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空調の専門用語を図で解説|乾球・湿球温度、相対湿度、比エンタルピーとは

乾球・湿球温度、相対湿度、比エンタルピーを空調機と湿り空気線図で示す記事アイキャッチ
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比エンタルピーとは、空調分野では、乾き空気1kgを基準に湿り空気の温度と水蒸気が持つエネルギーを表した量です。単位はkJ/kg(DA)で、外気・室内空気や空調機前後の比エンタルピー差を使うと、顕熱と潜熱を合わせた全熱負荷を計算できます。

空調の資料には、乾球温度、相対湿度、絶対湿度、露点温度、比エンタルピーなど、似て見える用語が続けて出てきます。設備設計を学び始めた方や、空調図面を確認する意匠設計者にとって迷いやすいのは、用語の意味だけでなく「どの場面で、何を判断する値なのか」が見えにくいからです。

この記事では、温度・水分・熱量の三つに分けて用語を整理し、比エンタルピーの計算式、湿り空気線図での読み方、空調負荷への使い方まで順に解説します。

この記事でわかること

空調の空気状態は、次の三つに分けると整理しやすくなります。

  • ・温度を見る値:乾球温度、湿球温度、露点温度
  • ・水分を見る値:相対湿度、絶対湿度、飽和度
  • ・熱量を見る値:顕熱、潜熱、全熱、比エンタルピー
空調の専門用語を温度・水分・熱量の三つに整理した図

まず押さえたい温度の用語

乾球温度は、通常の温度計で測る空気温度

乾球温度は、感温部が乾いた状態の温度計で測る空気の温度です。天気予報や室温設定で単に「温度」という場合は、通常、この乾球温度を指します。

湿り空気線図では状態点を決める基本の軸になり、記号は t 、単位は℃で表します。室内の暑さや寒さ、加熱・冷却による温度変化を考える出発点です。

湿球温度は、水の蒸発で下がった温度

湿球温度は、感温部を湿らせ、十分に通風した状態で測る温度です。感温部の水が蒸発するときに周囲から熱を奪うため、未飽和の空気では乾球温度より低くなります。空気が水蒸気で飽和していると蒸発しにくくなり、乾球温度と湿球温度は等しくなります。

乾球温度と湿球温度の差は、空気の湿り具合を知る手掛かりです。ただし、湿球温度は風速、放射、測定器の状態にも影響されるため、測定条件をそろえて扱います。

露点温度は、冷やしたときに結露が始まる温度

露点温度は、空気を水分の出入りがない状態で冷やしたとき、相対湿度が100%となって結露が始まる温度です。窓やダクト表面の温度が周囲空気の露点温度を下回ると、その表面で結露する可能性があります。

露点温度は、断熱や防露の検討、冷却コイルで除湿が始まる条件を考えるときに使います。表面温度だけで判断せず、その場所の空気の露点温度と比較することが大切です。

相対湿度と絶対湿度の違い

相対湿度は、その温度で飽和する量に対する割合

相対湿度は、同じ温度における水蒸気圧と飽和水蒸気圧の比を百分率で表したものです。空気中の水蒸気量が変わらなくても、温度が変われば飽和水蒸気圧が変わるため、相対湿度も変わります。

たとえば、水分を加えずに空気を加熱すると、絶対湿度はほぼ同じままでも相対湿度は下がります。反対に空気を冷却すると相対湿度は上がり、露点温度まで下がると飽和します。

水分の出入りがない空気を加熱すると絶対湿度は一定のまま相対湿度が下がる図

絶対湿度は、乾き空気1kgに含まれる水蒸気量

空調で使う絶対湿度は、乾き空気1kgに含まれる水蒸気の質量です。記号は x 、単位はkg/kg(DA)またはg/kg(DA)で表します。ここでDAはdry air、つまり乾き空気を意味します。

分野によっては1m³の空気に含まれる水蒸気量をg/m³で示し、これも絶対湿度と呼ぶことがあります。空調計算では基準が異なる値を混ぜないよう、単位まで確認します。

飽和水蒸気量・飽和度は何を表すか

飽和状態とは、その温度と圧力で空気が水蒸気を保持できる限界に達した状態です。「飽和水蒸気量」という説明は直感的ですが、厳密な計算では飽和水蒸気圧や飽和絶対湿度を使い、何を基準にした量かを明確にします。

飽和度は、湿り空気の絶対湿度と、同じ温度・圧力における飽和絶対湿度との比です。相対湿度と近い値になりますが、定義は同じではありません。通常の室内環境では相対湿度を使う場面が多く、湿り空気の詳細計算では両者を区別します。

顕熱・潜熱・全熱の違い

顕熱は、主に空気の温度を変えるための熱です。潜熱は、水蒸気が凝縮して水になる、または水が蒸発して水蒸気になるときに出入りする熱です。全熱は、顕熱と潜熱を合わせた熱量です。

