冷房時の空調サイクル設計|外気混合・冷却除湿・送風量の計算手順
冷房設計では、室内の熱だけでなく、外から入る熱と湿気も取り除く必要があります。
そのため、送風量を決めるだけでは足りません。外気と還気を混ぜた後の状態、冷却コイルの能力、給気の乾き具合まで順に確かめます。
この記事では、中央式の単一ダクト空調を例に、空気がどこを通り、各段階で何を計算するのかを説明します。
なお、ここで扱うのは空気の流れです。冷媒が圧縮・凝縮・膨張・蒸発する「冷凍サイクル」とは別のものです。
冷房空調サイクルは外気混合・冷却除湿・室内負荷処理をつなぐ
中央式空調では、室内から戻る還気RAと、屋外から取り入れる外気OAを混ぜます。その空気を冷やして湿気を取り、給気SAとして室内へ送ります。
空気は次の順に流れます。
還気RA・外気OA → 混合空気MA → コイル出口CA → 給気SA → 室内 → 還気RA

還気RAと外気OAを混ぜて混合空気MAをつくる
還気RAは、室内で熱と湿気を受け取り、空調機へ戻る空気です。外気OAは、換気のために屋外から取り入れる空気です。
夏の外気は、室内よりも暑く湿っていることがあります。外気を増やすと、混合空気MAの温度と湿気が増え、冷却コイルの負担も大きくなります。
混合空気MAを冷却コイルで冷却・除湿してCAにする
混合空気MAが冷却コイルを通ると、温度が下がります。コイルの表面が空気の露点温度より冷たければ、水蒸気が水滴になってドレンへ流れます。これが冷却除湿です。
この記事では、コイルを出た空気をCA(Coil Leaving Air)と呼びます。CAの温度と湿気は、コイルの列数や面風速、冷水・冷媒の条件で変わります。手計算だけで決めず、最後はメーカーの選定表で確かめます。
コイル出口CAから給気SAまでにファン熱を加える
ファンが冷却コイルの後ろにあると、ファンとダクトから受ける熱で空気の温度が少し上がります。水分は加わらないため、絶対湿度は変わりません。
ファンがコイルの前にある場合は、ファンの熱をコイル入口側に加えます。まず図面でファンの位置を確かめ、同じ熱を二重に足さないようにします。
給気SAが室内の顕熱と潜熱を受けて還気RAへ戻る
給気SAは、室内へ入ると外壁・窓・照明・機器・人などの熱を受けて温まります。人や外気から出る水蒸気も受けるため、絶対湿度も上がります。
この熱と湿気を運び出せるように、給気の温度、絶対湿度、風量を決めます。

冷房空調サイクルの設計は五つの入力条件から始める
計算を始める前に、次の条件をそろえます。
| 入力条件 | 主な内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 室内条件 | 乾球温度、相対湿度または絶対湿度 | 設計条件表、用途、運用条件 |
| 外気条件 | 乾球温度、湿度、比エンタルピー | 採用する設計基準、建設地 |
| 室内負荷 | 顕熱負荷、潜熱負荷 | 負荷計算書 |
| 外気量 | 人員、用途、運用、制御を反映した量 | 適用法令、設計基準、換気計算書 |
| 空調機条件 | 給気温度、ファン位置、冷水・冷媒条件 | 系統図、機器表、メーカー選定条件 |
ここからは、次の条件で計算します。計算手順を示すための例であり、地域や用途の標準値ではありません。
- 室内・還気RA:26℃、50%RH
- 外気OA:34℃、60%RH
- 外気比:乾き空気質量比30%
- 室内顕熱負荷:30kW
- 室内潜熱負荷:10kW
- コイル出口CA:13℃、95%RH
- 給気SA:15℃、CAと同じ絶対湿度
- 空気密度:1.2kg/m³
- 空気の定圧比熱:1.0kJ/(kg・K)
- 大気圧:101,325Pa
各状態点の温度、絶対湿度、比エンタルピーは次のとおりです。
| 状態点 | 乾球温度 | 絶対湿度 | 比エンタルピー |
|---|---|---|---|
| 還気RA | 26.00℃ | 10.50g/kg(DA) | 52.91kJ/kg(DA) |
