給排水設備で水とエネルギーをどう減らす?節水器具・給湯・配管の省エネ対策
給排水設備で水とエネルギーを減らすには、便器・水栓・シャワーの使用水量を抑え、湯を使う場所では給湯機が加熱する水量も減らします。さらに、給湯機を水栓やシャワーへ近づけ、配管を短くして保温すれば、湯を運ぶ途中で逃げる熱も減らせます。
ここで迷いやすいのは、「節水器具を選べば、給排水設備の省エネも終わる」と考えてしまうことです。便器で減るのは主に水ですが、水栓やシャワーで湯を減らせば、水と給湯エネルギーの両方を減らせます。給湯機や配管まで見ないと、記事のタイトルにある「エネルギーを減らす方法」には答えられません。
この記事では、給排水衛生設備を設計する設備設計者と、給排水設備を学び始めた人に向けて、便器・水栓・シャワー・給湯機・配管のどこを確認すればよいかを説明します。器具表、給湯計算書、給湯系統図、仕様書へ反映する内容まで、実際の設計作業に沿って見ていきましょう。
最初に「水・湯・配管」のどこで減らすかを決める
水栓やシャワーでは、水と湯を混ぜて使います。節水器具によって同じ使用時間に流れる湯の量が減れば、給湯機が加熱する水量も減るため、節水と給湯の省エネを同時に進められます。
一方、大便器や小便器の洗浄水は、通常は湯ではありません。便器の洗浄水量を減らすと上水使用量や排水量は減りますが、その削減量をそのまま給湯エネルギーの削減量として扱うことはできません。
| 対策する設備 | 減らせるもの | 設計で確認すること |
|---|---|---|
| 大便器・小便器 | 洗浄に使う水 | 洗浄水量、必要給水圧、排水条件を器具表・給排水図・メーカー仕様書で確認する |
| 水栓・シャワー | 水と、湯をつくるエネルギー | 吐水量、使用時間、使用温度、同時使用数を器具表と給湯計算書で確認する |
| 給湯機・配管 | 加熱と搬送に使うエネルギー | 給湯負荷、機器効率、配管長、保温、循環時間を機器表・系統図・仕様書で確認する |

節水量と省エネ量を見積もるときは、どの器具で水を使うのか、その水を加熱するのかを分けます。水だけを使う便器と、湯を使う水栓・シャワーを分けると、給水量の削減と給湯エネルギーの削減を混同せずに計算できます。
節水器具は「何リットル減るか」だけで選ばない
節水器具とは、従来の器具より少ない水で洗浄や手洗いを行う便器、水栓、シャワーなどです。器具表へ品番を記載する前に、カタログの使用水量と建物側の給排水条件を照合します。
必要給水圧とは、器具をメーカーが定めた方法で作動させるために、器具の接続部で必要となる水圧です。給水圧が不足すると、便器が正しく洗浄できない、水栓から必要な流量が出ないといった不具合が起こります。

器具を選ぶときは、次の項目をメーカーの最新資料で確認します。
・洗浄方式と、一回当たりまたは一定時間当たりの使用水量
・器具の接続部で必要となる給水圧
・複数の器具を同時に使ったときの給水量と給水圧
・排水口の位置、排水方向、排水管径、既存排水管への接続条件
・電源、制御、停電時の動作、清掃、部品交換の方法
既存建物で便器や水栓を交換する場合は、新旧器具の使用水量だけを比べても年間使用水量は決まりません。利用人数、使用回数、営業時間、清掃時の使用を同じ条件にそろえると、交換によって水道使用量がどの程度変わるかを見積もれます。
国などが物品を調達する場合は、グリーン購入法の基本方針に定められた対象品目や判断基準も確認します。この制度は民間建築へ一律に義務付けるものではないため、民間案件では発注者の環境方針や調達条件に採用されているかを確かめます。
水栓とシャワーは、使う湯を減らすと省エネになる
給湯設備は、水を必要な温度まで加熱して水栓やシャワーへ送る設備です。給湯機が必要とする熱は、使う湯の量が多いほど、加熱前の水温と使用温度の差が大きいほど増えます。
給湯負荷とは、水を必要な温度まで加熱するために給湯設備がまかなう熱の量です。給湯負荷を見積もるときは、誰が、どこで、何度の湯を、いつ、どのくらい使うのかを確認します。

