増圧直結給水ポンプの算定手順|流量と全揚程を計算例で確認
直結増圧給水方式を採用すると決まったら、次に必要になるのが増圧ポンプの選定です。ところが、初めて計算書を作ると「建物の高さは分かるけれど、ほかに何を足せばよいのだろう」と迷いやすいところです。
増圧ポンプは、地上から最上階まで水を押し上げる力をすべて受け持つわけではありません。道路の配水管にも圧力が残っているので、その力を先に使い、足りない分だけをポンプで補います。そのため、建物の高さだけではポンプを選べません。
計算の順番はシンプルです。まず、建物で同時に使う水量から流量Qを決めます。次に、配管や量水器などで失う水頭と、最上階まで水を上げるための水頭を足します。最後に、利用できる本管の水頭を引けば、ポンプに必要な全揚程Hが分かります。
この記事では40戸の共同住宅を例に、流量225L/min、全揚程20.6mを求めます。途中で使う配管や機器の損失水頭は、計算の進め方を示すための仮定値です。実際の設計では、計画地の水道事業者が示す条件と、採用する機器の資料に置き換えてください。
増圧ポンプは本管圧力の不足分を補う
道路下の配水管から引き込んだ水は、止水栓、量水器、逆流防止器、増圧ポンプを通り、建物内の給水管を上がって最上階の水栓へ届きます。受水槽にいったん貯める方式ではないため、配水管に残っている圧力をそのまま利用できます。
ここが、全揚程を考えるときの大事な点です。末端の水栓まで届けるために必要な水頭をすべて足した後、すでに本管が持っている水頭を引きます。残った不足分が、増圧ポンプの仕事です。本管の圧力が高い場所ではポンプが補う水頭は小さくなり、低い場所では大きくなります。

算定前に水道事業者から4つの条件を得る
最初に機器カタログを開いても、ポンプはまだ選べません。直結増圧を使える建物の条件や、計算に使う本管水圧は地域ごとに違うからです。まず計画地を管轄する水道事業者へ事前協議を行い、次の4点を確認します。
| 確認項目 | 計算で使う場所 | 確認先 |
|---|---|---|
| 直結増圧を採用できる用途・規模 | 方式の採否 | 給水装置工事設計・施工基準、事前協議 |
| 配水管の設計水圧 | 全揚程から差し引くH0 | 給水水圧回答書、水道事業者 |
| 瞬時最大給水量の算定法 | ポンプ流量Q | 所管基準の計算式・流量線図 |
| 逆流防止器と増圧設備の条件 | 設備損失H3 | 所管基準、認定品、メーカー承認図 |
たとえば横浜市の現行指針では、設計水圧を0.25MPaとし、0.25MPa未満の区域では給水水圧回答書の値を使うとしています。東京都では、標準型、直列多段型、並列型など、複数の方式が案内されています。
このように、同じ直結増圧でも地域によって条件が変わります。過去の別案件や別地域で使った数値をそのまま写さず、今回の計画地について回答をもらってから計算を始めます。
流量Qは瞬時最大給水量から決める
増圧ポンプの流量Qには、建物の中で同時に使われると見込む水量、つまり瞬時最大給水量を使います。すべての水栓や便器が同時に使われるわけではないため、器具の最大流量を単純に足すのではありません。
共同住宅では戸数や居住人数を使う方法、事務所や店舗では器具給水負荷単位を使う方法などがあります。どの方法で計算するかは、水道事業者の基準に合わせます。
集合住宅40戸の流量を計算する
荏原製作所の技術資料は、優良住宅部品認定基準に基づく方法として、10戸以上600戸未満で次の式を紹介しています。
Q = 19 × N^0.67
Qは瞬時最大給水量(L/min)、Nは住戸数です。Nに40を入れます。
Q = 19 × 40^0.67 = 224.97 ≒ 225L/min
小数を丸めると、この例の選定流量は225L/minです。ただし、この戸数式を使えるのは、計画地の水道事業者がこの算定方法を認めている場合です。住戸の構成、共用部の水栓、併設店舗などを別に加えるよう指定された場合は、その条件を含めて計算し直します。