冷房では、室温を下げるだけでなく、空気中の水蒸気を冷却コイルで凝縮させて除湿することがあります。このとき空調機は顕熱と潜熱の両方を処理します。

外気が空調機の冷却コイルを通り冷却除湿されて室内へ送られる流れ

用語の役割を比べると、次のように整理できます。

用語主に表すもの空調実務での主な用途
乾球温度空気の温度室温条件、加熱・冷却の確認
相対湿度その温度での飽和に対する割合室内環境、過乾燥・高湿度の確認
絶対湿度乾き空気1kg当たりの水蒸気量加湿・除湿量、空気状態の計算
露点温度結露が始まる温度防露、冷却除湿の確認
比エンタルピー乾き空気1kg当たりの熱的エネルギー全熱負荷、空調機前後の熱量差

比エンタルピーとは

比エンタルピーは、物質のエンタルピーを質量で割った値です。熱力学ではエンタルピー H を内部エネルギー U と圧力・体積の積 pV の和として H = U + pV と表します。

空調では、湿り空気に含まれる乾き空気と水蒸気を一つの系として扱い、乾き空気1kg当たりの比エンタルピー h を使います。値には基準状態があるため、単独の数値よりも、同じ基準で求めた二つの状態の差 Δh が実務上重要です。

同じ温度でも水蒸気量により比エンタルピーが異なることを示す比較図

同じ乾球温度でも、絶対湿度が高い空気は水蒸気が持つ熱量が増えるため、比エンタルピーも大きくなります。このため、温度差だけでは捉えられない冷却・除湿の負荷を、比エンタルピー差でまとめて扱えます。

比エンタルピーの単位

空調で一般に使う単位は kJ/kg(DA) です。これは「乾き空気1kg当たりの湿り空気のエネルギー」を表します。資料によってkg(乾き空気)、kgDA、kg dry airなど表記が異なるため、単位の分母を確認します。

比エンタルピーの計算式

国土交通省のLCEMツール操作マニュアルでは、湿り空気の比エンタルピーを次の近似式で示しています。

h = 1.006t + (1.805t + 2501)x

  • h:比エンタルピー[kJ/kg(DA)]
  • t:乾球温度[℃]
  • x:絶対湿度[kg/kg(DA)]

式の前半 1.006t は主に乾き空気の顕熱、後半 (1.805t + 2501)x は水蒸気が持つ熱量に対応します。係数は採用する物性値や基準状態によりわずかに異なることがあるため、一つの計算では同じ資料・同じ式を使います。

たとえば、乾球温度30℃、絶対湿度0.010kg/kg(DA)なら、次のように計算できます。

h = 1.006 × 30 + (1.805 × 30 + 2501) × 0.010 = 55.7315 ≒ 55.7kJ/kg(DA)

この値は温度だけの熱量ではありません。乾き空気と水蒸気の両方を含む湿り空気の状態を表しています。

湿り空気線図で比エンタルピーを読む方法

湿り空気線図は、乾球温度、絶対湿度、相対湿度、湿球温度、露点温度、比エンタルピーなどの関係を一枚に表した図です。二つの独立した状態量が分かれば、原則として状態点を定め、ほかの値を読み取れます。

確認する流れは、使用する線図の圧力条件を確認 → 乾球温度と湿度条件から状態点を決める → 比エンタルピー線または目盛を読む → 二つの状態の差を求めるです。

  1. 建設地の気圧や線図の基準圧力を確認します。
  2. 乾球温度と、相対湿度または絶対湿度から状態点を取ります。
  3. 状態点を通る比エンタルピー線をたどり、目盛から値を読みます。
  4. 外気と室内、またはコイル入口と出口の値を読み、比エンタルピー差を求めます。

一般的な湿り空気線図では、比エンタルピー線と湿球温度線は近い向きに描かれますが、同じ量ではありません。線の名称と単位を確認して読み取ります。

詳しい読み方は、湿り空気線図の見方で状態点の取り方から確認できます。空気の変化は、加熱・冷却プロセスと合わせて読むとつながりが見えやすくなります。

比エンタルピーを空調負荷へ使う

外気と室内空気の比エンタルピー差を使うと、外気を室内条件まで処理する全熱負荷を、概略として次の形で求められます。

q = V × ρ ÷ 3600 × (hₒ - hᵢ)

  • q:外気の全熱負荷[kW]
  • V:外気量[m³/h]
  • ρ:空気密度[kg/m³]
  • hₒ:外気の比エンタルピー[kJ/kg(DA)]
  • hᵢ:室内空気の比エンタルピー[kJ/kg(DA)]

実施設計では、空気密度の基準、乾き空気と湿り空気の質量基準、全熱交換器の効率、外気条件、室内条件、運転時間などを設計条件に合わせます。式だけを固定値として使わず、設計基準や計算ソフトの定義を確認します。