| 外気OA | 34.00℃ | 20.25g/kg(DA) | 86.12kJ/kg(DA) |
| コイル出口CA | 13.00℃ | 8.86g/kg(DA) | 35.45kJ/kg(DA) |
| 給気SA | 15.00℃ | 8.86g/kg(DA) | 37.49kJ/kg(DA) |
室内顕熱負荷30kWから必要送風量を約8,180m³/hと求める
まず、室内の顕熱30kWを運び出すために必要な風量を求めます。
V = q_s × 3,600 / [ρ × c_p × (t_R - t_S)]
V:必要送風量[m³/h]q_s:室内顕熱負荷[kW]ρ:空気密度[kg/m³]c_p:空気の定圧比熱[kJ/(kg・K)]t_R - t_S:室温と給気温度の差[K]
数値を入れると、次のようになります。
V = 30 × 3,600 / [1.2 × 1.0 × (26 - 15)] = 8,181.8m³/h
必要送風量は、約 8,180m³/h です。
3,600は、m³/hで表す風量と、1秒当たりの熱量であるkWをそろえるための換算です。ここを忘れると、答えが3,600倍ずれます。
この風量を乾き空気の質量流量に直します。
m_da = 8,181.8 × 1.2 / 3,600 = 2.727kg/s
以降の混合計算、コイル能力、凝縮水量には、この2.727kg/sを使います。
外気30%と還気70%から混合空気MAを28.43℃と求める
次に、外気OAを30%、還気RAを70%の割合で混ぜます。温度だけを平均するのではなく、絶対湿度と比エンタルピーも計算します。
外気比をr = 0.30とすると、混合空気MAの絶対湿度は次のとおりです。
x_M = 0.30 × 20.246 + 0.70 × 10.496 = 13.421g/kg(DA)
比エンタルピーも30対70で混ぜます。
h_M = 0.30 × 86.118 + 0.70 × 52.914 = 62.875kJ/kg(DA)
この絶対湿度と比エンタルピーに対応する乾球温度は、約 28.43℃ です。
| 混合空気MA | 計算結果 |
|---|---|
| 乾球温度 | 28.43℃ |
| 絶対湿度 | 13.42g/kg(DA) |
| 比エンタルピー | 62.88kJ/kg(DA) |
外気比を風量で決めた場合も、詳しい混合計算では乾き空気の質量比に直します。風量比のまま計算する方法は概算です。メーカーへ渡す条件には、どちらの比を使ったかを明記します。
混合空気MAからコイル出口CAまでの全熱能力は約74.8kWになる
冷却コイルは、混合空気MAを冷やすと同時に湿気も取り除きます。温度差だけでは両方を計算できないため、比エンタルピー差を使います。
Q_coil = m_da × (h_M - h_CA)
数値を入れます。
Q_coil = 2.727 × (62.875 - 35.447) = 74.80kW
必要な冷却コイル能力は約74.8kWです。室内顕熱負荷30kWより大きいのは、暑く湿った外気も冷やして除湿するからです。
混合空気から除かれる凝縮水量は約44.8kg/hになる
コイルで何kgの水を取り除くかは、入口と出口の絶対湿度差から求めます。
m_w = m_da × (x_M - x_CA) × 3,600
m_w = 2.727 × (0.013421 - 0.008858) × 3,600 = 44.79kg/h
凝縮水量は約 44.8kg/h です。水は約1kg/Lなので、約44.8L/hと考えられます。
この水を滞りなく流せるように、ドレンパン、配管、トラップ、排水先を計画します。国土交通省の公共建築工事標準仕様書では、公共建築工事のドレン管勾配は原則1/100以上です。実際の設計では、この仕様書を使う工事かを確かめたうえで、設計図書とメーカーのトラップ要領に従います。
コイル出口13℃から給気15℃までの顕熱取得は約5.6kWになる