事務所や店舗は器具給水負荷単位法などを使う
事務所や店舗では、便器、洗面器、給湯室の水栓などに器具給水負荷単位を割り当て、合計値を同時使用流量へ換算する方法があります。病院、学校、工場などでは、用途や収容人数を使う方法が指定されることもあります。
つまり、40戸の計算例を、戸数で表せない建物へそのまま使うことはできません。まず衛生器具表で器具の種類と数を整理し、その建物ではどの算定法を使うのか、水道事業者と相談します。
全揚程Hは6つの必要水頭から本管圧力を引く
流量Qが決まったら、次は全揚程Hです。横浜市の指針と荏原製作所の技術資料では記号の呼び方に少し違いがありますが、考え方は次の式で表せます。
H = H1 + H2 + H3 + H4 + H5 + H6 – H0
| 記号 | 意味 | 図面・資料で確認する場所 |
|---|---|---|
| H0 | 配水管の設計水頭 | 水圧回答書 |
| H1 | 配水管と増圧設備の高低差 | 配置図、断面図 |
| H2 | 増圧設備より上流の管・量水器などの損失 | 屋外給水図、量水器資料 |
| H3 | 逆流防止器を含む増圧給水設備の損失 | 所管基準、ユニット承認図 |
| H4 | 増圧設備より下流の管・弁・継手の損失 | 給水系統図、配管平面図 |
| H5 | 末端最高位器具に残す必要圧力 | 器具仕様書 |
| H6 | 増圧設備から末端最高位器具までの高低差 | 断面図、系統図 |
上流側と下流側を系統図で分ける
H2は、道路の配水管から増圧設備の入口までに失う水頭です。引込管、止水栓、量水器、曲がり、弁を、水が通る順に拾います。H4は、増圧設備の出口から、最も条件が厳しい末端器具までの損失です。立て管だけで終わらせず、最上階の横引き管と水栓の直前まで追いかけます。
上流側と下流側を分けるのは、後から計算を直しやすくするためでもあります。量水器の口径が変われば主にH2を、ポンプの位置や上階の配管経路が変わればH4やH6を見直します。計算書には、経路名、管径、流量、実長、継手や弁の相当長、単位摩擦損失を分けて残しておくと、どこを直すべきかすぐに分かります。
逆流防止器を含む設備損失は承認図で確認する
H3は、逆流防止器を含む増圧給水設備の内部を通るときに失う水頭です。この損失は、製品、口径、流量、逆流防止器の構成によって変わります。後の計算例では5.0mとしていますが、これは説明用です。実際には、選定流量における損失をメーカーの承認図で確認します。
逆流防止器をどこに置くか、どの方式を使うかも、水道事業者の基準に合わせます。計算しやすいからという理由で位置を変えず、申請図、機器の認定条件、点検方法まで含めて決めます。
40戸・最高位30mの全揚程を計算する
ここまでの内容を、40戸の共同住宅に当てはめます。流量Qは225L/minです。この流量が引込管から最上階の水栓まで流れるものとして、各区間の水頭を次のように置きます。H2、H3、H4は計算手順を示すための仮定値です。
| 項目 | 水頭 | この例の条件 |
|---|---|---|
| H1 高低差 | 1.0m | 配水管より増圧設備が1.0m高い |
| H2 上流側損失 | 3.0m | 引込管・量水器・弁の合計 |
| H3 設備損失 | 5.0m | 逆流防止器を含む仮定値 |
| H4 下流側損失 | 4.0m | 吐出側配管・弁・継手の合計 |
| H5 末端必要圧力 | 3.1m | 一般水栓30kPa相当の例 |
| H6 高低差 | 30.0m | 増圧設備から最高位水栓まで |
| H0 本管水頭 | -25.5m | 設計水圧250kPaを控除 |
本管水圧250kPaを水頭25.5mへ換算する