給湯計算の前提として、次の条件を用途ごとにまとめます。
・手洗い、洗面、シャワー、厨房など、湯を使う場所
・利用人数と、一人または一回当たりの使用量
・給水温度、給湯機の設定温度、水栓で使う温度
・使用時間と、複数の器具が同時に使われる時間帯
・毎日使う設備か、特定の曜日や時間だけ使う設備か
節水水栓や節水シャワーを採用する場合は、メーカー資料で吐水量と使用条件を確認し、給湯負荷の計算条件へ反映します。器具の吐水量を減らしても使用時間が長くなる運用では想定した削減量にならないため、使い方も含めて条件を決めます。
給湯配管が長いほど、つくった湯の熱が逃げる
給湯機でつくった湯は、配管を通る間に周囲へ熱を放出します。給湯配管が長いほど放熱する面積が増えるため、給湯機を湯の使用場所へ近づける、配管経路を短くする、配管を保温するといった対策が必要です。
返湯配管は、遠い水栓でも早く湯が出るように、給湯配管の湯を給湯機へ戻して循環させる配管です。水栓を開けてから湯が出るまでの待ち時間を短くできますが、湯を循環させている間は配管から熱が逃げます。

中央給湯方式では、次の条件を給湯系統図と仕様書で確認します。
・給湯機から各水栓までの配管長
・給湯配管と返湯配管の保温材と厚さ
・返湯ポンプを運転する時間帯と制御方法
・使わない時間帯に循環を止められるか
・配管から逃げる熱を給湯計算へ含めているか
湯を使う場所が建物内に分散している場合は、大きな給湯機から長い配管で送る方法と、使用場所の近くに小型給湯機を置く方法を比べます。給湯機の効率だけでなく、配管から逃げる熱、設置場所、電源やガス、点検方法まで含めて方式を決めます。
高効率給湯機でも、大きすぎればよいとは限らない
高効率給湯機は、入力した電気やガスを有効な熱へ変える割合が高い機器です。ただし、実際に必要な湯量より容量が大きすぎる機器を選ぶと、設置費や設置スペースが増え、想定した運転にならない場合があります。

2025年4月1日以後に着工する原則すべての新築住宅・非住宅は、省エネ基準への適合が求められます。床面積10㎡以下などの例外があり、増改築の扱いも異なるため、建物用途、規模、工事種別、着工日から適用条件を確認します。
非住宅建築物の一次エネルギー消費量の計算では、給湯設備も評価対象の一つです。一次エネルギー消費量とは、建物で使う電気やガスを、発電や燃料供給に必要なエネルギーまで含めて共通の単位で表した量です。
給湯機を選ぶときは、給湯負荷、配管から逃げる熱、給湯機の効率を分けて確認します。建築研究所が公開する技術情報は改定されるため、設計時点の最新版と、使用する計算プログラムに対応する版を使います。
省エネ・節水対策を図面へ反映する6つの手順
省エネ・節水対策は、節水器具や高効率給湯機の候補を先に選ぶのではなく、建物で使う水と湯を見積もってから機器を選びます。最後に、計算で使った条件と同じ内容を器具表・給湯系統図・仕様書へ書きます。
使用条件の確認 → 水量・湯量の計算 → 節水器具の選定 → 給湯方式・給湯機の選定 → 配管経路と保温の決定 → 器具表・系統図・仕様書への記載

1.水と湯を使う人・場所・時間を確かめる
建物用途、利用人数、営業時間、水を使う器具、湯を使う器具を設計条件表へ書きます。同時に使われる器具と時間帯も確認すると、給水量と給湯負荷を計算できます。
2.器具ごとの水量と湯量を計算する
便器・水栓・シャワーについて、一回当たりまたは一定時間当たりの使用水量と使用回数を確認します。湯を使う器具は、使用温度と使用時間も加えて給湯負荷を計算します。
3.節水器具を給排水条件と照合する
節水性能に加え、必要給水圧、排水条件、電源、制御、保守条件をメーカー資料で確認します。既存建物では、現地の給水圧と既存給排水管の位置・管径も調べます。
4.給湯方式と給湯機を選ぶ
湯を使う場所が集中しているか、建物内に分散しているかを確認し、中央給湯と局所給湯を比べます。給湯負荷、熱源、機器効率、設置場所、搬入・更新方法を照合して給湯機を選びます。
5.配管経路・保温・循環時間を決める
給湯機から水栓までの配管経路を短くできるか確認します。返湯配管を使う場合は、循環する時間帯と制御方法を決め、給湯・返湯配管の保温仕様を記載します。
6.計算条件と同じ内容を図面へ書く
衛生器具表には使用水量、必要給水圧、電源、付属品を記載します。給湯系統図と機器表には給湯方式、給湯機、配管、保温、制御を記載し、計算書と条件が一致しているかを確認します。
設備設計者向けチェックリスト
この一覧は、設備設計者が基本設計から実施設計へ進むときに使うものです。設計条件表、衛生器具表、給湯計算書、給湯系統図を並べ、同じ利用人数・使用時間・器具仕様で作られているかを確認します。