この例では、コイルを出た13℃の空気が、ファンとダクトの熱を受けて15℃になります。水分は増えないため、絶対湿度は変わりません。
Q_fan = 2.727 × (37.492 - 35.447) = 5.58kW
熱取得は約5.6kWです。ここでは、13℃から15℃までの上昇分をすべてファンとダクトの熱として計算しました。実際は、ファン動力、効率、設置位置、ダクト経路から求めます。
給気絶対湿度8.86g/kg(DA)で室内潜熱10kWを処理できるか検算する
風量が足りていても、給気に湿気が多ければ室内湿度は下がりません。そこで、給気の絶対湿度も確かめます。
潜熱負荷10kWを処理できる給気絶対湿度の上限は、次の式で求めます。
x_S ≤ x_R - q_l / (m_da × 2,501)
x_S ≤ 0.010496 - 10 / (2.727 × 2,501) = 0.009030kg/kg(DA)
上限は約 9.03g/kg(DA) です。計画した給気SAは8.86g/kg(DA)なので、10kWの潜熱を処理できます。
給気が9.03g/kg(DA)より湿っていれば、風量が足りていても除湿不足です。その場合は、コイル出口の温湿度、風量、外気処理方式を見直します。
室内冷房負荷30kWと冷却コイル負荷74.8kWを分けて読む
室内負荷と冷却コイル負荷は、計算する区間が違います。
| 比較項目 | 室内冷房負荷 | 冷却コイル負荷 |
|---|---|---|
| 対象区間 | 給気SAから還気RAまで | 混合空気MAからコイル出口CAまで |
| 主な内容 | 室内の顕熱・潜熱 | 室内負荷に加え、外気処理やファン配置等の影響 |
| 主な用途 | 給気量・給気状態の決定 | 空調機・冷却コイルの能力選定 |
| 確認する状態点 | SA、RA | MA、CA |
今回の例では、室内顕熱負荷は30kWですが、冷却コイルには約74.8kWの能力が必要です。高温・高湿の外気を冷やして除湿する分が加わるためです。
全熱交換器や外気処理空調機を使う場合は、熱回収や前処理を終えた後の外気状態で計算します。処理済みの外気負荷をもう一度足さないようにします。
冷却コイルは計算結果をメーカー選定表で確定する
手計算で分かるのは、必要な風量と能力の目安です。実際の機器は、次の条件をメーカーへ伝えて選んでもらいます。
□ 外気OA・還気RA・混合空気MAの乾球温度、湿度、比エンタルピー
□ 処理風量、外気量、最小・最大風量
□ コイル出口CAと給気SAの温度・絶対湿度
□ 冷却全熱能力、顕熱能力、凝縮水量
□ 冷水または冷媒の入口・出口条件と流量
□ コイル列数、面風速、空気側・水側の圧力損失
□ ファン位置、ファン動力、フィルタ等の圧力損失
□ ドレンパン、トラップ、排水勾配、点検・清掃スペース
□ 部分負荷時の風量・水量・冷媒制御と除湿性能
コイル出口の状態をさらに詳しく調べる場合は、装置露点温度(ADP)とバイパスファクタ(BF)とは|冷却コイル出口温度の計算も参照してください。
建築側とは空調機・ダクト・ドレンの納まりを早めに調整する
計算で風量やコイル能力が決まると、空調機やダクトの大きさも決まってきます。
風量が大きくなれば、外気・還気・給気ダクト、消音器、ダンパ、シャフトも大きくなります。コイルの列数や点検スペースが増えると、空調機も長くなります。
ドレン管は、梁の下で排水勾配を確保し、トラップと排水先へつなぎます。平面図だけでは高さが分からないため、断面図で空調機の底、ドレン管、梁、天井、点検口の位置を確かめます。
外気取入口と排気口が近すぎると、排気を再び吸い込むおそれがあります。雨が吹き込まないか、臭気源や冷却塔に近くないかも確認します。必要な離隔や配置は条件によって変わるため、意匠・構造・衛生設備の担当者、メーカーと早めに調整します。
建築設備士試験対策|送風量・外気混合・コイル能力を順に解く