本管水圧は250kPa、ほかの項目はmで表されています。単位が違うままでは足し引きできないので、250kPaを水頭mへ換算します。水の場合は、圧力を9.80665kPa/mで割ります。
H0 = 250kPa ÷ 9.80665kPa/m = 25.49m ≒ 25.5m
250kPaは、水頭にすると約25.5mです。「100kPaでおよそ10m」と覚えておくと、計算結果の桁が大きく外れていないか確かめられます。提出する計算書には、使った換算係数と、どの段階で丸めたかを残します。
必要水頭46.1mから本管水頭25.5mを引く
まず、ポンプから見ると「必要になる側」の水頭をすべて足します。
1.0 + 3.0 + 5.0 + 4.0 + 3.1 + 30.0 = 46.1m
この46.1mを、末端の水栓まで水を届けるために必要な水頭と考えます。ここから、すでに本管が持っている25.5mを引きます。
H = 46.1 – 25.5 = 20.6m
したがって、ポンプが補う全揚程は20.6mです。メーカーへ選定を依頼するときは、流量Q=225L/min、全揚程H=20.6mを基本条件として伝えます。
実際の案件では、配管の長さや口径に合わせてH2とH4を計算し、H3は採用するユニットの資料から読み取ります。H5も、最上階で使う水栓や器具の仕様書に書かれた必要圧力へ置き換えます。

Q-H点を性能曲線へ入れて機種を選ぶ
QとHが求まったら、その2つをメーカーの性能曲線に入れます。今回なら、横軸の225L/minと縦軸の20.6mが交わる点です。その点で、流量と全揚程を同時に満たす機種を選びます。カタログの最大流量だけ、または最大揚程だけを見て選ぶことはできません。
機種の候補が決まったら、流入圧力の許容範囲、増圧設定範囲、ポンプ台数、電源、運転制御、ユニット内の損失、接続する量水器と配管口径も見ます。現行の直結給水ブースタポンプには、水の使用量と吸込側圧力に合わせて吐出し圧力を変え、末端の圧力を保つ「推定末端圧力一定制御」を採用する製品があります。
また、朝夕の最大使用時だけでなく、夜間など水を少ししか使わないときの運転や停止も確認します。騒音、設置場所の温度や雨掛かり、点検スペースも、承認図と建築図を並べて確認します。
全揚程に余裕を加える場合も、何となく10%を上乗せするのは避けます。水道事業者やメーカーが求める余裕と、すでに配管損失へ含めた余裕が重なると、必要以上に大きなポンプを選ぶ原因になります。
増圧ポンプ算定で間違えやすいポイント
本管水圧を足してしまう
本管水圧は、ポンプが新しく作る圧力ではなく、もともと利用できる圧力です。したがって、必要水頭46.1mへ25.5mを足すのではなく、46.1mから引きます。ポンプが補うのは20.6mです。
kPaとmを同じ式へ入れてしまう
250kPaと30.0mは、数字だけを見て足し引きできません。片方は圧力、もう片方は水頭だからです。この例では250kPaを25.5mへ換算し、すべてをmにそろえてから計算しています。
例の損失水頭を別の計画へ写してしまう
H2=3.0m、H3=5.0m、H4=4.0mは、この計算例だけの仮定値です。別の建物へそのまま写すと、配管の長さや口径、機器の違いが反映されません。実際の選定流量Qで、配管、量水器、逆流防止器、増圧ユニットの損失をそれぞれ求めます。
計算書と図面で確認する項目
計算が終わったら、結果の数字だけを見るのではなく、その数字を拾った経路が図面と合っているかを確認します。次の項目を、水理計算書、給水系統図、平面図、機器承認図で見比べます。
- 水圧回答書の日付、対象引込位置、設計水圧を計算書へ記載したか
- 瞬時最大給水量の算定法が所管基準と建物用途に合っているか
- 上流側H2と下流側H4の経路が給水系統図・平面図と一致するか
- 量水器、逆流防止器、増圧ユニットの損失を同じ流量で確認したか