空気を混合する場合は、風量だけでなく質量流量と熱・水分の収支を考えます。詳しくは外気と還気の混合計算も参照してください。

設計・実務での確認手順

空調条件を決めて機器へ反映する流れは、条件確認 → 空気状態の計算 → 負荷計算 → 機器選定 → 図面・仕様書へ反映です。

  1. 建設地、用途、在室者、外気量、運転時間を確認します。
  2. 外気と室内の乾球温度・湿度条件をそろえ、どの絶対湿度・比エンタルピーを使うか決めます。
  3. 顕熱と潜熱、または比エンタルピー差から処理熱量を求めます。
  4. 冷却能力だけでなく、除湿能力、吹出し条件、ドレン処理まで確認して機器を選定します。
  5. 建築側と、機械室、天井内スペース、断熱、防露、ドレン経路、外気取入口の位置を調整します。
  6. 計算条件と採用値を、図面・機器表・計算書で追えるようにします。

同じ温湿度条件でも、用途、地域、室内発熱、外気導入量、運転方式によって必要能力は変わります。メーカー選定値をそのまま採用せず、設計条件との対応を確認します。

実務チェックリスト

設備設計者や図面を確認する担当者が、実施設計の場面で、空調条件の設定から機器選定、図面反映までを確認する一覧です。計算書を作るときと、設計図・機器表を照合するときに使えます。

☐ 乾球温度、相対湿度、絶対湿度のどれを条件にしたかが明記されている

☐ 絶対湿度と比エンタルピーの単位・質量基準が統一されている

☐ 湿り空気線図または計算式の圧力条件が建設地に適している

☐ 外気・室内・コイル入口・コイル出口の状態点を区別している

☐ 顕熱だけでなく、除湿に伴う潜熱を含めている

☐ 冷却コイル表面やダクト表面と露点温度の関係を確認している

☐ ドレンパン、排水経路、保温、防露を建築・衛生設備と調整している

☐ 計算条件と機器選定条件が図面・機器表へ反映されている

建築設備士試験との関係

公益財団法人 建築技術教育普及センターが公開する公式過去問題のうち、令和6年建築設備士試験「第二次試験」選択問題A(空調・換気設備)の第1問(1)では、室の顕熱負荷・潜熱負荷、吹出し空気と室内空気の比エンタルピー、乾球温度などを用いた計算表を完成させ、吹出し空気量や絶対湿度を求める設問が出題されています。

この設問に対応する判断順序は、与条件の単位確認 → 顕熱負荷から風量を求める → 比エンタルピー差から全熱の収支を確認する → 絶対湿度を求めるです。乾球温度・絶対湿度・比エンタルピーを別の量として扱う必要があります。

この記事の比エンタルピーの定義、単位、顕熱・潜熱との関係は、その計算表を読み解く基礎になります。ただし、試験年度や問題区分によって条件と解法は変わるため、受験時は当該年度の公式問題と試験案内を確認します。

間違えやすいポイント

相対湿度を空気中の水分量そのものと考える

よくある間違い

相対湿度50%を「空気中に入れられる水分量の半分」とだけ覚え、温度が変わっても同じ水分量を表すと考えることです。

確認すべきこと

相対湿度は、その温度での飽和水蒸気圧に対する水蒸気圧の比です。温度変化の前後では、絶対湿度と相対湿度の両方を確認します。

絶対湿度の単位を確認しない

よくある間違い

kg/kg(DA)とg/m³を同じ基準の値として計算へ入れることです。

確認すべきこと

空調計算で使う絶対湿度は乾き空気質量基準が一般的です。資料、線図、計算ソフトに示された単位と分母を確認します。

比エンタルピーを温度だけで決まる値と考える

よくある間違い

乾球温度が同じなら比エンタルピーも同じだと考え、除湿負荷を見落とすことです。

確認すべきこと

比エンタルピーは乾き空気と水蒸気の熱量を含みます。乾球温度だけでなく絶対湿度を確認し、全熱負荷では比エンタルピー差を使います。

線図の条件や読み取り誤差を無視する

よくある間違い

異なる基準圧力の湿り空気線図を使ったり、線図から読んだ概算値を過度に細かい桁まで確定値として扱ったりすることです。

確認すべきこと

線図の基準圧力と単位を確認し、必要な精度に応じて計算式や検証済みの計算ソフトを併用します。物性値、規格、メーカー条件は採用時点の最新版を確認します。

まとめ

乾球温度は空気の温度、相対湿度はその温度での飽和に対する割合、絶対湿度は乾き空気1kg当たりの水蒸気量を表します。露点温度は結露が始まる温度です。

比エンタルピーは、乾き空気1kgを基準に湿り空気の温度と水蒸気が持つエネルギーをまとめた値です。空調機前後や外気・室内の比エンタルピー差を使うことで、顕熱と潜熱を合わせた全熱負荷を扱えます。

実務では、温度条件を確認 → 湿度の種類と単位を確認 → 状態点を決める → 比エンタルピー差を求める → 機器能力と図面へ反映するという順序で進めると、用語と計算がつながります。

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参考・出典

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