拡大するのを防ぐことです。建物から外へ流れ出す高調波を減らす対策は、後で説明するガイドラインに沿って別に検討します。

直列リアクトル6%と13%の違いと選び方

6%・13%が表しているもの

「6%」「13%」はリアクタンス率と呼ばれ、基本周波数でのコンデンサのリアクタンスに対して、直列リアクトルのリアクタンスが何%かを表しています。容量や重さの比ではない点に注意してください。

高圧進相コンデンサには直列リアクトルを付けるのが原則で、リアクタンス率は6%または13%を使います。現行のJISに準拠した製品では、6%のリアクトルのうち「許容電流種別II」と呼ばれるもの、つまり第5高調波電流を基本波電流の55%まで許容する製品が基本です。

数字の大小だけでは選べない

一方で、高調波のひずみが特に大きい場所向けには13%の製品があり、さらに第5高調波を70%まで許容する6%の製品もあります。ここで覚えておいてほしいのは、13%のほうが6%より高調波に強い、と単純には比べられないことです。製品ごとに許容する第5高調波電流と想定する設置場所が違います。

そのため「普通は6%、第3高調波が多ければ13%」と一言で決めてしまうのは危険です。選ぶ前に、次の資料をそろえましょう。

  • 受電点とコンデンサの母線で測った、次数ごとの電圧ひずみ・電流ひずみ
  • 高調波を出す機器の種類、入力容量、換算係数、最大稼働率
  • 既設のコンデンサとリアクトルの定格、製造年、JISの新旧、6%と13%が混在していないか
  • メーカーが示す第5高調波の許容電流、最大許容電流、適用場所
  • 一般送配電事業者から指定されたリアクトルの条件

高調波の量は、時間帯や設備の運転台数で変わります。既設の設備で異音や過熱が起きている場合は、音が大きくなる時間帯を含めて測定しましょう。また、コンデンサだけ、リアクトルだけを別世代の製品に取り替えると組み合わせが合わなくなることがあるので、必ずメーカーに組み合わせを確認してください。

リアクトルでコンデンサ端子電圧が上がる計算

直列リアクトルを入れると、コンデンサ自体にかかる電圧は回路電圧より高くなります。リアクトルとコンデンサには同じ電流が流れますが、両者の電圧は逆向きに働くため、その差を回路電圧として取り出す形になるからです。

リアクタンス率をpとすると、基本波で考えたコンデンサの端子電圧Vc[kV]は次の式で求められます。

Vc = V / (1 − p)

  • V:回路電圧[kV]
  • Vc:コンデンサの端子電圧[kV]
  • p:リアクタンス率(6%なら0.06、13%なら0.13)

6.6kVの回路に6%のリアクトルを入れた場合は、

Vc = 6.6 / (1 − 0.06) = 7.02kV

となり、回路電圧より約6.4%高くなります。「6%のリアクトルだから電圧も6%上がる」ではなく、1 ÷ (1 − 0.06)で計算する点に気をつけてください。

13%のリアクトルでは、

Vc = 6.6 / (1 − 0.13) = 7.59kV

で、回路電圧より約14.9%高くなります。

電圧が上がる分、コンデンサの定格容量も大きくなります。たとえば13%のリアクトルと組み合わせて設備として100kvarを得る場合、コンデンサ本体の定格容量は100 ÷ (1 − 0.13) ≒ 115kvarです。

このように、コンデンサ、直列リアクトル、放電コイル、開閉器は一つの設備としてまとめて選びます。実際に、6.6kV回路で6%のリアクトルと組み合わせる7.02kV定格のコンデンサが製品として用意されています。旧JIS品と現行JIS品を混ぜて使うと、端子電圧や実際のリアクタンス率が設計値からずれることがあるので、銘板の電圧と容量が同じというだけで互換と判断しないようにしましょう。

高調波抑制対策ガイドラインの対象と確認手順

ここまではコンデンサを守るための話でした。もう一つ、建物から電力会社の系統へ流れ出す高調波を一定以下に抑える決まりがあります。それが「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」です。

1994年に定められた名称なので古い資料だと思われがちですが、現在も一般送配電事業者の系統連系の要件と、技術指針JEAG 9702を通じて実務で使われています。高圧・特別高圧で受電する建物で、高調波を出す機器を新設・増設・更新するときや、契約電力・受電電圧を変えるときに、高調波の流出電流が上限以下になるかを検討します。

対象になるかの判定

東京電力パワーグリッドのエリアの高圧需要家では、高調波を出す機器の容量を6パルス変換器(一般的な三相整流回路)に換算した「等価容量」の合計が50kVAを超えると対象になります。

この50kVAは、インバータの銘板容量を単純に足した値ではありません。回路方式ごとに決められた換算係数を掛けて合計します。換算係数はメーカーのカタログや仕様書にあるガイドライン対応の資料で確認し、汎用インバータとサーボアンプの計算方法は最新のJEM-TR 201(2025年版)も参照してください。

対象になった場合の計算

対象になると、機器ごとの高調波電流を次数別に合計し、最大稼働率や対策機器の効果を考慮して、40次以下の流出電流を上限値と比べます。東京電力パワーグリッドの資料には対象機器の除外条件もあるため、容量を集計する前に対象範囲を確認してください。