- 最も条件の厳しい末端器具と必要圧力H5を仕様書で確認したか
- Q-H点、増圧設定範囲、電源、運転台数をメーカー選定書と機器表へ反映したか
- ポンプ位置、搬入経路、排水、換気、騒音・振動、点検空間を建築図と調整したか
同じ項目に別の記号や数値が書かれていると、申請時や施工時に食い違いが起きます。水理計算書と各図面で、Q、H、管径、ポンプ位置、最も条件が厳しい器具をそろえます。設計途中で配管経路や最上階の器具が変わったら、H4、H5、H6を計算し直します。
建築設備士試験対策|具体的な学習内容
令和5年第一次試験 建築設備No.18
給水設備に関する4つの記述から、不適当なものを選ぶ問題です。問題の条件は、水道直結増圧方式の増圧ポンプを、吐出し圧力一定制御と台数制御で運転するという内容でした。この記述が不適当で、これを選ぶのが解答です。
直結増圧方式では、本管側の圧力も建物で使う水量も変わります。そのため、代表的な製品では、末端に必要な圧力を推定し、使用流量に合わせて吐出し圧力を変える推定末端圧力一定制御が使われます。「吐出し圧力はいつも同じ」と覚えるのではなく、末端の圧力を保つために吐出し圧力を変える、と理解すると判断しやすくなります。
令和6年第一次試験 建築設備No.17
給排水衛生設備に関する4つの記述から、不適当なものを選ぶ問題です。問題の条件として示された「水道直結増圧方式は、小規模受水槽の設置を避け、直結給水の範囲を広げるために開発された」という内容は適当です。したがって、この記述は不適当なものを選ぶときの解答にはなりません。
受水槽を介さず、本管の圧力を利用する方式だと分かっていれば、この記事の計算ともつながります。本管の水頭H0を全揚程の式から引くのは、その圧力を利用できるからです。一方で、受水槽のように水を貯めておくことはできません。断水時にも給水を続ける必要がある用途では、受水槽方式を選ぶ余地があります。
第二次試験については、平成28年から令和7年までの公式問題を確認しました。今回調べた範囲では、直結増圧ポンプについて、本管水頭を引いて全揚程を求める問題は見つかりませんでした。
ただし、給排水衛生設備の機器表に、ポンプの流量、全揚程、電動機出力をまとめる問題はあります。問題文や図面から高低差、配管損失、末端に必要な圧力、利用できる初期圧力を拾い、単位をそろえてQ-H条件を作る練習は、第二次試験にもつながります。
まとめ|本管圧力を引く前に損失を分けて集計する
増圧直結給水ポンプは、流量Qと全揚程Hの2つをそろえて選びます。流量Qは瞬時最大給水量から求めます。全揚程Hは、本管から末端器具までに必要な水頭をH1~H6に分けて足し、利用できる本管水頭H0を引いて求めます。40戸の例では、Q=225L/min、H=20.6mになりました。
実際の設計でそのまま使えるのは、この計算の順番です。例に置いた損失水頭ではありません。水道事業者の水圧回答書、今回の配管経路、量水器・逆流防止器・増圧ユニットの資料、最上階で使う器具の仕様書から、案件ごとの値を拾います。求めたQ-H点をメーカーの性能曲線に入れ、選定書、給水系統図、機器表の数値をそろえれば、計算から図面まで一つの流れで確認できます。
関連記事
参考・出典
- 横浜市「給水装置工事設計・施工指針」
- 東京都水道局「給水方式について」
- 荏原製作所「給水装置 製品技術紹介―第2回 選定、設置、配管、配線方法―」
- 荏原製作所「PNAMN型 直結給水ブースタポンプ」
- 建築技術教育普及センター「令和5年建築設備士第一次試験 建築設備」
- 建築技術教育普及センター「令和5年第一次試験 正答肢」
- 建築技術教育普及センター「令和6年建築設備士第一次試験 建築設備」
- 建築技術教育普及センター「令和6年第一次試験 正答肢」
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