建築設備士の公式問題では、この記事で扱った送風量、空気の顕熱、比エンタルピー、冷却コイル能力が実際に問われています。式を個別に覚えるより、空気が流れる順に計算すると整理しやすくなります。
第一次試験は風量と熱量の単位をそろえる
第一次試験の公式問題では、風量、空気密度、比熱、温度差から空気の顕熱量を求める計算が出題されています。冷房でも暖房でも、使う関係は同じです。
m³/hとkWを一つの式で使うときは、3,600で時間をそろえます。計算を始める前に、風量がm³/hかm³/sか、熱量がWかkWかを確認してください。
SHF、外気冷房、冷房負荷、空調方式も公式問題に出ています。温度差だけで考えず、顕熱と潜熱、温度と比エンタルピーを使い分けることが対策になります。
第二次試験は室内負荷から冷却コイル能力までつなげる
第二次試験の空調・換気設備では、単一ダクト方式について、送風量、冷却コイル入口空気の比エンタルピー、再熱能力、冷却コイル能力と算定根拠を求める公式問題が出ています。
解く順番は、この記事と同じです。
室内顕熱負荷 → 送風量 → 外気量 → 混合空気の比エンタルピー → 冷却コイル能力
先に状態点を小さな系統図へ書き、室内負荷はSAからRA、コイル負荷はMAからCAと区切ります。どの空気の差を使うのかが明確になり、外気負荷の入れ忘れや二重計上を防げます。
冷房空調サイクルの計算で間違えやすい五つの点
送風量式で3,600の時間換算を落とす
kWは1秒当たり、m³/hは1時間当たりの単位です。両方を同じ式で使うときは、3,600で時間をそろえます。
外気比を体積比のまま厳密計算へ使う
温度や湿度が違えば、空気の密度も変わります。詳しく計算するときは、体積比を乾き空気質量比に直します。
給気温度だけを決めて絶対湿度を確認しない
顕熱負荷から求めた風量だけでは、除湿できるか分かりません。潜熱負荷から給気絶対湿度の上限を求め、コイル出口の状態と比べます。
室内負荷と冷却コイル負荷を同じ値にする
室内負荷はSAからRAまで、コイル負荷はMAからCAまでの変化です。外気を処理する分があるため、コイル負荷のほうが大きくなることがあります。
ファン熱をコイル前後の両方へ加える
ファンがコイルの前にあるか、後ろにあるかで、熱を加える場所が変わります。系統図で位置を確かめてから計算します。
まとめ|冷房空調サイクルを状態点と単位でつなげる
冷房時は、還気RAと外気OAを混ぜ、冷却コイルで冷やして湿気を取ります。その空気を給気SAとして室内へ送り、室内の熱と湿気を運び出します。
計算は、送風量、外気混合、コイル能力、凝縮水量、給気絶対湿度の順に進めると整理しやすくなります。
最後にメーカー選定表で、コイルの入口・出口条件、列数、面風速、冷水・冷媒条件、圧力損失、ファン位置、ドレン、部分負荷性能を確認します。
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参考・出典
EnergyPlus Engineering Reference: HVAC Controllers(U.S. Department of Energy)
EnergyPlus Engineering Reference: Coils(U.S. Department of Energy)
EnergyPlus Engineering Reference: Component Sizing(U.S. Department of Energy)
LCEMツール活用事例 別添3(国土交通省)
建築物環境衛生管理基準について(厚生労働省)
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)(国土交通省)
令和7年建築設備士試験 第一次試験(建築設備)(建築技術教育普及センター)
令和7年建築設備士試験 第二次試験(設計製図)(建築技術教育普及センター)
令和7年建築設備士試験 第二次試験の合格基準等(建築技術教育普及センター)