上限を超える場合の対策には、次のようなものがあります。

  • 発生源側:インバータにメーカー推奨の交流リアクトル・直流リアクトルを付ける、PWMコンバータを使う
  • 設備全体:アクティブフィルタ、LC形フィルタ、多パルス化などを系統条件に合わせて検討する。直列リアクトル付き進相コンデンサは、主にコンデンサ回路での高調波拡大を抑える役割として評価する

どの対策がどれだけ効くかは系統の条件や運転状態で変わるので、機器メーカーと一般送配電事業者に確認しながら決めます。

なお、特別高圧の対象判定の基準値は受電電圧によって違い、他のエリアでは提出様式も違います。設計を始めるときに、その建物が受電する地域の一般送配電事業者が公開している最新の系統連系要件と申込様式を確認しておきましょう。

設計で確認する図面・資料と見るポイント

計算式がわかっても、それだけではコンデンサの接続位置や段数、高調波対策の方法は決まりません。実際の設計では、次の資料を順番に開いて照らし合わせていきます。

電気料金請求書、負荷集計表、機器仕様書、単線結線図を並べて確認する設備設計者

電気料金請求書と契約約款

改修案件なら、まず請求書と契約書で小売電気事業者、料金プラン、受電電圧を確かめます。そのプランの最新の約款を開き、力率割引・割増があるか、平均力率をどの時間帯で計算するかを見ます。ここが違うと、同じ力率95%でも料金への効果がまったく変わります。

負荷集計表

有効電力、入力容量、力率、台数、同時使用率に加えて、昼と夜でどの機器が動いているかを読みます。この値からコンデンサ容量を概算し、夜間や中間期にコンデンサを入れたままでも進み力率にならないかを確認します。負荷の大きさだけでなく、いつ何台動くかを見るための資料です。

機器仕様書

空調機、ポンプ、エレベーター、UPSなどについて、インバータや整流回路の有無、高調波電流、ガイドライン用の換算係数、交流・直流リアクトルが内蔵か別付けかを確認します。負荷集計表に「インバータあり」と書いてあるだけでは高調波の計算はできないので、ここで発生源と計算に必要な数値を確定させます。

単線結線図

変圧器の容量、母線、SC・SRの接続位置、コンデンサの段数、開閉器、保護装置をたどります。コンデンサをどこにつなぐかで、電流と損失が減る範囲が変わります。負荷と連動させるのか、自動力率調整装置で段階的に制御するのかも、この図面に反映させます。

高調波流出電流計算書

機器ごとの次数別電流、最大稼働率、低減の効果を使って流出電流を集計し、受電する地域の一般送配電事業者が示す上限値と比べます。上限を超えたら、前の節で挙げた発生源側・設備全体の対策から候補を選び、もう一度計算します。

メーカーの選定表

コンデンサと直列リアクトルの定格電圧・容量、6%か13%か、許容電流種別、開閉器・ヒューズとの組み合わせを確認します。新築なら選定表で組み合わせを決め、改修なら既設品の製造年とJISの新旧もメーカーに伝えて相談します。

改修時の現地測定記録

改修では、時刻ごとの力率、電圧、電流、次数別のひずみ、コンデンサ盤の温度、異音の有無を確認します。異音や過熱が特定の時間帯だけ起きるなら、その時間帯の運転台数と測定値を突き合わせます。測定しないままコンデンサかリアクトルの片方だけを取り替えると、端子電圧や高調波電流が想定から外れるおそれがあります。

まとめ|力率改善と高調波対策はセットで検討する

  • 力率は、皮相電力のうち実際の仕事に使われる有効電力の割合です。進相コンデンサで遅れの無効電力を補うと、接続点より上流側の電流が減ります。
  • 200kW・三相400Vの例では、力率0.80→0.95で電流は約361A→約304A、上流側の配線損失は約29%減り、必要なコンデンサ容量は約84.3kvarです。
  • コンデンサは周波数の高い高調波電流を吸い込みやすく、系統と共振して高調波を拡大させることもあるため、直列リアクトルと組にして設置します。
  • 6%と13%は数字の大小では選べません。次数別のひずみの測定値、許容電流種別、既設機器との組み合わせを確認し、メーカーの組合せ表で決めます。リアクトルを入れるとコンデンサの端子電圧は6%で約7.02kV、13%で約7.59kVに上がります。
  • 建物から流れ出す高調波は、高調波抑制対策ガイドラインに沿って等価容量で対象かどうかを判定し、流出電流を上限と比べます。
  • 設計では、料金約款、負荷集計表、機器仕様書、単線結線図、高調波流出電流計算書、メーカー選定表を照らし合わせて、「どこに、何kvarを、どのリアクトル・保護機器と組み合わせて付けるか」まで決めましょう。

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参考・出典

電気設備の設計・施工を学ぶときに役立つ本

電気設備の設計では、設備容量や回路の計算を、図面や施工の実務と結びつけて理解することが大切です。田尻陸夫さん編の『絵とき 電気設備の設計・施工実務早わかり(改訂2版)』は、建築電気設備の設計、実務計算、設備ごとの図例を一冊で確認できます。

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