☐ 建物用途、利用人数、営業時間、水と湯を使う場所を設計条件表へ書いた
☐ 器具ごとの使用水量、使用回数、使用時間を確認した
☐ 節水水栓と節水シャワーの吐水量を給湯負荷の計算へ反映した
☐ 便器・水栓の必要給水圧、排水条件、電源をメーカー資料で確認した
☐ 給湯負荷、配管から逃げる熱、給湯機の効率を分けて計算した
☐ 給湯機から水栓までの配管長と保温仕様を確認した
☐ 返湯配管の運転時間と、使わない時間帯の停止方法を決めた
☐ 器具表、給湯系統図、機器表、仕様書が計算条件と一致している
建築設備士試験との関係
建築技術教育普及センターが公開する公式過去問題では、節水形衛生器具と建築物の省エネルギーが第一次試験の選択問題として出題された例があります。この記事で扱った「器具の対象を特定し、使用水量やエネルギー評価の条件を照合する考え方」を、選択肢の判断に使えます。
判断する順番は、建物用途と器具を読む → 問われている水量・エネルギーの対象を特定する → 出題年の規格・計算法を選ぶ → 選択肢を判断する、です。
令和元年(2019年)第一次試験・建築設備・第24問は、給排水衛生設備の機器・材料について五肢から一つを選ぶ問題です。節水形大便器の規格区分を含むため、器具名と数値を読み、出題年に使われていた規格の定義と照合します。
令和4年(2022年)第一次試験・建築一般知識・第4問は、建築物の省エネルギーについて四肢から一つを選ぶ問題です。問題文の建物用途と設備用途を読み、給湯設備が評価対象となる範囲を出題年の計算法と照合します。
過去問題の正誤は、出題された年の法令・規格で決まります。2026年の設計へ過去問題の数値をそのまま使わず、現行の法令、計算方法、メーカー資料で確認します。
間違えやすいポイント
ここでは、省エネ・節水設計で起こりやすい間違いと、代わりに確認する内容を組にして示します。

節水器具を選べば給湯も省エネになると考える
よくある間違い:便器や水栓の使用水量だけを見て、給湯設備のエネルギーも十分に減ると判断することです。
確認すべきこと:便器のように水だけを使う器具と、水栓・シャワーのように湯を使う器具を分けます。湯の使用量、温度、給湯配管、給湯機の効率まで確認すると、省エネになる部分を特定できます。
高効率給湯機を選べば対策が終わると考える
よくある間違い:給湯機の効率だけを比べ、給湯負荷や配管から逃げる熱を確認しないことです。
確認すべきこと:利用人数、使用量、使用時間から給湯負荷を計算し、配管長、保温、返湯配管の運転時間を確認します。熱を多く使っている場所が、器具、配管、給湯機のどこかを見分けられます。
カタログの節水率を建物全体へそのまま使う
よくある間違い:特定の試験条件で示された器具の節水率を、利用人数や使い方が異なる建物の年間削減率として扱うことです。
確認すべきこと:交換前後の器具について、使用水量、使用回数、利用人数、営業時間を同じ条件にそろえて計算します。建物全体の水道使用量に対して、交換する器具が占める量も確認します。
既存の節水器具へ交換すれば配管もそのまま使えると考える
よくある間違い:必要給水圧や排水条件を確認せず、既存便器や水栓を新しい節水形へ置き換えることです。
確認すべきこと:新しい器具の必要給水圧、瞬時に流れる水量、排水口の位置、既存給排水管への接続条件をメーカー資料と現地調査で照合します。交換後の試運転方法も決めます。
まとめ
給排水設備の節水対策は、便器・水栓・シャワーで使う水を減らします。水栓やシャワーで湯の使用量を減らすと、給湯機が加熱する水量も減るため、給湯の省エネにもつながります。
設計では、利用人数と使用時間を確認し、器具ごとの水量・湯量を計算します。その計算結果を使って節水器具と給湯機を選び、配管経路、保温、返湯配管の運転時間を決めます。
次に確認する資料は、衛生器具表、給湯計算書、給湯系統図、メーカー仕様書です。四つの資料で、器具の使用水量、必要給水圧、給湯負荷、配管長、機器効率が同じ条件になっているかを照合します。


